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第一部 王女様のお輿入れ
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触れられたのが手袋越しで良かったと、ティアは思った。
素手で触られていたら、自分の心臓は止まっていただろう。
まったく、人をおちょくるのにも程がある。
グレンシスは、顔だけは良い。悔しいけれど、本当に良い。
その容姿を持ってすれば、これまで女性に不自由したことなんてなかったのだろう。
だから、異性に触れることなんて、何ら抵抗がないのだ。……こんちくしょう。
こっちの気持ちなんて、何も知らないくせに。
なのに、あんなことをするなんて。このバカタレ!
ティアは心の中でグレンシスに悪態をついた。それこそ全力で。
そうしなければ、変に嬉しくなってしまう。
もしかして嫌われていないのかもと、期待を持ってしまう。
だから、全力で喜びに満ち溢れそうな気持ちを振り払う。
なにせ今は、一刻も争う状況なのだ。それに喜んだ後の絶望ほど辛いものはない。
そんなこんな理由で、ティアはすぐに両手でぱんっと頬を強くはたく。
力加減を間違えて、かなりヒリヒリしたけれど、そのぶん頭は冷静になった。
そして、自分が今すべきことを考える。
───まずは、着替えだ。
ティアは部屋の隅に置いてある自分の衣装ケースを開け、豪快に中を探る。
確か1着だけ袖を通していない服があるはずだ。
「あった」
勢いよく引き出したそれは、黒に近いグレーと濃紺のストライプ柄のシンプルなワンピース。
ただ裏地は黒のレースをふんだんに使っているので、良く見ればかなりお値が張る一品。
誰が用意したのかわからないけれど、ちょっと高級すぎて今まで着れなかったのが幸いした。
それに、この配色なら、闇夜に紛れるのはうってつけ。
「アジェーリアさま、申し訳ありません。私の服を着てください」
ショールを脱ぎ、寝間着のボタンを外していたアジェーリアは、目を丸くする。
「そちのか?……じゃが、それは……万が一のことがあったら……」
そこでアジェーリアは、一旦言葉を止めた。
けれど、すぐに口を開く。
ただ、アジェーリアの視線は、今までティアに向けた中で、一番鋭いもの。
「───おぬしが、身代わりになるということか?」
誤魔化しは許されない厳しい口調に、ティアは賢くも、頷くことも否定することもしなかった。
そして、とても狡い言葉を口にする。
「王女様は、恐ろしい目にもあってはいけないし、ましてや傷など負ってはいけないんです」
ティアはきっぱりとそう言い切った。
本音は、違うけれど。
好きな人とうんちゃらかんちゃらと説得したところで、アジェーリアは絶対に頷いてくれないことをティアは知っている。
今は王女という責任感を肩に乗せる方が手っ取り早いのだ。
そんな気持ちでいるティアの本心を探ろうと、アジェーリアはティアをじっと見つめる。
待つこと3秒。
折れたのは、アジェーリアの方だった。
「……わかった。そちの服を貸せ」
嫌々感を前面に押し出しながらも、アジェーリアはティアから服を受け取った。
反対にティアは、アジェーリアのドレスを拝借する。
もちろん、明日の為に用意したものではない。
これまで着たものの中で一番地味なもの。初日にアジェーリアが着ていたブラウングリーン色のドレスに袖を通す。
それから歩きやすさを重視して、最も踵の低い靴をアジェーリアに差し出す。
そしてティアも、同じ踵の高さの靴を拝借した。
「……ふむ。着心地は悪くないが、ここが苦しいのぅ」
身支度を整え終えたアジェーリアは、胸のあたりに手を置きぼやく。
ちなみに、そのワンピースはティアが着れば悲しい程ぴったりのサイズ。
それを見たティアは、すぐさま反撃した。
