43 / 90
第11章
交わる運命は耐え難き灼熱のもとで 6
しおりを挟む
「ゼクロス!」
今にも掴みかかりそうだったゼクロスを制したのは中年女だった。
「いいかげんにしな、みっともない。あんたは額を提示し、むこうはちゃんとそれに応えた。
誰がはらおうと関係あるもんか。貴族だろうが雑兵だろうが、金は金。はらったやつがあたしらの客さ。分割にしようとしない分、どっかのケチなお貴族さまよかよっぽど上客ってもんだ。
だろう?」
ぐっ、と言葉につまり、黙りこんだゼクロスに、問題は解決したとみたレンジュは再度背を向け立ち去ろうとする。だが三歩と行かないうちに、今度は中年女が呼びとめた。
「持ってきな」
ふわり。マテアが落とした毛布が投げられ、彼女の上にかぶさる。
「その娘、どうやら陽に弱いようだからね」
言われて覗きこんだ面が、意識を失いながらも苦痛に歪んでいることにはじめて気付いて、レンジュは短く礼を言った。
彼が支払った額を考慮すれば、使い古した安物の毛布をくれた程度で礼を言う必要などなく、また彼等奴隷商人がどういった輩であるのか、彼等が本当は彼女をどうしようとしていたかも察していたが、それでも――彼女と自分を会わせてくれたのだと思うと、それだけで、感謝の気持ちがこみ上げた。
レンジュの歩行に反応して、野次馬たちは引き潮のように道を開く。両側に連なる男たちから一斉に羨望の眼差しを受けても動じることなく、レンジュはハリの待つ出口へ向かって歩いて行った。
今にも掴みかかりそうだったゼクロスを制したのは中年女だった。
「いいかげんにしな、みっともない。あんたは額を提示し、むこうはちゃんとそれに応えた。
誰がはらおうと関係あるもんか。貴族だろうが雑兵だろうが、金は金。はらったやつがあたしらの客さ。分割にしようとしない分、どっかのケチなお貴族さまよかよっぽど上客ってもんだ。
だろう?」
ぐっ、と言葉につまり、黙りこんだゼクロスに、問題は解決したとみたレンジュは再度背を向け立ち去ろうとする。だが三歩と行かないうちに、今度は中年女が呼びとめた。
「持ってきな」
ふわり。マテアが落とした毛布が投げられ、彼女の上にかぶさる。
「その娘、どうやら陽に弱いようだからね」
言われて覗きこんだ面が、意識を失いながらも苦痛に歪んでいることにはじめて気付いて、レンジュは短く礼を言った。
彼が支払った額を考慮すれば、使い古した安物の毛布をくれた程度で礼を言う必要などなく、また彼等奴隷商人がどういった輩であるのか、彼等が本当は彼女をどうしようとしていたかも察していたが、それでも――彼女と自分を会わせてくれたのだと思うと、それだけで、感謝の気持ちがこみ上げた。
レンジュの歩行に反応して、野次馬たちは引き潮のように道を開く。両側に連なる男たちから一斉に羨望の眼差しを受けても動じることなく、レンジュはハリの待つ出口へ向かって歩いて行った。
1
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

杜の国の王〜この子を守るためならなんだって〜
メロのん
ファンタジー
最愛の母が死んだ。悲しみに明け暮れるウカノは、もう1度母に会いたいと奇跡を可能にする魔法を発動する。しかし魔法が発動したそこにいたのは母ではなく不思議な生き物であった。
幼少期より家の中で立場の悪かったウカノはこれをきっかけに、今まで国が何度も探索に失敗した未知の森へと進む。
そこは圧倒的強者たちによる弱肉強食が繰り広げられる魔境であった。そんな場所でなんとか生きていくウカノたち。
森の中で成長していき、そしてどのように生きていくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる