11 / 12
vol.11「スギの死……」
しおりを挟む
「あっ!あれ!あれ!」
初老の男は海に指差しをしていた。その先に視線を送ると、どんどん沖に向かって泳いでいる姿がみえた。
「え、駅から乗せてきたけど、と、突然ここで止めでけれって言うがら止めだ。したらバーンと海さ飛び込んでいって。おいも何とせばいいがわがんねくってよ。兄さん、なんとせばいい」
おーい!おーい!
運転手は海に向かって叫び続ける。
「まず、救急車を呼ぶっすべ。こうなれば何ともされねっす。運転手さんはわるぐねっす」
諭すと運転手は落ち着いた表情になった。
「おーい!戻ってけ-!戻ってけー!」
俺も海に向かってありったけの声を出した。しかし、どんどん沖に向かっていった。頭から肩にかけてのラインがスギに似ていた。しかし、スギはこんな大それたことはできないはずだ。そもそも泳げないだろう。そう思いつつも胸に引っかかるものはあった。岸から八十メートルくらいだろか。動きが止まった。頭だけがぽつんと浮かんでいる。いつの間にか救急車が到着していた。
「おーい!おーい!戻ってけ~!」
俺達はここぞとばかりに叫ぶ。奴はくるっと岸を向いた。福原?なぜ福原がここに?それは無表情で生気がなく亡霊のようだった。
目をこしらえてもう一度みるとスギだった。
「スギ-!」
俺は海に飛び込もうとした。しかし、救急隊員に制止された。
「こうなるともう手遅れです。」
「スギー!スギー!金かえさねくていいがら、べづにいいがら、戻ってけ~!」
我を忘れて叫び続けた。獣のように。涙、唾液、小便、体液……。生命を掌る液体を飛び散らせて吠えた。涙で歪んでいる眼を沖に向けると、もうスギの頭は沈んでいた。それから何十分経過しただろうか。スギの体が浮かんできた。遺体は救急隊員が用意した小型船で回収された。目の前で人の死をみるのは父親以来だった。正確に言うと父親の時はもう亡くなっていて遺体をみただけである。今回は後輩が逝く瞬間に立ち会った。スギはどんな気持ちだったのか、どれくらい覚悟を決めたのだろうか。福原……。お前もそういう気持ちで死んでいったのかなぁ。
初老の男は海に指差しをしていた。その先に視線を送ると、どんどん沖に向かって泳いでいる姿がみえた。
「え、駅から乗せてきたけど、と、突然ここで止めでけれって言うがら止めだ。したらバーンと海さ飛び込んでいって。おいも何とせばいいがわがんねくってよ。兄さん、なんとせばいい」
おーい!おーい!
運転手は海に向かって叫び続ける。
「まず、救急車を呼ぶっすべ。こうなれば何ともされねっす。運転手さんはわるぐねっす」
諭すと運転手は落ち着いた表情になった。
「おーい!戻ってけ-!戻ってけー!」
俺も海に向かってありったけの声を出した。しかし、どんどん沖に向かっていった。頭から肩にかけてのラインがスギに似ていた。しかし、スギはこんな大それたことはできないはずだ。そもそも泳げないだろう。そう思いつつも胸に引っかかるものはあった。岸から八十メートルくらいだろか。動きが止まった。頭だけがぽつんと浮かんでいる。いつの間にか救急車が到着していた。
「おーい!おーい!戻ってけ~!」
俺達はここぞとばかりに叫ぶ。奴はくるっと岸を向いた。福原?なぜ福原がここに?それは無表情で生気がなく亡霊のようだった。
目をこしらえてもう一度みるとスギだった。
「スギ-!」
俺は海に飛び込もうとした。しかし、救急隊員に制止された。
「こうなるともう手遅れです。」
「スギー!スギー!金かえさねくていいがら、べづにいいがら、戻ってけ~!」
我を忘れて叫び続けた。獣のように。涙、唾液、小便、体液……。生命を掌る液体を飛び散らせて吠えた。涙で歪んでいる眼を沖に向けると、もうスギの頭は沈んでいた。それから何十分経過しただろうか。スギの体が浮かんできた。遺体は救急隊員が用意した小型船で回収された。目の前で人の死をみるのは父親以来だった。正確に言うと父親の時はもう亡くなっていて遺体をみただけである。今回は後輩が逝く瞬間に立ち会った。スギはどんな気持ちだったのか、どれくらい覚悟を決めたのだろうか。福原……。お前もそういう気持ちで死んでいったのかなぁ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
朽ち果てた墓碑
枕崎 純之助
現代文学
道端で朽ち果てていく誰かの墓碑。
そこには確かに「死」があり「悲しみ」があった。
時の流れはそれすらも忘却の彼方へと運び去っていく。
今、そこにはもう何もない。
だから僕は……この記憶を何かに残したいと思った。
そこにあった「死」とかつてあった「生」を忘れないために。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
女ハッカーのコードネームは @takashi
一宮 沙耶
大衆娯楽
男の子に、子宮と女性の生殖器を移植するとどうなるのか?
その後、かっこよく生きる女性ハッカーの物語です。
守護霊がよく喋るので、聞いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる