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温室に掛かる虹の橋(出所は父の吹いたお茶)
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ヴァネッサがアカデミーで人の目など気にせず傍若無人な振る舞いを重ねていれば、父親であるラナウンドの耳に娘の悪行が届くのは当然である。
もちろんラナウンドはその都度、父親としてヴァネッサを呼びつけ、叱りつけた。そしてまともな人間になってもらおうと精一杯人の道を説こうとしたが、そんなものは犬に論語。兎に祭文である。
それどころかヴァネッサは叱られたことに対し憤慨した挙句、更にターゲットを追い詰めた。
もちろんラナウンドは被害にあった方々に金子と詫びの品を持って頭を下げて回った。
そしてこれ以上、なんの罪もない人々にご迷惑をおかけすることはできないと、ヴァネッサの強制退学に踏み切───ろうとしたが、できなかった。
なぜならヴァネッサは、とっくに退学届を受理する立場にいるアカデミーの責任者の弱味を握っていたからだ。
当時アカデミーの責任者であるウェルザンは50代半ばにして、妻に先立たれてしまっていた。
そして女教師の一人が若い頃の亡き妻にそっくりであったため、こっそり写真を一枚だけ盗撮してしまったのだ。
悪気はなかった。若い頃、極貧教師かつ子宝に恵まれすぎていたため、ウェルザンは妻と一緒に写真を取る経済的余裕が無かった。
─── だから一枚だけ。
時折写真を見て、若い頃の妻に想いを馳せたいだけだった。
しかしその写真を自宅ではなく、アカデミーの私室に置いておいたのが運のつきだった。
一体どうやって忍び込んだのかはわからないが、ヴァネッサはウェルザンが隠し持っていた写真を盗み出していた。
そして「盗み撮りしたことを公表してほしくなければ、あとこの写真を返して欲しければ、退学届けにサインをするな」とウェルザンを恐喝したのだ。
大馬鹿なことにウェルザンは写真の裏に、直筆で「愛する妻リュセット」と書いていた。言い逃れはできない状況だった。
そんなわけでヴァネッサは、卒業までアカデミーに居座り続けた。
そしてローウィ家はヴァネッサの悪行の尻拭いの為に、本気で没落しかけてしまった。補習を受けたくないが為にヴァネッサが校舎に火を付け、立て替え費用を全額負担したのは相当痛かった。
おかげでローウィ家は何年も極貧生活を強いられた。こころ優しい領民から干し肉や野菜を差し入れてもらった時は、有り難さと情けなさでナラウンドは毎晩一人隠れて泣いた。
そうしてヴァネッサは無事(?)アカデミーを卒業して華々しく社交界へとデビューした。
しかし、現在でも独身であるということは……推して知るべしだろう。
もちろんラナウンドはその都度、父親としてヴァネッサを呼びつけ、叱りつけた。そしてまともな人間になってもらおうと精一杯人の道を説こうとしたが、そんなものは犬に論語。兎に祭文である。
それどころかヴァネッサは叱られたことに対し憤慨した挙句、更にターゲットを追い詰めた。
もちろんラナウンドは被害にあった方々に金子と詫びの品を持って頭を下げて回った。
そしてこれ以上、なんの罪もない人々にご迷惑をおかけすることはできないと、ヴァネッサの強制退学に踏み切───ろうとしたが、できなかった。
なぜならヴァネッサは、とっくに退学届を受理する立場にいるアカデミーの責任者の弱味を握っていたからだ。
当時アカデミーの責任者であるウェルザンは50代半ばにして、妻に先立たれてしまっていた。
そして女教師の一人が若い頃の亡き妻にそっくりであったため、こっそり写真を一枚だけ盗撮してしまったのだ。
悪気はなかった。若い頃、極貧教師かつ子宝に恵まれすぎていたため、ウェルザンは妻と一緒に写真を取る経済的余裕が無かった。
─── だから一枚だけ。
時折写真を見て、若い頃の妻に想いを馳せたいだけだった。
しかしその写真を自宅ではなく、アカデミーの私室に置いておいたのが運のつきだった。
一体どうやって忍び込んだのかはわからないが、ヴァネッサはウェルザンが隠し持っていた写真を盗み出していた。
そして「盗み撮りしたことを公表してほしくなければ、あとこの写真を返して欲しければ、退学届けにサインをするな」とウェルザンを恐喝したのだ。
大馬鹿なことにウェルザンは写真の裏に、直筆で「愛する妻リュセット」と書いていた。言い逃れはできない状況だった。
そんなわけでヴァネッサは、卒業までアカデミーに居座り続けた。
そしてローウィ家はヴァネッサの悪行の尻拭いの為に、本気で没落しかけてしまった。補習を受けたくないが為にヴァネッサが校舎に火を付け、立て替え費用を全額負担したのは相当痛かった。
おかげでローウィ家は何年も極貧生活を強いられた。こころ優しい領民から干し肉や野菜を差し入れてもらった時は、有り難さと情けなさでナラウンドは毎晩一人隠れて泣いた。
そうしてヴァネッサは無事(?)アカデミーを卒業して華々しく社交界へとデビューした。
しかし、現在でも独身であるということは……推して知るべしだろう。
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