2 / 4
放課後の校舎の窓の外
しおりを挟む
その日は試験期間で、部活の練習はなし。ほとんどの生徒は試験勉強のため、放課後は早々に家路についていた。
そんなある日、放送部に属していたわたしは最終の校内放送と音楽を流す仕事の当番となっていた。
放送室内にて一連の仕事が、なにごともなく終了。
その日は最終下校時刻まで小一時間ほど余裕があったため、しばらく放送室内に残って試験勉強を進めていた。
当時の放送室内というのは、高価な機材などが置かれているせいか、部員以外の生徒の出入りは厳しく制限されていた。なので、放送の仕事がない時間はとても静かであり、わたしにとっては勉強を進めるにはうってつけの場所。なので試験勉強の時期は、好んでここに残って勉強をしていたものである。
先生方以外は、ほぼだれもいなくなった校内。
ひとりで放送室内で勉強をしていたが、教室に参考書を置き忘れたことに気付いた。その夜の勉強が困ると思い、わたしは仕方なく、教室まで取りに行ったのであった。
教室に着いて参考書を見つけ、かばんに入れ、その日はそのまま帰るために立ち去ろうとしたときである。
窓の外、校舎の脇の目立たぬ場所に目が向くと、そこに数人の生徒が立っていることに気付いた。
「あれ、まだだれかいるのかな?」
また見ると、遠くからでも服装でわかる、不良生徒たちだったのである。
男子4人に、女子3人。いずれも、わたしと同学年の者たちであった。
4人の男子は、わたしがよくカツアゲに遭っていた者たち。
日常から威圧的な態度で、派手に威張り散らしていたのを、よく覚えている。近くに寄って来ただけで、よくタバコの匂いがしたものだった。
3人の女子ももちろん、女子の間でかなり恐れられていた存在。
「こんな時間、まだ校内でたむろしていたとは...。彼らは試験勉強とか、関係ないのだろうな。」
しかし、誰もいないところで彼らの前に自分が姿を現してしまっては、もう餌食になるばかりである。
こちらが教室内なのでみつかることはないだろうに、またまた情けなくも怖くなり、窓から見えぬように隠れたのであった。
隠れながらこっそり様子を見ていたら、彼らは全員同じ方向に歩いて行った。
わたしも怯えているだけではなく、不良男子たちの序列的なものは、おおかた理解していた。
男子4人は威勢はよいものの、校内全体の不良からすると、トップとまでは行けない。強い者に巻かれながら威張り散らすという、いわば虎の威を借りているような存在であった。
その一方、女子の詳しい勢力図までは、理解しきれていなかった。が、存在感からして、女子3人は明らかに、女子の中のトップ的な存在かと感じていた。
それにしても、男子4人、女子3人、といった構図。見た感じ、仲良く話をしている雰囲気ではなさそうだ。
「まさか、あの男子だち、女子を脅してカツアゲするつもりでは?」
いくらなんでも、男子が女子に圧力をかけるような行為は、気弱なわたしでも許し難く思ったのだ。
ところが、なにやら様子がおかしいことも気付いた。
通常なら、男子は男子、女子は女子で、それぞれ固まって別れて歩くのが、思春期の習わし。不良とて、そうである。
しかしこのときは、男子が歩く前後を、女子から取り囲まれながら歩いているような状態。見ようによっては、男子たちが逃げないよう監視されながら歩いているようにも見え、違和感を感じた。
彼らはそのまま、プールの方へ歩いて行った。プールは校舎からちょっと離れたところに位置している。
なんだかわからなかったが、妙に好奇心が湧いてしまった。
もし見つかったら、あの男子4人のこと。ただではすまされないことは承知していた。が、このときは好奇心の方が勝っていたのである。
かばんは目立たないところに置き、彼らの後を、そっとつけた。見つからないように、そっと。
そして、いざというときには逃げられるよう、逃げ道も予め想定しながら。
彼らから遅れながらも、異なるルートで、こっそりプールへ向かった。
わたしにとってはとんでもない大冒険をしているように思え、スリリングな時間を感じていた。
そんなある日、放送部に属していたわたしは最終の校内放送と音楽を流す仕事の当番となっていた。
放送室内にて一連の仕事が、なにごともなく終了。
その日は最終下校時刻まで小一時間ほど余裕があったため、しばらく放送室内に残って試験勉強を進めていた。
