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vol.5「パチンコ、酒……」
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何度も通っているパチンコ店「ヘブン」に入ると、ほぼ満席だった。世の中不景気で、一円でもいいから給料上げろと喚いているが、この業界だけは別世界である。田舎者の生き血を吸い取り、どんどん成長している。同士諸君、健闘を祈る。博打の業火に焼ようとしている旦那衆に向かって敬礼をする。
三千円のカードを買いカクテルフローラルという台の前に座った。リーチ目は来るのだが、大当たりにはならない。残高五百円になったところで隣の中年女性が、台を叩いて立ち上がり、外に出ていった。隣の椅子をみると長財布が落ちていた。俺の財布とは比較にならないほど重かった。慌てて外に出て姿を探したがもういなかった。仕方なく、カウンターにいる女性店員に理由を話して預けた。暫く打っていたが、上皿の玉は尽きようとしていた。保留ランプも四つあったが、いつの間にか一つになっていた。終わったな。心の中で敗戦宣言をした。そして缶コーヒーを持って立ち上がった。その時、リーチ!台が唸った。彼は教室の片隅でじっとしていた、おとなしかった、静かだった。しかし、己の力を蓄えていただけだった。天の声を待っていたのだ!そう、股くぐりの韓信のように。ほい!お前の時代がやってきた。思う存分采配をふるってこい!と言っても、もう兵隊はいないし。期待しないで眺めていた。ドゥルドゥルドゥル。最後の七が来た。来た。ドゥン!七は半分下にずれた。やはりだめだったか。この戦負けだった。出直してこよう。と思った瞬間、七は上に動いた。大当たり!大戟が将の心臓を突き刺した。すると隣の爺さんが上皿に玉を置いてくれた。
「よかったな。確変だ。ほれ、早く!早く!動かして」
「あ、ありがとうございます!」
まさか当たるとは思わなかったので、狼狽えてしまった。台から玉が吐き出され、箱を一杯にする。快感が湧き上がってくる。枯渇していた金脈は唸り湧き上がる。滾れ!悦れ!吼えろ!狂瀾怒濤の覚醒だ~。乳と蜜がどくとくと溢れ出す。盲目なメス豚どもよ。そそり立つ男根に平伏せよ。饒舌なファック野郎どもよ。朕の偉業をその軽口で後生に伝えよ。さあ、アラブの軍隊のように派手に行こうぜ。
ヨッ・ヨッ・チェゲ・チェゲ・チェゲ・ラッチャー。
おおー。久しぶりだな!Samuel氏。野郎どもの煩悩を焼き尽くしてやれ!
オッケー!カモンカモン!
さあ!踊れよ喚けよ昂じろよ
周りの視線を気にするな
饒舌はどもりに駆逐され
根暗は快活従える
辛辣、陰鬱忘れろよ!
お前は何も悪くない
世渡り下手な俺だけど
それでも何とか生きている
まわりのやつは死んだけど
それでも何とか生きている
かみしめるぜ焦燥、嗚呼、溢れるぜ感性、嗚呼
泥土の中を掻き分けろ、絶倫野郎のin my life
背後にはどんどん箱が積み上げられていった。連チャンはまだまだ終わりそうにない。最初は、快感が湧き上がっていたが、だんだん恐怖が芽生えてきた。忙しく背後に台を積み上げる店員の態度、ギャラリーの粘りつくような視線が自分を非難しているように感じた。玉をくれた爺さんの台は全く出なくなった。「わしと同じ打ち止めだな」と静かに帰っていた。これだけ出れば、もう終わっていいのだが。しかし、水が高きから低きに流れるように、自分の意思とは裏腹に玉は出続けた。連チャンがおわるとすぐにやめた。その後、俺の台が出ようが出まいが関係なかった。早くこの場を去りたかった。三七万円の大勝だった。
