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1年
ギルド訓練場2
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室内履きを買った後も、せっかくだからといろんなお店を見てまわった。普段あまり学園の外には出ないからね、目の前にたくさんの商品があるってのが新鮮なんだ。学園の中にもちょっとした売店はあるけど、残念ながら品揃えは豊富とは言えないかな。絶対に必要なものってのはちゃんと揃ってるから、こだわりが無ければ何とかなるってレベルだ。
「セイン、これどう思う?」
「木彫りの小鳥だね。どう思うって?」
「実物があった方が練習しやすいだろうって思ってさ」
「あ、嗚呼……。うーん、どうしようかな?」
マシューが見せてくれたのは、木彫りの小鳥だ。僕の掌くらいのサイズだから小さいし、形も単純で、でもちゃんと小鳥ってのが分かるんだ。その小鳥はずんぐりとした体型のわりにバランスが取れてるみたいで、棚の上に置いても転がってったりしないんだ。
何だかんだ言ってマシューは親切だよね。この小鳥は、僕が土魔法で作るオブジェの参考になるんじゃないかってことだもん。実際マシューの絵を見て作るよりも、実物があった方が練習しやすいと思うし。まだ始めたばかりだから、参考になるものがあるのはとっても嬉しいや。
少しだけ悩んで、結局その置物は買うことにした。近い将来この置物とそっくりなものが、僕たちの部屋の棚に飾られることになると思う。と言うか、その予定だ。
その後も僕たちの散策と言う名の商店巡りは続く。
「この先はもう店は無いと思う」
「わあ……、僕たちかなり歩いてたんだね。じゃあ次はギルドへ行ってもいい?」
「了解」
道自体はまだまだ続いてるけど、お店があるエリアはここまでみたいだ。気が付いたら人もまばらで、広場の音楽も踊ってる人々の喧騒もほとんど聞こえてこなかった。夢中になっていろんな店を見て回ってたから、全然気が付かなかったよ。
来た道を戻ると人の多さで歩きにくいから、マシューの案内で別の路地から冒険者ギルドへ移動した。いろんな道を知ってるんだなぁって関心したらそれは全然違ってて、単なる勘なんだって。まだまだ街の中心に近い場所だから、方向さえ合ってれば迷うことは無いだろうってことだ。そうだね、そんなことすっかり忘れてたよ。
そんなこんなで冒険者ギルド。今日はお祭りだからギルド内は閑散としてると思ってたけどそれは全く違っていて、逆に以前来たときの倍くらいの人で賑わっていた。冒険者さんたちは、お祭りとか関係なく普通に仕事してるのかな? 騎士や憲兵はお祭りの日とかの方が忙しいけど、冒険者は逆だと思ってたよ。マジメなんだなぁ。
「オレはアルバイトの募集をチェックしてくる」
「うん、分かった」
学園祭での食べ歩きでかなり散財したからね、マシューとしてはちょっとしたアルバイトで小銭を稼ぎたいんだって。僕もやりたいけど、残念ながら下級生のうちはダメって言われてるんだ。ウチの両親は結構過保護なんだ。
「こんにちは。魔石が欲しいんですけど」
「ハイ、こんにちは。こちらがサンプルになりますが、どの大きさが良いですか?」
「えーっと、コレをお願いします」
「分かりました。少々お待ちくださいね」
僕が向かったのは、当たり前だけど学生用カウンターだ。
ギルドで僕たちが普通に買えるのは、だいたいの大きさが決まっていて、カウンターにいたお姉さんが見せてくれたサンプルの通り五種類なんだ。五種類って言っても大雑把な分け方だから、微妙に大きさは異なるよ。サンプルより大きい魔石は一般の人は買えないんだ。大きいのは公共の用途に使われるのがほとんどかな。逆にサンプルより小さいのはクズ魔石と言って、冒険者がギルドに持ち込んでも却下されるよ。
僕が選んだのは丁度真ん中の大きさの魔石だ。手頃なサイズってところだね。これより小さいと陣を描くのが大変だし、大きいと持ち運びが不便なんだ。主にポケットの大きさの問題で。
今買ったのを合わせると、現在僕が持ってる魔石は四個になる。他の三個はそれぞれ雷魔法、結界魔法、氷魔法の陣を彫ってあるんだ。結界と氷は冷蔵庫の代わりだよ。そこに飲み物を入れておくといつまでも冷たいから、暑い日には重宝したんだ。魔道具も売ってるけど、高いし、わざわざ買う必要性は感じなかったかな。雷の陣を彫ってる魔石は、もちろんマシューへのお仕置き用。何だかんだ言いつつ今世でも僕の必須アイテムだ。
