転生して感覚遮断スキルを手に入れたのでエロトラップダンジョンなんて楽勝のはずでした

鳳梨

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vsインキュバス(後編)

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「なぁに? 勝負はおあずけにしてあげようと思ったのに、何か言いたいことでも?」
「あの……もっと……もっと、つ、続けてください……」
「続けるって?」
「俺の、か、身体……触って、ください……」

 言ってしまった。恥辱で一気に全身が熱くなる。
 インキュバスはそれを狙っていたとばかりに口角を上げた。やっぱり向こうの思い通りだったか。でも情けないが今はそれに従うしかない。
 彼らが再び俺の前まで歩いて来る。上から下まで値踏みするような目線を向けられているだけでゾクゾクした。早く、早くその手で弄ってほしい。

「どこに触られたいのかしら? 具体的に言わないとわかんなーい」
「えっと……ち、チンコと……ケツの穴……それから乳首……触ってほしい、です……」
「へーそうなの。じゃあここにするわ」
「うっあ……♡」

 インキュバスは俺の豊満になってしまった乳房を下から鷲掴みにすると激しく揉みしだいた。
 他の敏感な部分には触れずとも、煮える中身がかき混ぜられるようで今までに経験したことのない快楽が襲う。そりゃそうだ、今までこんな部位無かったし。

「あっ♡ ああっ♡ あっ♡」
「おっぱい揉まれて女のコみたいな声上げて腰振っちゃって……このまま胸だけでイっちゃうの?」

 魔物に揶揄されるが性感が止まらない。何とか射精はしないように遮断魔法を維持するが身体は出したがってカクカクと腰が前後する。
 それに出そうなのは下だけじゃない。嘘だと思いたいがパンパンに膨らんだ胸は遂に一線を越えた。同時に淫紋が全てピンク色に変わり、脳内が一気に多幸感に染まる。

「ああああっ♡」
ビクンッ! プチュッ、トロトロ……
「あらあら、本当にイっちゃったし……ミルク出て来たわね。そんな気持ち良かったのね」

 ようやく視界が正常に戻ると、俺の乳首の先から白い液体が滲んで垂れていた。妊娠も出産もしていないのに出て来るなんておかしな話だがこいつらのやることだ、原理とかは気にしない。
 幸いまだ射精はしていない。淫紋の力で魔力も満タンに充填できた。
 ここからは反撃だ。

「《性感共有シェアリング》!」

 インキュバスを睨み付けながら俺は魔法を唱える。
 俺の快楽を奴へ。早速異変に気付いたらしく、ようやく余裕ぶった表情が怪訝なものへ変わった。
 そしてこれがキーとなったのだろう、俺の視界に例のテキストが現れた。すぐさまそこに注目して詳細を読む。

《P:魔性の体液》。常時発動パッシブスキル。スキル所有者の体液全般に催淫効果が付与される。接触または飲用で効果が発揮される。
《P:淫紋強化》。常時発動パッシブスキル。スキル所有者が持つ淫紋の効果を少し上げる。
絶頂遮断ストッピング》。消費魔力:変動。対象の性的絶頂を発生させない。発動中は少量の魔力を消費し続け、絶頂を中断させる度に追加で大きな魔力を消費する。

「来るのおせーよ! 《絶頂遮断ストッピング》!」

 まさに待ち望んでいたスキルだった。
 俺が新たな呪文を唱えたことでインキュバスはいよいよ形勢逆転の気配を感じ取ったらしい。後ろで待機していたサキュバスを手で呼び寄せると俺に向かわせる。
 だが1つ目の能力も効果の度合いによっては非常に強力なはずだ。淫魔にどれほど効くかはわからないが、逆にこいつらに効くなら相当頼りになる気がする。

