エリート騎士は、移し身の乙女を甘やかしたい

当麻月菜

文字の大きさ
上 下
90 / 101
第二部 結婚とは……

しおりを挟む
巨人と戦士2人の熾烈しれつな戦い。
破壊エネルギーが侵食する中、バラダザはキャノン砲の照準をザーガ達に合わせる。
すると後ろ側から放たれた破壊光線が右側の砲台を撃ち抜いた。

「クッ!?」

突然のことに驚きを隠せない彼女、放ったのはビーム銃〈ガンバロン〉を構える竜の翼と堕天使の翼を生やした白き戦士だった。

「ザーガ! そしてもう1人のザーガ! いくら相手がデカくても、俺達の勇気には絶対に勝てない! そうだろう!」

「その声は………ゴアドさん………」

仲間の声を聞き力が引き出され、破壊エネルギーの放出をさらに強める。
すると巨人の両腕に亀裂が入り、黒きオイルが噴き出した。

「その拳は確かに強靭な力を持ち、そして何か強大な物を背負っている。だけどそれをなぜ、殺戮さつりくのために使うんだ!」

六問の質問にバラダザは神に逆らった日を改めて思い出す。
堕天使になった日、それは神達を憎んだ日。

「神は不平等、優遇、嫌い。冷遇、嫌い。人間も同じ、だから断罪するの」

少女の発言にヒサは拳をより突き出す。

「そんな身が手な考えで人を殺すのか! 幸せは自分で掴み取るものだ! 誰かに恵んでもらうものじゃない!」

「あなたは幸せだからそう言える。世界には、たくさんの不幸が満ちている。飢え、貧乏、格差、みんな、嫌い」

片言でありながら神への怒りが伝わってくる。
だが人間を全滅させる理由にはならない。
そう感じたザーガの2人は倒す決意を改めて固め、拳をさらに突き上げた。

ゴアドも〈ガンバロン〉を次元の裂け目にしまい、拳に金色こんじきのオーラと黒きオーラを纏わせる。
そして古代の戦士と共に鉄拳を食らわせた。

次第に亀裂が大きくなり、黒きオイルが噴水の様に噴き出す。
ついに肩にまで達したゴーレム・ダークエンジェルは危機を察し、両腕を体から切り離した。

巨人の腕が爆散し、爆風に巻き込まれる。
それでもオリジンザーガは〈ザ・ヒーロー〉に変身。
さらにザーガも破壊エネルギーを右足に集中させ、2人は高く飛び上がる。
しかしこのままでは40キロメートルの巨人の頭上に届かない。

「いくよ! ヒサ君!」

「はい!」

そこで六問は自分自身の両足を踏み台にし、ヒサを限界以上の飛距離まで飛ばす。
巨人の頭上に到達したところで、必殺技〈クラッシャーシュート〉の体勢に入る。

「こんなところで、倒されるわけには、いかない!!」

死に抗うため、バラダザは左側の砲台をザーガに向けミサイルを発射する。

「オリヤァァァァァァァァ!!」

〈クラッシャーシュート〉を繰り出し、ミサイルと激突。
上空で大爆発を食らうが、ザーガの腕輪がそれを吸収し〈バーニングボンバー〉へと姿を変えた。

「「「いっけぇぇぇぇ!!」」」

六問と幕昰、そしてゴアドの声援に応え、機械仕掛けの巨人の頭を貫いた。

風穴から火花が散り、次第に全身からオイルが噴き出す。
そして爆裂していくゴーレム・ダークエンジェル、その被害は尋常ではなかったのだった。


〈ダークリングゾーン〉でその光景を覗いていたゼッツ
とファパーは超級堕天使の2人目がやられたことに危機感を感じていた。

余裕の2文字は浮かんで来ず、次はどちらがやられるかと言う心配がつのるばかりだ。

「ファパーさん、このままでは私達もやられてしまいます。打開策を考えなければ」

「確かに。授かれし戦士達や人間達も強敵揃い。下界している部下が全滅するのも時間の問題か」

思考を巡らせる超級堕天使、そこへ下界していたファパーの部下が何やらアーマーを持って帰還して来た。

「ファパー様」

「なんだその鎧は? どうやら人間の戦士達の物に見えるが?」

睨みを効かせる上司に、「これはですねぇ」と説明し始める。

「忌々しい人間が我々を倒すために作り出したZDズーディーと言う鎧で、これをゼッツ様に解析してもらい、新たな武装の開発を頼みに来ました」

「なるほど、これは素晴らしい物を回収してくれました。さっそくですがこれを持って着いてきてくれますか? 私にはとても重すぎるので」

「もちろんでございます」 

ZDズーディーを運んでいく部下の背中を見つめるファパーは腕組みをすると、帰って来るのを待った。


大爆発に巻き込まれた幕昰、目を開けると白き戦士がお姫様抱っこされていた。

「あんたゴアドだろう? なんでそんな堕天使みたいな姿をしてるんだ?」

「質問はあとだ。ザーガの2人を探すぞ」

地面に降ろされ足をつける彼はゴアドの発言に疑問が浮かぶ。
ザーガの2人を探す?
つまり六問とヒサがこの場にいないのが読み取れた。

「待ってくれ。六問とヒサはどこにもいないのか?」

その質問に足を止めるゴアド、その複眼には焦りを感じた。

街の様子を確認すると、それは酷い物だった。

まるでミサイルでも落ちて来たかの様に道路は抉れ、ビルは崩壊してしまっている。

「そうだ。あなたを救出してからしばらく待ったが2人は来なかった。何かあったんじゃないかと心配して探そうとしていたところでお目覚めと言うわけだな」

「なるほど、あの2人ならすぐ帰って来そうなんだが。よしゴアド、俺も六問達を探す。早く見つけないといけない気がするんだよ」

幕昰のいやな予感、ゴアドは「分かってる」と一言言ってバイクを次元の裂け目から召喚する。

「1人で動くのは危険だ。一緒にザーガ達を探そう」

「あぁ、運転頼むぜ」

こうして2人の仲間を探し出すため走り出した。

果たしてヒサと六問はどこへ行ってしまったのか。
そして堕天使の新たな刺客とは。
今後の展開に乞うご期待。
しおりを挟む
感想 143

あなたにおすすめの小説

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…

satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

処理中です...