カウンターを離れて辺りを見回すと、マシューがリロイさんと話してるのを見つけた。リロイさんたちも今日は仕事だったのかな? でもラフな服装ぽいから違うのかもしれない。
「こんにちは」
「やあ。初めての学園祭は楽しかったかい?」
「ハイ! 美味しかったし、楽しかったです」
「美味しかったかぁ。食いしん坊の君が満足できて良かったな」
リロイさんはニコニコしながら僕の頭を撫でてくれた。エンダルベリーを食べる為にリロイさんたちを雇って魔物の森へ入ったからね、彼らの中では僕は食いしん坊キャラで定着しちゃったみたいだ。ちょっと不本意だけど、ベリーに関してだけは反論できないから仕方ないね。
「セイン、オレのアルバイトが決まったぞ。セインも一緒にやらないか?」
「決まって良かったね。でも僕の方はアルバイトは許可されてないから無理」
「それがさ、魔石に魔力を籠めるだけなんだよ。場所はギルドの小部屋。簡単だし危険も無いし、これならセインの両親も怒りはしないんじゃないか?」
「うーん……」
「オレはセインと一緒にやりたいなぁ」
「……分かった。一緒にやる」
と言うことで、何故か僕のアルバイトも決まってしまった。簡単だし単純だし、僕個人としては何の問題も無いんだけどね。とりあえず親には手紙を出しておこう。お小言くらいは貰うかもしれないけど、まあいいか。
「それで、アルバイトは何時からなの?」
「明日。時間は手続きしたら分かるみたいだ。今日中に空の魔石が沢山出るんだってさ」
「今日中?」
「今日中にいっぱい出るぞ。せっかく来たんだから、ついでに見学して行くか?」
マシューとの会話にリロイさんが答えてくれた。でもやっぱり意味不明。何だろうね?
アルバイトの募集が締め切られると困るので、まずは学生用カウンターで手続きした。既に僕たち以外にも数名の応募があったから、のんびりしてたらアウトだったかも。カウンターでは僕たちが魔石に魔力を籠めれることを確認してから受付完了となった。明日は午前中なら何時来ても良いんだってさ。
「終わったみたいだな。よし、じゃあこっちに付いて来てくれ」
「何処に行くんですか?」
「行けば分かる。そして、男の子なら絶対ワクワクすると思うぞ」
そう言って連れてこられたのは、ギルドの訓練場だった。
「セイン、これどう思う?」
「木彫りの小鳥だね。どう思うって?」
「実物があった方が練習しやすいだろうって思ってさ」
「あ、嗚呼……。うーん、どうしようかな?」
マシューが見せてくれたのは、木彫りの小鳥だ。僕の掌くらいのサイズだから小さいし、形も単純で、でもちゃんと小鳥ってのが分かるんだ。その小鳥はずんぐりとした体型のわりにバランスが取れてるみたいで、棚の上に置いても転がってったりしないんだ。
何だかんだ言ってマシューは親切だよね。この小鳥は、僕が土魔法で作るオブジェの参考になるんじゃないかってことだもん。実際マシューの絵を見て作るよりも、実物があった方が練習しやすいと思うし。まだ始めたばかりだから、参考になるものがあるのはとっても嬉しいや。
少しだけ悩んで、結局その置物は買うことにした。近い将来この置物とそっくりなものが、僕たちの部屋の棚に飾られることになると思う。と言うか、その予定だ。
その後も僕たちの散策と言う名の商店巡りは続く。
「この先はもう店は無いと思う」
「わあ……、僕たちかなり歩いてたんだね。じゃあ次はギルドへ行ってもいい?」
「了解」
道自体はまだまだ続いてるけど、お店があるエリアはここまでみたいだ。気が付いたら人もまばらで、広場の音楽も踊ってる人々の喧騒もほとんど聞こえてこなかった。夢中になっていろんな店を見て回ってたから、全然気が付かなかったよ。
来た道を戻ると人の多さで歩きにくいから、マシューの案内で別の路地から冒険者ギルドへ移動した。いろんな道を知ってるんだなぁって関心したらそれは全然違ってて、単なる勘なんだって。まだまだ街の中心に近い場所だから、方向さえ合ってれば迷うことは無いだろうってことだ。そうだね、そんなことすっかり忘れてたよ。
そんなこんなで冒険者ギルド。今日はお祭りだからギルド内は閑散としてると思ってたけどそれは全く違っていて、逆に以前来たときの倍くらいの人で賑わっていた。冒険者さんたちは、お祭りとか関係なく普通に仕事してるのかな? 騎士や憲兵はお祭りの日とかの方が忙しいけど、冒険者は逆だと思ってたよ。マジメなんだなぁ。
「オレはアルバイトの募集をチェックしてくる」
「うん、分かった」
学園祭での食べ歩きでかなり散財したからね、マシューとしてはちょっとしたアルバイトで小銭を稼ぎたいんだって。僕もやりたいけど、残念ながら下級生のうちはダメって言われてるんだ。ウチの両親は結構過保護なんだ。
「こんにちは。魔石が欲しいんですけど」
「ハイ、こんにちは。こちらがサンプルになりますが、どの大きさが良いですか?」
「えーっと、コレをお願いします」
「分かりました。少々お待ちくださいね」
僕が向かったのは、当たり前だけど学生用カウンターだ。
ギルドで僕たちが普通に買えるのは、だいたいの大きさが決まっていて、カウンターにいたお姉さんが見せてくれたサンプルの通り五種類なんだ。五種類って言っても大雑把な分け方だから、微妙に大きさは異なるよ。サンプルより大きい魔石は一般の人は買えないんだ。大きいのは公共の用途に使われるのがほとんどかな。逆にサンプルより小さいのはクズ魔石と言って、冒険者がギルドに持ち込んでも却下されるよ。
僕が選んだのは丁度真ん中の大きさの魔石だ。手頃なサイズってところだね。これより小さいと陣を描くのが大変だし、大きいと持ち運びが不便なんだ。主にポケットの大きさの問題で。
今買ったのを合わせると、現在僕が持ってる魔石は四個になる。他の三個はそれぞれ雷魔法、結界魔法、氷魔法の陣を彫ってあるんだ。結界と氷は冷蔵庫の代わりだよ。そこに飲み物を入れておくといつまでも冷たいから、暑い日には重宝したんだ。魔道具も売ってるけど、高いし、わざわざ買う必要性は感じなかったかな。雷の陣を彫ってる魔石は、もちろんマシューへのお仕置き用。何だかんだ言いつつ今世でも僕の必須アイテムだ。
カウンターを離れて辺りを見回すと、マシューがリロイさんと話してるのを見つけた。リロイさんたちも今日は仕事だったのかな? でもラフな服装ぽいから違うのかもしれない。
「こんにちは」
「やあ。初めての学園祭は楽しかったかい?」
「ハイ! 美味しかったし、楽しかったです」
「美味しかったかぁ。食いしん坊の君が満足できて良かったな」
リロイさんはニコニコしながら僕の頭を撫でてくれた。エンダルベリーを食べる為にリロイさんたちを雇って魔物の森へ入ったからね、彼らの中では僕は食いしん坊キャラで定着しちゃったみたいだ。ちょっと不本意だけど、ベリーに関してだけは反論できないから仕方ないね。
「セイン、オレのアルバイトが決まったぞ。セインも一緒にやらないか?」
「決まって良かったね。でも僕の方はアルバイトは許可されてないから無理」
「それがさ、魔石に魔力を籠めるだけなんだよ。場所はギルドの小部屋。簡単だし危険も無いし、これならセインの両親も怒りはしないんじゃないか?」
「うーん……」
「オレはセインと一緒にやりたいなぁ」
「……分かった。一緒にやる」
と言うことで、何故か僕のアルバイトも決まってしまった。簡単だし単純だし、僕個人としては何の問題も無いんだけどね。とりあえず親には手紙を出しておこう。お小言くらいは貰うかもしれないけど、まあいいか。
「それで、アルバイトは何時からなの?」
「明日。時間は手続きしたら分かるみたいだ。今日中に空の魔石が沢山出るんだってさ」
「今日中?」
「今日中にいっぱい出るぞ。せっかく来たんだから、ついでに見学して行くか?」
マシューとの会話にリロイさんが答えてくれた。でもやっぱり意味不明。何だろうね?
アルバイトの募集が締め切られると困るので、まずは学生用カウンターで手続きした。既に僕たち以外にも数名の応募があったから、のんびりしてたらアウトだったかも。カウンターでは僕たちが魔石に魔力を籠めれることを確認してから受付完了となった。明日は午前中なら何時来ても良いんだってさ。
「終わったみたいだな。よし、じゃあこっちに付いて来てくれ」
「何処に行くんですか?」
「行けば分かる。そして、男の子なら絶対ワクワクすると思うぞ」
そう言って連れてこられたのは、ギルドの訓練場だった。
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