「……私の方は、ここが少し、大きいです」
「黙れ」
腰のあたりをつまんで愚痴ったティアに、アジェーリアはむっとした表情を隠さない。
その顔は、あからさまに憤慨している。かなり怖いものだった。
言いだしたのは、そっちなのに。それに、そこまで怒らなくても……。
そんなことを思ったけれど、ティアはぐっとこらえて、最後の仕上げをするために自分の鞄の中身を探る。
衣装ケースとは別に肌身離さず持ち歩いていた小さな鞄の中には、メゾン・プレザンから送られてきた長旅に備えてのティアの身の回り品が入っている。
あかぎれに利くクリームとか、常飲している茶葉とか、読みかけの本とか。
そのほとんどが、この旅で使うことはなかったけれど、やっと役に立つ時が来た。
荷物の中には、振りかけるだけで髪色を変えることができる不思議な粉と、長年愛用しているフード付きのマントも入っていたのだ。
その2つは多分、ティアがオルドレイ国の血を引く人間だと気付かれた時の事を思ってのことだろう。
使い道は違うけれど、ティアはこれを入れてくれたマダムローズに感謝して、髪色を変える粉が入った缶を手に取る。
次いで蓋を外すと、それを髪にぱっぱと振りかける。
気分はオーブンに入れられる直前の鶏のような気持ちだ。
粉の香りがハーブのではなかったのが幸いだ。ただ、かなり臭い。
つんとした刺激臭に顔をしかめながらも、ティアは自前の手鏡で、粉をなじませてから髪の色を確認する。
鏡に映る自分の髪色はさすがに黒髪ではなかったけれど、かつてのブラウンローズより少し暗い色になっていた。
これにフード付きのマントを着たなら、ごまかせるかもしれない。いや、きっといける。
ティアはそう自分に言い聞かせる。
そして、ティアは超が付くほどの高級なドレスの上に、みすぼらしい焦げ茶色のマントを羽織ってから、アジェーリアの手を取り外へ出た。
王女を見送るために。
城塞の庭は、とても静かだった。しんとし過ぎて耳鳴りがしそうなほど。
まるで、反逆者がこちらに向かっていることなど、露ほども知らないかのような雰囲気だ。
それは、王女がここを離れることを気付かれてはいけないから、わざとそうしているのだと、ティアはすぐに気付く。
けれど、各所に配置された城塞の兵士達は、グレンシスと同じように略式の甲冑姿である。
この場がいつ争いの場になってもおかしくはないことを物語っていた。
ティアはこくりと唾を呑む。
決意は固いけれど、恐怖心はどうやっても消すことはできない。
でも、軽口を叩けるほど距離が近くなったこの少女の恋を応援したいという気持ちは、こんな恐怖心なんかでは折れることはない。
「お待たせしました」
馬車の前でティア達を待っていたグレンシスを視界に収めた途端、ティアはそう言葉を掛ける。
すぐにこちらを向いたグレンシスは、はっと息をのんだ。
次いで、他の騎士達、数人もグレイシスと同じような顔をした。
それを見たティアは、王女と自分を見間違えたのかもしれない。いや、間違いなくそうだと思った。そしてこれは、とても幸先の良いことだと。
そして、きっと王女の顔などロクに見たことのない連中なら、まんまと騙されてくれるだろうと確信を持つ。
けれど、それこそが勘違いであった。
グレンシスと数名の騎士達は、同時に3年前のとある出来事を思い出していただけ。
まかり間違っても、ティアとアジェーリアを見間違えたわけではない。
ただ、それを確認しあう余裕はない。
そして、ティアは勘違いをしたまま、妙な自信を持ってしまった。
アジェーリアが馬車に乗り込むのを見届けると、ティアはグレンシスに向かって自信満々に声をかけた。
「騎士様、私はここに残ります」
「は?」
「私が王女様の身代わりになってここに残ります。そうすれば、時間をかせぐことがきっとでき───」
「四の五の煩い。行くぞ」
グレンシスは、ティアの両脇に手を入れ持ち上げると、そのまま馬車に放り込んだ。
