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一部 夜会なんて出たくありませんが......何か?

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(どっちが本当のリュリュなんだろう?)

 見惚れていたのは一瞬で、佳蓮は猜疑心からじっと目を凝らす。一方リュリュは、佳蓮の強い視線を受けても目を逸らさない。

 見つめ合った二人はしばらく沈黙が続いたが、夜風が吹いたのを機に、リュリュはふっと肩の力を抜いて笑みをこぼした。

「急所蹴り……未来の皇后さまの行動としては、はしたのうございます」
「っ……!」
 
(嘘っ……ど、どうしよう?!見られてた!?)
 
 予想だにしなかったリュリュの発言に、佳蓮は恥ずかしさで顔が赤くなる。

 そんな佳蓮にリュリュは「ですが」と付け加えて、表情を厳しいものに変えた。

「わたくし個人の意見を申し上げますと、まだまだ生温うございます」
「……そう……かな?やりすぎだと思った……けど……?」

 ごにょごにょと言葉尻を濁しながら答えた佳蓮は、ちょっとだけ笑っていた。

 リュリュが自分の気持ちに共感してくれて嬉しかったのだ。リュリュもつられるように笑う。

「いいえ。それとあの後、ヴァーリは自身の子種の事を心配されておりましたが……まぁ、あんなゴミカスのようなやからの遺伝子など残す必要はありません。ま、そのような行為に辿り着けるかどうかも怪しいものですが」

 リュリュが紡ぐ辛辣な言葉に、佳蓮は全て共感した。

「うん。私もそう思うよ、リュリュさん」

 二人の間に言葉にできない連帯感が生まれ、佳蓮はくすりと笑う。この世界に来てから、一番自然な笑みだった。

 でも次の言葉には、共感することはできなかった。

「さて、ここは寒いです。そろそろ戻りましょうカレン様。それに、初めての夜会でお疲れでしょう。お湯の用意も整っておりますし、お部屋も暖かくしております」
「嫌、そこに行きたくない」

 それはそれ、これはこれといった感じで、佳蓮はぷいっと顔を横に向けた。

「いけません。帰りましょう。カレン様」

 ため息混じりにそんなことを言うリュリュの態度に、佳蓮はカッとなる。

「帰るって言わないでっ。私が帰るところはあんな離宮じゃないっ」

 肩にかけられていたストールをつかんで地面に投げ捨てて、佳蓮は立ち上がろうとした。でも、素早い動きで、リュリュに腕を掴まれ抱き込まれてしまった。

 もがく佳蓮を抱き込んだまま、リュリュはこんな言葉を囁いた。

「それでも帰るのです……
「……今は?」

 オウム返しに問うた佳蓮の言葉に、リュリュは力強くうなずいた。

 それから地面に投げ捨てられたストールを拾ったリュリュは、汚れを払い落としてから、もう一度佳蓮の肩に掛けた。
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