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第二部 再開と再会の、秋
◇
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夕陽が落ちた初秋の薄明の風は、肌にさらりとして気持ちがいい。
グレンシスはゆったりと目を閉じて、虫の奏でる秋の音に耳を澄ます。
鈴虫の可憐な旋律に重なるように馬車が止まる気配がして、次いで扉が空き、大柄な人物がこちらに向かって歩いてくる足音がする。
目を開ければ薄暗くなった視界に、ほんの少し色づき始めたハナミズキの葉が映った。この花はロハン邸の庭にもある。が、庭のその葉は、まだ青々としている。
気の早いことだ。何もそう焦って、枯れていかなくても。
グレンシスはそんなことを思い、ひっそりと苦笑した。まるで売れない詩人みたいだと。
次いで、肺が空っぽになるまで深いため息を吐く。
そうすれば否が応でも、このハナミズキの葉が青々としていた頃の夢のような時間を思い出しまう。
自分の屋敷でティアと過ごした10日間のことを。
とても楽しかった。休暇など名ばかりで、いつも仕事を持ち込んでばかりいたのに、ティアと過ごした10日間はすっかり仕事を忘れていた。
そして、ティアの事ばかり見ていた。視界に入らない時でも、いつも考えていた。
可愛くて仕方がなかった。とことん甘やかしたいと思った。ティアの希望なら何でも聞き入れたかった。
もちろんティアは療養のために屋敷にいることはわかっている。
けれど、ティアの怪我が一秒でも長引けばいいとすら思うようになっていた。
――ティア、俺にだけワガママを言ってくれ。俺を困らせてくれ。そして早く俺を、好きになってくれ。どうか求めてくれ。
グレンシスは、いつもそう心の中でティアに語り掛けていた。
他人だと思わないでほしかった。遠慮なんかしないで欲しかった。そして、自分のことを恋人だと………いや、夫だと思ってほしかった。
なぜならグレイシスには、ティアを受け止める覚悟はできていたのだから。
これから先、どんなことがあっても、自分ならティアを護り抜けると思っていた。
ティアがロハン邸に滞在していた時、既にグレンシスはバザロフから聞いていたのだ。
出生のことも、不思議な術が移し身の術と呼ばれていることも。そして、まだティアが知らないこともまでも。
その全てをひっくるめて、グレンシスはティアと共に人生を歩みたかった。
けれど、ティアはそんなグレンシスの気持ちには、みじんも気付いてなかった。それがとても、寂しかった。
焦れた思いで求婚をすれば、けんもほろろに振られてしまう始末。
そしてティアは、取ってつけたような言い訳を口にして、最後にワガママを言った。メゾン・プレザンに戻りたいと。
グレンシスが嫌と言えるわけがない。
なぜなら、グレンシスはティアに恋をしているのではなく、愛してしまっていたのだから。
誰に教えてもらったわけでもないのに、グレンシスは、ちゃんとわかっていた。
恋は求めるもので、愛は与えるものだと。
本音を言えば、いっそティアへ向かう気持ちが、愛だと気付かなければ良かったと思った。ずっと恋だけをしていたかった。
だけど、しかたない。気付いてしまったこの気持ちを、偽ることはできないのだから。
あの時、もっともっと無様に跪いて希っても、ティアのワガママを無視して、無理矢理抱いて既成事実を作ったとしても、グレンシス自身が納得することはなかった。
グレンシスはただ、ティアを幸せにしたかっただけなのだから。
だから、グレンシスは鳥籠を開けた。ティアを自由にした。それは間違いではなかったと言い切れる。
それでもやはり辛い。時計を戻して出会い方をやり直しても、きっと同じことを繰り返してしまうとわかっていても。それでも、想いは消えるどころか募るばかり。
