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第一章:憂鬱なる入門
怯えながら歩く純一
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*** 6月の終わり頃 ***
「...ここか。」
深夜、男子4人が、とぼとぼ歩いてきた。
どうも覇気を喪失してそうに見えるが、中でもいっそう悩ましそうな表情をしているのは、純一。桐南高の3年生で、4人のリーダー的存在である。
彼ら4人、ほんの少し前までは、校内では威勢よく威圧を振りまいていたようであった。多くの生徒たちから恐れられ、歯向かえば、ほぼ確実に面倒な展開となるため、周囲から避けられている存在。姿が見えると隠れてしまうものさえいたほどであった。
そんな勢い余っていたはずの男子4人、どうやら指定されていた時刻と場所に、うなだれながら歩いて来ていたのだった。
手にはそれぞれ、なにかを詰めた紙袋を、携えていた。
目的地には、多くの単車や車が並んでいる。その奥に、気合いが入った若者たち、いわゆる不良たちがたむろしていた。
不良たちと言えば、それに違いはないのだが、ここでは状況がちょっと異なるようだ。聞こえてくるしゃべり声が、どことなしか、甲高い。
そばに掲げられてある大きな派手な旗には、「女族」の文字。
そう、ここにいる若者たちは全員女子。ここはレディース(女暴走族)の活動拠点であった。
彼女らは、鬼女(おにじょ)というグループ名で、この地域一帯で活動しているレディースのメンバーであった。
入口では、たむろして談笑している、数人の女子たち。鬼女のメンバーと見られる。
近づいてきた純一たちに気が付くと、談笑を止め、黙ってこちらを睨む。見たところいずれも、中学生女子と思われる。
彼女たちの中の1人が、しゃべりはじめる。
「おぉ、お前らかよ。桐南高校の先輩さま方ってのは?直美さんから聞いてたけど、やっぱ、しけた面してんなぁ、おい。」
中学女子がずいぶん、生意気な口をきいてくる。
しかし、直美。。。、
その名前を聞き、純一たちは一瞬震える。直美とは、鬼女の総長のことである。
「お前らが来ることは聞いてるから。じゃぁ、こっちに来い。」
その中ではややしっかり目に見える、ハーフっぽい女子の後について、純一たちが中に足を入れる。
少し入ると純一は、顔見知りと出くわした。中学時代の同級生、紗耶香であった。
「おぉ、純一じゃん。」
「あ、紗耶香...。」
バツが悪そうにする純一。
中学時代の紗耶香は、校内の女子を仕切る存在であった。当時、純一とはあまり話をしたことはなかなく、仲は良くも悪くもなし、といった関係。卒業後は紅葉商業高校行ったはずで、いまはそこの3年生と思われる。
紗耶香が話しかける。
「お前、バッカだねぇ。お前なんかがうちの総長に、勝てるわけないじゃん。あのとき恥を忘れてとっとと逃げてりゃ、ここに来ることもなかったのにねぇ。」
まったく上から目線で見られてしまっているが、なにも言い返せない。
「あとなぁ純一、これからわたしのことはちゃんと、紗耶香さんって呼ぶんだぞ。わかったか、こら。」
「...。」
紗耶香から睨みつけられていたが、目を合わせられなかった。
「まぁ、今はいい。とりあえず総長たちに、しっかり挨拶してきな。」
ふたたび、中に進む。4人のびくびく加減がひどくなってきた。
「あのとき、あんな喧嘩をかっていなかったら、こんなことには。。。」
純一は、1週間前の夜のことを、とても後悔していた。
「...ここか。」
深夜、男子4人が、とぼとぼ歩いてきた。
どうも覇気を喪失してそうに見えるが、中でもいっそう悩ましそうな表情をしているのは、純一。桐南高の3年生で、4人のリーダー的存在である。
彼ら4人、ほんの少し前までは、校内では威勢よく威圧を振りまいていたようであった。多くの生徒たちから恐れられ、歯向かえば、ほぼ確実に面倒な展開となるため、周囲から避けられている存在。姿が見えると隠れてしまうものさえいたほどであった。
そんな勢い余っていたはずの男子4人、どうやら指定されていた時刻と場所に、うなだれながら歩いて来ていたのだった。
手にはそれぞれ、なにかを詰めた紙袋を、携えていた。
目的地には、多くの単車や車が並んでいる。その奥に、気合いが入った若者たち、いわゆる不良たちがたむろしていた。
不良たちと言えば、それに違いはないのだが、ここでは状況がちょっと異なるようだ。聞こえてくるしゃべり声が、どことなしか、甲高い。
そばに掲げられてある大きな派手な旗には、「女族」の文字。
そう、ここにいる若者たちは全員女子。ここはレディース(女暴走族)の活動拠点であった。
彼女らは、鬼女(おにじょ)というグループ名で、この地域一帯で活動しているレディースのメンバーであった。
入口では、たむろして談笑している、数人の女子たち。鬼女のメンバーと見られる。
近づいてきた純一たちに気が付くと、談笑を止め、黙ってこちらを睨む。見たところいずれも、中学生女子と思われる。
彼女たちの中の1人が、しゃべりはじめる。
「おぉ、お前らかよ。桐南高校の先輩さま方ってのは?直美さんから聞いてたけど、やっぱ、しけた面してんなぁ、おい。」
中学女子がずいぶん、生意気な口をきいてくる。
しかし、直美。。。、
その名前を聞き、純一たちは一瞬震える。直美とは、鬼女の総長のことである。
「お前らが来ることは聞いてるから。じゃぁ、こっちに来い。」
その中ではややしっかり目に見える、ハーフっぽい女子の後について、純一たちが中に足を入れる。
少し入ると純一は、顔見知りと出くわした。中学時代の同級生、紗耶香であった。
「おぉ、純一じゃん。」
「あ、紗耶香...。」
バツが悪そうにする純一。
中学時代の紗耶香は、校内の女子を仕切る存在であった。当時、純一とはあまり話をしたことはなかなく、仲は良くも悪くもなし、といった関係。卒業後は紅葉商業高校行ったはずで、いまはそこの3年生と思われる。
紗耶香が話しかける。
「お前、バッカだねぇ。お前なんかがうちの総長に、勝てるわけないじゃん。あのとき恥を忘れてとっとと逃げてりゃ、ここに来ることもなかったのにねぇ。」
まったく上から目線で見られてしまっているが、なにも言い返せない。
「あとなぁ純一、これからわたしのことはちゃんと、紗耶香さんって呼ぶんだぞ。わかったか、こら。」
「...。」
紗耶香から睨みつけられていたが、目を合わせられなかった。
「まぁ、今はいい。とりあえず総長たちに、しっかり挨拶してきな。」
ふたたび、中に進む。4人のびくびく加減がひどくなってきた。
「あのとき、あんな喧嘩をかっていなかったら、こんなことには。。。」
純一は、1週間前の夜のことを、とても後悔していた。
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