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第四章:自分にだって意地がある
練習相手
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*** 1月の終わりころ ***
年の瀬あたりから徐々に、鬼女内に緊張感が高まっていた。
というのは、沙紀と紗耶香が再三にわたり、軽い言い争いを繰り返していたからである。
抗争のときなどでは、鬼女として協力すべきところを惜しまず尽力する二人であったが、このところの紗耶香は、沙紀の命令には悉く、素直には従わない姿勢を見せていた。最後は階級が下に位置する紗耶香が折れる形となったものの、その度に睨み合いをする二人であった。
卒業を前にした紗耶香の、沙紀との最後の闘い、そして副総長獲りに向け、仕掛けて持ち込んだ精神戦であろうことは、だれもが予想できた。沙紀の方も、2つ上の先輩の気持ちを、正面から受け止めようとしている素振りであった。
この二人の火花が散ってしまうのはいつになるやら?、鬼女の女子たちの大きな話題であった。
実はこのころ、集会がないときに純一は再三、紗耶香からの命令を受けていた。トレーニングの相手として呼び出され、指定された場所まで通っていたのであった。紗耶香から口外厳禁と釘を刺されていたため、毎回だれにも見つからないようそわそわしながら出かけていた。
沙紀への最後の挑戦に向け、紗耶香自身が組んだメニューで追い込んでいた。純一は、練習の補助や、仮想・沙紀と見立てた立ち合いの相手などをされられていた。
様子を常に傍で見ていた純一。本格的にトレーニングを行い汗をかく紗耶香を、もはやただの不良女子とは思えず。格闘技に取り組むアスリートの姿、そのままにも思えた。
精悍さを増していく姿に、中学時代の紗耶香を思い出すと、同一人物とは思えないほどである。
ふり返るとこれまで、自分がここまでの気持ちで何かに臨んだことは、あっただろうか?紗耶香の姿に、自分の中で、なにかを感じはじめていた。
連日、紗耶香とふたりで励む、激しいトレーニング。
紗耶香が辛そうにしているときは、恐る恐る、意見や励ましも入れた。
練習ごとに、紗耶香のテンションの高まりと同期し、純一への罵りも減っていることを感じていた。
とある日の、トレーニング後の、別れ間際。純一はまた、丁寧に挨拶をする。
「紗耶香さん、では、わたしはこれで帰らせていただきます。失礼します。」
頭を下げ、いつもならそのまま別れるところ、このときは珍しく紗耶香が話しかける。
「おいっ、純一!」
なにか粗相をしてしまったか?、ビビる純一。
「はい、どうかいたしましたか?」
「...いや、なんでもねぇよ。早く散れっ!」
「...はい、わかりました。」
ほっとして、去っていくところ、背中から小さな声がした。
「ありがとう。」
「...は?」
振り向くと、紗耶香はすでにこちらに背を向けて、反対方向に歩いていた。
鬼女に入門後、礼を言われたのは初めてであり、しかも一軍の紗耶香からということ、驚いた。
同時に純一は確信した。
---次はきっと、起こる。
年の瀬あたりから徐々に、鬼女内に緊張感が高まっていた。
というのは、沙紀と紗耶香が再三にわたり、軽い言い争いを繰り返していたからである。
抗争のときなどでは、鬼女として協力すべきところを惜しまず尽力する二人であったが、このところの紗耶香は、沙紀の命令には悉く、素直には従わない姿勢を見せていた。最後は階級が下に位置する紗耶香が折れる形となったものの、その度に睨み合いをする二人であった。
卒業を前にした紗耶香の、沙紀との最後の闘い、そして副総長獲りに向け、仕掛けて持ち込んだ精神戦であろうことは、だれもが予想できた。沙紀の方も、2つ上の先輩の気持ちを、正面から受け止めようとしている素振りであった。
この二人の火花が散ってしまうのはいつになるやら?、鬼女の女子たちの大きな話題であった。
実はこのころ、集会がないときに純一は再三、紗耶香からの命令を受けていた。トレーニングの相手として呼び出され、指定された場所まで通っていたのであった。紗耶香から口外厳禁と釘を刺されていたため、毎回だれにも見つからないようそわそわしながら出かけていた。
沙紀への最後の挑戦に向け、紗耶香自身が組んだメニューで追い込んでいた。純一は、練習の補助や、仮想・沙紀と見立てた立ち合いの相手などをされられていた。
様子を常に傍で見ていた純一。本格的にトレーニングを行い汗をかく紗耶香を、もはやただの不良女子とは思えず。格闘技に取り組むアスリートの姿、そのままにも思えた。
精悍さを増していく姿に、中学時代の紗耶香を思い出すと、同一人物とは思えないほどである。
ふり返るとこれまで、自分がここまでの気持ちで何かに臨んだことは、あっただろうか?紗耶香の姿に、自分の中で、なにかを感じはじめていた。
連日、紗耶香とふたりで励む、激しいトレーニング。
紗耶香が辛そうにしているときは、恐る恐る、意見や励ましも入れた。
練習ごとに、紗耶香のテンションの高まりと同期し、純一への罵りも減っていることを感じていた。
とある日の、トレーニング後の、別れ間際。純一はまた、丁寧に挨拶をする。
「紗耶香さん、では、わたしはこれで帰らせていただきます。失礼します。」
頭を下げ、いつもならそのまま別れるところ、このときは珍しく紗耶香が話しかける。
「おいっ、純一!」
なにか粗相をしてしまったか?、ビビる純一。
「はい、どうかいたしましたか?」
「...いや、なんでもねぇよ。早く散れっ!」
「...はい、わかりました。」
ほっとして、去っていくところ、背中から小さな声がした。
「ありがとう。」
「...は?」
振り向くと、紗耶香はすでにこちらに背を向けて、反対方向に歩いていた。
鬼女に入門後、礼を言われたのは初めてであり、しかも一軍の紗耶香からということ、驚いた。
同時に純一は確信した。
---次はきっと、起こる。
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