とどのつまり、グレンシスはティアに会いたいのだ。
会いたくて、会いたくて、たまらないのだ。
でも、会いに行く理由が見つからない。どの面下げて会いに行けるというのか。
「───グレン、気まずいか?何なら儂一人で行って来ても良いんだぞ」
「ご冗談を。私も行きます」
上官であるバザロフが隣に並んだ途端、ズバリとそんなことを聞かれてしまった。すぐさまグレンシスは噛みつくように首を横に振った。
だがバザロフは、どうだかと呟いて低く笑う。少し意地が悪い。
とはいえバザロフは、この騎士のせいでマダムローズとの賭けに負けたのだ。
だからこれくらいのおちょくりは、許容範囲。そして、この程度の苦言を呈するのも、許容範囲だろう。
「口だけは達者のようだな。だかな、お前が身を呈してティアを守ると言ったから、休暇中、ティアをお前の屋敷に滞在することを許したというのに……。この腑抜けがっ」
「すべては、自分の不徳の致すところです」
グレンシスは部下が早く説教が終わって欲しい時に良く口にする言葉を淡々と紡いだ。
だが、バザロフの言葉は止まらない。
「まったく……こんなことになるなら、儂のほうからティアにお前の所にもう少し滞在しろと言って留めておけば良かったな。お前の言うことが聞けなくても、儂の言うことならもう少し素直にきいたのかもしれんしな」
バザロフはそう言って、溜息を付きながらグレンシスの手元に視線を移した。
グレンシスが手にしているのは、国王陛下の封蝋がされている書簡。
二人はこの内容を知っている。とてもとても面倒くさいことが書かれていることを。
そして今更だけれど、ここはメゾン・プレザンの裏庭に続く歩道。二人は本日、マダムローズにこの書簡を届ける為に赴いたということなのだ。
ただ、浮足立つ気持ちはない。
どちらかというと、足が重い。ついでに言えば、上司に始末書を提出しに行く程度に、気も重い。
「さすがに、そう言われると耳が痛いですね。でも、あの時はそうするしかなかったのです」
言い訳半分、事実半分を混ぜてグレンシスはそう呟くと、肩を落として項垂れた。
求婚した後、ティアが身を引くために紡いだ言葉は、まるで自身を傷つけているかのようにグレンシスは聞こえた。
無理して笑うその顔を、グレンシスは見ていられなかった。泣かせたくなかった。悲しい顔をして欲しくなかった。心からの笑みを浮かべて欲しかった。
だから、グレンシスはティアから手を離した。ティアを籠の中の鳥にはしたくなかったから。
ただ、それはしばらくの間。という前置きがつくけれど。
グレンシスはちゃんと自覚している。自分が執念深く、諦めが悪い性格だということに。
それに、ティアは自分のことを好きだと言ってくれたのだから、諦める理由なんてないのだ。
だからティアが戻ってきたいと思ってもらえるように、努力する。
ただもし、ティアがどうにもならないことで困っているなら、その時は、もう強引にでも奪い去る。彼女が何を言っても。
「ならお前の元から去ったティアは、もうとっくに、ふっきれているだろうなぁ」
バザロフの嫌がらせ、再び。
けれど、グレンシスはそんなことを言われても、無言でさらりと流す。
この一ヶ月で、グレンシスはこらえ性の無い性格を克服した……わけではなく、それに似た言葉を嫌と言うほど耳にしてきたから免疫が付いてしまったのだ。
『お二人の愛の花壇を作りたかった』という庭師のボヤキを立ち聞きし、リネン室の前を通れば『ご主人様とティアさまの子供を見たかった』と、メイドの嘆きを聞いてしまい。挙句の果てには、執事からの露骨な溜息。
ちなみに一番辛かったのは、マーサからの延々と続く、小言だった。
グレンシスに与えられた休暇は、一か月。
つまり、ティアと別れた後、毎日、使用人達から無言と有言と遠回しな責めを受け続けていたのである。
自業自得とはいえ、はっきり言ってこの日々は地獄であった。
だからグレンシスにとって、このバザロフの嫌味など可愛いもの。秋の虫の音に限りなく近い。
「だから、どうしたというのです。私は、一度振られたくらいで、想いを断ち切るような弱虫ではありません」
「結構。騎士とはそうあるべきだな」
グレンシスは拳一つ分大きいバザロフに視線を移し、きっぱりと言い切った。
納得した様子で一度はバザロフは頷いてみた。が、
「名前もわからぬ娘を3年も想っていられたのだから、なぁ?」
すぐに意地悪く笑うバザロフに、グレイシスは口に苦虫を100匹ほど詰め込んだ顔をした。
「何十年も片想いをされているかたからの言葉は、骨身に染みます」
「………」
しみじみと呟くグレンシスに、今度はバザロフが口に苦虫を50匹ほど詰め込んだ顔をした。
だが場の空気を変えるように、二人は同時に咳ばらいを一つする。
「……では、参ろうか」
「はい」
グレンシスは素直に頷いて正面に顔を向けた。
そして黙々と歩けばメゾン・プレザンの裏口が視界に入る。
が、ここであり得ない言葉を二人は耳にしてしまう。
『ティア、僕と結婚してくれ』
───ぐしゃ。
グレンシスが手にしていた書簡が、無残に握り潰されてしまった。
この国で最たる存在の直筆の書面を、グレンシスは握り潰してしまったのだ。この時点で、グレンシスは首を撥ねられても不思議ではない。
けれど、当の本人はそれどころじゃなかった。
「あんのクソガキ」
「小僧が、舐めたことをしてくれるわ」
二人は同時に唸り声をあげた。
ちなみにバザロフは、かつて剣鬼と称された時の500倍は強い殺気を放っている。
そのオーラにビビったのか、秋の虫の音が、突如止まった。
「ティアにいきなり求婚だと?まった儂に断りもなく勝手なことをしおって。こういうのは、まず、儂の適正試験を受け、それをパスしてから、文通から交際を始めるのが筋だというものをっ」
すぐさま憤怒の表情になるバザロフだけれど、隣にいたはずのグレンシスは、既に裏口へと駆け出していた。
グレンシスはゆったりと目を閉じて、虫の奏でる秋の音に耳を澄ます。
鈴虫の可憐な旋律に重なるように馬車が止まる気配がして、次いで扉が空き、大柄な人物がこちらに向かって歩いてくる足音がする。
目を開ければ薄暗くなった視界に、ほんの少し色づき始めたハナミズキの葉が映った。この花はロハン邸の庭にもある。が、庭のその葉は、まだ青々としている。
気の早いことだ。何もそう焦って、枯れていかなくても。
グレンシスはそんなことを思い、ひっそりと苦笑した。まるで売れない詩人みたいだと。
次いで、肺が空っぽになるまで深いため息を吐く。
そうすれば否が応でも、このハナミズキの葉が青々としていた頃の夢のような時間を思い出しまう。
自分の屋敷でティアと過ごした10日間のことを。
とても楽しかった。休暇など名ばかりで、いつも仕事を持ち込んでばかりいたのに、ティアと過ごした10日間はすっかり仕事を忘れていた。
そして、ティアの事ばかり見ていた。視界に入らない時でも、いつも考えていた。
可愛くて仕方がなかった。とことん甘やかしたいと思った。ティアの希望なら何でも聞き入れたかった。
もちろんティアは療養のために屋敷にいることはわかっている。
けれど、ティアの怪我が一秒でも長引けばいいとすら思うようになっていた。
――ティア、俺にだけワガママを言ってくれ。俺を困らせてくれ。そして早く俺を、好きになってくれ。どうか求めてくれ。
グレンシスは、いつもそう心の中でティアに語り掛けていた。
他人だと思わないでほしかった。遠慮なんかしないで欲しかった。そして、自分のことを恋人だと………いや、夫だと思ってほしかった。
なぜならグレイシスには、ティアを受け止める覚悟はできていたのだから。
これから先、どんなことがあっても、自分ならティアを護り抜けると思っていた。
