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姉アンジェラの仕返し
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名門貴族の嫡女として生まれたアンジェラには、3つ違いの妹リリーナがいる。
リリーナは、かつて社交界の華だった母親譲りの波打つ金色の髪に空色の瞳。その姿は天使のように愛らしいが、中身は悪魔だった。
「お姉さまのコレ、とっても素敵ね」
その一言で、リリーナは自分の物を片っ端から奪って行った。
小さな宝石が付いた髪留め。
絹の刺繍が美しいリボン。
異国の人形。
特注で仕立ててもらったドレス。
どれもこれも、アンジェラが大切にしていたものだった。
ーー ねえ、どうしてそんなに私の物が欲しいの?お父様やお母様に言って新しい物を買ってもらいなさい。
たまりかねてリリーナにそう言ったこともあった。
けれどもリリーナは悲し気に俯きこう言い返す。
「だって……私、上手に選べないから」
しゅんと肩を落として、涙を浮かべてそう言われるとアンジェラは自分がとても意地悪をしているような気持ちになってしまう。
意地悪をされているのは、自分だというのに。
アンジェラことアンジェラ・ネリムは、名門貴族の長女として生まれ何不自由なく育った。……リリーナが生まれるまでは。
物心付いた時からアンジェラには、リリーナという厄介な妹がいた。
愛らしい容姿の妹は、無条件に両親に愛された。たとえ勉強ができなくても、ピアノが上手に弾けなくても。
貴族令嬢として最低限身につけなければならない行儀作法だって、「リリーナは可愛いからそれでいい」と両親は失敗すら長所として受け止めた。
……でも、自分に対しては違った。
アンジェラはリリーナのように輝く金髪ではない。
父親譲りのくすんだ金茶色の髪に濁った緑色の瞳。目鼻立ちは母親譲りであり美人の部類に入るかもしれないが、それでも妹と並べばどうしたって劣っていることを認めなければならない。
だからこそ、見た目で愛されないのなら、それ以外のところで愛されるために努力した。
沢山の書物を読んで、語学も身に着けて。でも女性らしくピアノや刺繍の腕も磨いて。
人前で両親が恥をかかぬよう、礼儀作法も完璧にして話術だって控え目でありながら知的と言われるよう努力した。
その結果、アンジェラは社交界では、かつての母と同じような地位を得た。
そうして長女の義務として19歳の誕生日を迎えてすぐ、婿に相応しい4つ年上の男と婚約した。
けれどもリリーナは、婚約者したばかりの彼ーーセルード・ダッヒを見た瞬間こう言った。
「お姉さまの婚約者、とっても素敵な方ね」
リボンや人形と同じように、とうとうアンジェラの婚約者も欲しがったのだ。
リリーナは、かつて社交界の華だった母親譲りの波打つ金色の髪に空色の瞳。その姿は天使のように愛らしいが、中身は悪魔だった。
「お姉さまのコレ、とっても素敵ね」
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小さな宝石が付いた髪留め。
絹の刺繍が美しいリボン。
異国の人形。
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どれもこれも、アンジェラが大切にしていたものだった。
ーー ねえ、どうしてそんなに私の物が欲しいの?お父様やお母様に言って新しい物を買ってもらいなさい。
たまりかねてリリーナにそう言ったこともあった。
けれどもリリーナは悲し気に俯きこう言い返す。
「だって……私、上手に選べないから」
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……でも、自分に対しては違った。
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