26 / 101
第一部 王女様のお輿入れ
8
しおりを挟む
ティアとアジェーリアは、夜通し恋バナをする予定ではあったけれど、結局、寝入ってしまった。
二人の最後の記憶はほぼ一緒で、アジェーリアが強引にティアの腕を引き、長椅子からベッドに移動した途端、そのままプツリと意識が途切れてしまったのだ。
長旅は、見えないうちに二人の体力を根こそぎ奪ってしまっていたようだった。
翌朝、清々しい鳥の鳴き声と共に目を覚ましたティアは、隣で眠るアジェーリアを見て自分のしでかしてしまったことに青ざめた。
反対に、すぐに目を覚ましたアジェーリアは、からからと笑うだけ。
そして、恋バナの続きは移動の馬車へと持ち越された。
もちろん国境まで危険な状態が続くことは、朝一番でグレンシスから聞いていた。
だから、いつでも騎士達の指示に従うつもりでいた。
けれど、それはそれ。これはこれ。
カシャンと馬車の扉が閉まって、密室になった瞬間から、選手交代と言わんばかりに、アジェーリアは騎士達には内緒にしておきたい自身のソレを語り始めた。
足場が悪くガタゴトと揺れる車内の中、最初はぽつりぽつりと、小声で。
けれど次第に、アジェーリアの声は大きくなり、内容も明け透けとなってしまい、ティアはそこまで聞いて良いものなのかと困惑してしまう。
けれど結局、自分がアジェーリアに自白を促したわけではないという結論に達し、きちんと最後ま耳を傾けることにした。
そしてアジェーリアがようやっと語り終えるころ、太陽は西に傾き、馬車はトラブルに見舞われることなく無事に目的地に到着した。
アジェーリアがウィリスタリア国で最後に泊まる宿は、国境に一番近い城塞だった。
そこは先の戦争で、最前線の要塞となったところでもある。
山頂に建てられたその外壁や厳つい門には未だに戦時中の傷跡を多く残している。
だが、オルドレイ国に鉄壁と言わしめた程の堅固な建物であり、美しさは皆無であれど、一晩王族を護るものとしては最も適した建物でもあった。
さて、本日もティアとアジェーリアは同室である。
そんな今宵一晩二人が過ごす部屋の壁は、漆喰が剥き出しのままで、とても寒々しい。
ちなみに標高が高い位置にあるため、初夏といえども部屋の中は少々肌寒い。
けれど、それを補うかのように、部屋には鮮やかな色彩で溢れている。
それはさながら、開店時間直前のメゾンプレザンの身支度部屋のようだった。
そして現在、ティア達は獣も眠りに付く夜中だというのに、明日に向けての女子による女子の為だけの特別緊急会議を開いていたりする。
「ティア、右と左。ぬしなら、どちらを選ぶ?」
「……そうですね。左側の青紫色のドレスが良いかと思います」
ベッドに投げ出された2着のドレスを見て、ティアは素直な感想を述べた。
それはどちらも触る事すらおこがましいと思えるほど、趣向を凝らしたものだった。
向かって右側がアジェーリアの瞳の色に合わせた藍色に、黒のレースと同じ色の造花がふんだんに使われたスッキリとしたデザインのドレス。
そして左側のもう1着は、青紫色の生地に銀糸の刺繍が施された裾が広がるデザインのドレス。
どちらも嫁ぐアジェーリアの為だけに作られた、国の威信をかけた一品であることは間違いない。
ただ前者はシックで華やかさには欠けるし、後者は動きやすさには欠ける。
オルドレイ国との国境に到着するのは、明日の夕方。
それまで、まだ危険が伴うことを考えれば、前者のドレスを選ぶべきなのだろう。
けれど、昨日、アジェーリアの2回目の告白を聞いてしまった以上、その甘酸っぱい気持ちを無視することはできない。
なのでティアは、よりアジェーリアが美しく見える後者のドレスを選ぶことにした。
「んー……やはり、そうじゃな」
アジェーリアも同じ気持ちだったのだろう。
少し考える素振りはみせたものの、すぐにティアに同意した。
そして、ぱんっと軽く手を叩いて、ティアに決定の合図を送る。
ティアは心得たと言わんばかりに、選ばれたドレスをそぉっとハンガーにかけた。
これでやっと、明日の衣裳が決定した。
とはいえ、淑女の身支度はこれで終わりではない。
「あとは、髪型か……。これはまた難題じゃ」
アジェーリアは腕を組んで渋面を作った。
けれどその頬は、少し温度の高い湯を浴びた後で、ほんのりと赤い。
もしかしたら、明日に向けて何かしらの興奮を覚えているからなのかもしれない。
そしてアジェーリアは、鏡台……と呼ぶにはあまりに粗末な、文机に鏡を置いただけのそこに近づき、自身の髪を持ち上げたり捻ったりと忙しい。
その隙にティアは、お蔵入りになるドレスを丁寧に畳んでスーツケースにしまう。
次いで、掛布が乱れてしまったベッドを整える。
これで何とかアジェーリアの寝床は確保することができた。
この旅で何一つ役に立っていないティアだったけれど、この手のことに関しては得意分野である。
ティアは、やっと役に立っていることを実感して、ほっとする。
本来の目的とは、遠くかけ離れているけれど。
「こういう時、黒髪は辛い……。どんな髪型にしても、暗い印象を与えてしまう」
片付ける手を止めずに次の作業は何だろうと考えていれば、背後から悲痛な声が聞こえてきて、ティアは思わず振り返った。
国宝級美しさを持つアジェーリアは、どうやらそれに加えて可愛さも求めているようだ。
でも、それはワガママとは言わない。
ある一種の症状に見舞われた女性は総じてそうなるものなのだから、仕方がない。
それは身分に関係なく現れるもの。
そしてティアは、そういう症状に見舞われた娼婦のお姐さま達を幾たびも見てきたので、対処も心得ている。
「明るい桃色のコサージュがあります。良ければ一度、それを使って髪型を試してみましょうか?」
「ああ、頼む」
食い気味に頷いたアジェーリアにティアは背を向け、今しがた提案した髪飾りをこれまたそぉっと鏡台へと運ぶ。
ちなみにティアの寝場所となる長椅子には、現在、漆黒の髪に花を添えるために用意された髪飾りの数々が並べられている。そして胸元と耳を飾る宝石類も。
その床には、一列に並べられた靴、靴、靴。
ティアも1ヶ月の長旅となるので、ある程度の着替えは用意してもらっている。
誰が用意したかといえば、自分ではない。他の誰かが。
「───……わらわは、冷たい印象を与える。いっそ、前髪を切ってみようかのぅ」
ついでに靴も選んでもらおうと、ティアがいくつか見繕って持ち上げた途端、後ろ髪と同じ長さの前髪を少し持ち上げて、アジェーリアはぽつりと呟いた。
「……え?それはちょっと……」
誰が切るというのだ!?
その言葉を飲み込みながらティアは、ぎょっと目を剥く。
ついでにうっかり、靴を落としてしまいそうになった。
金糸に銀糸。それにパールやレース。細部まで美しい装飾がされているそれは、落としてしまうことを前提として作られてはいない。
しかも、有り合わせの布を敷いただけのこの硬い床では、落下と同時に破損すること間違いない。
ティアは手のひらから、ぬるりと嫌な汗がにじんだ。
壊したところでアジェーリアは弁償しろとは言わないだろうけれど、やはり輿入れ道具を傷つけるのは忍びない。
そしてこれ以上、ヒヤリとする思いはご免こうむりたいティアは、思いつくままにアジェーリアに提案する。
「では前髪は横に流してみてはいかがでしょうか?それだけでも印象が変わると思います」
「ふむ。任せた」
アジェーリアは素直に頷いて、櫛を手にしたティアに身を任せている。
「……ティアのように、柔らかい髪質であれば、わらわも少しは可愛げがあるように見えるのじゃろうか……」
アジェーリアの口調は、王族特有のものなのに、その内容はとてもいじらしい。
そして不安を覚えるのは、とある人を想ってのこと。
アジェーリアは和睦の為に、オルドレイ国に嫁ぐ。
愛する国の為に身を捧げる気持ちは、誰よりも強い。
けれど、誰にも言えない秘密があった。
それは、嫁ぎ先の相手に、恋をしている……かもしれないということ。
王族の結婚は、契約であり政治的な要素が強い。
だからアジェーリアは、婚約者であるオルドレイ国の王子に恋心を持ってはいけないと、自分に言い聞かせてきた。
不必要に相手に感情を求め、その結果、夫婦関係にひびが入るのを恐れていた。
何より、かつて敵国であった王子に恋心を持つのは、国民への裏切りであると思っていた。
そんな発想があることをティアは知らなかった。
自分より年下の少女がそんな大きな規模で物事を考えていることにも驚いた。
でもティアは、やっぱり小難しいことは考えられなくて、ただただアジェーリアの幸せしか考えられなかった。
「身分を弁えず申していいのなら、アジェーリアさまは、充分可愛らしいです。それに……私は見た目はどうかわかりませぬが、中身は可愛くはありませんので……」
なんとかアジェーリアを元気づけようと思って口を開いてみたものの、最後の言葉は消え入りそうに小さくなってしまった。
そんなティアを鏡を越しに見て、アジェーリアはくすりと笑う。
「ふふっ。そうじゃろうか。存外、そういうティアを見て、逆に意識をしているのかもしれんぞ」
含みのあるアジェーリアの言葉に、ティアが瞬きをした瞬間───。
「失礼しますっ」
声と、ノックと、扉を開ける音は、ほぼ同時だった。
そしてそんな不作法なマネをして飛び込んで来たのはグレンシス。
彼は今まで見た中で一番険しい表情を浮かべていた。
二人の最後の記憶はほぼ一緒で、アジェーリアが強引にティアの腕を引き、長椅子からベッドに移動した途端、そのままプツリと意識が途切れてしまったのだ。
長旅は、見えないうちに二人の体力を根こそぎ奪ってしまっていたようだった。
翌朝、清々しい鳥の鳴き声と共に目を覚ましたティアは、隣で眠るアジェーリアを見て自分のしでかしてしまったことに青ざめた。
反対に、すぐに目を覚ましたアジェーリアは、からからと笑うだけ。
そして、恋バナの続きは移動の馬車へと持ち越された。
もちろん国境まで危険な状態が続くことは、朝一番でグレンシスから聞いていた。
だから、いつでも騎士達の指示に従うつもりでいた。
けれど、それはそれ。これはこれ。
カシャンと馬車の扉が閉まって、密室になった瞬間から、選手交代と言わんばかりに、アジェーリアは騎士達には内緒にしておきたい自身のソレを語り始めた。
足場が悪くガタゴトと揺れる車内の中、最初はぽつりぽつりと、小声で。
けれど次第に、アジェーリアの声は大きくなり、内容も明け透けとなってしまい、ティアはそこまで聞いて良いものなのかと困惑してしまう。
けれど結局、自分がアジェーリアに自白を促したわけではないという結論に達し、きちんと最後ま耳を傾けることにした。
そしてアジェーリアがようやっと語り終えるころ、太陽は西に傾き、馬車はトラブルに見舞われることなく無事に目的地に到着した。
アジェーリアがウィリスタリア国で最後に泊まる宿は、国境に一番近い城塞だった。
そこは先の戦争で、最前線の要塞となったところでもある。
山頂に建てられたその外壁や厳つい門には未だに戦時中の傷跡を多く残している。
だが、オルドレイ国に鉄壁と言わしめた程の堅固な建物であり、美しさは皆無であれど、一晩王族を護るものとしては最も適した建物でもあった。
さて、本日もティアとアジェーリアは同室である。
そんな今宵一晩二人が過ごす部屋の壁は、漆喰が剥き出しのままで、とても寒々しい。
ちなみに標高が高い位置にあるため、初夏といえども部屋の中は少々肌寒い。
けれど、それを補うかのように、部屋には鮮やかな色彩で溢れている。
それはさながら、開店時間直前のメゾンプレザンの身支度部屋のようだった。
そして現在、ティア達は獣も眠りに付く夜中だというのに、明日に向けての女子による女子の為だけの特別緊急会議を開いていたりする。
「ティア、右と左。ぬしなら、どちらを選ぶ?」
