盲目王子の策略から逃げ切るのは、至難の業かもしれない

当麻月菜

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始まりの約束なんて、所詮はそんなもん

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 ノアは現在、きらびやかなお城のとある一室で、人生の岐路に立っている。

 絶滅危惧種となったはずの魔法使いが絶賛活躍中しているハニスフレグ国の王妃になるか、ならないか─── という選択を前にして。

 ここハニスフレグ国は、独自の魔法文化のおかげで技術水準ならびに生活水準が非常に高く、他国と比べると経済発展が大きく進んだ国である。

 そんな魔法大国の唯一無二の花になれる、かもしれない。

 運よく国中の女性から羨望と嫉妬と憧憬の眼差しを一挙に浴びる王妃になることができたなら、玉の輿どころではない。勝ち組確定。贅沢三昧の左団扇の生活が待っている。

 だけれど、残念ながらノアは、んなもん望んでいない。

 控えめに言って、ナシよりのナシだ。

 そして次期ハニスフレグ国を統治する王太子様も、同じ気持ちのようだった─────

  



「はっ、誰がこんな醜女を妻にするか」

 この世でもっとも汚いものを見るような目付きでそう言い捨てたのは、ハニスフレグ国の王太子であるローガンだった。

(だよねー)

 ノアは思わず頷いてしまった。まったくもって同意である。

 こっちだって、初対面でいきなり自分を醜女呼ばわりする男なんて願い下げだ。

 それに、ノアは醜女とは程遠い容姿である。

 神秘的なブルーグレーのつぶらな瞳に、花びらのような唇。陶器のような滑らかで透き通った肌に頬紅を必要としない薔薇色の頬。

 強いていうならクセの強い錆色の髪だけはからかわれることが多いが、それでもレディッシュブラウンだと言い張れば、個性の一つとして受け入れられる。

 つまり、可愛いのだ。

 現在、やむを得ない事情でボロボロの状態ではあるが、手入れをきちんとすれば、誰もが認める美少女なのである。

 対して、ローガンはどうかというと、ノア基準からすれば十人並みの容姿だった。

 成人しても今なお残るそばかすと太い眉は、彼の底意地の悪さを表しているようだ。

 また短く刈り上げた赤髪は、ゴツいローガンの体型に似合ってはいるが、相手を威嚇するライオンみたいで好きじゃない。銅色のぎょろ目も爬虫類みたいで嫌悪感を持ってしまう。

(古今東西、王子様つーのは美形なのがお約束だと思っていたけれど、例外もあるんだな)

 世界に誇る魔法大国であっても、王太子の容姿を美形に変えることは不可能らしい。とても残念だ。

 もしかしたら、当の本人は魔法など必要ないと思っているのかもしれない。

 それならまさに裸の王さまだ。客観的に自分を見れない男が統治者になるのだから、この国の未来は明るくない。 

 なぁーんてことをノアが頭の中でつらつらと考えていても、ローガンはまったく気づいていない様子で、思い付くまま罵詈雑言を吐いている。

 それらを全身に受けながら、ノアは、なんでこんなことになっちゃったのかなぁと溜め息を落とす。

 そして、わめき散らすローガンから目を逸らし、こうなってしまった経緯を思い出してみた。
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