当時の放送室内というのは、高価な機材などが置かれているせいか、部員以外の生徒の出入りは厳しく制限されていた。なので、放送の仕事がない時間はとても静かであり、わたしにとっては勉強を進めるにはうってつけの場所。なので試験勉強の時期は、好んでここに残って勉強をしていたものである。
先生方以外は、ほぼだれもいなくなった校内。
ひとりで放送室内で勉強をしていたが、教室に参考書を置き忘れたことに気付いた。その夜の勉強が困ると思い、わたしは仕方なく、教室まで取りに行ったのであった。
教室に着いて参考書を見つけ、かばんに入れ、その日はそのまま帰るために立ち去ろうとしたときである。
窓の外、校舎の脇の目立たぬ場所に目が向くと、そこに数人の生徒が立っていることに気付いた。
「あれ、まだだれかいるのかな?」
また見ると、遠くからでも服装でわかる、不良生徒たちだったのである。
男子4人に、女子3人。いずれも、わたしと同学年の者たちであった。
4人の男子は、わたしがよくカツアゲに遭っていた者たち。
日常から威圧的な態度で、派手に威張り散らしていたのを、よく覚えている。近くに寄って来ただけで、よくタバコの匂いがしたものだった。
3人の女子ももちろん、女子の間でかなり恐れられていた存在。
「こんな時間、まだ校内でたむろしていたとは...。彼らは試験勉強とか、関係ないのだろうな。」
しかし、誰もいないところで彼らの前に自分が姿を現してしまっては、もう餌食になるばかりである。
こちらが教室内なのでみつかることはないだろうに、またまた情けなくも怖くなり、窓から見えぬように隠れたのであった。
隠れながらこっそり様子を見ていたら、彼らは全員同じ方向に歩いて行った。
わたしも怯えているだけではなく、不良男子たちの序列的なものは、おおかた理解していた。
男子4人は威勢はよいものの、校内全体の不良からすると、トップとまでは行けない。強い者に巻かれながら威張り散らすという、いわば虎の威を借りているような存在であった。
その一方、女子の詳しい勢力図までは、理解しきれていなかった。が、存在感からして、女子3人は明らかに、女子の中のトップ的な存在かと感じていた。
それにしても、男子4人、女子3人、といった構図。見た感じ、仲良く話をしている雰囲気ではなさそうだ。
「まさか、あの男子だち、女子を脅してカツアゲするつもりでは?」
いくらなんでも、男子が女子に圧力をかけるような行為は、気弱なわたしでも許し難く思ったのだ。
ところが、なにやら様子がおかしいことも気付いた。
通常なら、男子は男子、女子は女子で、それぞれ固まって別れて歩くのが、思春期の習わし。不良とて、そうである。
しかしこのときは、男子が歩く前後を、女子から取り囲まれながら歩いているような状態。見ようによっては、男子たちが逃げないよう監視されながら歩いているようにも見え、違和感を感じた。
彼らはそのまま、プールの方へ歩いて行った。プールは校舎からちょっと離れたところに位置している。
なんだかわからなかったが、妙に好奇心が湧いてしまった。
もし見つかったら、あの男子4人のこと。ただではすまされないことは承知していた。が、このときは好奇心の方が勝っていたのである。
かばんは目立たないところに置き、彼らの後を、そっとつけた。見つからないように、そっと。
そして、いざというときには逃げられるよう、逃げ道も予め想定しながら。
彼らから遅れながらも、異なるルートで、こっそりプールへ向かった。
わたしにとってはとんでもない大冒険をしているように思え、スリリングな時間を感じていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


切り札の男
古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。
ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。
理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。
そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。
その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。
彼はその挑発に乗ってしまうが……
小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる