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温室に掛かる虹の橋(出所は父の吹いたお茶)

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 生まれた瞬間は、きっと無垢で純粋であったであろうヴァネッサだったけれど、その後父方の祖母ルコッティナに溺愛されて育ったおかげで、非の打ち所がない悪女に育ってしまった。

 なにせ祖母ルコッティナは、当時の社交界では”シュハネード国のハーピー怪鳥”と呼ばれていたのだから。

 そんな化け物に溺愛され育ったヴァネッサが”シュハネード国のハーピー怪鳥二世”と呼ばれるようになってしまったのは、至極当然のことだった。
 
 といっても、後に”シュハネード国のハーピー怪鳥二世”と呼ばれるようになってしまうヴァネッサであるが、幼少の頃は見た目の愛らしさで”ちょっとおしゃまなお嬢様”と受け止められ、大抵のことは大目に見てもらえた。

 しかし、年月が経つにつれて性格の悪さもぐんぐん成長していき、アカデミーに通う頃には手がつけられない悪女となっていた。

 ヴァネッサは齢15にして、既に匂い立つほどの色気と輝かんばかりの容姿を手に入れていた。
 そして、身を飾ることだけは決して疎かにすることはなかったが、学業は当然のごとくサボりまくりった。

 授業中は爪を磨くか、鏡を見つめて自画自賛するか、もしくは昼寝。その結果、試験は安定の赤点。けれども、追試や補習は無断欠席するのが常連。

 あまりの素行の悪さに、両親が呼び出されたことは数知れない。

 ただ、呼び出しをくらうのは、なにも成績や授業態度だけのことではなかった。

 ヴァネッサは身を飾ることと同じくらい、人を陥れるのが大好きだった。

 ちまたでは”女の子はお砂糖とスパイスと素敵な何かで出来ている”と言われているが、彼女に至っては砂糖は皆無のスパイスましまし。そして”素敵な何か”の中身は、他人の不幸なのだろう。

 というわけで、ヴァネッサは己の欲求を為に、他人がわんさかいるアカデミーに毎日通っていると言っても過言ではないほどに。

 ちなみにヴァネッサが選ぶターゲットは見境が無かった。男女学年問わず気まぐれに選び、ターゲットが廃人同様になるまで徹底的に虐め抜く。

 女性なら二度と自分の姿を鏡に写したくないと思わせるほど容姿を貶けなし、ターゲットの気になる異性を手玉に取り、これみよがしにイチャついてみせる。

 また逆の場合は、身体を武器にしてさんざん貢がせ、最後は用済みと言わんばかりに捨てる。

 思春期の男子は相手が魔物だとわかっていも、あっちの好奇心が止められない。それは成長過程において仕方ない……のかもしれない。

 でも、ヴァネッサの捨て方は、とてもえげつなかった。ヴァネッサの毒牙にかかった男子全員が女性不信になるほどに。

 試験の際に相手の男のポケットにカンニングペーパーをしこませ密告する。
 またはあらかじめ盗んでおいた女生徒の私物を鞄にこっそり入れておいてから、こいつが取ったと騒ぎ立てる。

 ちなみにその女生徒の私物が文房具類ならまだしも、食べかけのサンドイッチや口許を拭ったあとのナプキンといった妙に生々しいもの。

 そうしてヴァネッサはお決まりの台詞「最低!こんな人だとは思わなかった」を吐いて、次のターゲットに移るのが常であった。
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