まほカン

jukaito

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第112話 泡影!少女と影の交差は消失点? (Cパート)

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「悪趣味の極みね!」
 カナミはその姿に対して、ヤジを投げる。
「なんとでもいいなさい。最後に立っていた者だけがその言葉を口にする権利があるのですから!」
 その腕が振るわれる。
 文字通り波のように衝撃波がカナミとヨロズへ押し寄せてくる。
「ならば、俺が」
 ヨロズも拳を振るう。
 すると、衝撃波が発生して、影鉄の衝撃波と激突する。
「衝撃波《しょうげきは》、と名付けようか」
「そのまま過ぎるわね」
 カナミは呆れる。
「そうか……ならば膂撃波《りょげきは》、というのはどうだ?」
「あ、それはいいかも!」
「ならば、それにしよう」
「うーん、それはそれで単純かも……」
「膂撃波《りょげきは》!!」
 ヨロズはもう一撃、腕を振るって衝撃波を放つ。
「その程度で調子に乗らないことですね!」
 影鉄は負けじと衝撃波を放つ。

バァァァァァァン!!

 二つの衝撃波が衝突して、相殺される。
「神殺砲! ボーナスキャノン!!」
 その直後に、カナミは砲弾を撃ち込む。
「ええい、うっとおしいですね!!」
 影鉄は巨大な黒い腕で受け止める。
 砲弾を止めきった影鉄の腕から、プシュウゥと焦げ付くような音を立てて、黒い煙が立ち上っていく。
「これは長く保ちませんね……一気に決着をつけます!」

ドシン!

 大きな足音と地響きを立てて、一歩ずつカナミとヨロズへ迫ってくる。
「ボーナスキャノン!!」
 カナミは即座に砲弾を撃ち込む
「今さらこんなものは通用しません!!」
 影鉄は両腕で砲弾を受け止めて、なおかつ押し出す。
「――!」
 押し出された砲弾はカナミとヨロズの方へ返ってくる。

バァァァァァァン!!

 押し返された砲弾をカナミとヨロズは飛び上がってかわす。
「そうやってかわすのはわかっていましたよ」
 影鉄は飛び上がって、カナミの身体をその腕で掴み取る。
「くう!」
 カナミは力を入れて、引き離そうとする。
「無駄です。あなたの力は今の私には到底通用しません」
「ぐうううう!?」
 影鉄の腕に力が加えられて、カナミの身体が押し潰されようとする。
「があああああッ!?」
 身体が潰される痛みと苦しみでカナミはたまらず悲鳴を上げる。
「ハハハハハハッ!!」
 影鉄の哄笑がカナミの耳に響き渡る。
「ああ、あぁ……;つ!?」
 とうとう息ができなくなるほどに身体を圧迫されていく。
「もうすぐ潰れますね! 潰れてしまいますね!!」
「――いいえ、カナミさんは潰させない!」
 その声の主は、スイカだった。
「ワイルド・スティンガー!!」
 スイカの渾身の突きの一撃を放つ。

ガァァァァァン!! 

 野性味あふれる突きの衝撃で、影鉄の巨大な身体が浮き、吹き飛ぶ。
「あ!」
 その衝撃でカナミは腕から解放される。
「カナミ!」
 メンコ姫が飛び込んでカナミを掴み取る。
「メンコちゃん!?」
「おめえ達のおかげで正気を取り戻せた」
「……ありがとう」
「それはオラのセリフだ」
「助かったから、スイカさんにも後でちゃんと言わないと」
「……そうだな。だが、今はそれより――」
 メンコ姫は影鉄の方へ視線を移す。
 腹にスイカの強烈な一撃を受けて、その腹から黒い煙が立ち上る。
「奴を倒す方が先決だ」
「ええ」
「立てるか?」
「ううん、無理。でも、飛べるわよ」
 そう問われてカナミは身体の感触を確かめる。痛みは仙術のお陰でとれても、さっきのダメージのせいか身体が思うように動かない。特に足に力が入らない。
 それでも、妖精の羽のおかげで飛ぶことができる。
「それで十分だ」
 ヨロズが飛んでくる。
 ヨロズの脳裏に、かつて共にへヴルと戦った時、『勝てるか?』と問いかけたときのことを思い出していた。
 へヴルの力は予想していた以上のもので、追い詰められてボロボロになって敗北寸前にまで追い詰められた。
 ヨロズは、勝てない、負ける、と思いかけていた。
 その上でカナミに問いかけた。
 そして、カナミは答えた。
『絶対に勝てるわ! さあ行くわよ!!』
 不思議な気持ちになった。
 その気持ちをヨロズは言葉にして返した。
『不思議だ、この状況でもお前がそう言うと勝てる気がしてくる』
 今の状況は、あの時と似ている。
 その上で、カナミは「まだ飛べる」と返した。
「――あの時以上に負ける気がしない」
「ええ、負けるつもりはないわ」
 カナミはメンコ姫の手から離れて妖精の羽で飛ぶ。
「まだメンコちゃんの影を取り戻していない!」
 カナミ、ヨロズ、メンコ姫の三人は影鉄を見据える。
「……つくづく奇妙な光景ですね。魔法少女と怪人が肩を並べて戦うなんて、そして、その戦う敵というのが私というのも奇妙な気分です。まあまとめて押し潰すだけですが」
 影鉄は巨大な腕を振り上げて、カナミ達へ勢いよく振り下ろす。
「全力拳打!!!」
 ヨロズの渾身の一撃で押し返す。
「神殺砲! ボーナスキャノン・アディション!!!」
 そこへすかさずカナミの砲弾を放つ。
 妖精の羽が集めてくれた魔力を一気に放出する最大級の砲弾を。

バァァァァァァァァァァァァァァァァン!!

