20 / 117
2.他称ロリコン軍人は不遇な毒舌少女を癒したい
1★
しおりを挟む
メオテール国の歴史は長い。
そして海に面した広大な土地を持ち、資源が豊かな国だ。また建国以来、一度も他国に領土を明け渡したことがない。
それはこのメオテール国が、魔術師や聖女といったチート的な存在を隠し持っているから……ではなく、ただ単純に資源が豊富であることと歴代国王が勤勉実直に王政を行っているため、どこよりも国防に力を入れることができているからである。
そんなわけで、メオテール国各地には砦が数多くある。
軍人が騎士と呼ばれていた時代に建てられたものから、つい最近建設されたものまで。
ひとたび戦となれば鉄壁の要塞と化すそこは、現在、地元軍人の活動拠点兼遠方から視察に来た軍人達の宿泊施設として使われている。
パチッ……パチリッ……と暖炉の薪が爆ぜる音に混ざって、書類をさばく音が簡素な部屋に響いている。
ここはケルス領からほど近いログディーダ砦。
王都へ向かう途中のレンブラント達は、本日ここを宿としている。
ただ正確には、本日もなのである。
季節の変わり目は、天候が荒れるもの。
例に漏れず、晩秋から冬に変わろうとしている今、外は暴風雨。いわゆる嵐に見舞われている。
そのため馬車を出すことができず、この数日間、レンブラント達はここで足止めを食らっていたりする。
レンブラントが受けた任務は、ベルを無傷でレイカールトン侯爵の元に送り届けること。けれど幸いなことに、期間はまだまだ十分にある。焦る必要は無い。
それに、足止めを食らうということは、ベルがレンブラント以外の軍人達と過ごす時間も多くなるということ。
王都までの道のりはまだまだ長い。
何をするにしても、限られた面々で過ごすことになるからせめて名前と顔ぐらいは覚えて欲しいと思っていたので、レンブラントはこの足止めを僥倖だと思っている。
─── ただ、隣から楽しそうに聞こえてくるベルたちの話し声を聞いていると、個人的には面白くない。
(誰がロリコンだっ。あの小娘めっ。俺はまだ二十代だ!)
レンブラントは先日、ベルからロリコン軍人と命名されたことを思い出して苦々しい気持ちになる。
確かにベルとは7つ程離れている。四捨五入すれば、10個だ。そして10代から見たら、年上の年齢を正確に当てることは難しいのもわかっている。
だからといって、胸をざわつかせる相手からそんな命名をされたら、面白くはないを通り越して腹が立つし悲しい気持ちにすらなってしまうのは当然のこと。
しかもあの時、レンブラントは求婚をしたのだ。冗談交じりで、軽い口調ではあったが、そこそこ真剣だった。
なのに返ってきた言葉は、ロリコンというあり得ない評価。結局、求婚についてはうやむやのまま、闇に葬られてしまったのだ。
「……ったく、なんなんだアイツは」
(レイカールトン侯爵の時には、あっさり結婚を承諾したくせに。何で俺はロリコン軍人呼ばわりして終わりなんだ。……ちっとは悩むなり、はにかむなりしてくれたって良いじゃないか)
心の中でぶつぶつと文句を言いながらレンブラントはサインをし終えた書類を端に寄せた。
若干文字が乱れてしまったが、咎められることは無いだろう。そもそもレンブラントは、咎める方の立場にあるのだ。
彼、レンブラント・エイケンは軍の情報局に所属している。そして局長だったりもする。隊長と呼ばれるのは、いわゆる渾名のようなもの。
そして本来なら、王都の軍本部でごっつい机に腰かけてアレコレ指示をする立場にある。なのに、僅かな部下を引き連れて、こんな僻地までやって来たのには理由がある。
与えられた任務が極秘だというのもあるが、レンブラント自身がどうしても護衛対象であるベルと直接会ってみたかったら。おそらく長い付き合いになる相手であるから。
余談だが、レンブラントはこの極秘任務以外に、個人的にもう一つベルに関して依頼も受けている。
ただ移動中も通常業務をこなさないといけない多忙な彼は、一度に二つの任務をこなすことは難しい。
そして個人的な依頼の為に部下を使うわけにもいかず、軍とはまったく関係ない、時間の融通が利く協力者を必要としている。
何を隠そう、その協力者がベルを連行した初日に顔を出したダミアン・フォンクなのだ。
───コン、コン、コン……ガチャ。
ノックの音がしたかと思えば、入室の許可も無く扉が開く。
書類に目を通していたレンブラントは手を止めて、そこに目を向けた。
「やっほぉー。待った?遅くなってごめんねぇー」
謝っている割には悪びれる様子もなく、ひょこっと顔を出したのは、今しがた説明をしたダミアンだった。
そして海に面した広大な土地を持ち、資源が豊かな国だ。また建国以来、一度も他国に領土を明け渡したことがない。
それはこのメオテール国が、魔術師や聖女といったチート的な存在を隠し持っているから……ではなく、ただ単純に資源が豊富であることと歴代国王が勤勉実直に王政を行っているため、どこよりも国防に力を入れることができているからである。
そんなわけで、メオテール国各地には砦が数多くある。
軍人が騎士と呼ばれていた時代に建てられたものから、つい最近建設されたものまで。