「……そうですね。左側の青紫色のドレスが良いかと思います」
ベッドに投げ出された2着のドレスを見て、ティアは素直な感想を述べた。
それはどちらも触る事すらおこがましいと思えるほど、趣向を凝らしたものだった。
向かって右側がアジェーリアの瞳の色に合わせた藍色に、黒のレースと同じ色の造花がふんだんに使われたスッキリとしたデザインのドレス。
そして左側のもう1着は、青紫色の生地に銀糸の刺繍が施された裾が広がるデザインのドレス。
どちらも嫁ぐアジェーリアの為だけに作られた、国の威信をかけた一品であることは間違いない。
ただ前者はシックで華やかさには欠けるし、後者は動きやすさには欠ける。
オルドレイ国との国境に到着するのは、明日の夕方。
それまで、まだ危険が伴うことを考えれば、前者のドレスを選ぶべきなのだろう。
けれど、昨日、アジェーリアの2回目の告白を聞いてしまった以上、その甘酸っぱい気持ちを無視することはできない。
なのでティアは、よりアジェーリアが美しく見える後者のドレスを選ぶことにした。
「んー……やはり、そうじゃな」
アジェーリアも同じ気持ちだったのだろう。
少し考える素振りはみせたものの、すぐにティアに同意した。
そして、ぱんっと軽く手を叩いて、ティアに決定の合図を送る。
ティアは心得たと言わんばかりに、選ばれたドレスをそぉっとハンガーにかけた。
これでやっと、明日の衣裳が決定した。
とはいえ、淑女の身支度はこれで終わりではない。
「あとは、髪型か……。これはまた難題じゃ」
アジェーリアは腕を組んで渋面を作った。
けれどその頬は、少し温度の高い湯を浴びた後で、ほんのりと赤い。
もしかしたら、明日に向けて何かしらの興奮を覚えているからなのかもしれない。
そしてアジェーリアは、鏡台……と呼ぶにはあまりに粗末な、文机に鏡を置いただけのそこに近づき、自身の髪を持ち上げたり捻ったりと忙しい。
その隙にティアは、お蔵入りになるドレスを丁寧に畳んでスーツケースにしまう。
次いで、掛布が乱れてしまったベッドを整える。
これで何とかアジェーリアの寝床は確保することができた。
この旅で何一つ役に立っていないティアだったけれど、この手のことに関しては得意分野である。
ティアは、やっと役に立っていることを実感して、ほっとする。
本来の目的とは、遠くかけ離れているけれど。
「こういう時、黒髪は辛い……。どんな髪型にしても、暗い印象を与えてしまう」
片付ける手を止めずに次の作業は何だろうと考えていれば、背後から悲痛な声が聞こえてきて、ティアは思わず振り返った。
国宝級美しさを持つアジェーリアは、どうやらそれに加えて可愛さも求めているようだ。
でも、それはワガママとは言わない。
ある一種の症状に見舞われた女性は総じてそうなるものなのだから、仕方がない。
それは身分に関係なく現れるもの。
そしてティアは、そういう症状に見舞われた娼婦のお姐さま達を幾たびも見てきたので、対処も心得ている。
「明るい桃色のコサージュがあります。良ければ一度、それを使って髪型を試してみましょうか?」
「ああ、頼む」
食い気味に頷いたアジェーリアにティアは背を向け、今しがた提案した髪飾りをこれまたそぉっと鏡台へと運ぶ。
ちなみにティアの寝場所となる長椅子には、現在、漆黒の髪に花を添えるために用意された髪飾りの数々が並べられている。そして胸元と耳を飾る宝石類も。
その床には、一列に並べられた靴、靴、靴。
ティアも1ヶ月の長旅となるので、ある程度の着替えは用意してもらっている。
誰が用意したかといえば、自分ではない。他の誰かが。
「───……わらわは、冷たい印象を与える。いっそ、前髪を切ってみようかのぅ」
ついでに靴も選んでもらおうと、ティアがいくつか見繕って持ち上げた途端、後ろ髪と同じ長さの前髪を少し持ち上げて、アジェーリアはぽつりと呟いた。
「……え?それはちょっと……」
誰が切るというのだ!?
