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1年
魔物の森へ1
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夏休みが明けて後期授業が始まった。久しぶりに会った両親はとても元気そうだったよ。嬉しいことに来年は、僕の弟か妹が産まれることになったんだって。僕がいなくなって夫婦でイチャイチャした結果らしいよ。使用人たちが噂してるのを聞いちゃった。
前世も前々世も僕は義理の親に育ててもらったから、こうやって血の繋がってる家族って初めてなんだ。それに兄弟もいなかったしね。だからものすごく楽しみ。
マシューは家には戻らずアルバイトをしてたんだって。トーマ君とペアになって、いろんなところで雑用をやったと聞いてる。二人とも学費だけ免除だから、家からの仕送りだけでは足りない分を稼いだって話だった。
アルバイトはね、冒険者ギルドで紹介してもらうんだよ。この土地だけの特例で、冒険者ギルドの中に学生専用窓口があるんだ。エンダル学園の生徒なら誰でも利用できて、学年に応じてアルバイトを斡旋してくれるんだ。十三歳になったら冒険者として登録は出来るけど、学園生は卒業までは学生専用窓口の利用を義務付けられてるそうだ。
この学生専用窓口はアルバイトをお願いする側にもメリットがあるんだよ。仕事に来る子は学園に身元を保証されてるからね、安心なんだってさ。
「準備出来たか?」
「うん。荷物はもう一回確認したから大丈夫だよ」
「水筒は?」
「持ったよ。ちゃんと水も入れた。今回は魔法に頼っちゃダメって言われたからね」
「水球を出せないヤツの方が多いからな。正論だと思うぜ」
「だね」
「おしっ、じゃあ行くか!」
気合を入れて僕たちは寮の部屋を後にした。
実は今日、僕たちのクラスは魔物の森へ行くんだ。これは1年生の恒例行事で、入学したときからずーっと楽しみにしてたんだよ。
僕たちが行くのは魔物の森の中でも比較的安全な浅い場所だ。魔物に出会う可能性はほぼ無いよ。遠足みたいなカンジで森の雰囲気だけを味合わせるのが目的。この行事は以前は3年生を対象にしてたんだけど、引率者の注意を聞かない子が出ることが多かったのもあって、1年生用の行事に変えたそうなんだ。1年生だとまだ素振り以外剣の授業は無いし、身体も小さく入学したばかりで従順な子が多いからってのが理由らしいよ。何となく、学園側も苦労したんだなって思っちゃうね。
「ここが魔物の森の入り口だ。ここ以外は分厚い土の壁で覆っていて、魔物が森の外に出ないようにしている。門を通るときに分かると思うが、かなり分厚い壁だ。土壁ではあるものの、魔法で固めてほとんど石壁と言っても変わらないものだぞ」
一旦教室に集まった僕たちは、フィラー先生に先導されて魔物の森の入り口までやって来た。そして今、森に入る前に簡単な説明を行ってるところだ。
「今日は私が一括でやるから君たちは必要無いが、魔物の森へ入るときはそこの受付で必要事項を記入するのを義務付けられている。書く内容としては、名前の他には滞在予定日数等だな。予定を大幅に過ぎても戻ってこない場合は、学生の場合は捜索隊が派遣される。冒険者の場合は調査隊が派遣されることもある」
そう言ってから先生は一枚の紙を僕たちに見せた。
「これが受付に出す用紙だな。学生の場合は事前に記入して先生のサインを貰う必要がある。受付に持って行ったとき先生のサインが無いと、ここの門は開けて貰えないからな。興味本位で入ろうとしても無理だってのは覚えておくように。特にアルト君、君はこっそりここへ来そうだから、しっかりと覚えておくように」
「えっ、何で分かったの?」
これには全員が笑っちゃったよ。でも本当にアルト君なら何かやりそうな雰囲気なんだよね。先生が事前に釘を刺すのも分かるかも。
「それじゃあ今日一日案内をしてくれる冒険者さんたちを紹介するから、班に分かれてくれ。皆冒険者さんたちの言うことをしっかり聞くこと。君たちのことは後で冒険者さんたちから報告してもらうことになってるから、私が見てないからと言って安心しないように。
念のためにもう一度言っておくがここは魔物の森だ。比較的安全な場所に行くことになってるが、魔物が出る可能性があることを忘れないように。それじゃあいってらっしゃい」
