月光聖女~月の乙女は半身を求める~

46(shiro)

文字の大きさ
上 下
43 / 90
第11章

交わる運命は耐え難き灼熱のもとで 6

しおりを挟む
「ゼクロス!」

 今にも掴みかかりそうだったゼクロスを制したのは中年女だった。

「いいかげんにしな、みっともない。あんたは額を提示し、むこうはちゃんとそれに応えた。
 誰がはらおうと関係あるもんか。貴族だろうが雑兵だろうが、金は金。はらったやつがあたしらの客さ。分割にしようとしない分、どっかのケチなお貴族さまよかよっぽど上客ってもんだ。
 だろう?」

 ぐっ、と言葉につまり、黙りこんだゼクロスに、問題は解決したとみたレンジュは再度背を向け立ち去ろうとする。だが三歩と行かないうちに、今度は中年女が呼びとめた。

「持ってきな」

 ふわり。マテアが落とした毛布が投げられ、彼女の上にかぶさる。

「その娘、どうやら陽に弱いようだからね」

 言われて覗きこんだ面が、意識を失いながらも苦痛に歪んでいることにはじめて気付いて、レンジュは短く礼を言った。

 彼が支払った額を考慮すれば、使い古した安物の毛布をくれた程度で礼を言う必要などなく、また彼等奴隷商人がどういった輩であるのか、彼等が本当は彼女をどうしようとしていたかも察していたが、それでも――彼女と自分を会わせてくれたのだと思うと、それだけで、感謝の気持ちがこみ上げた。

 レンジュの歩行に反応して、野次馬たちは引き潮のように道を開く。両側に連なる男たちから一斉に羨望の眼差しを受けても動じることなく、レンジュはハリの待つ出口へ向かって歩いて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...