盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

当麻月菜

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そういうことをされたら、思わず触れてしまいたくなるのは仕方がない

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「─── じゃあフレシア、今日からノアの護衛よろしく頼むね。……ということでノア、そろそろ食べようか」
「あ、はい。そうですね」

 食堂のテーブルに着席して早々、ノアが護衛の件を主張してしまったせいで、未だにアシェルは食事に手を付けることができていない。

 ついさっきまで、料理の数々は食欲をそそる湯気がふんわりしていたのに、今はもう消えてしまっている。

 きちんと聞く姿勢を持ってくれたアシェルに対して嬉しく思いつつも、料理が冷めてしまったことがとても申し訳ない。

 だからノアは、慌ててアシェルに待ったをかける。

 それから首をくきっと横に捻って、護衛となったフレシアに料理を絶妙な温度に戻してもらうようお願いする。

「すんません、フレシアさん。さっそく何ですが、魔法をお願いしても?」

「……」

 対してフレシアは無言で指パッチンをする。

 彼女はグレイアスほどではないが宮廷魔術師。

 そこそこに魔力が高く、無愛想で無表情であるがノアが何を望んでいるかは言われなくても察することができる。

 そんなわけでフレシアが指を鳴らせば、その音が消える前に、目の前の料理に湯気が復活した。もちろんアシェルの分の料理も同じく。

 しかし、変化があったのは料理だけではなかった。なにやら食堂全体が肌寒いのだ。

(んん?夜といえど、雨が降っているわけではないのに、急に冷えるとはこれ如何に?)

 ノアは食事に手を付けず、キョロキョロと辺りを見渡す。

 そうすれば、ここでようやっとフレシアが口を開いた。

「…………殿下が暑さに弱いと伺いましたので、お部屋の温度を下げさせていただきました」
「おおっ、フレシアさんスゴイ!ありがとうございます!!」

 ぱっと笑顔になったノアは、そのままの表情でアシェルに向かって口を開く。

「殿下、良かったですね!」

 自分のペースで、かつ自分の手で料理を口に運ばないと美味しくいただけないと思い込んでいるノアは、無邪気さ全開でアシェルに同意を求めた。

 しかしアシェルはぎこちなく「……あ、ああ」と頷くだけ。

 

 ノアからの”あーん”が大層気に入ったアシェルとしたら、夕食時も仮初の婚約者をなんだかんだと上手く懐柔して己の膝に乗せる気でいた……か、どうかはわからない。

 ただアシェルが蟻が歩く音より小さな声で「ちっ」と小さく舌打ちしたのを、イーサンは聞き逃さなかった。

「……殿下、がっつく男は嫌われますよ」
「黙れ」

 小声で側近を一喝したアシェルの声は、今回もまたノアの元には届かなかった。
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