僕たちは四人一組になって、それぞれ担当の冒険者グループと挨拶を交わした。冒険者グループは四人、または五人のグループで、僕たちの担当は五年前から学園と契約してるんだって。だから案内も慣れてるそうだ。
「じゃあ出発するか。とりあえず森に入ろう。付いてきて」
いつまでも門の前にいても仕方ないってことで、さっそく僕たちは森の中へ入った。今世では初めての魔物の森、ワクワクしちゃうね。
「あれっ、道がある!」
「昔は無かったそうだぞ。ダンジョンが発見されて道を作ったと言う話だ。今日は近場だから歩きだが、ダンジョンに行く場合は魔道カートに乗っていくんだ」
「魔道カート?」
「あー、せっかくだから見て行くか? 一度門を出ることになるが良いかな?」
全員で大きく頷いてしまった。と言うことで入ったばかりの森を出て、再度受付のところへ移動した。
それにしても魔物の森に道があってビックリだよ。魔物の森もいろいろ変わったんだなぁとしみじみしちゃった。きっとマシューも同じことを考えてると思う。
「ほらっ、これが魔道カートだ。動かす場合はここに魔石をセットするんだ」
受付の隣の小屋で見せてもらった魔道カートは、屋根の無い箱車ってカンジのものだった。魔道馬車をもっと簡素化したようなものなのかな? これ一台に大人六人が乗れるくらいの大きさだった。
ダンジョンに行く場合は、早朝にこの魔道カートに乗って出発するんだって。そうすると暗くなる頃に休憩小屋に到着できるそうだ。そこで一泊して、それから徒歩でダンジョンに向かうってのが通常の流れ。魔道カートは魔石をずらして置いてから、鍵をかけて他の魔石を置けないようにするのが決まりだそうだよ。盗難防止だね。ちなみに鍵は出発前に任意の数字の組み合わせを設定するんだってさ。
森の中に広い道があるのも驚いたけど、休憩小屋があるのにはもっと驚いた。そしてもっともっと驚いたことは、その小屋には人が常駐してるってことだ。学園と契約した数グループの冒険者たちが、交代でそこに常駐して管理してるんだって。詳しい内容は聞いてないけど、常に魔石を使った結界を張ってるそうだ。
「よし。じゃあ、改めて森へ入ろうか」
と言うことで、他の班よりかなり遅くなってしまったけど、僕らの魔物の森探検と言う名の遠足が始まった。
※※※
実際には壁では無く塀です。
本来は修正すべきなのですが、申し訳ありません、今回は断念しました。
ご了承ください。
以降も『土壁』と言う単語が出てきますが、脳内変換よろしくお願いいたします。
前世も前々世も僕は義理の親に育ててもらったから、こうやって血の繋がってる家族って初めてなんだ。それに兄弟もいなかったしね。だからものすごく楽しみ。
マシューは家には戻らずアルバイトをしてたんだって。トーマ君とペアになって、いろんなところで雑用をやったと聞いてる。二人とも学費だけ免除だから、家からの仕送りだけでは足りない分を稼いだって話だった。
アルバイトはね、冒険者ギルドで紹介してもらうんだよ。この土地だけの特例で、冒険者ギルドの中に学生専用窓口があるんだ。エンダル学園の生徒なら誰でも利用できて、学年に応じてアルバイトを斡旋してくれるんだ。十三歳になったら冒険者として登録は出来るけど、学園生は卒業までは学生専用窓口の利用を義務付けられてるそうだ。
この学生専用窓口はアルバイトをお願いする側にもメリットがあるんだよ。仕事に来る子は学園に身元を保証されてるからね、安心なんだってさ。
「準備出来たか?」
「うん。荷物はもう一回確認したから大丈夫だよ」
「水筒は?」
「持ったよ。ちゃんと水も入れた。今回は魔法に頼っちゃダメって言われたからね」
「水球を出せないヤツの方が多いからな。正論だと思うぜ」
「だね」
「おしっ、じゃあ行くか!」
気合を入れて僕たちは寮の部屋を後にした。
実は今日、僕たちのクラスは魔物の森へ行くんだ。これは1年生の恒例行事で、入学したときからずーっと楽しみにしてたんだよ。
僕たちが行くのは魔物の森の中でも比較的安全な浅い場所だ。魔物に出会う可能性はほぼ無いよ。遠足みたいなカンジで森の雰囲気だけを味合わせるのが目的。この行事は以前は3年生を対象にしてたんだけど、引率者の注意を聞かない子が出ることが多かったのもあって、1年生用の行事に変えたそうなんだ。1年生だとまだ素振り以外剣の授業は無いし、身体も小さく入学したばかりで従順な子が多いからってのが理由らしいよ。何となく、学園側も苦労したんだなって思っちゃうね。