つまり、ティアの訴えを力づくで却下したのだ。
そんな殺生なっ。
ありったけの勇気をかき集めて決心したのに。
そう言おうと思った。胸倉の一つも掴んでやりたい気分だった。
けれど、ティアが口を開く前に、グレイシスは鋭く言い放つ。
「かなり揺れるから、ちゃんと座っておけ。舌を噛むぞっ 」
まるでこれ以上、聞いていられるかと言わんばかりの態度でドアが派手な音を立てて閉じられた。
その勢いでティアが、馬車の座席に着席……というよりは、尻もちをついた途端、馬のいななきと共に勢いよく馬車は走り出した。
グレイシスの忠告は、本当にその通りだった。
道中、どれだけ御者が気を使って馬車を御していたのかわかるほどに。
窓枠を掴んでなんとかずり落ちないでいるティアとは真逆で、アジェーリアは揺れる車内でも取り乱すこともなく、無言で窓に映る景色をじっと見つめている。
けれど、やはり気丈にしていても、不安なものは不安なのだろう。
窓から差し込む月明かりに照らされたアジェーリアの顔は痛々しい程に青白い。
当たり前だ。
王族だって人間だ。感情は、ある。
「アジェーリアさま、ご安心ください。王女さまは傷一つ負うことなく、お輿入れできます」
ティアだから断言することができるその言葉に、アジェーリアは困ったように少し眉を上げた。
「そなた、いつから預言者になったのじゃ?」
「いえ、違います。そんな胡散臭いものになった覚えはありません」
至極真面目に答えれば、アジェーリアはぷっと吹き出した。
笑われたという表現の方が正しいけれど、とにかくアジェーリアから笑みを引き出せたことに、ティアはほっとする。
そして、アジェーリアは不安げな瞳を茶目っ気のあるものに変え、ティアに問うた。
「では何故、この状況でそのようなことを言えるのじゃ?」
ティアはその問いに答える代わりに、ほんの少しだけ笑った。
でも、答えることはしない。
なぜなら、口に出せば、異国の言葉でいう『フラグが立つ』ということになってしまうから。
素手で触られていたら、自分の心臓は止まっていただろう。
まったく、人をおちょくるのにも程がある。
グレンシスは、顔だけは良い。悔しいけれど、本当に良い。
その容姿を持ってすれば、これまで女性に不自由したことなんてなかったのだろう。
だから、異性に触れることなんて、何ら抵抗がないのだ。……こんちくしょう。
こっちの気持ちなんて、何も知らないくせに。
なのに、あんなことをするなんて。このバカタレ!
ティアは心の中でグレンシスに悪態をついた。それこそ全力で。
そうしなければ、変に嬉しくなってしまう。
もしかして嫌われていないのかもと、期待を持ってしまう。
だから、全力で喜びに満ち溢れそうな気持ちを振り払う。
なにせ今は、一刻も争う状況なのだ。それに喜んだ後の絶望ほど辛いものはない。
そんなこんな理由で、ティアはすぐに両手でぱんっと頬を強くはたく。
力加減を間違えて、かなりヒリヒリしたけれど、そのぶん頭は冷静になった。
そして、自分が今すべきことを考える。
───まずは、着替えだ。
ティアは部屋の隅に置いてある自分の衣装ケースを開け、豪快に中を探る。
確か1着だけ袖を通していない服があるはずだ。
「あった」
勢いよく引き出したそれは、黒に近いグレーと濃紺のストライプ柄のシンプルなワンピース。
ただ裏地は黒のレースをふんだんに使っているので、良く見ればかなりお値が張る一品。
誰が用意したのかわからないけれど、ちょっと高級すぎて今まで着れなかったのが幸いした。
それに、この配色なら、闇夜に紛れるのはうってつけ。
「アジェーリアさま、申し訳ありません。私の服を着てください」
ショールを脱ぎ、寝間着のボタンを外していたアジェーリアは、目を丸くする。
「そちのか?……じゃが、それは……万が一のことがあったら……」