「何か怪しいわね……サキュバスちゃん達、一旦お願い。イかせちゃっていいわよ」
「はーい。ようやくお許しが出たわ」
「いっぱいビクビクさせてあげるわ」

 インキュバスは賢かった。助手と入れ替わる形で後退り観察に回る。だがもう遅いし無意味だ。
 サキュバスの1人は俺の胸を揉みながら指先でくりくりと膨らんだ乳首を捏ね、同時に片方を口に含むと舌で転がしたり甘噛みしたり音を立てて吸い上げる。もう1人は先程までのように竿にキスをしてから裏筋に舌を這わせ、その後喉まで咥え込む濃厚なフェラを始めた。

ピチャ、ジュルルル……ジュプッ……!
「うっあ……ああああっ♡」

 それだけでバチバチと脳内で火花が散る。母乳と先走りが溢れて止まらない。《性感遮断》をしていても供給はその上を行っていた。与えられた快楽が腰に集中して激しい衝動に変わる。
 イく。そう直感するが、上り詰めそうになった感覚はその途中で急激に落下した。迫り上がった精子は発射される直前で停止してその場で蟠り続ける。
 これが《絶頂遮断》か。荒い息を吐きながら実感する。達したいのに達せないのは相当辛いが現状では最適な魔法だ。
 まだまだ責め苦は続いているが少しだけ冷静さを取り戻した状態で敵を見ると、向こうも様子が変わっていた。

「んっ……んんっ♡」
「ん、ふぅっ……はぁっ♡」

 サキュバス達は先程より悩ましげな表情で頬を染め、俺に一心不乱にむしゃぶりつきながらも空いた手を自分の秘所に伸ばしていた。もじもじと太ももを擦り合わせて尻を振り、指を動かす度に新たな水音が発生している。
 俺の溢れる体液を積極的に飲もうとしている辺り、催淫効果が効いていると見ていいだろう。淫魔をも魅了するなんて自分で自分が恐ろしい。
 そしてその向こう、インキュバスは忌々しそうな表情を浮かべながら自分を抱き締めるように腕を回しながら背を丸めていた。表向きは何にも触れられてもいないのに立派な肉棒がすっかり持ち上がっている。
 これが《性感共有》の恐ろしさだ。俺は淫紋が先程より早いペースで染まりつつあるのを確認してからダメ押しを加える。

「《性感共有シェアリング》、《性感共有シェアリング》!」
「っ、ああっ♡」

 サキュバスからインキュバスへ、追加で2人分の快楽を送り付けられた身体が跳ねる。幾ら淫魔でもこんなことはされたことがあるまい。しかも発情してオナニーまでしている感覚を流し込まれているのだ、まともな人間だったら成す術無く射精していたことだろう。
 こちらの魔力の消耗も当然早まるのだが俺は《性感遮断》と《触覚遮断》の魔法を解除した。俺の方は《絶頂遮断》だけあればいい。魔力切れしたら終わりだが新スキルで淫紋の蓄積度合いが早まっているようで恐らく問題は無いだろう。
 勝ったな。俺は確信しながらインキュバスへ呼び掛ける。

「なぁ、その……そのデカいの、俺の、ケツマンコにくれよ……アンタだってもう挿れたいだろ……?」
「くっ……!」

 それでもどこかカッコ付かないのは仕方ない。さっきから触られていない尻が疼いて疼いて堪らないのだ。笑みを浮かべてはいるがほとんど虚勢に近い。
 この期に及んでまだ羞恥心がブレーキを掛けるがその上で淫語を口にするのは脳が焼けるような感覚があった。ああそうだ、これじゃあまるで俺の方が淫魔みたいじゃないか。
 インキュバスは性の支配者と言われるが、言い換えればセックスや快楽が大好物だ。いけないと頭ではわかっているはずだがよたよたと俺の方に近付いて来る。