 影鉄は砲弾に飲み込まれて、大爆発を起こす。
「これでトドメだ! 豪雷仙波《ごうらいせんぱ》!!!」
 さらに、メンコ姫が巨大棍棒で追撃をかける。

バシィ!

 影鉄の腕がその棍棒を掴み取る。
「オラの影を返せ!!」
「返したところであなたはまた影にのまれますよ。あなたが自分のチカラを恐れる限り!」
「いや、もうそんなことにはならねえ!」
「なんですって!?」
 メンコ姫の返答に影鉄は驚愕する。
「影に呑まれたところで止めてくれる友達がいるから!」
「そんなことが!?」
 メンコ姫は巨大棍棒を振るい、影鉄を吹っ飛ばす。
「まさか、この私がこのような最期を……十二席に辿り着けませんか……」
 それが影鉄の最期の言葉になった。



「む、むむ!?」
 オーダンは驚愕の声を上げる。
「影鉄が敗れ去ったか! ハハハ、こいつは意外すぎたな!!」
「仲間がやられたのに、どうして笑ってるの?」
 チトセが問う。
「おかしなことが起こったからおかしくなっただけだ!!」
「そう、あなたはおかしい怪人なのね」
「おかしくない怪人こそそれこそおかしいぜ!」
 オーダンの腕が指先から徐々に消えていく。
「逃げるの?」
「今回は影鉄の口車に乗っただけのこと。その影鉄がやられちまったからな、もう俺がここにいる理由はない」
「そう」
 オーダンの腕が消えていき、肩や足まで消える。そのうち全身が消えるだろう。
 それはオーダンがまもなくこの場から立ち去ることを意味していた。
「できればもう会いたくないわね」
「俺は会いたいぜ。人間の言葉でこういうのを縁っていうんだろう。そいつは大事にしなくちゃならねえんじゃねえか?」
「縁……そうね。本当に縁があったらまた会うことになるわね」
「そいつは楽しみだぜ」
 オーダンはそう言って、完全に姿を消す。
「私が大事にしたい縁は、他にあるんだけどね」
 チトセはそう言って、カナミ達に視線を移す。



「スイカさん、大丈夫ですか?」
 カナミはレイピアをついて立っているのがやっとのスイカに声をかける。
「ええ、ちょっとチカラを使いすぎちゃっただけだから」
 カナミを助けるために、残るチカラ全てを振り絞った渾身の一撃を放った。そのおかげでカナミは助けることができた。
「おかげで助かりました。スイカさんがいなかったら私やられていました」
「お礼なんていいのよ。カナミさんのチカラになるためについてきたんだから」
「それだったら、ついてきてくれてありがとうございます」
「オラからも礼を言わせてくれ」
 メンコ姫がやってくる。
「あの時、おめえが抑えてくれなかったらオラはカナミを傷つけていた」
 スイカは影にとらわれていたメンコ姫とカナミが対峙している時に割って入って、メンコ姫をどかせた。
 その後も暴れて振りほどこうとしたメンコ姫をスイカは必死に抑え込んだ。
 やがて、カナミとヨロズが影鉄を追い詰めて、影鉄が影を集めて、メンコ姫の影も回収した。
「オラ、は……?」
 その直後、メンコ姫の身体から影の黒が消えて正気に戻った。
「メンコちゃん、大丈夫なの?」
「あ、ああ、大丈夫だ。迷惑をかけちまった、すまねえ……」
「ううん、そんなこといいの。正気に戻ってよかった……」
 スイカは安堵の息をつこうとした。
「があああああッ!?」
 そこへカナミの悲鳴が聞こえてくる。
「カナミさん!?」
 影鉄の腕に捕まって、カナミの身体が潰されようとしている時だった。
「なんとか助けなければ……!」
「メンコちゃん?」
 スイカとメンコ姫は顔を合わせる。
「カナミさんを助けたい。協力してくれる?」
「もちろんだ」
 そうして、二人はカナミを助けに入った。
「ううん、私の方こそカナミさんを助けてくれてありがとう」
「え、それ私がお礼を言うべきじゃないんですか?」
 助けてもらった当のカナミは不思議そうな顔をする。
「うむ、美しき友情という奴じゃな」
 煌黄はそんな三人のやりとりを微笑ましく見守っていた。
「あれが友情というものか」
 ヨロズが言う。
「お主も加わったらどうじゃ?」
「俺も加わる、か……そうか」
 ヨロズは言われるがまま、カナミ達の元へ歩いていく。
「なんとも素直な怪人じゃ。敵対するには惜しいな」
「好敵手、というらしいわよ」
 チトセが言う。
「ほう、そういうものか。なんにせよ、よいものじゃ。できればずっとみておきたいのじゃが」
「じゃが?」
「そろそろカナミに施した仙術の効果がきれる時間じゃ」
「え? きれたらどうなるの?」
「今まで消していた痛みが一気に押し寄せてくる。いわゆる地獄の苦しみというやつじゃな」
「あ~それは……なまんだぶ、なまんだぶ」
 チトセはかける言葉が思いつかなくて、適当に念仏を唱える。
「そろそろじゃな。三、二、一――」
 煌黄はカウントダウンをかける。
「ゼロ」
 煌黄がそう宣言すると、カナミの変身が解除される。
「あぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!??」
 直後に地獄の苦しみが押し寄せてきたカナミは喉が潰れる勢いで今日一番の悲鳴を上げる。

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