23 / 24
当て馬になっても、やっぱり彼はカッコいい(のろけ)
2
しおりを挟む
ウェルドの考えた計画はこうだった。
婚約が確定したウェルドは、ヴァネッサを婚前デートに誘う。ただ妹から心変わりした自分を他人に見られるのは恥ずかしいしので、知人のツテで大貴族様のプライベート庭園をチョイス。
そしてデートを始めた直後、何気無さを装ってヴァネッサの前にアランが登場する。
アランは「ここは自分の家のものだからご一緒して良いよね?」と強引に二人の間に入り込む。
その後アランはウェルドがちょっと席を外した隙に、「実は前から好きだった。でも、婚約すると聞いていてもたってもいられなくて、ここに来てしまった。好きだ、あんな奴じゃなく私と結婚してくれ」と、ヴァネッサを口説く。
秒で口説き落ちること間違いないが、百万が一ヴァネッサが「うん」と言わない場合は、最悪、挨拶程度に宝石をちらつかせモノで釣る。
でもって、ヴァネッサが心変わりしたころに頃合いを見計らってウェルドが再登場。アランの口からヴァネッサを妻にすると宣言され、親友を詰るが最終的に二人を祝福してヴァネッサに別れを告げる。
─── 以上である。
言葉にするなら存外楽じゃね?とお思いだろう。
しかし、これは高度な演技力が試される。
まずウェルドは、ヴァネッサに対して始終紳士的に接しないといけない。顔のひきつりすら、許されない。強い精神力を求められる。
また親友に裏切られたといった体を装って、アランを詰らないといけないのだ。この間、彼は「ありがとう」という言葉は絶対に口にしてはいけない。
次にアランだけれど、彼はもっと難しい演技を求められている。なにせ、ヴァネッサを熱烈に口説かないといけないから。思わず口説いている最中に彼が嘔吐しないか心配だ。
しかも感謝されてしかるべき相手から罵倒されるのだ。「え?なんで?」と言いたくなること間違いない。でもその言葉は、計画が終わるまで禁止されている文言のひとつである。
ちなみにティスタの役割は......無い。
でもここに居るのは、理由がある。
まかり間違っても、芝居見物より絶対に面白いから見に来たなどという下世話なものではない。すべてをこの目で見届けないといけないという責任感からである。
それに公爵家嫡男の身を危険に晒すわけにはいかないのだ。有事の際は、自分が盾になろうとティスタは硬く心に決めて、ここにいる。
最後にリスラッドに与えられた役割は、計画が頓挫した際、ヴァネッサを薬で眠らせるための調剤要員である。
ヴァネッサは常日頃からアルコールを過剰摂取しているため、薬一つで眠らすにしてもプロの手が必要になる。友人を仲間外れにしたくないなどという理由から連れてこられたわけではない。
そしてヴァネッサが薬で眠ったあと、即座に4人が再集合して第二の作戦会議を行う予定なのだ。戦略的撤退はするが、目的を達成するまでは何度だってチャレンジする所存である。
─── ゴーン、ゴーン。
時計台の鐘が、空気を震わすように鳴り響く。
今この瞬間から、壮大で恐れ知らずな計画が始まろうとしていた。
婚約が確定したウェルドは、ヴァネッサを婚前デートに誘う。ただ妹から心変わりした自分を他人に見られるのは恥ずかしいしので、知人のツテで大貴族様のプライベート庭園をチョイス。
そしてデートを始めた直後、何気無さを装ってヴァネッサの前にアランが登場する。
アランは「ここは自分の家のものだからご一緒して良いよね?」と強引に二人の間に入り込む。
その後アランはウェルドがちょっと席を外した隙に、「実は前から好きだった。でも、婚約すると聞いていてもたってもいられなくて、ここに来てしまった。好きだ、あんな奴じゃなく私と結婚してくれ」と、ヴァネッサを口説く。
秒で口説き落ちること間違いないが、百万が一ヴァネッサが「うん」と言わない場合は、最悪、挨拶程度に宝石をちらつかせモノで釣る。
でもって、ヴァネッサが心変わりしたころに頃合いを見計らってウェルドが再登場。アランの口からヴァネッサを妻にすると宣言され、親友を詰るが最終的に二人を祝福してヴァネッサに別れを告げる。
─── 以上である。
言葉にするなら存外楽じゃね?とお思いだろう。
しかし、これは高度な演技力が試される。
まずウェルドは、ヴァネッサに対して始終紳士的に接しないといけない。顔のひきつりすら、許されない。強い精神力を求められる。
また親友に裏切られたといった体を装って、アランを詰らないといけないのだ。この間、彼は「ありがとう」という言葉は絶対に口にしてはいけない。
次にアランだけれど、彼はもっと難しい演技を求められている。なにせ、ヴァネッサを熱烈に口説かないといけないから。思わず口説いている最中に彼が嘔吐しないか心配だ。
しかも感謝されてしかるべき相手から罵倒されるのだ。「え?なんで?」と言いたくなること間違いない。でもその言葉は、計画が終わるまで禁止されている文言のひとつである。
ちなみにティスタの役割は......無い。
でもここに居るのは、理由がある。
まかり間違っても、芝居見物より絶対に面白いから見に来たなどという下世話なものではない。すべてをこの目で見届けないといけないという責任感からである。
それに公爵家嫡男の身を危険に晒すわけにはいかないのだ。有事の際は、自分が盾になろうとティスタは硬く心に決めて、ここにいる。
最後にリスラッドに与えられた役割は、計画が頓挫した際、ヴァネッサを薬で眠らせるための調剤要員である。
ヴァネッサは常日頃からアルコールを過剰摂取しているため、薬一つで眠らすにしてもプロの手が必要になる。友人を仲間外れにしたくないなどという理由から連れてこられたわけではない。
そしてヴァネッサが薬で眠ったあと、即座に4人が再集合して第二の作戦会議を行う予定なのだ。戦略的撤退はするが、目的を達成するまでは何度だってチャレンジする所存である。
─── ゴーン、ゴーン。
時計台の鐘が、空気を震わすように鳴り響く。
今この瞬間から、壮大で恐れ知らずな計画が始まろうとしていた。
0
お気に入りに追加
996
あなたにおすすめの小説
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる