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第123話 部活! 少女の奇縁は合縁をもたらす!? (Aパート)
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かなみは都内の高層ビルに入る。
「何階?」
「十階だよ」
マニィが耳打ちする。
かなみはエレベーターに乗る。
誰もいなくて良かったと少しホッとする。
エレベーターが十階に着く。
「かなみちゃん、ようこそ」
エレベーターを出た先で、南城絵里奈(なんじょうえりな)が笑顔で出迎えてくれた。
「絵里奈さん、よかったです。こういうビルはあんまり入り慣れてなくて……」
「そうよね。かなみちゃん、中学生だものね……でも、大丈夫よ。話は通してあるから一応」
絵里奈はそう言ってくれて、ビルの中のオフィスルームへ案内してくれる。
オフィスルームにもスーツを着込んだ大人達がデスクワークをしているのが見えたけど、彼らがこちらを見てくることはなかった。
絵里奈が言っていた話を通してあるというのは本当のことだと安心する。
そうして、絵里奈に案内されたのは応接室だった。
「さあ、座って」
かなみは言われるままにソファーに座り込む。
「絵里奈さんはここで働いてるんですか?」
「いいえ、今日だけこの場所を借りているだけよ」
「そうなんですか!?」
「私達の仕事は秘密裏に事を進めていく性質なのよ。こうして、色々な場所に繋がりを持ちつつ、広く浅い関係を保っているのよ。なんて、私も上司から最近教えてもらったばかりよ」
「ああ、そうでしたね。絵里奈さんって新人だったんですね。大人っぽいから忘れかけてました」
「私が大人っぽい……これでもまだ大学出たばかりなのに……」
中学生のかなみからすると、それは十分大人っぽく感じるものだった。
「私からするとかなみちゃんの方がしっかりしている気がするんだけどね」
「そ、そうですか……しっかりしてるなんて考えたことないですけど……」
「案外そういうものよ。しっかりしてる人は自分がしっかりしてるなんて自覚がないものだから」
「そうですね。そういうイメージがあります」
「さて、それじゃ、今日の本題に入りましょうか」
絵里奈は持っていたカバンから封筒を取り出す。
「最近の怪人の出没情報と目撃情報から作成したイメージ図よ」
「怪人ってこんなに目撃されてるんですね」
かなみは紙の束を見て、感心する。
「まあ中には勘違いだったり、誤解だったりするものもあるのだけど、信憑性は高いものを私達が精査した結果がこれよ」
「これに鯖戸部長やあるみ社長の観点からさらに絞り込んで、君達に案件を割り振っている、というわけだよ」
マニィが補足する。
「へえ、そうなっていたのね。部長や社長がよこしてくる仕事って絵里奈さん達の会社の調査が元になっていたんですね」
「会社といっていいのか、なんていうか……」
絵里奈は言い淀む。
「でも、どうして今回それを私が?」
かなみは疑問を口にする。
いつも、あるみや鯖戸がやっていることなら、いつも通り二人がやっていればいいのではないか? と思ったからだ。
「かなみにも任せてみたい、と、二人は考えているみたいだよ」
マニィが答える。
「どうして、私に任せようなんて……?」
「それだけ、かなみちゃんを信頼しているってことなのでしょうね」
「私を信頼ですか……?」
かなみは頭の上で、あるみや鯖戸を思い浮かべてみる。
あるみだったらなんとなく「かなみちゃんならできるわ」って言ってきそう。鯖戸だったらなんとなく「君ならやれそう」って言ってきそう。
「そ、そうでしょうか……?」
それを信頼といっていいのか、かなみにはよくわからなかった。
「まあ、こうして色々情報があるってことは自分で仕事を選べるってことでもあるよ」
マニィが紙の束をテーブルに広げて言う。
「私が、仕事を、選ぶ?」
そんなことは今まで無かった。
今までは、あるみや鯖戸がもってきた仕事を言われるがままに受けて、怪人と戦ってきた。
かなみには他に選択肢がなく、そうするしかないとも思ってきたからだ。
「私が仕事を選んでいいの?」
「さすがにすぐには任せないけど、いずれはね」
「これ! これがいい!」
かなみは一枚の紙を手にとって掲げる。
「一番報酬が高い案件ね」
「当然そうなるから、まだいずれなんだよ」
マニィが毒づくように言う。
「だって、ボーナスがいっぱいないと借金返せないから!」
「かなみちゃんの場合、それは切実ね……」
「まあ、普通の人でも割のいい仕事を求めてしまうものだからね」
「それはそうね。あ、でも、かなみちゃんこれ」
「なんですか?」
「心霊スポットの調査になってるけど」
「え……!?」
かなみは青ざめる。
「ああ、案外そのテの案件も多いよ。高確率で怪人とか魔法の仕業って場合が多い。大体本物の幽霊とかでくわすことだってあるし、」
「キャー!?」
かなみは悲鳴を上げる。
本物の幽霊なら想像するだけで怖い。
「実際に君も出くわしたよね」
「そ、そうだった……」
千歳や他の幽霊と仕事で何度か会っているので、この案件が本物の幽霊と出くわす可能性が高い。
「だったら、他のにします……」
「アハハ、でも、まだ鯖戸さんが案件を管理しているのならこの仕事も、かなみちゃんに回ってくるかもね」
「こ、怖いこと言わないでください!!」
あの鯖戸なら本当にやりかねない。そう思うかなみだった。
「とりあえず、今日のところは案件を持ち帰ってもらうわね」
「それで、その中から精査して、かなみに仕事が回ってくる、というわけだよ」
「うぅ……どうか、おばけの仕事はきませんように……!」
かなみは祈るように合掌して言う。
「私に仕事を選ばせてくれるって本当?」
外に出てオフィスへ向かう帰り道、かなみはカバンについたマニィに訊く。
「本当だよ。今はまだ、だけど」
「どうして、私なの?」
「君に特に期待しているってことだよ」
「――!」
かなみは驚き、思わず足を止める。
「あんたにそう言われると変な気持ちね。裏があるんじゃないの?」
「別に……マスコットは嘘はつかないよ。嘘をつかないから、裏があるんじゃないかって勘ぐるのは人間のせいだよ」
「う、言われてみれば……」
「まあ、そういう素直さはボクは好ましいよ」
「そう、私もあんたがそういうこと言ってるところ好きよ」
かなみがそう言うとマニィはそれ以上喋らなかった。
カキィン! カキィン! カキィン!!
歩いていると爽快な金属音が響く。
バッティングセンターだ。
誰かが快音響かせて打っているのだろう。
そう思ってちょっと覗いてみたら思いも寄らない人がいた。
「あ!」
かなみはすぐにバッティングセンターに入っていった。
「紫織ちゃん!」
「かなみさん、どうして?」
バッティングセンターの一角で紫織は打っていた。
「ちょっと外回りの後……紫織ちゃんは?」
「私は今日はもう上りで、それで寄ってみまして」
「そうだったの! あ、ボールきてるよ!」
「は、はい!」
紫織は向き直って、マシーンから投げられたボールへ向かってバットを振る。
コツン
バットにかすっただけでボールはネットに行く。
「あ……」
「あはは、私のことは気にしないで、打って打って!」
「は、はい!」
紫織はバットを構える。
コツン、コツン、コツン
「紫織ちゃん、前見たときより……」
「はい」
「構えが様になっている気がするわ」
「そ、そうですか?」
コツン
しかし、かなみが見始めてから快音は鳴っていない。
「あ~私も詳しくないから偉そうに言えないから気にしなくていいわよ」
「はい!」
紫織は答えるけど、緊張していて構えがぎこちないように、かなみには見えた。
コツン、コツン、コツン
それからしばらくバットにかすり続ける。
コツン、カツン、コツン、キィン
しかし、かなみが言うように構えが良いのか、空振りもそもそも無かったので次第にバットのいいところに当たるようになってくる。
カキィン!
そして、とうとう快音を鳴らして、ボールが前に飛ぶ。
「あ!」
カナミは声を上げる。
しかし、それでまた紫織が意識してプレッシャーがかかってしまってはいけないのでそれだけにしておく。
カキィン!
次の球も快音を響かせる。
カキィィン!!
その次の球も、
カキィィィン!!
その次の球も、バットに当てて快音を響かせる。
しかも、だんだん音は大きく、打球に勢いが増している。
カキィィィィィン!!!
そして、とうとうボールをジャストミートさせて、ボールを勢いよく飛ばす。
「おお、すごいすごい!!」
かなみは思わず拍手を送る。
「はぁはぁ、そ、そうでしょうか……】
紫織はかなみの方を向いて言う。
「うんうん、そこまで飛ばすなんてすごいわよ!」
「そうですか。なんとなく、打てるようになった気がしますが……!」
紫織はそう言いながらバットを構える。
カキィィィィィン!!!
もう一度来た球をジャストミートさせる。
カキィィィィィン!!!
続けざまにまたジャストミートする。
「すごい! 紫織ちゃん、ずいぶん上手になってるね!」
かなみはとうとう遠慮なく褒めだす。
「なんとか打てました」
それでボールが出てこなくなってこの打席の分は終わったようだ。
「もう少しで、ホームランってところまでいったよね? もう一回やったらホームラン出せるんじゃない?」
「さあ……どうでしょう……なんとか打てるようになってきたんですけど、さすがにあそこは……」
紫織はピッチャーの後ろにあるネットの上部に貼られているホームランの張り紙を見る。
さっきのジャストミートなら飛距離は申し分なく、左に二メートルくらいずれていたら、という話だ。
「私も打ってみようかしら?」
紫織に触発されて、かなみは打席に立ってみようかと張りきる。
「今の財布事情だと厳しいんじゃないかな」
マニィが釘を刺すように言う。
「うぅ!」
それを聞いて、かなみが身体が石になったように固まる。
「そ、それでは私ももう一打席……」
紫織はコインを出す。
「紫織ちゃん、お金持ち~」
「えぇ、そ、そうですか……」
「紫織は君と違って、給料を生活費にあててないからね」
マニィが代わりに答える。
「え、あ、そうだったわね。ごめんね!」
「い、いえ……」
紫織はバットを構える。
そして、ボールが投げ出される。
カキィィィィィン!!!
ボールは再び快音が鳴る。
「紫織ちゃん、調子出てきたわね」
カキィィィィィン!!! カキィィィィィン!!! コツン、カキィィィィィン!!!
紫織は来たボールをジャストミートする。
しかし、常にジャストミートさせ続けているわけではなく、たまに打ち損なっている。
そのあたりは、まだ完全にモノにできていないということか。
「一流打者でも打率は三割だからね」
マニィが解説する。
「そうね」
紫織のカバンから羊のマスコット・アリィがやってくる。
「プロ野球でも野球の本場・アメリカのメジャーリーグでも三割、つまり、打数わる安打数で算出したのが打率になるのだけど、それが三割あれば一流打者と言われているわ。まあ手っ取り早く言うと十回振って三回ジャストミートさせればいいわけだけど、それはあくまでプロ同士の試合の話。こうしてバッティングセンターでピッチングマシンを使って打席に立つ分には常にジャストミートさせないと話にならないわ。特に魔法少女の戦いなら十回のうち七回もミスしていたらもっと話にならないわ。だからこそこうして打撃のコツを掴むために紫織は特訓してるのだけど中々モノにならないのよね。第一――」
「ストップ! 話長くなるから引っ込んでて!!」
かなみはアリィを無理矢理カバンに押し込める。
アリィの話が長く、このまま話し続けられたら、ぬいぐるみが動いて喋ってると騒ぎになるかもしれない。
幸いなことに他の客はバッティングに集中していて、アリィには気づいていなかった。
「はぁ~」
かなみは安堵の息をつく。
カキィィィィィン!!!
その間に、紫織はボールをジャストミートさせる。
「よく打つなあ!」
そこへ小学生の女の子がやってくる。
「え!?」
かなみは驚く。
この小学生の女の子――かなみよりも背が高いのだけど、ランドセルを背負ってるおかげで小学生だと判別できたのだけど、興味津々に紫織を見ている。
「あ、あの、君は?」
カキィィィィィン!!!
「おお、打ったあああああッ!!」
かなみが問いかけようとしたら、紫織が打って、女の子は大声を出した。
その食い気味なところに、かなみは引いてしまう。
「やるじゃない! うちの部員でもここまで打つ子はなかなかいないよ!!」
「え……」
紫織はその声に反応して振り向く。
「あれ? どこかでみたような?」
女の子は紫織の顔をジィーと見る。
「あ、あの、なんでしょうか?」
「うちの小学校で見かけなかったか?」
「あ! ソフト部の方ですか……」
「キャプテンの日野和子だよ。六年一組」
「四年二組の秋本紫織です」
「ふーん、四年生か。ソフトより野球が好きなの?」
「い、いいえ、そういうわけではありませんが」
「だったら、ソフト部に入らないか。これだけ打てれば即レギュラーだよ」
「え、えぇ……!?」
紫織は困って、かなみに助けを求める視線を送る。
「紫織ちゃんが決めてね」
かなみは苦笑いしてそう返す。
本当を言うと、かなみは困っていたので、紫織に丸投げしたような形になった。
「そ、それは……」
「ソフトは嫌い?」
「いいえ、そうじゃありません」
「じゃあ、ソフトやろうよ!」
「誘ってくれるのは嬉しいのですが」
「ソフトやれないの?」
「すみません……事情がありまして……」
「事情か。それじゃ仕方ないか。ウチは弱小だからなあ、試合に勝つためには紫織のバッティングが必要だと思ったのになあ……」
和子は残念そうに言う。
「ソフトやりたくなったらいつでもいってくれよ!」
そう言って、和子は打席に立つ。
「ソフトやらなくてよかったの?」
その晩、紫織の部屋でアリィは問いかけてくる。
「………………」
紫織は考え込んで沈黙する。
「ねえ!」
「はい!?」
紫織はアリィの呼びかけに気づいて、飛び上がりそうな勢いで驚く。
「ちょっと、興味はありましたけど……」
「だったら、やればよかったじゃないの。大体、あなたはね――」
「その話、長くなるからいいです」
紫織は打ち切った。
アリィの話は長くなるからこう言って、話を打ち切るようにしている。
「ソフトには興味ありましたけど、仕事がありますし……それに団体競技は苦手ですし……」
「団体競技というより、スポーツじゃないの。まあ、スポーツが苦手と言わないあたり成長したとは言えるけどね」
「スポーツも苦手でしたね……」
「苦手な人だったら、一緒にやろうだなんて誘われないわよ」
「そうですか……そうですね……・」
紫織は自分の言ったことを思い出しながら、自分の気持ちを整理していく。
「それに、私がソフトやったら、仕事はどうしたらいいんでしょうか?」
紫織は放課後、株式会社魔法少女に出社している。
そこで魔法少女の仕事や事務のような書類整理の仕事をしている。
「……ソフト、やってみたいなら社長は許可出すわよ」
「え?」
アリィから思いもよらないことを言われた。
「社長だって、そんな融通の利かないことしないわよ」
「そ、そうですよね……」
言われてみるとたしかに、むしろ無理を言って融通を利かせるようなイメージが紫織の中にあった。
「ソフト、やっていいのでしょうか?」
「私は言ったわよ。社長は許可する、って」
紫織は考え込む。
「私がソフトやって、足を引っ張ったり、迷惑かけたりしないでしょうか?」
「それはあなた次第でしょう? でも、スポーツにミスはつきものよ」
「うぅ……」
アリィは下手に励ましてはくれない。
ちょっと厳しいことを言うけど、それは相手のことを思いやってのことだと、紫織は理解している。
「それでも、やってみたいんでしょ?」
「………………」
その晩、紫織はその問いかけに答えず、考え込んだ。
「はあ……」
結局答えが出ないまま、朝を迎えていつものように学校に登校した。
教室に入ると誰も気づいていない。
影が薄いのは自覚がある。
以前はそれでやいやい言われて、上履きが隠されり、教科書にイタズラされたことがあったりしたけど、今はそれは落ち着いて、波風の立たない小学生生活になっている。
なるべく音を立てないように椅子を引いて、着席する。
キンコーンカンコーン
チャイムが鳴って、あっという間に休み時間になる。
授業もずっと上の空で、ソフトボール部に入ってやってみようかと悩み、考えていた。
「決めるなら、早く決めた方が良いわよ。グズグズして先延ばしにするなんて時間の無駄よ」
そうアリィに急かされているような気がする。
いてもたってもいられず、席を立つ。
廊下に出て、外の運動場を眺めてみる。
今は人がいないけど、放課後になったら、あそこでソフトボール部の練習が始まる。
その中に、自分は……。