「ねぇ、ワタシも挿れてほしい……っ♡ やっていい?」
「……ああ、いいぞ」
「狡いっ、ワタシだってしたいわ!」
「順番、順番にしましょう!」

 サキュバスが俺を取り合うなんて信じられない構図だ。もちゃもちゃと少し口論した後で竿を咥えていた方が立ち上がると即座に濡れ切った蜜壺を俺の上に被せた。
 ちなみに俺は前世含めて女を抱いたことが無い。AVでならイけるし風俗のフェラでも抜けるのに、いざセックスとなると萎えてしまう雑魚だった。当然恋人なんていなかった。
 こちらの世界に来て男に目覚めてしまってからはずっとそちらを相手していた。女の冒険者は身持ちが固いか既に相手が決まっていたか、向こうが遊び人でももっとスペックの高い男だらけで俺が選ばれることは無かった。
 だから初めての女がサキュバスってのは、逆に贅沢なことかもしれない。それも俺を堕とすのではなく、俺に堕ちたから抱かれに来ている。
 肉感の強い膣はこれまでのどんなオナホより口より触手より気持ち良かった。突っ込んだだけで射精しそうになるがまた魔法で遮断されるのが辛い。
 俺は無意識に腰を振りながら求められるままにサキュバスとキスをして舌を絡め合わせる。俺と彼女、両方共催淫効果を持つ唾液が混じり合って互いに飲み込む。豊満な胸同士がぶつかって潰される光景もなかなかに目の毒だ。中も外も抱き締められ吸い付かれる動きが堪らない。

「随分良さそうだな……これでさっさとイけ!」
「は、ぁ……あ゛……ッ♡」

 その最中に背後に回ったインキュバスが俺の尻穴に肉棒を突き当て、一気に奥まで貫いた。
 本気になると口調が男らしくなるのがまたニクい。上質の雌を抱いていた最中に、もっと強い雄がいて結局それには敵わないのだと思い知らされるかのようだ。
 色っぽい嬌声を上げながらゆったりと腰をグラインドさせて肉を密着させ擦り上げるサキュバスとは違い、インキュバスは早速激しいピストンを始める。散々焦らされた前立腺も奥の弁も抉られて俺は揺すられるがまま喘ぎ声を漏らすしかない。

ドチュッ! バチュッ! グチュッ!
「あうっ♡ あんっ♡ ああっ♡」
「ほら、早くイっちまえ。サキュバスん中、気持ち良いだろ?」
「ダメ、アタシもうイっちゃう♡ インキュバス様、ごめんなさい……こんなの、初めて、ああああっ♡」

 本当なら何度イっていたかわからない。だがその度に寸止めされている俺はもう頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
 気持ち良い。気持ち良いのに達せない。そんなの嫌だと一瞬魔法を解除してみたいと思うがそれだけはなけなしの理性で押し留める。
 サキュバスが俺の竿を根元まで飲み込むように腰を押し付けながら身体を弓形にして絶頂する。肉壺の痙攣はまさに精を搾り取ることに特化していて、それだけで俺もまた絶頂しかけた。
 だからそれに気付くのに数秒遅れた。

「ぅっ、ぐぅっ……ッッ♡」
ビュルルルル!

 インキュバスが俺の尻の中で射精していた。
 複数人の絶頂に等しい快楽を何度も浴びせられては流石の淫魔も耐え切れなかった。熱い液体が腹の中に広がるとズグンとそこが戦慄く。同時に俺の肉棒も爆発しそうな程熱かった。
 淫魔達の我慢に我慢を重ねて濃さを増した精液や分泌されたばかりの愛液を内臓や性器で受けてまともでいられるはずがない。
 達したサキュバスが一旦離れ、新たなサキュバスと入れ替わる間に俺は早口で捲し立てた。

「おい、射精したな! 勝負は俺の勝ちだろ!?」
「……ああ、その通りだ。アンタを解放しよう」
「じゃあまずコレだけ外してくれよ。それから帰る前に、もうちょっと遊ぼうぜ」
「……わかった」

 ジャラジャラと手を縛る鎖を揺らすと敗北を認めたインキュバスが指を鳴らした。途端に拘束が解けてその場に崩れ落ちそうになる俺の身体をインキュバスが抱いて支える。
 ずっと持ち上げっぱなしだった手は酷く痺れているがこれで色々な体位ができる。
 俺達の需要と供給は完全に一致した。

ズチュッドチュッバゴッグチュッ! パンパンパンッ!
「いやぁっ♡ ああっ♡ あんっ♡ もうやめてぇっ♡」
「いっぱい出されて狡い……こっちにも早くちょうだい?」
「っあ、乳首やべっ……♡ 出る、また出る……っ♡」
「はぁっ、はぁっ……んっ……ッ♡」
ビューッビュクビュクビュク! ドピューッ!

