まほカン

jukaito

文字の大きさ
上 下
285 / 331

第109話 仮面! 奥底の面を少女は垣間見る!! (Cパート)

しおりを挟む
パン!

 魔法弾は壁に当たったかのように弾かれる。
 当然、ヒバシラにはまったくダメージがない。ヒバシラの気を逸らすために撃った弾だから当然の結果だった。
「お前、何邪魔してるんだ!?」
「当たり前でしょ、敵同士なんだから!」
「そうか! そいつはごもっともだ!! だったら、ここでお前を燃やしてもいいんだろ!?」
「そうね。それまであんたが無事だったらね!」
「あん!?」
 ヒバシラはカナミが指差した方を見る。

ドスン!!

 ヒバシラはメンコ姫に思いっきり殴り飛ばされる。
『邪魔をするなあッ!』
 メンコ姫は言葉こそ発しないものの、そう言っているように聞こえた。
「そうね、決着をつけないと!」
 カナミとメンコ姫は対峙する。
 衣装も身体もボロボロで、ここからはもう限界との戦いになる。
『カナミ!』
 声はよりはっきり聞こえるようになってきた。
 それとともに、自分が止めなくてはならない想いも強くなる。
「神殺砲! ボーナスキャノン・アディション!!」
 カナミは持てる力限りを尽くして砲弾を撃つ。
「がああああああああッ!!」
 メンコ姫は裂帛の気合で砲弾へ突撃する。

バァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!

 爆発によって、十八階は崩壊する。
「メンコちゃん!!」
 その中で、カナミは吹き飛ばされて宙を力なく舞うメンコ姫の姿を捉えた。
「ぐ……!」
 身体中から悲鳴のように激痛が走る。
 メンコ姫から受けた攻撃、何度も神殺砲を撃った反動が合わさって身体はもう限界だから無理をするなと告げてくる。
(でも、あのままじゃ、地上に落ちる! 助けなくちゃ!!)
 それでも、心は無理をして助けろと命じる。
「飛んで、リュミィ!!」
『うん、飛ぶよ!!』
 カナミは羽を羽撃かせて、飛び上がる。
(痛い! 痛い! 痛い! でも、もう少し! 頑張るのよ!!)
 身体中から激痛が走るけど、目はメンコ姫をとらえる。
 何があっても助ける!
 その一念で飛び立つ。

パシィ!!

 カナミはメンコ姫の手を取り、抱き上げる。
「メンコちゃん!」
「………………」
 メンコ姫に呼びかけても、声がない。
 意識を失っているようだ。
 顔つきも、今までの鬼のような形相ではなく、かなみよりも幼く可愛らしい少女のそれに戻っていた。
 その顔を見て、ようやく止まってくれたと安堵する。
「う……」
 メンコ姫は目を開ける。
「気がついた、メンコちゃん!?」
「カナミ……?」
 メンコ姫は、不思議そうにカナミの顔を見上げる。
「カナミが止めてくれたの?」
「うん、大変だったよ」
 カナミは笑って言う。
「あいたたた……無理に飛んだから身体中が痛いよ……」
 羽を羽撃かせる度に身体中が痛む。
 油断すると地面へ真っ逆さまに落ちて、トマトのように二人仲良くペチャンコだろう。
「痛いか……すまない、オラのせいで」
「謝らなくていいよ、友達だもの」
「友達か……止めてもらうためになりたかったわけじゃないのに……」
「あれ、なんだったの? すごく怖かったけど……」
「怖かった、か……」
 メンコ姫は寂しそうに言う。
「ああ、ううん! でも、今は全然怖くないわよ!」
 カナミはメンコ姫へ元気づけるように言う。
「あれは、鬼夜叉って応鬼様は言ってた……」
「鬼夜叉……いかにもって感じね。……かっこいい?」
 カナミは言葉を選んで言ってみる。
「オラはアレが嫌いだった……人間と遊びたかった、人間と友達になりたかったけど、アレでみんな怖がっていった……」
「あぁ……」
 カナミは納得してしまう。
 あれは怖すぎる。
 自分も魔法少女として幾多の戦いを乗り越えてこなかったら、裸足で逃げ出していたことだろう。
「そうしていて怖がれるうちに、オラはどうしたらいいかわからなくなって、いっぱい暴れて、いっぱい傷つけてきた……」
 メンコ姫は辛い顔をして、話し続ける。
「人間でも、魔法少女なら友達になってくれると思ったから……」
「だから、私と友達になりたいって?」
「あぁ……怖かったろう? 友達になるのやめたくなったろう?」
「そんなことない!」
 カナミは力強く言って否定する。
 正直声を出すだけでも身体中が痛くてたまらない。それでも言わずにはいられなかった。
「メチャクチャ怖かったけど、友達になりたくないなんて思わなかった!」
「本当? 本当か?」
「本当に本当よ!」
「でも、アレはいつまた暴れ出すかわからないから」
「また暴れ出したら、私がまた止めるから!」
「また止める?」
 メンコ姫は信じられないものを見た目でカナミを見る。
「でも、また止められると限らないけどね、ハハハ」
 カナミは苦笑する。
「カナミなら……また止められるさ」
 メンコ姫はそう言ってくれる。

ストン

 カナミは地上へと着地する。
「アハハハ、なんとかなった……」
 カナミはメンコ姫を地面におろしてから両膝をつく。
 もう立つ力は残っていない。
 このまま、地面に顔をつけて寝てしまいたい欲求を抑えつける。
 地上に降りたとはいえ、まだホテルの近くで、敵地といっていい。このまま意識を失うのは自殺行為だ。
(せめて誰か来てくれないかな……)
「――これは千載一遇の好機ですね」
 突然、黒い影が現れる。
「えいてつ!?」
 カナミは顔を見上げて、身構える。
「あ、つぅ!?」
 身体に激痛が走り、視界が歪む。
 魔力はリュミィのおかげで尽きていないものの、身体中が痛み、体力はもう限界だった。
 とても戦えない。ましてや支部長と戦うなんてありえない。
「何しに来たの!?」
「そう身構えなくてもいいですよ。君の健闘を称えに来たのに!」
「なんであんたがここにいるのよ? ホテルでカリウス倒すんじゃなかったの?」
 カリウスを倒して、十二席の座に着く。
 会議はそういった態度でいたはずなのに、どうしてここにいるのか。
 カリウスはホテルの外に出たらゲーム終了。つまり、ホテルの外にいるということはゲームに勝つつもりがないということになる。
 そうまでしてどうして彼がここにいるのか?
 カナミは問わずにいられなかった。
「もちろん、ホテルのカリウスを倒すつもりでしたよ、そのために下の階でずっと待ち伏せしていましたから」
「だったらどうして?」
「あなたが見えたからですよ!」
 影鉄は宝石を目にしたように目を輝かせて言う。
「あなたが外に落ちた瞬間に、好機だと思いましてね! あなたを壊す好機だとね!」
 カナミは身構まえる。
 今戦っても勝負にならない。それでも、戦わずにはいられない。
 自分の命がかかっているのなら、精一杯戦ってやる。

ドン!!

「あた!?」
 何かを頭にぶつけられて、カナミは倒れ込む。
「ハハハ、ただの石を当てられただけでこのザマですからね!」
 影鉄は哄笑する。
(石? 今、石を当たられたの!?)
 何をぶつけられたのかすらわからなかった。
「とはいえ、今の目的はあなたを壊すのが目的じゃないんですよ」
「じゃあ、何が目的なのよ?」
「――あなたの影ですよ!」
 そう答えた影鉄はカナミの足元の影を掴み取る。
「何!?」
「思ったとおりですね! あなたの影は素晴らしいですね!」
 掴み取った影は、実態を持って影鉄の傍らに立つ。
「私の影が……!?」
 影は目を見開いて、こちらを見る。
 姿形はカナミと瓜二つで、身体も衣装も黒い。
「私の本当の特技は他人の影をいただいて部下にすることができるんです! 支部長達の影はとりがいがあったのですが、中々チャンスがなくてですね! そこに弱ったあなたがきてくれて渡りに船でしたよ!!」
「私の影をどうするつもりなの!?」
「もちろん、部下にしますよ! なんだったら秘書がいいですね! 魔法少女の影を傅かせるのはこの上なく楽しいですよ!」
「勝手にそんなことさせない!」
「ふむ」
 影鉄は足でカナミの身体を踏みつける。
「ああああああッ!?」
「壊すのは私の特技ではなく、趣味でしてね。影のお礼に命まではいただきませんが、腕の一本や二本くらいは壊してしまいましょうかね?」
 カナミは恐怖で身体が固まる。
 影鉄は今言ったことを容赦なく実行するだろう。
 そうなったら、自分は抵抗すらできない。なすがままだった。
「――やめろ!」
 メンコ姫は立ち上がる。
「カナミにそれ以上を手を出すな!」
「手では足を出しているのですけどね」
 影鉄はカナミを踏みつけてる足を指して言う。
「足だろうがなんだろうが、やめろと言っている!」
「何故あなたの命令を聞かなければならないんですか?」
 影鉄は首を傾げて不思議そうに問い返す。
「命令というのは強者のみが許された特権です。わかっていますよ、あなたにはもう戦う力は残っていません」
 そう言われて、メンコ姫の身体がフラつく。
 さっきの暴走で力を使い果たして、立つことすらやっとの状態だった。
「そんなあなたに命令されても、私はきく筋合いはありませんよ」
「だったら、力づくで!」
「ふむ」
 影鉄はどこから取り出したのか、石を投げつける。

ドン!

 その石を避けることができずに、メンコ姫はまともに顔に受ける。
「……あ!」
 その勢いに負けて、倒れ込む。
 弱った顔は、さっきまでの鬼のような形相とは到底結びつかないものだった。
「まあ、この際だからあなたの影も貰っていきましょうか?」
「な、に……?」
 影鉄はメンコ姫の影を掴み取って、取り上げる。
 それはまさに産婆が赤ん坊を取り上げるような神聖な所作のようであり、鳥の巣から雛鳥を奪い取る窃盗のようであった。
 あっという間に影はメンコ姫の形となる。
 カナミの影と揃って並び立つ。
(……キレイ)
 カナミは顔を見上げてその様を見ると思わず見とれた。
 魔法少女と怪人の影。
 決して相容れない二人が影となって違和感なく並び立っている。
「おめえ、よくもオラの影を……!」
「これは素晴らしいものをいただきました! お礼にあなたを壊してあげましょう」
「やめなさい!」
 今度はカナミが立ち上がる。
「あんたを絶対に許さない!」
 カナミはステッキを向ける。
「許さなかったらどうだというんですか?」
 影鉄は煽る。
「こうするのよ、神殺砲!!」
 カナミは砲台へと変化させる。
 身体はボロボロだけど、魔力は十分にある。
 身体が壊れてもいいのなら、撃てる。
 撃って、こいつを、影鉄を倒さなければならない。そういう敵だ。
「ボーナス、きゃあッ!?」
 しかし、発射直前で止まる。
 止められる。
 砲台が影鉄の拳によって破壊されて、行き場を失った魔力が暴発する。

バァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!

 暴発によって起きた爆発で、カナミはふっ飛ばされる。
「う、うぅ……!」
「危ないところでしたね。まだ戦う力が残っていたとは、油断も隙も無い、といったところでしょうね、ハハハ!」
 影鉄は嘲り笑う。
「く……!」
 カナミは悔しさで歯噛みする。
 もう立つ力すら残っていない。それに立ったところでどうしようもない。
 たったあれだけのやり取りでわかってしまった。
 影鉄とはどうしようもない力の差があって、たとえ身体が万全でも勝ち目はない。そう思い知らされた。
 それだけに悔しい。
『カナミ?』
 リュミィが心配そうに呼びかけてくる。
(リュミィ、ごめんね……!)
 無力な自分に対して、力を貸してくれるリュミィへ謝る。
(メンコちゃんもごめんね……)
 倒れているメンコ姫にも。
「さて、私にもう油断はありませんよ。――トドメをささせてもらいますか」
 影鉄は容赦なく言い放つ。
(――やられる!)
 抵抗する力は残っていない。
 もうダメだ、観念して目を伏せる。
「――そうはいかないわね」
 そこへ女性がやってくる。
(社長!? それとも、母さん!?)
 それは推測というより、願望だった。
 こんなときに助けに駆けつけてくれるのはいつだってその人達だった。
(いいえ、違うわ!)
 しかし、一瞬で冷静になってその声の主を見据える。
「その子にトドメをささせるわけにはいかないからね」
 和服を着た妖艶の美女、いろかだった。
「まさか君までここにやってくるなんてね。そんなに十二席の座が欲しくないのですかね?」
「そりゃ十二席の座は喉から手がでるほど欲しいわよ。一応ゲームに参加していたんだけど、そっちの子に地上ここまで落とされちゃってね」
 いろかは倒れているメンコ姫の方を見やって言う。
「どうしようかしらね、と手持ち無沙汰になっていたところにあなた達がやってきたわけよ。フフフ、どうしましょうね?」
 いろかは影鉄に問いかける。
 ここで、いろかが助けてくれるなんて都合のいいことをカナミは思わない。
 いろかは九州支部長で、本当なら影鉄の味方でカナミの敵だ。
 むしろ、カナミは余計に窮地に立たされたといっていい。
 にも関わらず、救いを感じずにはいられないのは、影鉄といろかが友好的ではなくむしろ敵対しているようにさえ感じるところだ。このまま二人が戦うのなら、この場を切り抜けられるチャンスが生まれるかもしれない。カナミは影鉄に足蹴にされながらもそんなことを考えていた。
「手持ち無沙汰ならそこで見物していればいいじゃないですか。今から私がこの子を壊して見せるから」
「なるほど、それはさぞ見ものでしょうね」
 いろかがそんなことに興味を示したことで、カナミはまずいと思った。
「――でも、私にはもっとみたいものがあるのよね」
「――!」
 影鉄は後方に飛ぶ。
 神殺砲を撃ち込もうとしても一歩も退かずに、むしろ前へ向かってきた影鉄が後ろへ逃げた。
 それだけの危険をいろかから感じたからだろう。
 しかし、そのいろかの姿が一瞬で消えた。
「どこへ!?」
 影鉄が辺りを見回そうとした時、いろかは後ろに回っていた。

シュパ!