ティアがロハン邸に滞在していた時、既にグレンシスはバザロフから聞いていたのだ。
出生のことも、不思議な術が移し身の術と呼ばれていることも。そして、まだティアが知らないこともまでも。
その全てをひっくるめて、グレンシスはティアと共に人生を歩みたかった。
けれど、ティアはそんなグレンシスの気持ちには、みじんも気付いてなかった。それがとても、寂しかった。
焦れた思いで求婚をすれば、けんもほろろに振られてしまう始末。
そしてティアは、取ってつけたような言い訳を口にして、最後にワガママを言った。メゾン・プレザンに戻りたいと。
グレンシスが嫌と言えるわけがない。
なぜなら、グレンシスはティアに恋をしているのではなく、愛してしまっていたのだから。
誰に教えてもらったわけでもないのに、グレンシスは、ちゃんとわかっていた。
恋は求めるもので、愛は与えるものだと。
本音を言えば、いっそティアへ向かう気持ちが、愛だと気付かなければ良かったと思った。ずっと恋だけをしていたかった。
だけど、しかたない。気付いてしまったこの気持ちを、偽ることはできないのだから。
あの時、もっともっと無様に跪いて希っても、ティアのワガママを無視して、無理矢理抱いて既成事実を作ったとしても、グレンシス自身が納得することはなかった。
グレンシスはただ、ティアを幸せにしたかっただけなのだから。
だから、グレンシスは鳥籠を開けた。ティアを自由にした。それは間違いではなかったと言い切れる。
それでもやはり辛い。時計を戻して出会い方をやり直しても、きっと同じことを繰り返してしまうとわかっていても。それでも、想いは消えるどころか募るばかり。
とどのつまり、グレンシスはティアに会いたいのだ。
会いたくて、会いたくて、たまらないのだ。
でも、会いに行く理由が見つからない。どの面下げて会いに行けるというのか。
「───グレン、気まずいか?何なら儂一人で行って来ても良いんだぞ」
「ご冗談を。私も行きます」
上官であるバザロフが隣に並んだ途端、ズバリとそんなことを聞かれてしまった。すぐさまグレンシスは噛みつくように首を横に振った。
だがバザロフは、どうだかと呟いて低く笑う。少し意地が悪い。
とはいえバザロフは、この騎士のせいでマダムローズとの賭けに負けたのだ。
だからこれくらいのおちょくりは、許容範囲。そして、この程度の苦言を呈するのも、許容範囲だろう。
「口だけは達者のようだな。だかな、お前が身を呈してティアを守ると言ったから、休暇中、ティアをお前の屋敷に滞在することを許したというのに……。この腑抜けがっ」
「すべては、自分の不徳の致すところです」
グレンシスは部下が早く説教が終わって欲しい時に良く口にする言葉を淡々と紡いだ。
だが、バザロフの言葉は止まらない。
「まったく……こんなことになるなら、儂のほうからティアにお前の所にもう少し滞在しろと言って留めておけば良かったな。お前の言うことが聞けなくても、儂の言うことならもう少し素直にきいたのかもしれんしな」
バザロフはそう言って、溜息を付きながらグレンシスの手元に視線を移した。
グレンシスが手にしているのは、国王陛下の封蝋がされている書簡。
二人はこの内容を知っている。とてもとても面倒くさいことが書かれていることを。
そして今更だけれど、ここはメゾン・プレザンの裏庭に続く歩道。二人は本日、マダムローズにこの書簡を届ける為に赴いたということなのだ。
ただ、浮足立つ気持ちはない。
どちらかというと、足が重い。ついでに言えば、上司に始末書を提出しに行く程度に、気も重い。
「さすがに、そう言われると耳が痛いですね。でも、あの時はそうするしかなかったのです」
言い訳半分、事実半分を混ぜてグレンシスはそう呟くと、肩を落として項垂れた。
求婚した後、ティアが身を引くために紡いだ言葉は、まるで自身を傷つけているかのようにグレンシスは聞こえた。
無理して笑うその顔を、グレンシスは見ていられなかった。泣かせたくなかった。悲しい顔をして欲しくなかった。心からの笑みを浮かべて欲しかった。
だから、グレンシスはティアから手を離した。ティアを籠の中の鳥にはしたくなかったから。
ただ、それはしばらくの間。という前置きがつくけれど。
グレンシスはちゃんと自覚している。自分が執念深く、諦めが悪い性格だということに。
それに、ティアは自分のことを好きだと言ってくれたのだから、諦める理由なんてないのだ。
だからティアが戻ってきたいと思ってもらえるように、努力する。
ただもし、ティアがどうにもならないことで困っているなら、その時は、もう強引にでも奪い去る。彼女が何を言っても。
「ならお前の元から去ったティアは、もうとっくに、ふっきれているだろうなぁ」
バザロフの嫌がらせ、再び。
けれど、グレンシスはそんなことを言われても、無言でさらりと流す。
この一ヶ月で、グレンシスはこらえ性の無い性格を克服した……わけではなく、それに似た言葉を嫌と言うほど耳にしてきたから免疫が付いてしまったのだ。
『お二人の愛の花壇を作りたかった』という庭師のボヤキを立ち聞きし、リネン室の前を通れば『ご主人様とティアさまの子供を見たかった』と、メイドの嘆きを聞いてしまい。挙句の果てには、執事からの露骨な溜息。
ちなみに一番辛かったのは、マーサからの延々と続く、小言だった。
グレンシスに与えられた休暇は、一か月。
つまり、ティアと別れた後、毎日、使用人達から無言と有言と遠回しな責めを受け続けていたのである。
自業自得とはいえ、はっきり言ってこの日々は地獄であった。
だからグレンシスにとって、このバザロフの嫌味など可愛いもの。秋の虫の音に限りなく近い。
「だから、どうしたというのです。私は、一度振られたくらいで、想いを断ち切るような弱虫ではありません」
「結構。騎士とはそうあるべきだな」
グレンシスは拳一つ分大きいバザロフに視線を移し、きっぱりと言い切った。
納得した様子で一度はバザロフは頷いてみた。が、
「名前もわからぬ娘を3年も想っていられたのだから、なぁ?」
すぐに意地悪く笑うバザロフに、グレイシスは口に苦虫を100匹ほど詰め込んだ顔をした。
「何十年も片想いをされているかたからの言葉は、骨身に染みます」
「………」
しみじみと呟くグレンシスに、今度はバザロフが口に苦虫を50匹ほど詰め込んだ顔をした。
だが場の空気を変えるように、二人は同時に咳ばらいを一つする。
「……では、参ろうか」
「はい」
グレンシスは素直に頷いて正面に顔を向けた。
そして黙々と歩けばメゾン・プレザンの裏口が視界に入る。
が、ここであり得ない言葉を二人は耳にしてしまう。
『ティア、僕と結婚してくれ』
───ぐしゃ。
グレンシスが手にしていた書簡が、無残に握り潰されてしまった。
この国で最たる存在の直筆の書面を、グレンシスは握り潰してしまったのだ。この時点で、グレンシスは首を撥ねられても不思議ではない。
けれど、当の本人はそれどころじゃなかった。
「あんのクソガキ」
「小僧が、舐めたことをしてくれるわ」
二人は同時に唸り声をあげた。
ちなみにバザロフは、かつて剣鬼と称された時の500倍は強い殺気を放っている。
そのオーラにビビったのか、秋の虫の音が、突如止まった。
「ティアにいきなり求婚だと?まった儂に断りもなく勝手なことをしおって。こういうのは、まず、儂の適正試験を受け、それをパスしてから、文通から交際を始めるのが筋だというものをっ」
すぐさま憤怒の表情になるバザロフだけれど、隣にいたはずのグレンシスは、既に裏口へと駆け出していた。
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