 仰向けになったサキュバスの両足を持ち上げて激しく腰を打ち付ける。《絶頂遮断》の魔法を解いた俺は内部のうねりに従って思う存分その腹の中に白濁液を注いでやった。だがその間ももう1人のサキュバスと口付けして胸を弄られると勃起も性衝動も全く治らない。
 そして尻ではインキュバスが激しいピストンと射精を繰り返している。向こうも淫魔だけあって何度出してもその勢いは衰えないが、快楽はすっかり得ているようでイケメンには似つかない表情の溶け方をしていた。
 もっと、もっとだ。もう既に心臓は早鐘を打ち脳が白んで複雑なことが考えられず、肉欲のままに行動する。ぐったりとしたサキュバスの膣から竿を抜き、一旦射精が終わって呼吸を整えているインキュバスを振り返る。

「……お前も本当はシたいんじゃねぇの?」
「は……!? ……ッ、ア……!」

 まだ《性感共有》が掛かりっぱなしのインキュバスはもうロクに力も入らない。少し押しただけで簡単にその場に仰向けに倒れ、俺はその尻の中に硬いままの肉棒を突き刺した。
 サキュバスに比べれば簡素だがすぐ吸い付いて来る肉壁はこういう用途も想定されているのだろう。だがこれまで聞いた中では馬乗りになって空っぽになるまで精を取られたなんて話ばかりで、こんな風に乱されたのは初めての例だ。帰ったら言いふらしてやるかそれとも俺だけが知る秘密の宝物にするかは悩むところだ。

「ひあっ♡ やめろっ♡ 人間如きがっ♡ ああっ♡」
「人間に犯されてヒンヒン言わされるの悔しい? じゃあこっちの2人にも手伝ってもらおうかな」
「なっ……!?」
「ごめんなさいインキュバス様。でもココが疼いて仕方ないの♡」
「アタシ達、インキュバス様のことが大好きだから♡ ……冒険者さん、インキュバス様の尻尾の先っぽ、擦ってみて?」
「お? こうか?」
ジュプッ……! ピチャッピチャッ……チュクチュク……
「ああ゛あ゛あ゛ッ♡ やめろぉ゛っ♡」
ビューッビクビクビクビク!

 ああ愉快愉快。こんな愉快なことがあるだろうか。
 天を向いたインキュバスの竿にサキュバスが跨り上下運動を始める。もう1人のサキュバスはまだ腰砕けだがインキュバスの乳首を舐めたり擦ったりと奉仕していた。尻尾の粘液を乳首や陰嚢に擦り付けているが、これが淫魔同士でも効くとしたら相当辛いだろう。
 彼女のアドバイスに従って床にへたり落ちていた尾の先を指で擦ってみるとインキュバスの身が激しく震えて絶頂した。なるほどここも性感帯なのか。尻の締まりの良さに思わずこちらもまた射精しそうになるが何とか耐える。楽しみをそう簡単に終わらせたくない。

「……あ゛っ、ああ、へぁっ……♡」
「インキュバス様、またイっちゃった♡ 熱いのドプドプ出てる♡」
「ねぇ代わってよ。アタシ、インキュバス様のを挿れながら冒険者さんとキスしたい♡」
「は? 何だそれ……最高かよ」
「くそ、やめ……ひああっ……♡」

 前後上下両方から犯して犯されて、俺達が受けている快楽も追加で送り込まれたらどんな淫魔だって壊れるに決まっている。最初はあれ程飄々としていたインキュバスは今や泣きながら腰を突き上げ足をピンと伸ばして絶頂を繰り返していた。その身体を俺達は延々と貪り続ける。
 だがその涙の理由は快楽によるものだけではなかったかもしれない。下に見ていた人間と自分の部下的存在が自分を性的に虐げながらディープキスをして豊満な胸を揉み合う様子を見るなんて、確実に脳が破壊されるしそりゃあ濃いのも出るだろう。
 俺もまた愉悦に浸りながら思う存分中出しした。何度も何度も体位と相手を変えながらイケメンと美女に種付けするのは最高だった。
 最後の1滴までその腹の中に放つ頃には魔物達も限界を迎えたようでいつの間にか気絶していた。気付けば噎せ返るような雄と雌と臭いの中、動くものは俺だけだ。
 勝った。
 そう思って立ち上がろうとするも足に力が入らずすぐ崩れ落ちる。気付けば俺の足元は誰の物かわからない体液塗れで酷くぬるつく。気付かない内に俺の尻に出されていた分も垂れ流してしまっていたらしく前も後ろも濡れていたし、今まさに残っていた白濁液が下って来るのを止められずそのまま音を立てて漏らした。
 このままではここを出るどころか服もロクに着ていられない。ヤバいと思ってもどうすることもできず、圧倒的な疲労感もあり俺も諦めてその場に転がる。
 寝て起きてから考えよう。快楽に麻痺した頭ではそう思うのが精一杯だった。


 ◆


「はっ、はっ……ほら、もっと腰振れよ」
「なんか、なんかすげぇ……何だコレっ……♡」
バチュッバチュッ……ギシッギシッ……!

 俺は宿屋に帰ったが、その晩早速薄暗い部屋で寝台が軋む。
 今夜の音の発生源は俺の部屋だ。屈強な髭面の戦士ファイターが俺の下半身を抱えて犯し続けている。先程会ったばかりの行きずりの相手だがもうすっかり俺の虜になっていた。

 ——あの後目が覚めると俺は身体を現れ衣服を整えられた状態でインキュバスの寝床で横たわっていた。数日眠っていたらしく幸いにも膨らんだ胸や緩んだ尻はある程度元に戻っていた。乳首はインキュバスと会う前から大きかったからそのままだったがまあこれは仕方ない。
 インキュバスは正式に敗北を認めると共に俺に尊敬の意を示し、暴言を謝罪して今後俺に危害を加えないことを約束してくれた。何ならそこらの人間よりも丁寧でこっちが面食らうレベルの対応だ。歓迎の宴も行われ美味しい料理をたらふく食べ、その流れでサキュバスも交えた乱交もするという実に楽しいひと時を送れた。
 帰りは魔物のみが知るという隠し通路を教えてくれてすぐにダンジョンの入り口付近まで戻ることができた。それだけでも有用なのにインキュバスは別れ際に透明な液体の入った小さな瓶を渡して来た。
 淫魔の体液から抽出したそのエキスは触れた物を即座に発情させ性交以外のことを考えさせなくするという。捕らえた獲物の調教に使っていたらしいが売るなり焼くなり好きにしろ、ただ自分で使うのはオススメしないと真剣に言ってきた辺り、多分ヤバい代物だ。

 そうして俺はギルドへ戻ったが正直今回の収穫は無いに等しい。
 インキュバスに勝ちはしたが倒したわけではないし、友好関係を結んだ以上は俺が騒ぎ立てて何か問題を起こすのも気が引ける。逆に魔物と繋がりがあると知られれば俺の方が危険な存在だと迫害される可能性だってある。
 ダンジョン探索中の消耗品等も踏まえると赤字だがそれは仕方ないと割り切った。小瓶を売ることも一瞬考えたがやはり面倒事を引き込みかねない。幸い資金はミノタウロス討伐の報酬がまだまだ残っているから、インキュバスやサキュバスとの友情プライスレスってことでいいだろう。
 いや、正確には本当はもっと大きな消耗がある。同行した仲間達だ。
 一応インキュバスに訊いてみたところ、アナタの仲間だから解放してもいいが既にサキュバスの虜になっていてまともな生活に戻れないと言う。実際チラッと様子を見たが本当に性欲しか頭に無い状態だった為置いてきてしまった。
 危険なダンジョンではパーティの一部だけが帰還することはよくある。やむを得ない事情があるのは皆わかっているが、中には悪意を持つ者もいた。

「ボス討伐の英雄サマは仲間を置き去りにして1人ご帰還か。流石だねぇ」

 酒場で1人で飲んでいるとそんな声が聞こえて来た。見れば髭面の男がこちらをチラチラと見ながら大声で喋っている。
 俺の知名度が上がった分、こうやって嫉妬なのか何なのか、陰口を叩く奴がたまにいた。普段は気にしないし周囲はやめろよと嗜めているから暫く無視する。ムカつくが吠えることしかできない弱者の僻みと思えば逆に愉悦すら感じる。

「やっぱああいう奴にとっちゃ取り巻きなんて足手纏いなんだろうな。それか逃げる為の囮か。ルーキーが気に入られてるようだから今度注意してやらねぇとなぁ!」

 だが発言がパーティメンバーにまで及べば話は別だ。
 初対面で正直そんなに思い入れの無いパーティ連中だって、捕まっていなければ人生が曲がらずに済んだのにという後悔が少しある。だが後悔したところで彼らが戻って来るわけじゃないから、次に似たようなことがあったらこうしようという教訓にするだけだ。
 なのに的外れなことを言われ、あまつさえ俺を慕ってくれている者のことまで揶揄されれば頭に血が昇るのは仕方のないことだろう。
 俺は一考してから近くのウェイターを呼び寄せて酒を1杯持って来させる。そしてちょっと小細工してからそれを持って立ち上がるとそいつの元へズンズン歩み寄った。俺の接近に連れがヤベェという顔をして椅子から少し腰を浮かすのはすぐにでも割って入れるようにか。

「……すまん、こいつ酔っ払ってんだ。頼むからここで荒事はよしてくれよ」
「俺は酔ってなんてねぇぞ! これはこれは英雄サマ、デカ牛のデカチンポの味はどうだった? 尻にぶち込まれたんだろ?」
「……これ、1杯奢ってやるから、その汚ねぇ口で俺のことを語るな」

 本人を目の前にしてのあまりに下品な挑発に周囲からどよめきが起こる。
 明らかに戦闘能力の高そうな大男と、下手したら魔術師以下の細腕の俺とじゃ喧嘩になったら結果は見えている。というか冒険に出るような魔術師は普通に現代日本のサラリーマンより肉体的に強い。だから俺は別の方法で勝つつもりだった。
 俺が酒をテーブルに置くと相手は流石に怪訝な顔をする。実際意図が読めないだろうが俺はその隙に奴の耳元で囁いた。

「気になるなら、後で俺の部屋に来い」

 そうして何か言い返される前にその場を離れる。
 何だあいつ、ダンジョンに潜りすぎて頭おかしくなってんのかと口さがない言葉が続いているが気にはしない。
 もう何を喋っているかわからない程離れた店の出入口で振り返ると奴は笑いながら俺が渡した酒を飲んでいた。俺は口角を上げながら小さく呟く。

「……《絶頂遮断ストッピング》」

 感覚遮断魔法の射程は視認できる範囲。そしてその中で対象を意識し呪文を唱えることで発動する。開始する魔力の減りが魔法が正しく掛かったことを示していた。
 そして俺が部屋に戻って1時間も経たぬ内に部屋のドアがノックされた。
 立っていたのは例の男1人だけ。服の上からでもわかるほどはっきりと勃起し、それを隠すように前屈みでやってきたのを俺は快く迎え入れた。
 その顔には色濃い困惑と興奮があった。それもそのはず、例の淫魔のエキスが混ぜられた酒を飲んだのに絶頂は許されない。我慢しようとしてもできるわけがない衝動を解放する為のヒントがあるとすれば俺だけなのだから多少は殊勝な態度にもなろう。

「バカにしてた男のケツでチンコガチガチにしてる気分はどうだ?」
「くそ、くそ……もうすぐ出そう、なのに……ぐっ……♡」

 男のピストンは乱暴なだけで心地良さはほとんど無い。だが悔しげに息を荒げながらも腰が止まらない様子はなかなかに報復心が満たされる。
 酒に入れたエキスはほんの一滴だが、俺の中に招き入れてから更に高頻度で絶頂しかけているのは俺の体液に触れているからか。こんなにも狂わせるとなると相手を選ばないといよいよ大変なことになるかもしれないと考えながら俺は全身を振るわせるがまた絶頂に失敗した男を見る。

「ああ、でもやっぱり男の尻じゃイけねぇか。でも俺は優しいからな、もうひとつ試してやろう」
「ああん!? 何言って……ッ!?」
「ミノタウロスのチンコがどんな味か訊いてたろ? それよりは遥かに細いが、それを倒した奴の味を教えてやるよ」
「な……ッ!」

 奴が息を乱している間にその下から抜け出ると背後に回る。
 何も慣らしも洗浄もされていなさそうな孔だが、俺の準備万端な肉棒とそこから滲んだ先走りを塗り付けられるとすぐさまはくはくと開閉し始めた。
 本人が混乱している間に一気に貫き、同時に《絶頂遮断》の魔法を解除する。

ヌププププ……ブシャッ!
「あっあっ、ああっ……♡」
「おいおいもう出たのか? 犯してもイけねぇのに犯されてイくとかお前も相当キマってんじゃねぇか」
「ち、違う、こんなはずは……!」
「もしかしてお前が俺に妬いてんのは、お前もモンスターのデカブツをぶち込まれたかったからか? 実際俺のとは比べ物になんねぇぐらいぶっといの挿れられたからなぁ」

 挿入直後の射精も本当に彼の本意ではないのだが思い切り煽っていく。
 男は違う違うと激しく首を振っているが身体はそうは言っていない。俺に掘られて催淫効果のある体液を腸壁に塗り付けられたら、本当にこれまではそうでなかったとしても結果的にそうなってしまうだろう。
 否、そうなるように俺は耳元で囁き続ける。モンスターとのセックスがどれほど凶悪でどれほど心地良いものかを教え込む。それを聞きながら度々男は限界を迎え絶頂した。俺も男の尻にたっぷり種付けしてやると、そこから得た快感で新たな悲鳴を上げた。
 次第に出せるものも無くなって後ろだけで絶頂し始める。この辺りが潮時か。

「ンッ……いいか、俺を罵る暇があったら、ダンジョンで一山当ててきな。もっとイイ思いができるぜ。特にオススメな場所を教えてやる。そこで出会ったモンスターにこのサインを見せな。……お前への贈り物だ」
「は、はひ……♡」

 達しすぎてぐったりしている男の為に俺はわざわざ地図を描いてやった。その裏面には俺の署名とラッピングされた箱の絵を描く。描いてからこの世界にこういう概念はあっただろうかと思い直して「贈り物!」と一言付け足しておいた。
 そうして俺は男をさっさと部屋から追い出す。一応服を着直してはいたが尻を押さえていたから自分の部屋に戻る前にパンツを汚したかもしれない。それが奴を見た最後の姿だったが逆に小気味良い。
 お察しの通り、俺が教えたのはインキュバスの住処だ。ソロでダンジョンに入って行ったと後に噂で聞いたが無事に辿り着いたかは定かではない。ちゃんと到着して俺からの贈り物だと伝わったらいいが、果たしてインキュバスの好みに合うだろうか、ああいう生意気な奴を屈服させるのが好きそうだと思ったのだが。
 それから何日が経っても奴は帰って来なかったし目撃情報も無かった。ダンジョンにまた1人呑まれたところで気にする者もいない。それがここの日常だ。
 代わりにある日他の冒険者がダンジョンの入り口で拾ったと俺の元に1枚の紙を届けてくれた。

 ダンジョンのある場所を示した手書きの地図、裏には俺のサイン。
 その横に描かれた箱の周りに加えられたたくさんのハートマークと「ありがとう!」の文字を見て俺は思わず破顔した。
 死ぬか生きるか、犯されるか逃げるかのダンジョンでこんな心温まる出来事があるなんて思わなかった。
 その日だけは身体が疼くことは無く、俺は心地良い気分のまま次の冒険の準備をするのだった。
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