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仮初めの恋人と過ごす日々※なぜか相手はノリノリ
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ランラード学園は、毎年創立記念日の前に中期試験がある。
しかも補習と追試は、創立記念日当日に行われるのが伝統だ。
なんともえげつない日程である。だが、教師の狙い通りこの時期の中期試験は補習を受ける生徒は今のところゼロを更新中。
ちなみに成績は良くも悪くも無いアンナであるが、今回の試験はカイロスの顔に泥を塗るわけにはいかないから、これまで以上に頑張った。
おかげで少しだけ順位があがった。カイロスは安定の1位だった。マチルダはギリギリ補習を免れた。
そんなこんなで今年も例年通り、創立記念日は生徒は全員参加で迎えようとしていた。
「ーーねえねえ、アンナさん。お願いがあるんですけど......」
午後の授業を終えて、アンナが帰り支度をしていればクラスメイトの一人であるシェリーから声を掛けられた。
「なんでしょう?」
レポート用紙を纏めながら首をかしげれば、シェリーは制服のスカートをモジモジしながらこう言った。
「魔法科のニルバスさんにお話ししたいことがあって......その......無理は承知なんですけど」
頬を染めながら言葉尻を濁すシェリーが何を言いたいのかアンナはすぐに察した。なにせ、この手のお願いは、中間試験が終わって13人目だから。
創立記念日を1週間後に控えた学園は、皆、そわそわと落ち着きがない。
それは年に一度のお祭りだから浮き足立っている。……と、いうのもあるが、一年で一番多くのカップルが誕生する時期でもあるからで。
格式高いランラード学園の創立記念日のフィナーレは、伝統に則り公園で庭園パーティーが開かれる。
魔法科の生徒によって作り上げられる会場は、至るところに魔法灯が飾られとても幻想的で、青春の1ページを刻むのにはもってこい。またこんな素敵な空間を是非とも好きな人と一緒に過ごしたいと思うのは当然で。
そのため中間試験が終わると、成功率が普段よりちょっと高くなる今を狙って意中の相手がいる生徒達は勇気を出して告白をする。
めでたくカップルになった生徒達は、当日は互いのネクタイを交換してそれを身に付けるのが慣わしだ。
アンナに声を掛けてきたシェリーも、おそらく意中の相手がいるのだろう。そしてその相手はカイロスのクラスメイトのようだ。
そこまで推測したアンナが言えるのはこれだけだった。
「わかりました、殿下に伝えておきますね」
「ありがとう、アンナさん!」
アンナより100倍眩しい笑みを浮かべたシェリーは、アンナの手をぎゅっと握ってウルウルとした目で何度も礼の言葉を紡ぐ。
これもまた毎度のことであるが、アンナはささやかながら恋のお手伝いができて毎回とても嬉しい気持ちになる。
と、同時にこんなにも告白をしたい生徒がいることに驚きを隠せなかった。
しかも補習と追試は、創立記念日当日に行われるのが伝統だ。
なんともえげつない日程である。だが、教師の狙い通りこの時期の中期試験は補習を受ける生徒は今のところゼロを更新中。
ちなみに成績は良くも悪くも無いアンナであるが、今回の試験はカイロスの顔に泥を塗るわけにはいかないから、これまで以上に頑張った。
おかげで少しだけ順位があがった。カイロスは安定の1位だった。マチルダはギリギリ補習を免れた。
そんなこんなで今年も例年通り、創立記念日は生徒は全員参加で迎えようとしていた。
「ーーねえねえ、アンナさん。お願いがあるんですけど......」
午後の授業を終えて、アンナが帰り支度をしていればクラスメイトの一人であるシェリーから声を掛けられた。
「なんでしょう?」
レポート用紙を纏めながら首をかしげれば、シェリーは制服のスカートをモジモジしながらこう言った。
「魔法科のニルバスさんにお話ししたいことがあって......その......無理は承知なんですけど」
頬を染めながら言葉尻を濁すシェリーが何を言いたいのかアンナはすぐに察した。なにせ、この手のお願いは、中間試験が終わって13人目だから。
創立記念日を1週間後に控えた学園は、皆、そわそわと落ち着きがない。
それは年に一度のお祭りだから浮き足立っている。……と、いうのもあるが、一年で一番多くのカップルが誕生する時期でもあるからで。
格式高いランラード学園の創立記念日のフィナーレは、伝統に則り公園で庭園パーティーが開かれる。
魔法科の生徒によって作り上げられる会場は、至るところに魔法灯が飾られとても幻想的で、青春の1ページを刻むのにはもってこい。またこんな素敵な空間を是非とも好きな人と一緒に過ごしたいと思うのは当然で。
そのため中間試験が終わると、成功率が普段よりちょっと高くなる今を狙って意中の相手がいる生徒達は勇気を出して告白をする。
めでたくカップルになった生徒達は、当日は互いのネクタイを交換してそれを身に付けるのが慣わしだ。
アンナに声を掛けてきたシェリーも、おそらく意中の相手がいるのだろう。そしてその相手はカイロスのクラスメイトのようだ。
そこまで推測したアンナが言えるのはこれだけだった。
「わかりました、殿下に伝えておきますね」
「ありがとう、アンナさん!」
アンナより100倍眩しい笑みを浮かべたシェリーは、アンナの手をぎゅっと握ってウルウルとした目で何度も礼の言葉を紡ぐ。
これもまた毎度のことであるが、アンナはささやかながら恋のお手伝いができて毎回とても嬉しい気持ちになる。
と、同時にこんなにも告白をしたい生徒がいることに驚きを隠せなかった。
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