「ここが魔物の森の入り口だ。ここ以外は分厚い土の壁で覆っていて、魔物が森の外に出ないようにしている。門を通るときに分かると思うが、かなり分厚い壁だ。土壁ではあるものの、魔法で固めてほとんど石壁と言っても変わらないものだぞ」
一旦教室に集まった僕たちは、フィラー先生に先導されて魔物の森の入り口までやって来た。そして今、森に入る前に簡単な説明を行ってるところだ。
「今日は私が一括でやるから君たちは必要無いが、魔物の森へ入るときはそこの受付で必要事項を記入するのを義務付けられている。書く内容としては、名前の他には滞在予定日数等だな。予定を大幅に過ぎても戻ってこない場合は、学生の場合は捜索隊が派遣される。冒険者の場合は調査隊が派遣されることもある」
そう言ってから先生は一枚の紙を僕たちに見せた。
「これが受付に出す用紙だな。学生の場合は事前に記入して先生のサインを貰う必要がある。受付に持って行ったとき先生のサインが無いと、ここの門は開けて貰えないからな。興味本位で入ろうとしても無理だってのは覚えておくように。特にアルト君、君はこっそりここへ来そうだから、しっかりと覚えておくように」
「えっ、何で分かったの?」
これには全員が笑っちゃったよ。でも本当にアルト君なら何かやりそうな雰囲気なんだよね。先生が事前に釘を刺すのも分かるかも。
「それじゃあ今日一日案内をしてくれる冒険者さんたちを紹介するから、班に分かれてくれ。皆冒険者さんたちの言うことをしっかり聞くこと。君たちのことは後で冒険者さんたちから報告してもらうことになってるから、私が見てないからと言って安心しないように。
念のためにもう一度言っておくがここは魔物の森だ。比較的安全な場所に行くことになってるが、魔物が出る可能性があることを忘れないように。それじゃあいってらっしゃい」
僕たちは四人一組になって、それぞれ担当の冒険者グループと挨拶を交わした。冒険者グループは四人、または五人のグループで、僕たちの担当は五年前から学園と契約してるんだって。だから案内も慣れてるそうだ。
「じゃあ出発するか。とりあえず森に入ろう。付いてきて」
いつまでも門の前にいても仕方ないってことで、さっそく僕たちは森の中へ入った。今世では初めての魔物の森、ワクワクしちゃうね。
「あれっ、道がある!」
「昔は無かったそうだぞ。ダンジョンが発見されて道を作ったと言う話だ。今日は近場だから歩きだが、ダンジョンに行く場合は魔道カートに乗っていくんだ」
「魔道カート?」
「あー、せっかくだから見て行くか? 一度門を出ることになるが良いかな?」
全員で大きく頷いてしまった。と言うことで入ったばかりの森を出て、再度受付のところへ移動した。
それにしても魔物の森に道があってビックリだよ。魔物の森もいろいろ変わったんだなぁとしみじみしちゃった。きっとマシューも同じことを考えてると思う。
「ほらっ、これが魔道カートだ。動かす場合はここに魔石をセットするんだ」
受付の隣の小屋で見せてもらった魔道カートは、屋根の無い箱車ってカンジのものだった。魔道馬車をもっと簡素化したようなものなのかな? これ一台に大人六人が乗れるくらいの大きさだった。
ダンジョンに行く場合は、早朝にこの魔道カートに乗って出発するんだって。そうすると暗くなる頃に休憩小屋に到着できるそうだ。そこで一泊して、それから徒歩でダンジョンに向かうってのが通常の流れ。魔道カートは魔石をずらして置いてから、鍵をかけて他の魔石を置けないようにするのが決まりだそうだよ。盗難防止だね。ちなみに鍵は出発前に任意の数字の組み合わせを設定するんだってさ。
森の中に広い道があるのも驚いたけど、休憩小屋があるのにはもっと驚いた。そしてもっともっと驚いたことは、その小屋には人が常駐してるってことだ。学園と契約した数グループの冒険者たちが、交代でそこに常駐して管理してるんだって。詳しい内容は聞いてないけど、常に魔石を使った結界を張ってるそうだ。
「よし。じゃあ、改めて森へ入ろうか」
と言うことで、他の班よりかなり遅くなってしまったけど、僕らの魔物の森探検と言う名の遠足が始まった。
※※※
実際には壁では無く塀です。
本来は修正すべきなのですが、申し訳ありません、今回は断念しました。
ご了承ください。
以降も『土壁』と言う単語が出てきますが、脳内変換よろしくお願いいたします。
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