 いろかは手刀を振るい、影鉄の首から上が飛ぶ。
「あ、れ?」
 影鉄は間の抜けた声を上げる。

コロコロコロ

 妙に軽快な音を立てて、頭は転がっていく。まるでおもちゃのボールが転がっていくみたいだった。

パラパラ

 次の瞬間、残っていた影鉄の身体も綺麗にバラバラになって飛び散る。
 それこそおもちゃの人形が壊れたときみたいに、腕がとれ、足がとれ、身体が綺麗にパズルのようにブロックで飛んでいく。
 カナミは血生臭いのは苦手だけど、不思議とそれは感じられない。
 目の前で起こっている出来事がとても現実に思えなかったからだろうか。
「もしかして、これって!?」
「――そうよ、幻よ」
 カナミが気づくのと同時に、いろかは肯定する。
 すると、霧が晴れたように、パッと影鉄の姿が現れる。
「おお、これがあなたの幻術というものですか」
 影鉄の身体のそこかしこを触って、自分の無事を確かめる。
「素晴らしいですね。確かに斬られた感触はありました。――まあ、首を斬られたくらいで死ぬわけがありませんが」
 影鉄は飄々と語る。
「私の苦手なタイプね。カリウスにもこれ通じなかったし、ああ、ちなみにカナミは私の得意なタイプね」
「聞いてないわよ! それより、しっかり戦いなさいよ!!」
「しっかり戦うのって苦手なのよね。まあ次はレベルを上げてみるけど」
「ほう、来ますか」
 影鉄も身構える。
「花吹雪というのはいかがかしら?」
 いろかがそう言うと、藍色の花びらが舞い散る。
「ほう、これはこれは綺麗ですね」
 影鉄は辺りを見回して感心する。
 やがて、花びらは影鉄の身体のそこかしこにまとわりついてくる。
「ん、んん? これは一体?」
「こういうのもいいものでしょう?」
 いろかがそう言うと、花びらが虫に変化する。
「お、おお!?」
 影鉄は驚愕する。
「きゃあああああああ、ムシムシムシムシ!?」
 それ以上に、カナミが慌てふためく。
 そんな元気がどこに残っていたのか、喉が張り裂けそうな勢いで叫ぶ。
 そして、のたうちまわる。
「……これは、中々気持ち悪いものだな」
 メンコ姫にも身体中に虫がまとわりついているというのに、至って冷静だ。いや、それよりも騒げる元気が残っていないというのが正しいかもしれない。
「あなたみたいにそうやって騒いでくれれば嬉しいのだけどね」
 いろかはカナミを指して言う。
「私、虫は好きでしてね」
 影鉄は身体中の虫がまとわりついているというのに、平然とそう答える。
「ほら、こうやってこわすのは楽しいじゃないですか」
 その中の一匹をつまんで、そのままプチッと潰す。
「とはいえ、それを一万回以上もやるのは面倒ですからね」
 ゴン! と、音が立つと同時に虫が一斉に弾け飛ぶ。
「あなたにも私の幻術がきかないのかしらね」
「さあ、どうでしょうか? あなたは遊んでいるように見えます。――本気になったらどうでしょうか?」
「本気にね……」
 いろかの空気が一変する。
 空気が重みをもってのしかかってくるような、プレッシャーだ。
「……あ、これはまずいですね」
 影鉄はそう言うと、右手が消えて無くなる。
「――!」
 さっきのような、おもちゃのようにバラバラになるのとはまた違う現実感の無さだった。
「真の幻というのは何も視えなくなるということよ」
 いろかがそう語ったように、影鉄の右手は消えた。
「幻は恐怖を呼び起こす術。もっとも恐怖を呼び起こす幻は何かが起きているというのに何もわからない。それは恐怖すべきことでしょ?」
「確かに……これが幻だとわかっていても、右手が無くなるというのは怖いですね」
「次は左手、というのはいかがかしら?」
「あー、それは勘弁していただきたいですね」
 影鉄は左手を上げて降参のポーズを取る。
「左手の次は右足、その次は左足。そんなプランなんでしょ?」
「ああ、この手もダメかしら」
「いえいえ、そんなことありません。無くなるのは片手だけで勘弁してもらいたいですよ」
「それだったら、この場は退いてもらえる?」
「やむを得ませんね」
 影鉄は背を向ける。
「あなた方を壊す機会は次にしましょう」
 そして、気味の悪い台詞を残して消えていった。かなみとメンコ姫の影も一緒に。
「危ないところだったわね」
 いろかはカナミへ言う。
「どうして助けてくれたの?」
「別に大した理由はないわよ。ただ、あんな奴にあなたが壊されるところなんて見たくなかったから、――どうせ壊すなら私の手でやりたいのよね」
「――!」
 いろかにそう答えられて、カナミにゾクリと寒気が走る。
「フフフ、冗談よ」
「冗談に聞こえないから」
「そうね、半分くらい本気だったかしら?」
「本当に半分?」
 カナミは不審な目つきで問う。
「信じてもらおうとは思わないわ。その方が楽しいから」
「悪趣味……」
「だって、悪の怪人だから」
 いろかは妖艶な笑みを浮かべる。
「……ま、とはいえ、長引いたら危ないところだったけどね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

【R18】通学路ですれ違うお姉さんに僕は食べられてしまった

ねんごろ
恋愛
小学4年生の頃。 僕は通学路で毎朝すれ違うお姉さんに… 食べられてしまったんだ……

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...