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むしろ遅すぎる(婚約者談)

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 言葉にならない感嘆符だけを吐き出したティスタをどう受け止めたのかわからない。

 だが、ウェルドはまくし立てるように続きを語る。

「い、言っておくけれど、俺一人じゃなかったからなっ。イリーグだって他の連中だって部屋にいたんだからなっ。それに俺はヴァネッサ嬢の裸は見ていない!誓って見ていないっ。ヴァネッサ嬢が背中のボタンを外した瞬間に、目を逸らしたし、すぐに察してイリーグが部屋の明かりを消したし、他の連中も目をつぶった......はず。すまない、そこは俺は見ていないから───」
「我が家の姉が、とんだご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした!!」

 これ以上言わないでと言わんばかりに、ティスタは首を振りながら大声を張り上げた。

 そして勢い良くベンチから立ち上がると、ウェルドの前に膝を付き深々と頭を下げた。

「......もう......なんとお詫びしてよいやら......ウェルドさま。どうかお許しください」

 地面に額を擦り付けんばかりに謝罪するティスタを、ウェルドは一先ず抱き上げた。次いでそっと己の膝の上に乗せる。

「ティスタ、あえて聞くけど、どのジャンルで謝罪をしてるんだ?浮気の冤罪か?それとも身内の不始末系か?」
「どっちもです!!」

 ティスタは被せるように答えた。そして、再び「ごめんなさい!」と大きな声で謝罪した。

(最悪だ!!もう、本当に最悪だ!!穴があったら入りたい。いや、穴がないなら自分で掘って埋まりたいっ)
 
 そう心の中で強く思いながら、ティスタは涙目になる。 

 これまでハーピー二世の妹として、かなり恥ずかしい思いを強いられてきた。

 たぶん、この年で死にたいほど恥ずかしいと思った回数と、近隣の皆さまに頭を下げた回数と、姉のせいで白い目で見られた回数をランキングにしたら、全てのジャンルでシュハネード国でトップ3に入るだろう。

 でも、これまでは”そういう星のもとに生まれてしまった”と、自分に言い聞かせてひたすら被害にあった皆々様に頭を下げ、誹謗中傷も甘んじて受けてきた。

 しかし、今回はハイグレード過ぎた。

 己の欲の為に、何の罪もない人間に殺害予告をした挙句、既成事実を作るために妹の婚約者を個室に引っ張り込んで自ら服を脱ぐような人間はもはや姉ではない。

 もう”そういう星のもとに生まれてきたなら、星ごとぶっ壊してやろうか”と本気で思った。

 きっと神様だって許してくれると思ったし、もしダメなどと言ったら神様もろともぶっ壊してやろうと決意した。
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