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2.他称ロリコン軍人は不遇な毒舌少女を癒したい
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宿屋の女将は持参したタオルが最後の一枚になるまで、何度もベルの顔の傷を拭い、腫れた個所を冷やしてくれた。しかも途中でタライの水まで取り換えてくれた。
手厚すぎる対応に、ベルは感謝と申し訳なさがごっちゃになって、ペコペコと頭を下げることしかできない。
でも、その度に女将は「ほらっ、動くんじゃないよっ」と厳しい口調でベルを制した。
そして水に浸して絞った最後のタオルをベルに手渡すと、あろうことか泥まみれになった衣類一式を取り上げて部屋を出ようとする。
「あ、あのっ……それはちょっと困ります」
「なぁーに言ってんだいっ、あんたみたいな深窓の令嬢が洗濯なんてできないだろ?良いさ、こっちでやっといてやるよ。お嬢さんは、ゆっくり休んでおいで。ああ、食事は傷に染みないヤツを考えてやるから、安心しなっ」
「え、いやそうじゃな」
─── バタンッ。
一気に言い切った女将は、ベルの言葉を遮るように廊下に出ると勢いよく扉を閉めてしまった。
ベルはタオルを持ったまま、唖然としてしまった。
でも、すぐに立ち上がり、女将の後を追おうとする。傷の手当すら有難すぎるのに、洗濯までお願いするのは、さすがに気が引ける。
けれど、ドアノブに手を掛けようとした瞬間、いきなり扉が開いた。
「……っ!?」
「ああ、顔は冷やしてもらえたんだな。良かった」
許可無く花も恥じらう乙女の部屋の扉を開けたのは、レンブラントだった。
「覗く気でしたか?変態軍人さん。でも、残念ながら着替えは終わってます」
「良かった。安心した」
「は?」
全く会話がかみ合わないせいで、ベルは間の抜けた声を出してしまった。
その表情がよほど滑稽だったのが、レンブラントはクスリと笑ってこう言った。
「憎まれ口を叩けるくらいの元気があるようで、良かったと言いたかったんだ」
「あーそーですか」
詳しく説明を受けてもベルは、なんだそうかと頷くわけがない。逆にイラッとしてしまう。
そんなわけでベルは不貞腐れた顔をしたまま、レンブラントの手元を見る。
彼は2つの箱を小脇に抱えていた。
一つは、おそらくこの宿屋の薬箱だろう。使い込まれた感満載である。
そしてもう一つは、軍の紋章が入った薬箱。これもおそらく。
どうやらレンブラントは宿屋にある薬箱では諸々足りないと判断して、馬車に戻って軍御用達の薬箱も持ってきてくれたようだ。
これもまた、お手数をお掛けしたと思う。
ただ、日に何度も他人から手当てを受けるという慣れない行為は、本日は辞退させていただきたい。
「レンブラントさん、わざわざありがとうございました」
「……どうした?」
「はぁ?」
レンブラントから真顔で主語を抜かした問いが来るものだから、意味が分からず質問を質問で返してしまう。
そうすればレンブラントは真面目な顔に、憂いを追加してこう言った。
「あんたが俺に素直に礼を言うなんて、具合が悪いとしか考えられない」
「……なっ」
「それとも何か企んでいるのか?悪いが今日はカードゲームに付き合えないぞ」
「薬箱そこに置いておいてください」
とんでもなく失礼な発言に、ベルは表情を不貞腐れたものに戻して、テーブルを指差した。
その意図を瞬時に理解したレンブラントは、眉間に皺を寄せた。
「まさか、自分でやる気か?」
「ええ。当たり前じゃないですか」
「馬鹿を言うな。ほら、さっさとベッドに座れ」
呆れた顔をしながらレンブラントは、長い足を動かしてベッドへ向かう。
そして、早くこっちに来いと言わんばかりに、やや乱暴にベッドを2回叩いた。
手厚すぎる対応に、ベルは感謝と申し訳なさがごっちゃになって、ペコペコと頭を下げることしかできない。
でも、その度に女将は「ほらっ、動くんじゃないよっ」と厳しい口調でベルを制した。
そして水に浸して絞った最後のタオルをベルに手渡すと、あろうことか泥まみれになった衣類一式を取り上げて部屋を出ようとする。
「あ、あのっ……それはちょっと困ります」
「なぁーに言ってんだいっ、あんたみたいな深窓の令嬢が洗濯なんてできないだろ?良いさ、こっちでやっといてやるよ。お嬢さんは、ゆっくり休んでおいで。ああ、食事は傷に染みないヤツを考えてやるから、安心しなっ」
「え、いやそうじゃな」
─── バタンッ。
一気に言い切った女将は、ベルの言葉を遮るように廊下に出ると勢いよく扉を閉めてしまった。
ベルはタオルを持ったまま、唖然としてしまった。
でも、すぐに立ち上がり、女将の後を追おうとする。傷の手当すら有難すぎるのに、洗濯までお願いするのは、さすがに気が引ける。
けれど、ドアノブに手を掛けようとした瞬間、いきなり扉が開いた。
「……っ!?」
「ああ、顔は冷やしてもらえたんだな。良かった」
許可無く花も恥じらう乙女の部屋の扉を開けたのは、レンブラントだった。
「覗く気でしたか?変態軍人さん。でも、残念ながら着替えは終わってます」
「良かった。安心した」
「は?」
全く会話がかみ合わないせいで、ベルは間の抜けた声を出してしまった。
その表情がよほど滑稽だったのが、レンブラントはクスリと笑ってこう言った。
「憎まれ口を叩けるくらいの元気があるようで、良かったと言いたかったんだ」
「あーそーですか」
詳しく説明を受けてもベルは、なんだそうかと頷くわけがない。逆にイラッとしてしまう。
そんなわけでベルは不貞腐れた顔をしたまま、レンブラントの手元を見る。
彼は2つの箱を小脇に抱えていた。
一つは、おそらくこの宿屋の薬箱だろう。使い込まれた感満載である。
そしてもう一つは、軍の紋章が入った薬箱。これもおそらく。
どうやらレンブラントは宿屋にある薬箱では諸々足りないと判断して、馬車に戻って軍御用達の薬箱も持ってきてくれたようだ。
これもまた、お手数をお掛けしたと思う。
ただ、日に何度も他人から手当てを受けるという慣れない行為は、本日は辞退させていただきたい。
「レンブラントさん、わざわざありがとうございました」
「……どうした?」
「はぁ?」
レンブラントから真顔で主語を抜かした問いが来るものだから、意味が分からず質問を質問で返してしまう。
そうすればレンブラントは真面目な顔に、憂いを追加してこう言った。
「あんたが俺に素直に礼を言うなんて、具合が悪いとしか考えられない」
「……なっ」
「それとも何か企んでいるのか?悪いが今日はカードゲームに付き合えないぞ」
「薬箱そこに置いておいてください」
とんでもなく失礼な発言に、ベルは表情を不貞腐れたものに戻して、テーブルを指差した。
その意図を瞬時に理解したレンブラントは、眉間に皺を寄せた。
「まさか、自分でやる気か?」
「ええ。当たり前じゃないですか」
「馬鹿を言うな。ほら、さっさとベッドに座れ」
呆れた顔をしながらレンブラントは、長い足を動かしてベッドへ向かう。
そして、早くこっちに来いと言わんばかりに、やや乱暴にベッドを2回叩いた。
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