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04「気分屋? 無鉄砲?」
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「俺はホワイトカンパニーのリーダー、エレンです。それでは、さっそく面接を始めたいと思います」
「宜しくお願い致します」
「よろでーす!」
リリエッタとサーシャの面接が始まった。
リリエッタは礼儀正しく頭を下げていたが、サーシャの方は敬礼のようなポーズで少しふざけている。
言うなれば清楚系とギャル系ってとこか?
どっちも好きなのでなんでもいいです。
「今までにクランに加入した事はありますか?」
「はい。一度だけ」
「辞めちゃったけどね~」
「なにか事情があったのですか?」
「それは……」
「うーん……」
俺がそう聞くと、2人は突然口ごもってしまった。
ん? ちょっと不穏な空気だな……。
「いや、無理して話す必要はありませんよ! では、2人のジョブを教えて頂けますか?」
「やはり教えなきゃダメですよね……」
「私達、ちょっと特殊なジョブでね……」
あれ? なんか不味い方向に向かってる気がするぞ。
とりあえず確認だけはしないとな。
「そ、そうですか……ジョブを確認するのが必須条件なので、自分から言いたくないなら神殿発行のジョブ証明書を見せて下さい」
俺の申し出にリリエッタはオドオドと、サーシャは渋々といった感じでジョブ証明書を差し出した。
「ありがとうございます……え、これは!?」
確認して本日二度目のビックリ。
2人のジョブは、なんと……。
「この【躁鬱(そううつ)】と、【無鉄砲】というのはなんですか……」
「おかしいですよね……」
「ははっ……」
よく分からんジョブだが、詳しく聞いてみない事には判断出来ない。
「まず、【躁鬱】のジョブから説明して頂けませんか」
「はい……」
俺の問いに、リリエッタは重い口を開いた。
「読んで字の如くと言いますか……その天職を授かった時から気分が激しく変わるんです。今は落ち着いていますが、一度状態に入ると自分ではコントロール出来なくて……」
なんだそれ……完全に"お薬出しときます"の状態だな。
そもそも、躁鬱は精神疾患の一種であって、ジョブと言えるのだろうか。
「躁鬱状態の時は何か特徴があるんですか?」
「はい。躁の時はなんでも出来る気がして行動的になるんです。戦闘なんかの時もドンドン前に出ちゃって……」
「なるほど。では、鬱の時は?」
「逆に落ち込んでなにも手がつきません……戦闘の時に鬱に変わると立ち尽くしてしまって何度か命の危機に……」
それは危ない。非常に危険なジョブだな。
「分かりました……では【無鉄砲】の方はどういったジョブなんですか?」
今度はサーシャの方。
こっちも聞かないと良く分からないジョブだ。
「あたしは~、馬鹿みたいに突っ込んでいきまーす! 考えなしって良く言われる!」
「ああ、そうなんですか……では、リリエッタさんが躁状態でサーシャさんが常に突っ込んでいく時は、凄い突進力を生みそうですね……」
ダメだこりゃ。
良く分からんフォローを入れてしまった。
「話して頂き、ありがとうございました。それを踏まえちょっとお聞きしたいんですが……お二人、クランをクビになったりしてます?」
「うっ……」
「へへ……」
胸を抑え何かを思い出しているリリエッタ。
気まずそうに頭を掻くサーシャ。
ああ、こりゃ図星を突いてしまったなと、思った。
「あの……やはり不合格ですか? そうですよね……私なんか必要ないですよね」
「いや、まだ合否はこれから決めますから!」
「良いんです別に……私なんてどうせクズみたいなもんですから……さようなら……もう一生会う事はないですね」
「あ、ちょっと待って下さい!」
リリエッタは、ふらふらと立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
「もしかして、あれが"鬱"状態ですか……?」
「そうそう! あれ元に戻すの大変なんだよね。じゃ、私も追いかけるから!」
「あっ、明日合否を伝えるので、同じ時間にギルドに来て下さい!」
「りょ~! 今日はありがとねー!」
軽く手を振り、リリエッタを追いかけ部屋を出たサーシャ。はにかんだ笑顔はやっぱり可愛い。
いや、しかし困った。
3人のクランメンバーを獲得出来ると勇んで来たは良いが、まさかあんなに変わったジョブの持ち主達だったとは……。
しかも俺を含めて全員クランをクビになっている。
「あれか? クラン名を【リストラーズ】にでも変えた方が良いか?」
いや、冗談言ってる場合じゃないな。
もしあの3人を雇うとして、俺に使いこなせるのか?
ここはやっぱり、次の機会を待ってもう一度募集をかけるか……。
ああ、でもな。それだとあの3人を見捨てたみたいで後味が悪い。俺が見捨てられた口なのに、同じ事をしたら俺まで最低になってしまう。
しかしだ。雇ったとしてどう使えば良い?
なにか良い案はないか……あっ、
「PDCAサイクル……」
考えていたら前世の記憶で得た知識を思い出した。
PDCAサイクルとは、品質管理に置いて製品の品質向上や改善を助ける"ツール《道具》"として使われている考え方だ。
Pが、プラン『計画、企て』
Dが、、ドゥ『実行、行動』
Cが、チェック『評価、確認』
Aが、アクション『改善』
なんでこんな事を思い出したか分からないが、天啓のような気がする。
そうだ。言い方は悪いが、あの3人を自分で作った製品と考えれば良い。
製品を売るために品質を改善向上させ、高性能の製品として売るんだ。
ここでの売るとは『冒険者活動』の事だな。
俺は、3人の良い所を伸ばし、悪い所を改善する。
そのために"PDCAサイクル"を回し、3人を最高の冒険者に育てれば良いじゃないか。
そうすれば自ずと結果は出る筈だ。
良かろうが悪かろうが……。
という事であの3人は合格!
ホワイトカンパニーのメンバーとして迎え入れよう!
そしたら先ずは、PDCAのP《計画》から!
3人を改善向上させるために悪い所と良い所を全て洗い出すんだ。
そのためには、一緒にクエストを受けてみないとな――
「宜しくお願い致します」
「よろでーす!」
リリエッタとサーシャの面接が始まった。
リリエッタは礼儀正しく頭を下げていたが、サーシャの方は敬礼のようなポーズで少しふざけている。
言うなれば清楚系とギャル系ってとこか?
どっちも好きなのでなんでもいいです。
「今までにクランに加入した事はありますか?」
「はい。一度だけ」
「辞めちゃったけどね~」
「なにか事情があったのですか?」
「それは……」
「うーん……」
俺がそう聞くと、2人は突然口ごもってしまった。
ん? ちょっと不穏な空気だな……。
「いや、無理して話す必要はありませんよ! では、2人のジョブを教えて頂けますか?」
「やはり教えなきゃダメですよね……」
「私達、ちょっと特殊なジョブでね……」
あれ? なんか不味い方向に向かってる気がするぞ。
とりあえず確認だけはしないとな。
「そ、そうですか……ジョブを確認するのが必須条件なので、自分から言いたくないなら神殿発行のジョブ証明書を見せて下さい」
俺の申し出にリリエッタはオドオドと、サーシャは渋々といった感じでジョブ証明書を差し出した。
「ありがとうございます……え、これは!?」
確認して本日二度目のビックリ。
2人のジョブは、なんと……。
「この【躁鬱(そううつ)】と、【無鉄砲】というのはなんですか……」
「おかしいですよね……」
「ははっ……」
よく分からんジョブだが、詳しく聞いてみない事には判断出来ない。
「まず、【躁鬱】のジョブから説明して頂けませんか」
「はい……」
俺の問いに、リリエッタは重い口を開いた。
「読んで字の如くと言いますか……その天職を授かった時から気分が激しく変わるんです。今は落ち着いていますが、一度状態に入ると自分ではコントロール出来なくて……」
なんだそれ……完全に"お薬出しときます"の状態だな。
そもそも、躁鬱は精神疾患の一種であって、ジョブと言えるのだろうか。
「躁鬱状態の時は何か特徴があるんですか?」
「はい。躁の時はなんでも出来る気がして行動的になるんです。戦闘なんかの時もドンドン前に出ちゃって……」
「なるほど。では、鬱の時は?」
「逆に落ち込んでなにも手がつきません……戦闘の時に鬱に変わると立ち尽くしてしまって何度か命の危機に……」