急いで消費者金融のATMに駆け込んだ。返済しているときはこの現実に戦慄するが、パチンコで負けて頭に血が上っている時はどうでもよくなる。つまり今日みたいに勝ったときに返せば良い訳で、ギャンブルでの借りはギャンブルでしか返せないのである。と言い続けて数十年。消費者金融四社から総額四八五万の借金を背負うことになった。その後、隣にある別の消費者金融のATMに寄り三万三千円を入金した。もうちょっと入金しようか迷ったが、三万も六万も同じだろう。百万溜まったら一気に入金しよう。誰かが言った、金は男を磨く、現金は常に手元に置けと。その後、ばあちゃんの好物である羊羹を買うため、和菓子店を訪れた。時刻は午後八時前。閉店間際だが、明かりもついているし、少しくらいは大丈夫だろうと扉を開けた。ごめんください。「お客さん。すいません。もう閉店です」女性店員の口調は、まるで侵入者を阻むかのようだった。「すぐ、買って帰ります。五分だけいいですか?」俺は低姿勢でお願いした。女性店員は店長に聞いてみますと奥に行ったが、すぐ戻ってきた。「やっぱりだめでした」「一番高い羊羹を買います。祖母が大好きで……。だめですか?」上客の要望に対し、まだ年端もいかない女性店員は首を縦に振らなかった。
八時半くらいには、スギと居酒屋で飲んでいた。俺は絶好調だった。「いや。すごいぜ、調子いい台は。最後までビンビンだな。打ち止めなんかねーよ」「それって人間にも言えますね……」少し疲れ気味のスギが前菜をつまみながら頷く。「おおっいいね。飲め飲め。今日は俺の奢りだ。ハハハ」上機嫌でビールをもう一杯注文する。
「ところでスギ、今日はどうした。明日も仕事なのに飲もうなんて。まぁ俺は全然かまわないけど」
「たごさん。すいません。自分、毎日誤配して怒られているじゃないですか。最近、きつくなって。前から正規の先輩達からは冗談半分で、お前なんかいらないと言われ続けてきました。しかし最近、課長や班長からも言われてきたんすよ。代わりならいくらでもいるぞって。これマジだなって。クビになりそうだと思って、不安で、不安で……」スギは俯きながらビールを口に運んだ。
「でも俺、誤配なんてしてねっす!」スギは俺の目を力強くみつめた。
「俺、毎日遅いのは一つ一つ確認しているからです。でも帰ってくると今日もお前の配達区域から苦情が来たなんて怒られるし。どの家ですかと聞くと名前は名乗らなかったと言うし。もう、訳分からないっすよ」スギの声は少しうわずり、目が潤んできた。俺は慰めようと言葉を選んだ。
「そもそも、そういうのを苦情としてカウントするのがおかしいよな。狂言でも詭弁でも市民からの大切なお言葉として崇め奉りやがって。そんなことより、もっと商品を売らなければ。郵便局といえどもつぶれるぜ」
スギはビールグラスを握りながら神妙な顔つきで話し始めた。
「たごさん。この仕事やめていっすか」
「ん!」俺は焼き魚の身を切り崩していた手を止めた。
「やめるのはいいけど次あるのか」
「以前、働いていた松尾さん、覚えています?」思い出した。よくバイクで転んでいた奴だった。
「松尾さん今、正社員で働いていて、この間、久しぶりにコンビニで会いました。スーツ着ていました。うちの会社に紹介するから履歴書持ってこいと言われました」
「それで渡したのか?」
「はい、次の日に渡しました」こいつからみればスーツ着てネクタイ締めている奴は皆えらくみえるのだろう。
「しかし気をつけろよ。この辺の連中なんて酔うと気が大きくなるからよ。普段気が小さい奴ほどその傾向が強いぞ。さあ、そろそろ二件目にいこうぜ!」
出口に向かうとスギの様子がおかしい。鋭い目つきで隅のテーブルを睨んでいる。
視線の先にはスキンヘッドの男が携帯で怒鳴っていた。店員は注意をしようかウロウロしている。「いいか、俺のメアド教えるからメモしとけ!」「もこちゃん、みほちゃん、アットマーク……。だーかーら、もこちゃんはm・o・c・h・a・nだろーが!」
「うるせー!このはげー!」
スギが烈火の如く怒鳴りだした。
店内にいるほとんどの人間が震えた。
見渡すと皆、頭髪に何らかの異常がみられた。