ひとたび戦となれば鉄壁の要塞と化すそこは、現在、地元軍人の活動拠点兼遠方から視察に来た軍人達の宿泊施設として使われている。
パチッ……パチリッ……と暖炉の薪が爆ぜる音に混ざって、書類をさばく音が簡素な部屋に響いている。
ここはケルス領からほど近いログディーダ砦。
王都へ向かう途中のレンブラント達は、本日ここを宿としている。
ただ正確には、本日もなのである。
季節の変わり目は、天候が荒れるもの。
例に漏れず、晩秋から冬に変わろうとしている今、外は暴風雨。いわゆる嵐に見舞われている。
そのため馬車を出すことができず、この数日間、レンブラント達はここで足止めを食らっていたりする。
レンブラントが受けた任務は、ベルを無傷でレイカールトン侯爵の元に送り届けること。けれど幸いなことに、期間はまだまだ十分にある。焦る必要は無い。
それに、足止めを食らうということは、ベルがレンブラント以外の軍人達と過ごす時間も多くなるということ。
王都までの道のりはまだまだ長い。
何をするにしても、限られた面々で過ごすことになるからせめて名前と顔ぐらいは覚えて欲しいと思っていたので、レンブラントはこの足止めを僥倖だと思っている。
─── ただ、隣から楽しそうに聞こえてくるベルたちの話し声を聞いていると、個人的には面白くない。
(誰がロリコンだっ。あの小娘めっ。俺はまだ二十代だ!)
レンブラントは先日、ベルからロリコン軍人と命名されたことを思い出して苦々しい気持ちになる。
確かにベルとは7つ程離れている。四捨五入すれば、10個だ。そして10代から見たら、年上の年齢を正確に当てることは難しいのもわかっている。
だからといって、胸をざわつかせる相手からそんな命名をされたら、面白くはないを通り越して腹が立つし悲しい気持ちにすらなってしまうのは当然のこと。
しかもあの時、レンブラントは求婚をしたのだ。冗談交じりで、軽い口調ではあったが、そこそこ真剣だった。
なのに返ってきた言葉は、ロリコンというあり得ない評価。結局、求婚についてはうやむやのまま、闇に葬られてしまったのだ。
「……ったく、なんなんだアイツは」
(レイカールトン侯爵の時には、あっさり結婚を承諾したくせに。何で俺はロリコン軍人呼ばわりして終わりなんだ。……ちっとは悩むなり、はにかむなりしてくれたって良いじゃないか)
心の中でぶつぶつと文句を言いながらレンブラントはサインをし終えた書類を端に寄せた。
若干文字が乱れてしまったが、咎められることは無いだろう。そもそもレンブラントは、咎める方の立場にあるのだ。
彼、レンブラント・エイケンは軍の情報局に所属している。そして局長だったりもする。隊長と呼ばれるのは、いわゆる渾名のようなもの。
そして本来なら、王都の軍本部でごっつい机に腰かけてアレコレ指示をする立場にある。なのに、僅かな部下を引き連れて、こんな僻地までやって来たのには理由がある。
与えられた任務が極秘だというのもあるが、レンブラント自身がどうしても護衛対象であるベルと直接会ってみたかったら。おそらく長い付き合いになる相手であるから。
余談だが、レンブラントはこの極秘任務以外に、個人的にもう一つベルに関して依頼も受けている。
ただ移動中も通常業務をこなさないといけない多忙な彼は、一度に二つの任務をこなすことは難しい。
そして個人的な依頼の為に部下を使うわけにもいかず、軍とはまったく関係ない、時間の融通が利く協力者を必要としている。
何を隠そう、その協力者がベルを連行した初日に顔を出したダミアン・フォンクなのだ。
───コン、コン、コン……ガチャ。
ノックの音がしたかと思えば、入室の許可も無く扉が開く。
書類に目を通していたレンブラントは手を止めて、そこに目を向けた。
「やっほぉー。待った?遅くなってごめんねぇー」
謝っている割には悪びれる様子もなく、ひょこっと顔を出したのは、今しがた説明をしたダミアンだった。
1
お気に入りに追加
985
あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。
112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。
ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。
ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。
※完結しました。ありがとうございました。


【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】好きになったら命懸けです。どうか私をお嫁さんにして下さいませ〜!
金峯蓮華
恋愛
公爵令嬢のシャーロットはデビュタントの日に一目惚れをしてしまった。
あの方は誰なんだろう? 私、あの方と結婚したい!
理想ドンピシャのあの方と結婚したい。
無鉄砲な天然美少女シャーロットの恋のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる