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5.【私は】【俺は】─── この時をずっと待っていた
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レンブラントの挑発に、フロリーナは乗ってこなかった。いや、正確に言うならばガドバルドの「連れていけ」という一声で、退場せざるを得なかった。
フロリーナ達が姿を消した後、自警団はまるでホウキでゴミを掃くかのように、倒れている手練れ達も倉庫外へと連れ出した。
そうして、この倉庫にはベルとレンブラント。それからガドバルドと、レンブラントの部下が残るのみ。
ちなみに満身創痍のパウェルスは、倉庫の入口で人質に取られていた孫娘と涙の再会をしている。
ただ孫娘は、怪我だらけのパウェルスを見て「こんなの、おじいちゃんじゃない!!」と大泣きしている。
……違う意味での涙の再会となってしまったが、すぐに本人だと気付けるはずなので、そこまで問題視しなくても大丈夫だろう。
ベルは弱り切った表情を浮かべるパウェルスをちらりと見る。見た目は打撲や擦り傷があり痛々しいが、孫娘を抱き上げあやしている彼を見て目を細めた。
しかしそれは一瞬だけ。すぐに表情を改めると、すぐ横にいるガドバルドと向き合う。
「では、私も連行願います」
フロリーナの前で領印を偽装したことを追及しなかったのは、きっと彼なりの優しさだったのだろう。
レンブラントは自分が恐れているようなことにはならないと言った。だがしかし、罪は罪だ。これ以上、ケルス領の件で他領民を巻き込むことはできない。
そんな気持ちでぺこりと頭を下げたベルに、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「頭を上げてください。あなたは無実です。それと安心しなさい、この領印は本物です」
(……は?)
「……は?」
言われるがまま顔をあげて、つい思ったままを口にしてしまったけれど、ガドバルドは咎めることはなかった。
そしてむっとした表情もしていない。
ただ彼は、微笑んでもいなければ、憐みの表情も浮かべていない。
何というか、酷く苦いものを口の中に含んでいるような、それでいて何かの決断に迫られているような切羽詰まったような顔をしている。
(……どう読み取れば良い……の??)
ベルはじっとガドバルドを見つめる。
対してガドバルドは、ベルの視線に押されるように一歩後退しようとした。しかし、それを引き留めるかのようにレンブラントが口を開く。
「副長官……いや、フォンク卿。ここまでお膳立てしてやったんだから、いい加減腹を括ってくれ」
目上の人に対して随分と横柄な口を叩くレンブラントに、ガドバルドは一瞬だけ視線を向ける。
そして何か言いかけて……でも、口を噤んでベルを見た。
対してベルは目を丸くする。
(フォンク卿……ん?あれ?? どっかで聞いた名前だな)
ベルはその名に引っ掛かりを覚えて、記憶を探る。
けれども、また今回も答えにたどり着く前に眼前にいるこの男性が誰なのかを知ることになる。
遅れてやってきたダミアンのこの言葉によって。
「あーいたいた! ベルちゃん大丈夫!?怪我は無い!?あっ、レンがいるから大丈夫か。ま、取り敢えず良かった、良かった───…… ん?げっ」
ベルの演技によって冤罪をかけられ自警団の詰所に連れて行かれたダミアンは、そんなことなどなかったかのようにヘラヘラと笑いながら倉庫に駆け込んできた。
しかしガドバルドと目が合った途端、ぎょっとした様子でその場に直立した。
「なにが”取り敢えず良かった”だ。このバカ息子め」
地獄の番人のような低い声を出したのは、ガドバルドだった。
ベルは、そんな二人を交互に見つめる。
(ダミアンさんと、ガドバルドさんが親子……つまり……つまり……へ??う、嘘!?)
稚拙な推理をした結果、ガドバルドと自分は親族だということに気付いたベルは驚きのあまり、すぐ傍にいるレンブラントの上着をぎゅっと握ってしまった。
フロリーナ達が姿を消した後、自警団はまるでホウキでゴミを掃くかのように、倒れている手練れ達も倉庫外へと連れ出した。
そうして、この倉庫にはベルとレンブラント。それからガドバルドと、レンブラントの部下が残るのみ。
ちなみに満身創痍のパウェルスは、倉庫の入口で人質に取られていた孫娘と涙の再会をしている。
ただ孫娘は、怪我だらけのパウェルスを見て「こんなの、おじいちゃんじゃない!!」と大泣きしている。
……違う意味での涙の再会となってしまったが、すぐに本人だと気付けるはずなので、そこまで問題視しなくても大丈夫だろう。
ベルは弱り切った表情を浮かべるパウェルスをちらりと見る。見た目は打撲や擦り傷があり痛々しいが、孫娘を抱き上げあやしている彼を見て目を細めた。
しかしそれは一瞬だけ。すぐに表情を改めると、すぐ横にいるガドバルドと向き合う。
「では、私も連行願います」
フロリーナの前で領印を偽装したことを追及しなかったのは、きっと彼なりの優しさだったのだろう。
レンブラントは自分が恐れているようなことにはならないと言った。だがしかし、罪は罪だ。これ以上、ケルス領の件で他領民を巻き込むことはできない。
そんな気持ちでぺこりと頭を下げたベルに、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「頭を上げてください。あなたは無実です。それと安心しなさい、この領印は本物です」
(……は?)
「……は?」
言われるがまま顔をあげて、つい思ったままを口にしてしまったけれど、ガドバルドは咎めることはなかった。
そしてむっとした表情もしていない。
ただ彼は、微笑んでもいなければ、憐みの表情も浮かべていない。
何というか、酷く苦いものを口の中に含んでいるような、それでいて何かの決断に迫られているような切羽詰まったような顔をしている。
(……どう読み取れば良い……の??)
ベルはじっとガドバルドを見つめる。
対してガドバルドは、ベルの視線に押されるように一歩後退しようとした。しかし、それを引き留めるかのようにレンブラントが口を開く。
「副長官……いや、フォンク卿。ここまでお膳立てしてやったんだから、いい加減腹を括ってくれ」
目上の人に対して随分と横柄な口を叩くレンブラントに、ガドバルドは一瞬だけ視線を向ける。
そして何か言いかけて……でも、口を噤んでベルを見た。
対してベルは目を丸くする。
(フォンク卿……ん?あれ?? どっかで聞いた名前だな)
ベルはその名に引っ掛かりを覚えて、記憶を探る。
けれども、また今回も答えにたどり着く前に眼前にいるこの男性が誰なのかを知ることになる。
遅れてやってきたダミアンのこの言葉によって。
「あーいたいた! ベルちゃん大丈夫!?怪我は無い!?あっ、レンがいるから大丈夫か。ま、取り敢えず良かった、良かった───…… ん?げっ」
ベルの演技によって冤罪をかけられ自警団の詰所に連れて行かれたダミアンは、そんなことなどなかったかのようにヘラヘラと笑いながら倉庫に駆け込んできた。
しかしガドバルドと目が合った途端、ぎょっとした様子でその場に直立した。
「なにが”取り敢えず良かった”だ。このバカ息子め」
地獄の番人のような低い声を出したのは、ガドバルドだった。
ベルは、そんな二人を交互に見つめる。
(ダミアンさんと、ガドバルドさんが親子……つまり……つまり……へ??う、嘘!?)
稚拙な推理をした結果、ガドバルドと自分は親族だということに気付いたベルは驚きのあまり、すぐ傍にいるレンブラントの上着をぎゅっと握ってしまった。
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