「紫織!」
急に自分の名前を呼ぶ声がして驚く。
「ひゃいッ!?」
「紫織! やっぱり同じ学校だったんだ!」
「か、和子さん……ど、どうして?」
「同じ学校だからこう会うことだってあるよ」
「そ、そうですね……」
「それでソフトやる気になったか?」
「え、えぇ……」
実はまだ迷っていたけど、それすら言い出せずにいた。
「やる気になったら嬉しいな。今日から練習するか!」
「え、きょ、今日ですか? 今日は、何も、準備していませんから……」
「だったら、明日か! 明日ならいいんだな!」
「え、ええぇ……」
「明日、ソフトやろう!」
「……はい」
つい勢いでそう返事してしまった。
「何階?」
「十階だよ」
マニィが耳打ちする。
かなみはエレベーターに乗る。
誰もいなくて良かったと少しホッとする。
エレベーターが十階に着く。
「かなみちゃん、ようこそ」
エレベーターを出た先で、南城絵里奈(なんじょうえりな)が笑顔で出迎えてくれた。
「絵里奈さん、よかったです。こういうビルはあんまり入り慣れてなくて……」
「そうよね。かなみちゃん、中学生だものね……でも、大丈夫よ。話は通してあるから一応」
絵里奈はそう言ってくれて、ビルの中のオフィスルームへ案内してくれる。
オフィスルームにもスーツを着込んだ大人達がデスクワークをしているのが見えたけど、彼らがこちらを見てくることはなかった。
絵里奈が言っていた話を通してあるというのは本当のことだと安心する。
そうして、絵里奈に案内されたのは応接室だった。
「さあ、座って」
かなみは言われるままにソファーに座り込む。
「絵里奈さんはここで働いてるんですか?」
「いいえ、今日だけこの場所を借りているだけよ」
「そうなんですか!?」
「私達の仕事は秘密裏に事を進めていく性質なのよ。こうして、色々な場所に繋がりを持ちつつ、広く浅い関係を保っているのよ。なんて、私も上司から最近教えてもらったばかりよ」
「ああ、そうでしたね。絵里奈さんって新人だったんですね。大人っぽいから忘れかけてました」
「私が大人っぽい……これでもまだ大学出たばかりなのに……」
中学生のかなみからすると、それは十分大人っぽく感じるものだった。
「私からするとかなみちゃんの方がしっかりしている気がするんだけどね」
「そ、そうですか……しっかりしてるなんて考えたことないですけど……」
「案外そういうものよ。しっかりしてる人は自分がしっかりしてるなんて自覚がないものだから」
「そうですね。そういうイメージがあります」
「さて、それじゃ、今日の本題に入りましょうか」
絵里奈は持っていたカバンから封筒を取り出す。
「最近の怪人の出没情報と目撃情報から作成したイメージ図よ」
「怪人ってこんなに目撃されてるんですね」
かなみは紙の束を見て、感心する。
「まあ中には勘違いだったり、誤解だったりするものもあるのだけど、信憑性は高いものを私達が精査した結果がこれよ」
「これに鯖戸部長やあるみ社長の観点からさらに絞り込んで、君達に案件を割り振っている、というわけだよ」
マニィが補足する。
「へえ、そうなっていたのね。部長や社長がよこしてくる仕事って絵里奈さん達の会社の調査が元になっていたんですね」
「会社といっていいのか、なんていうか……」
絵里奈は言い淀む。
「でも、どうして今回それを私が?」
かなみは疑問を口にする。
いつも、あるみや鯖戸がやっていることなら、いつも通り二人がやっていればいいのではないか? と思ったからだ。
「かなみにも任せてみたい、と、二人は考えているみたいだよ」
マニィが答える。
「どうして、私に任せようなんて……?」
「それだけ、かなみちゃんを信頼しているってことなのでしょうね」
「私を信頼ですか……?」
かなみは頭の上で、あるみや鯖戸を思い浮かべてみる。
あるみだったらなんとなく「かなみちゃんならできるわ」って言ってきそう。鯖戸だったらなんとなく「君ならやれそう」って言ってきそう。
「そ、そうでしょうか……?」
それを信頼といっていいのか、かなみにはよくわからなかった。
「まあ、こうして色々情報があるってことは自分で仕事を選べるってことでもあるよ」
マニィが紙の束をテーブルに広げて言う。
「私が、仕事を、選ぶ?」
そんなことは今まで無かった。
今までは、あるみや鯖戸がもってきた仕事を言われるがままに受けて、怪人と戦ってきた。
かなみには他に選択肢がなく、そうするしかないとも思ってきたからだ。
「私が仕事を選んでいいの?」
「さすがにすぐには任せないけど、いずれはね」
「これ! これがいい!」
かなみは一枚の紙を手にとって掲げる。