その言葉を飲み込みながらティアは、ぎょっと目を剥く。
ついでにうっかり、靴を落としてしまいそうになった。
金糸に銀糸。それにパールやレース。細部まで美しい装飾がされているそれは、落としてしまうことを前提として作られてはいない。
しかも、有り合わせの布を敷いただけのこの硬い床では、落下と同時に破損すること間違いない。
ティアは手のひらから、ぬるりと嫌な汗がにじんだ。
壊したところでアジェーリアは弁償しろとは言わないだろうけれど、やはり輿入れ道具を傷つけるのは忍びない。
そしてこれ以上、ヒヤリとする思いはご免こうむりたいティアは、思いつくままにアジェーリアに提案する。
「では前髪は横に流してみてはいかがでしょうか?それだけでも印象が変わると思います」
「ふむ。任せた」
アジェーリアは素直に頷いて、櫛を手にしたティアに身を任せている。
「……ティアのように、柔らかい髪質であれば、わらわも少しは可愛げがあるように見えるのじゃろうか……」
アジェーリアの口調は、王族特有のものなのに、その内容はとてもいじらしい。
そして不安を覚えるのは、とある人を想ってのこと。
アジェーリアは和睦の為に、オルドレイ国に嫁ぐ。
愛する国の為に身を捧げる気持ちは、誰よりも強い。
けれど、誰にも言えない秘密があった。
それは、嫁ぎ先の相手に、恋をしている……かもしれないということ。
王族の結婚は、契約であり政治的な要素が強い。
だからアジェーリアは、婚約者であるオルドレイ国の王子に恋心を持ってはいけないと、自分に言い聞かせてきた。
不必要に相手に感情を求め、その結果、夫婦関係にひびが入るのを恐れていた。
何より、かつて敵国であった王子に恋心を持つのは、国民への裏切りであると思っていた。
そんな発想があることをティアは知らなかった。
自分より年下の少女がそんな大きな規模で物事を考えていることにも驚いた。
でもティアは、やっぱり小難しいことは考えられなくて、ただただアジェーリアの幸せしか考えられなかった。
「身分を弁えず申していいのなら、アジェーリアさまは、充分可愛らしいです。それに……私は見た目はどうかわかりませぬが、中身は可愛くはありませんので……」
なんとかアジェーリアを元気づけようと思って口を開いてみたものの、最後の言葉は消え入りそうに小さくなってしまった。
そんなティアを鏡を越しに見て、アジェーリアはくすりと笑う。
「ふふっ。そうじゃろうか。存外、そういうティアを見て、逆に意識をしているのかもしれんぞ」
含みのあるアジェーリアの言葉に、ティアが瞬きをした瞬間───。
「失礼しますっ」
声と、ノックと、扉を開ける音は、ほぼ同時だった。
そしてそんな不作法なマネをして飛び込んで来たのはグレンシス。
彼は今まで見た中で一番険しい表情を浮かべていた。
2
お気に入りに追加
3,047
あなたにおすすめの小説
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。


異世界に行った、そのあとで。
神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

【短編版】虐げられていた次期公爵の四歳児の契約母になります!~幼子を幸せにしたいのに、未来の旦那様である王太子が私を溺愛してきます~
八重
恋愛
伯爵令嬢フローラは、公爵令息ディーターの婚約者。
しかし、そんな日々の裏で心を痛めていることが一つあった。
それはディーターの異母弟、四歳のルイトが兄に虐げられていること。
幼い彼を救いたいと思った彼女は、「ある計画」の準備を進めることにする。
それは、ルイトを救い出すための唯一の方法──。
そんな時、フローラはディーターから突然婚約破棄される。
婚約破棄宣言を受けた彼女は「今しかない」と計画を実行した。
彼女の計画、それは自らが代理母となること。
だが、この代理母には国との間で結ばれた「ある契約」が存在して……。
こうして始まったフローラの代理母としての生活。
しかし、ルイトの無邪気な笑顔と可愛さが、フローラの苦労を温かい喜びに変えていく。
さらに、見目麗しいながら策士として有名な第一王子ヴィルが、フローラに興味を持ち始めて……。
ほのぼの心温まる、子育て溺愛ストーリーです。
※ヒロインが序盤くじけがちな部分ありますが、それをバネに強くなります
※「小説家になろう」が先行公開で、長編版は現在「小説家になろう」のみ公開予定です

急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…
satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる