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第4章 オルダニアの春

リチャード

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 リチャードの髪が夜風に揺れる。

 大きく開け放った窓から、冷たい空気が吹き込んできた。短い髪に慣れない彼は、頬をくすぐる髪をつい何度もかきあげてしまう。

 南向きの客間は、眼下に湖と湖畔の町並みを望むが、今はその境界線もあいまいだ。日のあるうち、よく晴れていれば、さらに南の大河の向こうに、王都が見えるかもしれない。

 見捨てられた城——……

 この山城の呼び名は、ひどく不当ではないかとリチャードは考えた。

 そう思うことで、本来考えなければならない事実から目を逸らそうとしていたのかもしれない。彼には今、決断しなければならない差し迫った問題があまりにも多く、複雑重大で、やっと飛ぶことを覚えた小鳥が曲技飛行を求められている気分だった。

 ぶるりと身が震える。

 体の熱を芯から奪う真冬の風だ。

 リチャードは、手すりを握りしめた。
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