「一番報酬が高い案件ね」
「当然そうなるから、まだいずれなんだよ」
マニィが毒づくように言う。
「だって、ボーナスがいっぱいないと借金返せないから!」
「かなみちゃんの場合、それは切実ね……」
「まあ、普通の人でも割のいい仕事を求めてしまうものだからね」
「それはそうね。あ、でも、かなみちゃんこれ」
「なんですか?」
「心霊スポットの調査になってるけど」
「え……!?」
かなみは青ざめる。
「ああ、案外そのテの案件も多いよ。高確率で怪人とか魔法の仕業って場合が多い。大体本物の幽霊とかでくわすことだってあるし、」
「キャー!?」
かなみは悲鳴を上げる。
本物の幽霊なら想像するだけで怖い。
「実際に君も出くわしたよね」
「そ、そうだった……」
千歳や他の幽霊と仕事で何度か会っているので、この案件が本物の幽霊と出くわす可能性が高い。
「だったら、他のにします……」
「アハハ、でも、まだ鯖戸さんが案件を管理しているのならこの仕事も、かなみちゃんに回ってくるかもね」
「こ、怖いこと言わないでください!!」
あの鯖戸なら本当にやりかねない。そう思うかなみだった。
「とりあえず、今日のところは案件を持ち帰ってもらうわね」
「それで、その中から精査して、かなみに仕事が回ってくる、というわけだよ」
「うぅ……どうか、おばけの仕事はきませんように……!」
かなみは祈るように合掌して言う。
「私に仕事を選ばせてくれるって本当?」
外に出てオフィスへ向かう帰り道、かなみはカバンについたマニィに訊く。
「本当だよ。今はまだ、だけど」
「どうして、私なの?」
「君に特に期待しているってことだよ」
「――!」
かなみは驚き、思わず足を止める。
「あんたにそう言われると変な気持ちね。裏があるんじゃないの?」
「別に……マスコットは嘘はつかないよ。嘘をつかないから、裏があるんじゃないかって勘ぐるのは人間のせいだよ」
「う、言われてみれば……」
「まあ、そういう素直さはボクは好ましいよ」
「そう、私もあんたがそういうこと言ってるところ好きよ」
かなみがそう言うとマニィはそれ以上喋らなかった。
カキィン! カキィン! カキィン!!
歩いていると爽快な金属音が響く。
バッティングセンターだ。
誰かが快音響かせて打っているのだろう。
そう思ってちょっと覗いてみたら思いも寄らない人がいた。
「あ!」
かなみはすぐにバッティングセンターに入っていった。
「紫織ちゃん!」
「かなみさん、どうして?」
バッティングセンターの一角で紫織は打っていた。
「ちょっと外回りの後……紫織ちゃんは?」
「私は今日はもう上りで、それで寄ってみまして」
「そうだったの! あ、ボールきてるよ!」
「は、はい!」
紫織は向き直って、マシーンから投げられたボールへ向かってバットを振る。
コツン
バットにかすっただけでボールはネットに行く。
「あ……」
「あはは、私のことは気にしないで、打って打って!」
「は、はい!」
紫織はバットを構える。
コツン、コツン、コツン
「紫織ちゃん、前見たときより……」
「はい」
「構えが様になっている気がするわ」
「そ、そうですか?」
コツン
しかし、かなみが見始めてから快音は鳴っていない。
「あ~私も詳しくないから偉そうに言えないから気にしなくていいわよ」
「はい!」
紫織は答えるけど、緊張していて構えがぎこちないように、かなみには見えた。
コツン、コツン、コツン
それからしばらくバットにかすり続ける。
コツン、カツン、コツン、キィン
しかし、かなみが言うように構えが良いのか、空振りもそもそも無かったので次第にバットのいいところに当たるようになってくる。
カキィン!
そして、とうとう快音を鳴らして、ボールが前に飛ぶ。
「あ!」
カナミは声を上げる。
しかし、それでまた紫織が意識してプレッシャーがかかってしまってはいけないのでそれだけにしておく。
カキィン!
次の球も快音を響かせる。
カキィィン!!
その次の球も、
カキィィィン!!
その次の球も、バットに当てて快音を響かせる。
しかも、だんだん音は大きく、打球に勢いが増している。
カキィィィィィン!!!
そして、とうとうボールをジャストミートさせて、ボールを勢いよく飛ばす。
「おお、すごいすごい!!」
かなみは思わず拍手を送る。
「はぁはぁ、そ、そうでしょうか……】
紫織はかなみの方を向いて言う。
「うんうん、そこまで飛ばすなんてすごいわよ!」
「そうですか。なんとなく、打てるようになった気がしますが……!」
紫織はそう言いながらバットを構える。
カキィィィィィン!!!
もう一度来た球をジャストミートさせる。
カキィィィィィン!!!
続けざまにまたジャストミートする。
「すごい! 紫織ちゃん、ずいぶん上手になってるね!」
かなみはとうとう遠慮なく褒めだす。
「なんとか打てました」
それでボールが出てこなくなってこの打席の分は終わったようだ。
「もう少しで、ホームランってところまでいったよね? もう一回やったらホームラン出せるんじゃない?」
「さあ……どうでしょう……なんとか打てるようになってきたんですけど、さすがにあそこは……」
紫織はピッチャーの後ろにあるネットの上部に貼られているホームランの張り紙を見る。
さっきのジャストミートなら飛距離は申し分なく、左に二メートルくらいずれていたら、という話だ。
「私も打ってみようかしら?」
紫織に触発されて、かなみは打席に立ってみようかと張りきる。
「今の財布事情だと厳しいんじゃないかな」
マニィが釘を刺すように言う。
「うぅ!」
それを聞いて、かなみが身体が石になったように固まる。
「そ、それでは私ももう一打席……」
紫織はコインを出す。
「紫織ちゃん、お金持ち~」
「えぇ、そ、そうですか……」
「紫織は君と違って、給料を生活費にあててないからね」
マニィが代わりに答える。
「え、あ、そうだったわね。ごめんね!」
「い、いえ……」
紫織はバットを構える。
そして、ボールが投げ出される。
カキィィィィィン!!!
ボールは再び快音が鳴る。
「紫織ちゃん、調子出てきたわね」
カキィィィィィン!!! カキィィィィィン!!! コツン、カキィィィィィン!!!
紫織は来たボールをジャストミートする。
しかし、常にジャストミートさせ続けているわけではなく、たまに打ち損なっている。
そのあたりは、まだ完全にモノにできていないということか。
「一流打者でも打率は三割だからね」
マニィが解説する。
「そうね」
紫織のカバンから羊のマスコット・アリィがやってくる。
「プロ野球でも野球の本場・アメリカのメジャーリーグでも三割、つまり、打数わる安打数で算出したのが打率になるのだけど、それが三割あれば一流打者と言われているわ。まあ手っ取り早く言うと十回振って三回ジャストミートさせればいいわけだけど、それはあくまでプロ同士の試合の話。こうしてバッティングセンターでピッチングマシンを使って打席に立つ分には常にジャストミートさせないと話にならないわ。特に魔法少女の戦いなら十回のうち七回もミスしていたらもっと話にならないわ。だからこそこうして打撃のコツを掴むために紫織は特訓してるのだけど中々モノにならないのよね。第一――」
「ストップ! 話長くなるから引っ込んでて!!」
かなみはアリィを無理矢理カバンに押し込める。
アリィの話が長く、このまま話し続けられたら、ぬいぐるみが動いて喋ってると騒ぎになるかもしれない。
幸いなことに他の客はバッティングに集中していて、アリィには気づいていなかった。
「はぁ~」
かなみは安堵の息をつく。
カキィィィィィン!!!
その間に、紫織はボールをジャストミートさせる。
「よく打つなあ!」
そこへ小学生の女の子がやってくる。
「え!?」
かなみは驚く。
この小学生の女の子――かなみよりも背が高いのだけど、ランドセルを背負ってるおかげで小学生だと判別できたのだけど、興味津々に紫織を見ている。
「あ、あの、君は?」
カキィィィィィン!!!
「おお、打ったあああああッ!!」
かなみが問いかけようとしたら、紫織が打って、女の子は大声を出した。
その食い気味なところに、かなみは引いてしまう。
「やるじゃない! うちの部員でもここまで打つ子はなかなかいないよ!!」
「え……」
紫織はその声に反応して振り向く。
「あれ? どこかでみたような?」
女の子は紫織の顔をジィーと見る。
「あ、あの、なんでしょうか?」
「うちの小学校で見かけなかったか?」
「あ! ソフト部の方ですか……」
「キャプテンの日野和子だよ。六年一組」
「四年二組の秋本紫織です」
「ふーん、四年生か。ソフトより野球が好きなの?」
「い、いいえ、そういうわけではありませんが」
「だったら、ソフト部に入らないか。これだけ打てれば即レギュラーだよ」
「え、えぇ……!?」
紫織は困って、かなみに助けを求める視線を送る。
「紫織ちゃんが決めてね」
かなみは苦笑いしてそう返す。
本当を言うと、かなみは困っていたので、紫織に丸投げしたような形になった。
「そ、それは……」
「ソフトは嫌い?」
「いいえ、そうじゃありません」
「じゃあ、ソフトやろうよ!」
「誘ってくれるのは嬉しいのですが」
「ソフトやれないの?」
「すみません……事情がありまして……」
「事情か。それじゃ仕方ないか。ウチは弱小だからなあ、試合に勝つためには紫織のバッティングが必要だと思ったのになあ……」
和子は残念そうに言う。
「ソフトやりたくなったらいつでもいってくれよ!」
そう言って、和子は打席に立つ。
「ソフトやらなくてよかったの?」
その晩、紫織の部屋でアリィは問いかけてくる。
「………………」
紫織は考え込んで沈黙する。
「ねえ!」
「はい!?」
紫織はアリィの呼びかけに気づいて、飛び上がりそうな勢いで驚く。
「ちょっと、興味はありましたけど……」
「だったら、やればよかったじゃないの。大体、あなたはね――」
「その話、長くなるからいいです」
紫織は打ち切った。
アリィの話は長くなるからこう言って、話を打ち切るようにしている。
「ソフトには興味ありましたけど、仕事がありますし……それに団体競技は苦手ですし……」
「団体競技というより、スポーツじゃないの。まあ、スポーツが苦手と言わないあたり成長したとは言えるけどね」
「スポーツも苦手でしたね……」
「苦手な人だったら、一緒にやろうだなんて誘われないわよ」
「そうですか……そうですね……・」
紫織は自分の言ったことを思い出しながら、自分の気持ちを整理していく。
「それに、私がソフトやったら、仕事はどうしたらいいんでしょうか?」
紫織は放課後、株式会社魔法少女に出社している。
そこで魔法少女の仕事や事務のような書類整理の仕事をしている。
「……ソフト、やってみたいなら社長は許可出すわよ」
「え?」
アリィから思いもよらないことを言われた。
「社長だって、そんな融通の利かないことしないわよ」
「そ、そうですよね……」
言われてみるとたしかに、むしろ無理を言って融通を利かせるようなイメージが紫織の中にあった。
「ソフト、やっていいのでしょうか?」
「私は言ったわよ。社長は許可する、って」
紫織は考え込む。
「私がソフトやって、足を引っ張ったり、迷惑かけたりしないでしょうか?」
「それはあなた次第でしょう? でも、スポーツにミスはつきものよ」
「うぅ……」
アリィは下手に励ましてはくれない。
ちょっと厳しいことを言うけど、それは相手のことを思いやってのことだと、紫織は理解している。
「それでも、やってみたいんでしょ?」
「………………」
その晩、紫織はその問いかけに答えず、考え込んだ。
「はあ……」
結局答えが出ないまま、朝を迎えていつものように学校に登校した。
教室に入ると誰も気づいていない。
影が薄いのは自覚がある。
以前はそれでやいやい言われて、上履きが隠されり、教科書にイタズラされたことがあったりしたけど、今はそれは落ち着いて、波風の立たない小学生生活になっている。
なるべく音を立てないように椅子を引いて、着席する。
キンコーンカンコーン
チャイムが鳴って、あっという間に休み時間になる。
授業もずっと上の空で、ソフトボール部に入ってやってみようかと悩み、考えていた。
「決めるなら、早く決めた方が良いわよ。グズグズして先延ばしにするなんて時間の無駄よ」
そうアリィに急かされているような気がする。
いてもたってもいられず、席を立つ。
廊下に出て、外の運動場を眺めてみる。
今は人がいないけど、放課後になったら、あそこでソフトボール部の練習が始まる。
その中に、自分は……。
「紫織!」
急に自分の名前を呼ぶ声がして驚く。
「ひゃいッ!?」
「紫織! やっぱり同じ学校だったんだ!」
「か、和子さん……ど、どうして?」
「同じ学校だからこう会うことだってあるよ」
「そ、そうですね……」
「それでソフトやる気になったか?」
「え、えぇ……」
実はまだ迷っていたけど、それすら言い出せずにいた。
「やる気になったら嬉しいな。今日から練習するか!」
「え、きょ、今日ですか? 今日は、何も、準備していませんから……」
「だったら、明日か! 明日ならいいんだな!」
「え、ええぇ……」
「明日、ソフトやろう!」
「……はい」
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