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3.毒舌少女は捨てたいソレを手放せない
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痛覚を取り戻してから、ベルはますますレンブラントのことが嫌いになった。
口に何かを含めば、染みるし痛いし、料理がしっかり味わえない。
それにちょっと動く度に、背中と脇腹が悲鳴を上げる。だから馬車の揺れがこたえる。
夜は夜でベッドに入ってうっかり寝返りをうったら、痛みで飛び起きる。
そんなわけで、ただ馬車に乗ってえっちらおっちら王都に向かっているだけなのに、ベルは披露困憊だった。
(───......これも全部、全部、ぜぇーんぶ、レンブラントのせいだっ)
痛みなんてやっぱり無くて良い。邪魔なだけだ。
そんなふうに面と向かってレンブラントに悪態を吐いてみても、彼は『そうか』と言って笑うだけ。
人が痛みでのたうち回っているのに、何が楽しいのだろうか。このド変態。……という言葉もしっかり声に出して言ってみた。
さすがにムッとした顔をしたけれど、やっぱりレンブラントは嬉しそうだった。
もしかしたら彼は隠れマゾヒストなのかもしれない。……気持ち悪い、引く。さすがにこれは声には出さなかった。
でも、あの大きな手で触れられるのは嫌じゃない。呆れた顔も憎くらしいとは思えない。
ただじっと見つめられるのは居心地悪くて困る。だからといって見られていないと、つい毒を吐きたくなる。
そんな矛盾する気持ちが何なのかはわからない。ただ、ちょっとでもその理由を考えるときゅっと心臓がいたくなるし、もやもやとした気持ちになる。
だから考えないのが一番だ。
そもそもレンブラントに向かう気持ちがわかったところでどうなる?こう言ってはアレだけれど、何の特にもならない。
そりゃあスッキリはするだろうけれど。でも、その後なんだかかとてつもなく面倒臭いことになりそうな予感がする。
とどのつまり、やっぱり考えないのが正解だ。
(でも、でも、でも......これは、考えるべきだろう)
どうして自分は寝巻き姿にコートを羽織った状態で、レンブラントと仲良く森の中に隠れなければならないのだろうかということは。
しかも、現在進行形で。
ベルは長々とした思考を一旦中断して、すぐ側......というが、がっしり自分を抱き抱えている銀髪軍人に向かって口を開く。
「あのう」
「黙れ」
「いや、説明をしてくれたら黙りますけ」
「良いから黙れ、気絶させられたいのか?」
「......」
途中で被せられた言葉は、なんとも物騒なものだった。
そんなことをされる理由など何一つ思い当たらないベルは、ムッとしてレンブラントを睨み付ける。でも、彼は余所を向いているので、その視線に気付いてもくれない。
無視をされているわけではない。レンブラントはとても忙しいのだ。
でもベルは彼が多忙を極めている理由がわからない。
***
───つい1時間ほど前のこと。
痛む背中と脇腹を庇いつつようやっと寝入ったベルだったけれど、突然レンブラントに叩き起こされたのだ。
いや、起こされるというより、物理的に持ち上げられ強制的に目が覚めたのだ。
そして寝ぼけ眼で「えっ?ちょっ?は?なになに?」と混乱を極めるベルを無視して、レンブラントはこんな森の中に移動したのだ。
全くもって意味がわからない。あと、寒い。
コートに包んでくれたのは、彼なりの優しさなのだろうが、どちらかと言えば状況説明をしてくれた方がよっぽど有り難い。
でも、レンブラントは黙れと言った。
これまで見たことも無いほど怖い顔で。その顔を見れば、不測の事態が起こってしまったというのだけは把握できる。
だから、ベルは聞きたいのだ。
こんな状況になったのは、多分自分に関わることのはずだから。
なのに、レンブラントは何も答えてはくれない。その代わりに、空からポタリと滴が降ってきた。
口に何かを含めば、染みるし痛いし、料理がしっかり味わえない。
それにちょっと動く度に、背中と脇腹が悲鳴を上げる。だから馬車の揺れがこたえる。
夜は夜でベッドに入ってうっかり寝返りをうったら、痛みで飛び起きる。
そんなわけで、ただ馬車に乗ってえっちらおっちら王都に向かっているだけなのに、ベルは披露困憊だった。
(───......これも全部、全部、ぜぇーんぶ、レンブラントのせいだっ)
痛みなんてやっぱり無くて良い。邪魔なだけだ。
そんなふうに面と向かってレンブラントに悪態を吐いてみても、彼は『そうか』と言って笑うだけ。
人が痛みでのたうち回っているのに、何が楽しいのだろうか。このド変態。……という言葉もしっかり声に出して言ってみた。
さすがにムッとした顔をしたけれど、やっぱりレンブラントは嬉しそうだった。
もしかしたら彼は隠れマゾヒストなのかもしれない。……気持ち悪い、引く。さすがにこれは声には出さなかった。
でも、あの大きな手で触れられるのは嫌じゃない。呆れた顔も憎くらしいとは思えない。
ただじっと見つめられるのは居心地悪くて困る。だからといって見られていないと、つい毒を吐きたくなる。
そんな矛盾する気持ちが何なのかはわからない。ただ、ちょっとでもその理由を考えるときゅっと心臓がいたくなるし、もやもやとした気持ちになる。
だから考えないのが一番だ。
そもそもレンブラントに向かう気持ちがわかったところでどうなる?こう言ってはアレだけれど、何の特にもならない。
そりゃあスッキリはするだろうけれど。でも、その後なんだかかとてつもなく面倒臭いことになりそうな予感がする。
とどのつまり、やっぱり考えないのが正解だ。
(でも、でも、でも......これは、考えるべきだろう)
どうして自分は寝巻き姿にコートを羽織った状態で、レンブラントと仲良く森の中に隠れなければならないのだろうかということは。
しかも、現在進行形で。
ベルは長々とした思考を一旦中断して、すぐ側......というが、がっしり自分を抱き抱えている銀髪軍人に向かって口を開く。
「あのう」
「黙れ」
「いや、説明をしてくれたら黙りますけ」
「良いから黙れ、気絶させられたいのか?」
「......」
途中で被せられた言葉は、なんとも物騒なものだった。
そんなことをされる理由など何一つ思い当たらないベルは、ムッとしてレンブラントを睨み付ける。でも、彼は余所を向いているので、その視線に気付いてもくれない。
無視をされているわけではない。レンブラントはとても忙しいのだ。
でもベルは彼が多忙を極めている理由がわからない。
***
───つい1時間ほど前のこと。
痛む背中と脇腹を庇いつつようやっと寝入ったベルだったけれど、突然レンブラントに叩き起こされたのだ。
いや、起こされるというより、物理的に持ち上げられ強制的に目が覚めたのだ。
そして寝ぼけ眼で「えっ?ちょっ?は?なになに?」と混乱を極めるベルを無視して、レンブラントはこんな森の中に移動したのだ。
全くもって意味がわからない。あと、寒い。
コートに包んでくれたのは、彼なりの優しさなのだろうが、どちらかと言えば状況説明をしてくれた方がよっぽど有り難い。
でも、レンブラントは黙れと言った。
これまで見たことも無いほど怖い顔で。その顔を見れば、不測の事態が起こってしまったというのだけは把握できる。
だから、ベルは聞きたいのだ。
こんな状況になったのは、多分自分に関わることのはずだから。
なのに、レンブラントは何も答えてはくれない。その代わりに、空からポタリと滴が降ってきた。
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