「何だ!お前!やんのか!」スキンヘッドは声を張り上げて立ち上がった。スギを見下ろすほど背が高かった。
「おーやってやるよ!」スギは突っ込んでいこうとしたが、俺と店員が身を挺して止めた。
そして、スギを引っ張って店を出た。
三千円のカードを買いカクテルフローラルという台の前に座った。リーチ目は来るのだが、大当たりにはならない。残高五百円になったところで隣の中年女性が、台を叩いて立ち上がり、外に出ていった。隣の椅子をみると長財布が落ちていた。俺の財布とは比較にならないほど重かった。慌てて外に出て姿を探したがもういなかった。仕方なく、カウンターにいる女性店員に理由を話して預けた。暫く打っていたが、上皿の玉は尽きようとしていた。保留ランプも四つあったが、いつの間にか一つになっていた。終わったな。心の中で敗戦宣言をした。そして缶コーヒーを持って立ち上がった。その時、リーチ!台が唸った。彼は教室の片隅でじっとしていた、おとなしかった、静かだった。しかし、己の力を蓄えていただけだった。天の声を待っていたのだ!そう、股くぐりの韓信のように。ほい!お前の時代がやってきた。思う存分采配をふるってこい!と言っても、もう兵隊はいないし。期待しないで眺めていた。ドゥルドゥルドゥル。最後の七が来た。来た。ドゥン!七は半分下にずれた。やはりだめだったか。この戦負けだった。出直してこよう。と思った瞬間、七は上に動いた。大当たり!大戟が将の心臓を突き刺した。すると隣の爺さんが上皿に玉を置いてくれた。
「よかったな。確変だ。ほれ、早く!早く!動かして」
「あ、ありがとうございます!」
まさか当たるとは思わなかったので、狼狽えてしまった。台から玉が吐き出され、箱を一杯にする。快感が湧き上がってくる。枯渇していた金脈は唸り湧き上がる。滾れ!悦れ!吼えろ!狂瀾怒濤の覚醒だ~。乳と蜜がどくとくと溢れ出す。盲目なメス豚どもよ。そそり立つ男根に平伏せよ。饒舌なファック野郎どもよ。朕の偉業をその軽口で後生に伝えよ。さあ、アラブの軍隊のように派手に行こうぜ。
ヨッ・ヨッ・チェゲ・チェゲ・チェゲ・ラッチャー。
おおー。久しぶりだな!Samuel氏。野郎どもの煩悩を焼き尽くしてやれ!
オッケー!カモンカモン!
さあ!踊れよ喚けよ昂じろよ
周りの視線を気にするな
饒舌はどもりに駆逐され
根暗は快活従える
辛辣、陰鬱忘れろよ!
お前は何も悪くない
世渡り下手な俺だけど
それでも何とか生きている
まわりのやつは死んだけど
それでも何とか生きている
かみしめるぜ焦燥、嗚呼、溢れるぜ感性、嗚呼
泥土の中を掻き分けろ、絶倫野郎のin my life
背後にはどんどん箱が積み上げられていった。連チャンはまだまだ終わりそうにない。最初は、快感が湧き上がっていたが、だんだん恐怖が芽生えてきた。忙しく背後に台を積み上げる店員の態度、ギャラリーの粘りつくような視線が自分を非難しているように感じた。玉をくれた爺さんの台は全く出なくなった。「わしと同じ打ち止めだな」と静かに帰っていた。これだけ出れば、もう終わっていいのだが。しかし、水が高きから低きに流れるように、自分の意思とは裏腹に玉は出続けた。連チャンがおわるとすぐにやめた。その後、俺の台が出ようが出まいが関係なかった。早くこの場を去りたかった。三七万円の大勝だった。
急いで消費者金融のATMに駆け込んだ。返済しているときはこの現実に戦慄するが、パチンコで負けて頭に血が上っている時はどうでもよくなる。つまり今日みたいに勝ったときに返せば良い訳で、ギャンブルでの借りはギャンブルでしか返せないのである。と言い続けて数十年。消費者金融四社から総額四八五万の借金を背負うことになった。その後、隣にある別の消費者金融のATMに寄り三万三千円を入金した。もうちょっと入金しようか迷ったが、三万も六万も同じだろう。百万溜まったら一気に入金しよう。誰かが言った、金は男を磨く、現金は常に手元に置けと。その後、ばあちゃんの好物である羊羹を買うため、和菓子店を訪れた。時刻は午後八時前。閉店間際だが、明かりもついているし、少しくらいは大丈夫だろうと扉を開けた。ごめんください。「お客さん。すいません。もう閉店です」女性店員の口調は、まるで侵入者を阻むかのようだった。「すぐ、買って帰ります。五分だけいいですか?」俺は低姿勢でお願いした。女性店員は店長に聞いてみますと奥に行ったが、すぐ戻ってきた。「やっぱりだめでした」「一番高い羊羹を買います。祖母が大好きで……。だめですか?」上客の要望に対し、まだ年端もいかない女性店員は首を縦に振らなかった。
八時半くらいには、スギと居酒屋で飲んでいた。俺は絶好調だった。「いや。すごいぜ、調子いい台は。最後までビンビンだな。打ち止めなんかねーよ」「それって人間にも言えますね……」少し疲れ気味のスギが前菜をつまみながら頷く。「おおっいいね。飲め飲め。今日は俺の奢りだ。ハハハ」上機嫌でビールをもう一杯注文する。
「ところでスギ、今日はどうした。明日も仕事なのに飲もうなんて。まぁ俺は全然かまわないけど」
「たごさん。すいません。自分、毎日誤配して怒られているじゃないですか。最近、きつくなって。前から正規の先輩達からは冗談半分で、お前なんかいらないと言われ続けてきました。しかし最近、課長や班長からも言われてきたんすよ。代わりならいくらでもいるぞって。これマジだなって。クビになりそうだと思って、不安で、不安で……」スギは俯きながらビールを口に運んだ。
「でも俺、誤配なんてしてねっす!」スギは俺の目を力強くみつめた。
「俺、毎日遅いのは一つ一つ確認しているからです。でも帰ってくると今日もお前の配達区域から苦情が来たなんて怒られるし。どの家ですかと聞くと名前は名乗らなかったと言うし。もう、訳分からないっすよ」スギの声は少しうわずり、目が潤んできた。俺は慰めようと言葉を選んだ。
「そもそも、そういうのを苦情としてカウントするのがおかしいよな。狂言でも詭弁でも市民からの大切なお言葉として崇め奉りやがって。そんなことより、もっと商品を売らなければ。郵便局といえどもつぶれるぜ」
スギはビールグラスを握りながら神妙な顔つきで話し始めた。
「たごさん。この仕事やめていっすか」
「ん!」俺は焼き魚の身を切り崩していた手を止めた。
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「以前、働いていた松尾さん、覚えています?」思い出した。よくバイクで転んでいた奴だった。
「松尾さん今、正社員で働いていて、この間、久しぶりにコンビニで会いました。スーツ着ていました。うちの会社に紹介するから履歴書持ってこいと言われました」
「それで渡したのか?」
「はい、次の日に渡しました」こいつからみればスーツ着てネクタイ締めている奴は皆えらくみえるのだろう。
「しかし気をつけろよ。この辺の連中なんて酔うと気が大きくなるからよ。普段気が小さい奴ほどその傾向が強いぞ。さあ、そろそろ二件目にいこうぜ!」
出口に向かうとスギの様子がおかしい。鋭い目つきで隅のテーブルを睨んでいる。
視線の先にはスキンヘッドの男が携帯で怒鳴っていた。店員は注意をしようかウロウロしている。「いいか、俺のメアド教えるからメモしとけ!」「もこちゃん、みほちゃん、アットマーク……。だーかーら、もこちゃんはm・o・c・h・a・nだろーが!」
「うるせー!このはげー!」
スギが烈火の如く怒鳴りだした。
店内にいるほとんどの人間が震えた。
見渡すと皆、頭髪に何らかの異常がみられた。
「何だ!お前!やんのか!」スキンヘッドは声を張り上げて立ち上がった。スギを見下ろすほど背が高かった。
「おーやってやるよ!」スギは突っ込んでいこうとしたが、俺と店員が身を挺して止めた。
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