そこでアジェーリアは、一旦言葉を止めた。
けれど、すぐに口を開く。
ただ、アジェーリアの視線は、今までティアに向けた中で、一番鋭いもの。
「───おぬしが、身代わりになるということか?」
誤魔化しは許されない厳しい口調に、ティアは賢くも、頷くことも否定することもしなかった。
そして、とても狡い言葉を口にする。
「王女様は、恐ろしい目にもあってはいけないし、ましてや傷など負ってはいけないんです」
ティアはきっぱりとそう言い切った。
本音は、違うけれど。
好きな人とうんちゃらかんちゃらと説得したところで、アジェーリアは絶対に頷いてくれないことをティアは知っている。
今は王女という責任感を肩に乗せる方が手っ取り早いのだ。
そんな気持ちでいるティアの本心を探ろうと、アジェーリアはティアをじっと見つめる。
待つこと3秒。
折れたのは、アジェーリアの方だった。
「……わかった。そちの服を貸せ」
嫌々感を前面に押し出しながらも、アジェーリアはティアから服を受け取った。
反対にティアは、アジェーリアのドレスを拝借する。
もちろん、明日の為に用意したものではない。
これまで着たものの中で一番地味なもの。初日にアジェーリアが着ていたブラウングリーン色のドレスに袖を通す。
それから歩きやすさを重視して、最も踵の低い靴をアジェーリアに差し出す。
そしてティアも、同じ踵の高さの靴を拝借した。
「……ふむ。着心地は悪くないが、ここが苦しいのぅ」
身支度を整え終えたアジェーリアは、胸のあたりに手を置きぼやく。
ちなみに、そのワンピースはティアが着れば悲しい程ぴったりのサイズ。
それを見たティアは、すぐさま反撃した。
「……私の方は、ここが少し、大きいです」
「黙れ」
腰のあたりをつまんで愚痴ったティアに、アジェーリアはむっとした表情を隠さない。
その顔は、あからさまに憤慨している。かなり怖いものだった。
言いだしたのは、そっちなのに。それに、そこまで怒らなくても……。
そんなことを思ったけれど、ティアはぐっとこらえて、最後の仕上げをするために自分の鞄の中身を探る。
衣装ケースとは別に肌身離さず持ち歩いていた小さな鞄の中には、メゾン・プレザンから送られてきた長旅に備えてのティアの身の回り品が入っている。
あかぎれに利くクリームとか、常飲している茶葉とか、読みかけの本とか。
そのほとんどが、この旅で使うことはなかったけれど、やっと役に立つ時が来た。
荷物の中には、振りかけるだけで髪色を変えることができる不思議な粉と、長年愛用しているフード付きのマントも入っていたのだ。
その2つは多分、ティアがオルドレイ国の血を引く人間だと気付かれた時の事を思ってのことだろう。
使い道は違うけれど、ティアはこれを入れてくれたマダムローズに感謝して、髪色を変える粉が入った缶を手に取る。
次いで蓋を外すと、それを髪にぱっぱと振りかける。
気分はオーブンに入れられる直前の鶏のような気持ちだ。
粉の香りがハーブのではなかったのが幸いだ。ただ、かなり臭い。
つんとした刺激臭に顔をしかめながらも、ティアは自前の手鏡で、粉をなじませてから髪の色を確認する。
鏡に映る自分の髪色はさすがに黒髪ではなかったけれど、かつてのブラウンローズより少し暗い色になっていた。
これにフード付きのマントを着たなら、ごまかせるかもしれない。いや、きっといける。
ティアはそう自分に言い聞かせる。
そして、ティアは超が付くほどの高級なドレスの上に、みすぼらしい焦げ茶色のマントを羽織ってから、アジェーリアの手を取り外へ出た。
王女を見送るために。
城塞の庭は、とても静かだった。しんとし過ぎて耳鳴りがしそうなほど。
まるで、反逆者がこちらに向かっていることなど、露ほども知らないかのような雰囲気だ。
それは、王女がここを離れることを気付かれてはいけないから、わざとそうしているのだと、ティアはすぐに気付く。
けれど、各所に配置された城塞の兵士達は、グレンシスと同じように略式の甲冑姿である。
この場がいつ争いの場になってもおかしくはないことを物語っていた。
ティアはこくりと唾を呑む。
決意は固いけれど、恐怖心はどうやっても消すことはできない。
でも、軽口を叩けるほど距離が近くなったこの少女の恋を応援したいという気持ちは、こんな恐怖心なんかでは折れることはない。
「お待たせしました」
馬車の前でティア達を待っていたグレンシスを視界に収めた途端、ティアはそう言葉を掛ける。
すぐにこちらを向いたグレンシスは、はっと息をのんだ。
次いで、他の騎士達、数人もグレイシスと同じような顔をした。
それを見たティアは、王女と自分を見間違えたのかもしれない。いや、間違いなくそうだと思った。そしてこれは、とても幸先の良いことだと。
そして、きっと王女の顔などロクに見たことのない連中なら、まんまと騙されてくれるだろうと確信を持つ。
けれど、それこそが勘違いであった。
グレンシスと数名の騎士達は、同時に3年前のとある出来事を思い出していただけ。
まかり間違っても、ティアとアジェーリアを見間違えたわけではない。
ただ、それを確認しあう余裕はない。
そして、ティアは勘違いをしたまま、妙な自信を持ってしまった。
アジェーリアが馬車に乗り込むのを見届けると、ティアはグレンシスに向かって自信満々に声をかけた。
「騎士様、私はここに残ります」
「は?」
「私が王女様の身代わりになってここに残ります。そうすれば、時間をかせぐことがきっとでき───」
「四の五の煩い。行くぞ」
グレンシスは、ティアの両脇に手を入れ持ち上げると、そのまま馬車に放り込んだ。
つまり、ティアの訴えを力づくで却下したのだ。
そんな殺生なっ。
ありったけの勇気をかき集めて決心したのに。
そう言おうと思った。胸倉の一つも掴んでやりたい気分だった。
けれど、ティアが口を開く前に、グレイシスは鋭く言い放つ。
「かなり揺れるから、ちゃんと座っておけ。舌を噛むぞっ 」
まるでこれ以上、聞いていられるかと言わんばかりの態度でドアが派手な音を立てて閉じられた。
その勢いでティアが、馬車の座席に着席……というよりは、尻もちをついた途端、馬のいななきと共に勢いよく馬車は走り出した。
グレイシスの忠告は、本当にその通りだった。
道中、どれだけ御者が気を使って馬車を御していたのかわかるほどに。
窓枠を掴んでなんとかずり落ちないでいるティアとは真逆で、アジェーリアは揺れる車内でも取り乱すこともなく、無言で窓に映る景色をじっと見つめている。
けれど、やはり気丈にしていても、不安なものは不安なのだろう。
窓から差し込む月明かりに照らされたアジェーリアの顔は痛々しい程に青白い。
当たり前だ。
王族だって人間だ。感情は、ある。
「アジェーリアさま、ご安心ください。王女さまは傷一つ負うことなく、お輿入れできます」
ティアだから断言することができるその言葉に、アジェーリアは困ったように少し眉を上げた。
「そなた、いつから預言者になったのじゃ?」
「いえ、違います。そんな胡散臭いものになった覚えはありません」
至極真面目に答えれば、アジェーリアはぷっと吹き出した。
笑われたという表現の方が正しいけれど、とにかくアジェーリアから笑みを引き出せたことに、ティアはほっとする。
そして、アジェーリアは不安げな瞳を茶目っ気のあるものに変え、ティアに問うた。
「では何故、この状況でそのようなことを言えるのじゃ?」
ティアはその問いに答える代わりに、ほんの少しだけ笑った。
でも、答えることはしない。
なぜなら、口に出せば、異国の言葉でいう『フラグが立つ』ということになってしまうから。
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