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えっ、嘘?! そっちなのかぁ

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 コホン。

 ロッタは一つ咳ばらいをした。

 それは前置きを終えたという合図でもあった。陛下は、それに気付き、こくりと唾を呑む。

「実はわたくしの先祖は─── 占師にございます。そしてわたくしはその血を色濃く継いでおります」
「そうなのか」
「はい。さようにございます」

 んなわけない。

 50代遡ったって自分の先祖に占師などいない。いたら、逆に嫌だ。ちなみにこれもアサギのでっちあげだ。

 だが陛下は、このでっちあげを欠片も疑ってはいない。

 お前大丈夫か?と聞いてみたい。だが、メイドの与太話を信じてしまうほど、陛下は追い詰められているのだろう。

 そんなお方に、嘘を吐くのは心苦しい……と思ったけれど、ロッタは心を鬼にした。

「陛下は王妃から責められて、男性機能が低下したと思われておりますが、これは呪いにございます。しかも、女性からのものです」
「……なんと」

 唖然とする陛下に、ロッタは早口でまくしたてた。

「愛があれば、どれだけ責められようが詰られようが、深く繋がることはできるはずです。なのに、男性機能だけが低下するのは、どこぞの令嬢の一方的な恋慕の情から生まれた呪いに他なりません。そして王妃の行動も、きっとその呪いの影響でしょう」
「なるほど。寝耳に水だが合点がいく。あれほど優しかったマルガリータが豹変したのは、きっと呪いのせいなのだろう。そうとしか思えない」

 神妙に頷く陛下に、ロッタの良心がしくしくと痛んだ。
 
 ただちょっとだけ、見えないものに責任転嫁して自己肯定をする陛下に、どうよ?とも思うが、人間なんてそんなもの。

「わたくしは、陛下も王妃も幸せになって欲しいと思っております」
「ありがとう。ロッタ嬢」
「恐れ多いお言葉を戴き恐縮でございます。…… では、解呪の方法をお伝えします」

 ロッタはすっと背筋を伸ばした。

「陛下は呪いを弾き飛ばす勢いで、荒々しく王妃ただ一人をお抱きください。口汚く罵り、時には縛り上げ……そうですね、さんざん焦らすのも手でございます。もしかしたら、強力な呪いのせいで最初は上手くいかないかもしれません。ですが、何度もチャレンジしてください。ただし、これは孤高の戦いにございます。誰にも言ってはいけません。もちろん王妃にも」
「わかった、やってみよう」

 力強く頷く陛下に、ロッタは慈愛のこもった眼差しを送る。

「王妃の為にも、どうぞ頑張ってください。きっと陛下なら呪いに打ち勝つことができるでしょう」
「そうか。……なぜだろう。君にそう言ってもらえると、やれそうな気がする」

 ロッタの言葉に、国王陛下はふわっと笑った。

 ただ次に、予想外の質問をロッタにした。

「ところでロッタ嬢。荒々しく抱くと言ったが、もう少し具体的に教えてはもらえないか?例えば口汚く罵る台詞や、どんなもので縛れば良いかなど」
「え、へ?……あ、いや……」
「君が妙齢の女性で、特殊な性交を語ることに抵抗があるのはわかっている。だが、君の持つ占師の力で、もっとも効率良く、かつ効果的なやり方を教えてはもらえないだろうか」

 真剣な表情で詰め寄る陛下は、ロッタを困らせたいわけではない。ただ縋りたいだけ。

 同じくロッタも伽の知識など何も持っていないせいで、陛下と同じように誰かに縋りたかった。
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