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派手派手しいギャラリーたちのおかげで、着飾った自分が霞んでいます
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「そろそろ時間だから、移動しよう」
というアシェルの言葉でノア達は再びメインホールへと向かう。
アシェルは王族だ。彼が歩けば、招待客は何も言わずとも道を空ける。それが宮廷マナーの基礎中の基礎であるのだが、ノアからすれば落ち着かない。つい「あ、どうも」と頭を下げたくなってしまう。
しかしそれをぐっと堪えて、どんなふうにでも取れる微笑みを浮かべて、とにかくドレスの裾だけは踏んづけないように気を付けて歩く。
ただあとちょっとでメインホールというところで、ノアはずっと気になっていたことが我慢できずこそっとアシェルに尋ねてしまった。
「……あのう、殿下。陛下には、どう……その……私のことを紹介するんですか?」
お忘れかもしれないが、過去アシェルはローガンに偽装の婚約証明書を見せつけている。しかも、国王陛下から許可を得たとはっきり嘘までこいているのだ。
それが万が一公衆の面前でバラされた日には、良くて投獄。最悪、もう二度とキノコ料理が食べられなくなってしまうだろう。
なによりアシェルの美しい顔が胴体と離れるなんて、考えただけで背筋が凍る。
……ならこんな直前になって焦る前に対策を考えるなり、裏工作をすべきだとお思いだろう。
言っておくがノアとてそう思っていた。アシェルにもグレンシス先生にも強めに訴えた。だがしかし、二人は口を揃えて「大丈夫、心配ない」を繰り返すのみ。
当然そんな軽い返答では納得できなくて、グレンシスに詰め寄ったノアであるが、「余計なことは考えずに、ノア様はノア様のやるべきことをやりなさい」と一喝されて終わりになった。
悔しくてフレシアに愚痴ったら、キノコの形をしたマドレーヌが出てきた。美味しかった。テンション上がって、ダンスの練習を更に頑張った。
なぁーんて結局甘いものでお茶を濁されたノアであるが、直前になって不安を覚えるのは致し方ない。
しかしアシェルはノアの不安を感じ取っても、にこっと笑うだけ。
「大丈夫、ノアが心配することは何も無いよ。ノアはただ私の隣にいてくれれば良いだけだから安心して。ね?」
ね?とゴリ押しされても、安心できる要素は皆無である。
ついつい不満げな声をあげるノアに、アシェルは言葉を重ねる。
「ノア、そんなことを気にするより、一番最初に食べるキノコ料理をどれにするか考えた方が良いんじゃないかい?沢山あるから、いざ食べようと思うとものすごく悩んでしまうかもしれないよ?」
「そんなっ……あ、……そうかも……はい」
咄嗟に否定しようとしたが、アシェルの提案は正論だ。それにアシェルは一度も自分に嘘を言ったことは無い。
加えてキノコへの愛は誰にも負けないと自負しているノアは、そんなこんなで悔しいが口を噤んでしまう。
「そうそう、良い子だね、ノア」
結局、上手に丸め込まれてしまったノア向けに、アシェルは満足そうに笑った。
というアシェルの言葉でノア達は再びメインホールへと向かう。
アシェルは王族だ。彼が歩けば、招待客は何も言わずとも道を空ける。それが宮廷マナーの基礎中の基礎であるのだが、ノアからすれば落ち着かない。つい「あ、どうも」と頭を下げたくなってしまう。
しかしそれをぐっと堪えて、どんなふうにでも取れる微笑みを浮かべて、とにかくドレスの裾だけは踏んづけないように気を付けて歩く。
ただあとちょっとでメインホールというところで、ノアはずっと気になっていたことが我慢できずこそっとアシェルに尋ねてしまった。
「……あのう、殿下。陛下には、どう……その……私のことを紹介するんですか?」
お忘れかもしれないが、過去アシェルはローガンに偽装の婚約証明書を見せつけている。しかも、国王陛下から許可を得たとはっきり嘘までこいているのだ。
それが万が一公衆の面前でバラされた日には、良くて投獄。最悪、もう二度とキノコ料理が食べられなくなってしまうだろう。
なによりアシェルの美しい顔が胴体と離れるなんて、考えただけで背筋が凍る。
……ならこんな直前になって焦る前に対策を考えるなり、裏工作をすべきだとお思いだろう。
言っておくがノアとてそう思っていた。アシェルにもグレンシス先生にも強めに訴えた。だがしかし、二人は口を揃えて「大丈夫、心配ない」を繰り返すのみ。
当然そんな軽い返答では納得できなくて、グレンシスに詰め寄ったノアであるが、「余計なことは考えずに、ノア様はノア様のやるべきことをやりなさい」と一喝されて終わりになった。
悔しくてフレシアに愚痴ったら、キノコの形をしたマドレーヌが出てきた。美味しかった。テンション上がって、ダンスの練習を更に頑張った。
なぁーんて結局甘いものでお茶を濁されたノアであるが、直前になって不安を覚えるのは致し方ない。
しかしアシェルはノアの不安を感じ取っても、にこっと笑うだけ。
「大丈夫、ノアが心配することは何も無いよ。ノアはただ私の隣にいてくれれば良いだけだから安心して。ね?」
ね?とゴリ押しされても、安心できる要素は皆無である。
ついつい不満げな声をあげるノアに、アシェルは言葉を重ねる。
「ノア、そんなことを気にするより、一番最初に食べるキノコ料理をどれにするか考えた方が良いんじゃないかい?沢山あるから、いざ食べようと思うとものすごく悩んでしまうかもしれないよ?」
「そんなっ……あ、……そうかも……はい」
咄嗟に否定しようとしたが、アシェルの提案は正論だ。それにアシェルは一度も自分に嘘を言ったことは無い。
加えてキノコへの愛は誰にも負けないと自負しているノアは、そんなこんなで悔しいが口を噤んでしまう。
「そうそう、良い子だね、ノア」
結局、上手に丸め込まれてしまったノア向けに、アシェルは満足そうに笑った。
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