それは危ない。非常に危険なジョブだな。
「分かりました……では【無鉄砲】の方はどういったジョブなんですか?」
今度はサーシャの方。
こっちも聞かないと良く分からないジョブだ。
「あたしは~、馬鹿みたいに突っ込んでいきまーす! 考えなしって良く言われる!」
「ああ、そうなんですか……では、リリエッタさんが躁状態でサーシャさんが常に突っ込んでいく時は、凄い突進力を生みそうですね……」
ダメだこりゃ。
良く分からんフォローを入れてしまった。
「話して頂き、ありがとうございました。それを踏まえちょっとお聞きしたいんですが……お二人、クランをクビになったりしてます?」
「うっ……」
「へへ……」
胸を抑え何かを思い出しているリリエッタ。
気まずそうに頭を掻くサーシャ。
ああ、こりゃ図星を突いてしまったなと、思った。
「あの……やはり不合格ですか? そうですよね……私なんか必要ないですよね」
「いや、まだ合否はこれから決めますから!」
「良いんです別に……私なんてどうせクズみたいなもんですから……さようなら……もう一生会う事はないですね」
「あ、ちょっと待って下さい!」
リリエッタは、ふらふらと立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
「もしかして、あれが"鬱"状態ですか……?」
「そうそう! あれ元に戻すの大変なんだよね。じゃ、私も追いかけるから!」
「あっ、明日合否を伝えるので、同じ時間にギルドに来て下さい!」
「りょ~! 今日はありがとねー!」
軽く手を振り、リリエッタを追いかけ部屋を出たサーシャ。はにかんだ笑顔はやっぱり可愛い。
いや、しかし困った。
3人のクランメンバーを獲得出来ると勇んで来たは良いが、まさかあんなに変わったジョブの持ち主達だったとは……。
しかも俺を含めて全員クランをクビになっている。
「あれか? クラン名を【リストラーズ】にでも変えた方が良いか?」
いや、冗談言ってる場合じゃないな。
もしあの3人を雇うとして、俺に使いこなせるのか?
ここはやっぱり、次の機会を待ってもう一度募集をかけるか……。
ああ、でもな。それだとあの3人を見捨てたみたいで後味が悪い。俺が見捨てられた口なのに、同じ事をしたら俺まで最低になってしまう。
しかしだ。雇ったとしてどう使えば良い?
なにか良い案はないか……あっ、
「PDCAサイクル……」
考えていたら前世の記憶で得た知識を思い出した。
PDCAサイクルとは、品質管理に置いて製品の品質向上や改善を助ける"ツール《道具》"として使われている考え方だ。
Pが、プラン『計画、企て』
Dが、、ドゥ『実行、行動』
Cが、チェック『評価、確認』
Aが、アクション『改善』
なんでこんな事を思い出したか分からないが、天啓のような気がする。
そうだ。言い方は悪いが、あの3人を自分で作った製品と考えれば良い。
製品を売るために品質を改善向上させ、高性能の製品として売るんだ。
ここでの売るとは『冒険者活動』の事だな。
俺は、3人の良い所を伸ばし、悪い所を改善する。
そのために"PDCAサイクル"を回し、3人を最高の冒険者に育てれば良いじゃないか。
そうすれば自ずと結果は出る筈だ。
良かろうが悪かろうが……。
という事であの3人は合格!
ホワイトカンパニーのメンバーとして迎え入れよう!
そしたら先ずは、PDCAのP《計画》から!
3人を改善向上させるために悪い所と良い所を全て洗い出すんだ。
そのためには、一緒にクエストを受けてみないとな――
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