上 下
17 / 38

17「事前訓練」

しおりを挟む
次の日。夕方にクランハウスを出た俺達は、首都近郊の森へやって来た。

「ガウッッ!!」
「来たか! みんな! 暗闇における戦闘と、連携を確かめるぞ!!」

俺の合図で陣形を組む。
林道に現れたモンスターは、ポイズンウルフ5体。

その毒牙に噛まれると、丸1日動けなくなる。
集団に襲われれば、お陀仏間違いなし。

「突撃だっつうの!!」

前方のサーシャが突撃し、ポイズンウルフの1体を串刺しにした。

残りの4体は、サーシャの迫力に少し怯む。
俺は、すかさずミスリルの盾を構え剣で打ち鳴らす。

カンカンと甲高い音に注意が逸れたポイズンウルフ達。

その隙にマッドが後ろへ回り込み、1体のポイズンウルフを切り刻んだ。

更に俺は盾を打ち鳴らす。苛立った3体のポイズンウルフは、俺に向かって飛び込んできた。

盾を前方に構え体勢を整える。後ろには、戻ったサーシャとリリエッタが体を支えてくれていた。

3体のポイズンウルフが牙を剥き盾に突進。少し後ろに下がったが、支えてくれた二人のお陰で堪えられた。

「ガウガウッッ!!」

盾に牙を立てて噛みつこうとするポイズンウルフ。

俺は盾に空いた縦長の穴から、ポイズンウルフの喉元へと剣を突き刺し1体を葬った。

残り2体は、左右からリリエッタとサーシャがそれぞれクレイモアで首を叩き斬り、ランスで串刺しにして討伐完了だ。

「やったな……」
「良い連携だったと思います」
「うちら完璧だったよね!」
「俺達最強っす!」

連携の感触を得た俺達は、少し安心したように表情を緩めていた。

今回の戦果は、サーシャのスキルがどのようなものか分かった事だ。

サーシャが突撃した瞬間、俺は評価でステータスを確認したのだが、

《サーシャ  21歳  女》
・ジョブ【無鉄砲】Lv19
・HP=90
・SP=25
・攻撃力=60
・防御力=30
・素早さ=80
・器用さ=30
・固有スキル【特攻隊長】

攻撃力と素早さがそれぞれ20ほど上昇していたのだ。

特攻隊長のスキルは、突撃時に攻撃力と素早さを上げる効果があるみたいだな。

さて、次はマッドのスキルの効果を確かめる事と、嘘をついてしまう本質をどう扱うかだ。

俺達は森の林道をしばらく歩き、次の戦闘へ構えていた。

ガサガサッッ。

林道の左側の森から音が聞こえる。
何か隠れているのは確かだ。

「マッド、左に何が隠れているか教えてくれ。因みに嘘をついてな」
「嘘っすか!? わ、わかったっす……あれは一角ウサギですね」

マッドの言葉を聞いた後、茂みに隠れるなにかにジリジリと近付いていく。

すると、茂みから一角ウサギが逃げていく姿が見えた。

成る程……嘘をついてくれと頼めば、本当の答えが返ってくるのか。

それなら、かなり使える人材じゃないか?

スキルのお陰で索敵能力は高いし、本人の戦闘能力もそこそこ高い。

よし、後はリリエッタのスキルだけだな。
まあ、ある程度察しはついているので確かめるだけだ。

「お、次は骸骨兵士か!」

林道に現れた3体の骸骨。

鎧を着て剣を持っているその姿から、戦場で死んだ兵士が化けたのだと噂されるモンスターだ。

そんじゃあ、ここはリリエッタに頑張って貰うか。

「リリエッタ! お前なんかクビだ!」
「ちょ、なに言ってんすか急に!?」
「そうよ! 冗談でもそんな事言ったらっっ」
「私はクビ……や、やっぱり……私なんて居ない方が良かったんだ……」

うっ、予想通り鬱状態に入ってしまった……。

しかし、こうしないとスキルを確かめられないので心苦しいがしょうがない。

「リリエッタ! お前がクビになったのはあの骸骨兵士のせいだ! あの骨が全部悪いんだぞ!」
「あの骸骨が……くそ……くそがああああーっっ!!」

やっぱり突っ込んで行ったか。
いやー、しかし速い。
目にも止まらぬとはこの事だ。

あっという間に3体の骸骨兵士を骨ごと斬り伏せたリリエッタはその場にへたりこむ。

「ごめん……全部嘘。リリエッタを離したりする訳ないだろ」
「本当?」

「ああ、今日も寝かせないからな? あ・い・し・て・る・ぞ」
「わ、私もっ!」

よし、通常状態に戻った。

「なにこれ……もしかして、うちら毎回これ見なきゃいけないの?」
「こっちの精神がゴリゴリ削れるっす……」

べ、別に毎回じゃねえよ。この戦い方はピンチの時と、突然鬱になった時にしか使わないし。

それに、リリエッタのスキルの一端が分かったから良いだろ……。

正直、リリエッタのスキルはヤバい。

鬱状態で敵に突っ込ませる事で、能力が飛躍的に上がるみたいだ。

《リリエッタ=バルロン  21歳  女》
・ジョブ【躁鬱】Lv19
・HP=50
・SP=20
・攻撃力=120
・防御力=120
・素早さ=120
・器用さ=120
・固有バフ【躁鬱の極】

これが鬱状態で敵に突っ込んだ時の能力値。

HPとSPが半分減るが、他の能力が三倍に羽上がる凶悪なスキル。

だが、使いどころは難しそうだな。
HPとSPが半分減るのは危険だ。

まだ少し調べたい所だが、連発するのは危険。
後日、自然に鬱状態になった時にでも確かめよう。

その後、俺達は親っさんの防具作り終わるまでの一週間、ダンジョンでの戦いを想定した夜の戦闘を繰り返した。

お陰で連携が深まり、戦闘力が日に日に上がっていくのを感じていた。

そして、その副産物なのか、仲間のジョブが進化を見せていく――
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

処理中です...