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6.他称ロリコン軍人は、毒舌少女の願いを叶える
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「......ごめんなさい」
性懲りもなく謝罪の言葉を紡いだベルに、レンブラントの眉が跳ね上がった。
「今度は何を謝ってる?」
「あなたがそんな気持ちでいてくれたのに、私、ちっとも気づけなかったから......ごめんなさい」
「ああ、それは謝るべきだ。でもって、これを期に俺がいつもあんたのことを一番に考えていることを頭の隅に置いておくと約束してくれ」
「......心の真ん中じゃなくても、良いんですか?」
「......そ、それが許されるなら、どうか、ど真ん中に......頼む」
苛ついていたレンブラントの表情は、ベルとやり取りをするうちに、ほとほと困り果てたそれに変わった。
どうあってもレンブラントは、ベルには勝てないと、この時改めて実感した。
対してベルは無自覚のまま、レンブラントを更に困らす発言をする。
「でもってですね、これを期にこれまでの……あなたが知っている全てのことを教えていただけないでしょうか?」
ベルはじっとレンブラントを見つめながら訴えた。
熱のせいで潤んだ瞳が、まるで甘える子猫のようで、レンブラントはうっと低く呻く。
「話すことは話す。......だが、あんたは熱がある。こんな状態で聞いたって頭に入らないだろ?とりあえず寝ろ」
「薬が効いてきましたので、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
「さっそく心配っていうワードを使いこなしてきたか。あんたは本当に利口だな」
「はぐらかさないでください。レインブラントさん」
「......っ」
なんとか睡眠をとってもらおうとしたレンブラントだったが、まさかの攻撃に思わず息を飲む。
「......おい、名前を混ぜるな。他の男の名を呼ばれているような気がして不愉快だ」
「あら、そうですか。あなたのお名前を省略しただけです。あと、きちんと話してくれるまで、私はあなたのことをレンブラントさんではなく、レインブラントさんとお呼びさせていただきます」
出会って早々、ベルは名前を盾に虐待を受けた過去を話さざるを得なかったことをしっかり覚えている。
そして、かつて名前で脅した側も、しっかり覚えている。無論、後悔している。
なぜなら、今、膝に乗せている彼女は、猛毒を吐く人種だから。
「あ、そうそうレインブラントさん、毛布ありがとうございました。気が利きますね、レインブラントさん。ところでレインブラントさん、喉は乾いていませんか?そこ......レインブラントさんの目の前にある」
「わかった......ベル。あんたの勝ちだ」
よくもまあ好いた男に向かって、こんな地味な嫌がらせができるもんだとレンブラントは溜め息を吐く。
だが、惚れた弱味だ。レンブラントは嫌々ながらも、ベルの望みを叶えることにした。
性懲りもなく謝罪の言葉を紡いだベルに、レンブラントの眉が跳ね上がった。
「今度は何を謝ってる?」
「あなたがそんな気持ちでいてくれたのに、私、ちっとも気づけなかったから......ごめんなさい」
「ああ、それは謝るべきだ。でもって、これを期に俺がいつもあんたのことを一番に考えていることを頭の隅に置いておくと約束してくれ」
「......心の真ん中じゃなくても、良いんですか?」
「......そ、それが許されるなら、どうか、ど真ん中に......頼む」
苛ついていたレンブラントの表情は、ベルとやり取りをするうちに、ほとほと困り果てたそれに変わった。
どうあってもレンブラントは、ベルには勝てないと、この時改めて実感した。
対してベルは無自覚のまま、レンブラントを更に困らす発言をする。
「でもってですね、これを期にこれまでの……あなたが知っている全てのことを教えていただけないでしょうか?」
ベルはじっとレンブラントを見つめながら訴えた。
熱のせいで潤んだ瞳が、まるで甘える子猫のようで、レンブラントはうっと低く呻く。
「話すことは話す。......だが、あんたは熱がある。こんな状態で聞いたって頭に入らないだろ?とりあえず寝ろ」
「薬が効いてきましたので、大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
「さっそく心配っていうワードを使いこなしてきたか。あんたは本当に利口だな」
「はぐらかさないでください。レインブラントさん」
「......っ」
なんとか睡眠をとってもらおうとしたレンブラントだったが、まさかの攻撃に思わず息を飲む。
「......おい、名前を混ぜるな。他の男の名を呼ばれているような気がして不愉快だ」
「あら、そうですか。あなたのお名前を省略しただけです。あと、きちんと話してくれるまで、私はあなたのことをレンブラントさんではなく、レインブラントさんとお呼びさせていただきます」
出会って早々、ベルは名前を盾に虐待を受けた過去を話さざるを得なかったことをしっかり覚えている。
そして、かつて名前で脅した側も、しっかり覚えている。無論、後悔している。
なぜなら、今、膝に乗せている彼女は、猛毒を吐く人種だから。
「あ、そうそうレインブラントさん、毛布ありがとうございました。気が利きますね、レインブラントさん。ところでレインブラントさん、喉は乾いていませんか?そこ......レインブラントさんの目の前にある」
「わかった......ベル。あんたの勝ちだ」
よくもまあ好いた男に向かって、こんな地味な嫌がらせができるもんだとレンブラントは溜め息を吐く。
だが、惚れた弱味だ。レンブラントは嫌々ながらも、ベルの望みを叶えることにした。
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