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5.【私は】【俺は】─── この時をずっと待っていた
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罪状を突きつけられたフロリーナは、まるで糸が切れた操り人形のようにストンとその場にしゃがみ込んだ。
ミランダとレネーナは、かろうじて立っている。
しかし母親を助け起こすことも、泣き出すことも、弁明することもしない。その表情は諦めと絶望が入り混じっている。だが、ただただ呆けているようにも見えた。
「連れていけ」
「はっ」
感情を殺したガドバルドの声が倉庫に響く。
そして、部下の警護団が短く返事をすると同時に、荒縄でフロリーナ達が拘束されていく。視界の端に、レンブラントがケンラートの眉間から拳銃を放す姿が映った。
(……終わった。これで、終わったんだ)
ベルは警護団によって連行されていくフロリーナ達を見て、この長い旅の目的がようやく果たされたことを知る。
まぁ、予定とは大幅に違うし、こんなふうな終わり方をするとは想像すらしていなかった。
でも、おおむね目的は達成されたのだ。不満があるかと聞かれたら、笑って無いと答えることができる。
だからベルは立ち上がった。次いで、すぐそばで部下に指示を出しているガドバルドに声を掛けた。けじめを付けるために。
「私も、連行されるべき一人です。拘束願います」
ベルは領印を粉砕して、燃やした。
どんな理由があっても、そうせざるを得なかった経緯があっても、これは大罪だ。そして自分は全てを理解した上で、罪を犯した。裁かれる覚悟はできている。
なのに……なのに、ガドバルドはくしゃりと顔を歪ませた。
「そのようなことを、言わないでください」
「どうしてですか?私……」
─── 領印を壊したのですから。
そう続けようと思った。けれどそれを紡ぐ前に、窓ガラスを叩き割ったかのような悲鳴とも怒声ともつかぬ声が辺りに響いた。
「どうしてあの娘は連行されないの!?あの娘は、領印を壊したのよ!?おかしいじゃないっ、どうしてなの!?こんなの間違っているわ!!」
フロリーナは連行されつつも、髪を振り乱して叫んでいる。理不尽だと、自分たちだけが罪に問われるのは不公平だと強く訴えている。
(……まぁ、確かにその通りだよね)
ベルは、フロリーナの訴えに同意した。多分、彼女の言葉にこんなに素直に頷くのはきっと出会ってから初めてのことだろう。
ただ、それが死なば諸共感から来るものであったのが、残念といえば偽善で、彼女らしいと言えばほんの少し胸がひりつく。
でもフロリーナの主張が正しいことは、間違いない。
「ガドバルドさん、そういうわけですから。私、あの人たちと一緒に───…… って、何してるんですか?」
今度こそ裁きの場に連れて行ってもらおうとガドバルドに声を掛けた途端、背後からレンブラントにぎゅっと抱きしめられてしまった。
「おい、あんまりこのおっさんを困らせるな、ベル」
「はあ?」
太い腕に抱きしめられたまま、意味の分からないことを耳元で囁かれて、ベルは半目になってレンブラントを睨む。
しかし、彼はけんもほろろに受け流してしまった。そして更に険しい目つきになったベルの手のひらに、あるモノをねじ込んだ。
それはこの世に、あるはずの無いモノ……あってはならないモノだった。
ミランダとレネーナは、かろうじて立っている。
しかし母親を助け起こすことも、泣き出すことも、弁明することもしない。その表情は諦めと絶望が入り混じっている。だが、ただただ呆けているようにも見えた。
「連れていけ」
「はっ」
感情を殺したガドバルドの声が倉庫に響く。
そして、部下の警護団が短く返事をすると同時に、荒縄でフロリーナ達が拘束されていく。視界の端に、レンブラントがケンラートの眉間から拳銃を放す姿が映った。
(……終わった。これで、終わったんだ)
ベルは警護団によって連行されていくフロリーナ達を見て、この長い旅の目的がようやく果たされたことを知る。
まぁ、予定とは大幅に違うし、こんなふうな終わり方をするとは想像すらしていなかった。
でも、おおむね目的は達成されたのだ。不満があるかと聞かれたら、笑って無いと答えることができる。
だからベルは立ち上がった。次いで、すぐそばで部下に指示を出しているガドバルドに声を掛けた。けじめを付けるために。
「私も、連行されるべき一人です。拘束願います」
ベルは領印を粉砕して、燃やした。
どんな理由があっても、そうせざるを得なかった経緯があっても、これは大罪だ。そして自分は全てを理解した上で、罪を犯した。裁かれる覚悟はできている。
なのに……なのに、ガドバルドはくしゃりと顔を歪ませた。
「そのようなことを、言わないでください」
「どうしてですか?私……」
─── 領印を壊したのですから。
そう続けようと思った。けれどそれを紡ぐ前に、窓ガラスを叩き割ったかのような悲鳴とも怒声ともつかぬ声が辺りに響いた。
「どうしてあの娘は連行されないの!?あの娘は、領印を壊したのよ!?おかしいじゃないっ、どうしてなの!?こんなの間違っているわ!!」
フロリーナは連行されつつも、髪を振り乱して叫んでいる。理不尽だと、自分たちだけが罪に問われるのは不公平だと強く訴えている。
(……まぁ、確かにその通りだよね)
ベルは、フロリーナの訴えに同意した。多分、彼女の言葉にこんなに素直に頷くのはきっと出会ってから初めてのことだろう。
ただ、それが死なば諸共感から来るものであったのが、残念といえば偽善で、彼女らしいと言えばほんの少し胸がひりつく。
でもフロリーナの主張が正しいことは、間違いない。
「ガドバルドさん、そういうわけですから。私、あの人たちと一緒に───…… って、何してるんですか?」
今度こそ裁きの場に連れて行ってもらおうとガドバルドに声を掛けた途端、背後からレンブラントにぎゅっと抱きしめられてしまった。
「おい、あんまりこのおっさんを困らせるな、ベル」
「はあ?」
太い腕に抱きしめられたまま、意味の分からないことを耳元で囁かれて、ベルは半目になってレンブラントを睨む。
しかし、彼はけんもほろろに受け流してしまった。そして更に険しい目つきになったベルの手のひらに、あるモノをねじ込んだ。
それはこの世に、あるはずの無いモノ……あってはならないモノだった。
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