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第65話 取材! スコープ越しの少女の秘密 (Cパート)
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キンコーンカンコーン
本日終業のチャイムが鳴る。
六時間目の授業が終わり、一応臨時の担任である柏原がやってくる。
(あいつの顔を見るのは気にくわないけど、授業は終わったんだしこれで終わりね……)
あとは最低限の連絡事項を聞いて、最後の一礼をする。それで学校は終わって、かなみは一目散に下校する。
そういう段取りがかなみの頭の中に出来上がっていた。
「カーシーの一日担任もこれで終わりか」
「このままカーシーが担任でもよくね」
「っていうか、カーシーはいつまで教育実習生なわけ?」
などと、何も知らない生徒達は好き好きに言っている。
このまま、担任にでもなってしまったら、それこそかなみにとっては悪夢だ。……いつまでも教育実習生なのは、それはまた別の事情だが。
「それでは、今日はこれで終了です」
「起立!」
日直が号令をかける。
「礼! さようなら!」
「「「さようなら!」」」
パシャ
このなんでもない一幕のときにもシャッター音がチラつく。
(絶対にとっちめてやる!)
かなみはそう決意する。
「魔法少女カナミさん!」
校門をくぐるなり、パッシャが姿を現わして声を掛けてきた。
「あんたね……!」
言いたいことは山ほどあったが、まずはどうしてもやらなければならないことがあるとかなみは手を出す。
「そのカメラをよこしなさい!」
「お断りします!」
パッシャは即答する。
「これはボクの生命ともいうべきものです!」
「他人のプライバシーを侵害する生命だったら捨てちゃいなさいよ!」
「横暴です!」
「どっちが!」
かなみは激しく睨む。
パシャ!
そんな激昂したかなみの顔を、パッシャは激写する。
「……叩き壊すわよ!」
かなみは半目になってカメラへ手を伸ばす。
スルリ
パッシャはすぐに動いて、かなみの手から逃れる。
「よこしなさい」
「お断ります! それよりいいんですか、こんなところでグズグズしていたら出社が遅れますよ!」
「ああ!!」
かなみは思い出して、パッシャの隙を伺いつつ、オフィスビルへと向かう。
「おはようございます」
パシャ!
出社の一幕まで撮影される。
「おはよう、かなみさん」
翠華が出迎えてくれる。
「翠華さん……」
「取材ってまだ続いてたのね……大変そうね」
「そうなんですよ、助けてください!」
かなみは翠華に縋るように言う。
「え、えぇ……!?」
翠華は気が動転する。
(か、かなみさんが私に助けを求めてきた!?)
自分はこの時の為に、魔法少女になったのだと気持ちがこもる。
「かなみさん、私の後ろに!」
「は、はい!」
かなみは素直に従って、翠華の背後に隠れるように回る。
(こ、こんな守り甲斐のあるかなみさんは初めてかも!?)
そして、翠華は大いに張り切る。
パシャ!
「あ、ほらまた!」
「またいい一枚がとれましたよ。頼りになる先輩に守ってもらおうとする魔法少女カナミさん。これは中々レアですよ!」
「――!
記者さん、それは私にも一枚ください!!」
「は、はあ……」
翠華の予想外の食いつきにパッシャもたじろぐ。
「す、翠華さん……」
かなみも戸惑う。
ドン!
扉を壊しかねない勢いであるみがオフィスへ押し入ってくる。
「社長!」
かなみは縋るようにあるみへ言い寄る。
「社長、なんとかしてください! あの怪人、学校にまで付きまとってくるんですよ!」
「学校にまで?」
「そうなんですよ! ですから、なんとかしてください!」
「それはかなみちゃん、あなた自身でなんとかしなさい」
「えぇ……」
「それより、仕事を持ってきたわ」
「え、仕事ですか?」
「仔馬があなたにぴったりの仕事だって言ってたわ」
あるみはそう言って、かなみへ封筒を渡す。
「部長が、ですか……」
その一言に乗り気だった気分がそがれてしまった。
かなみは封筒の中身を確認した。
「魔法少女カナミさんはこんなところにまでお仕事で出向くんですか」
「ええ、そうよ」
かなみはぶっきらぼうに答える。
今回の仕事は路地裏に住み着いた怪人の退治。
例によって例のごとく、パッシャもついてきている。
(自分で何とかしなさい、ね……)
あるみの言葉を思い出す。
上手いこと、この仕事でなんとかできないものだろうか。とはいえ、直接危害加えてこない敵を倒すのは気が引ける。
パシャ
パッシャは一枚写真をとる。
「ううむ、なんだか不思議としっくりくる一枚がとれましたね」
「……ほうっておいてよ」
マニィにもさんざん言われているのだから、少々の自覚を覚えてきた。
(なんで、私ってこういうロケーションばっかなの?)
暗くてジメジメしていて不気味で、誰も寄り付かなくて人気が無い。
(でも、この人心地の悪さが逆に……なんて、全然思ってない!)
かなみは頭の中にわきかけた考えを即座に捨てる。
「さ、こっちだよ」
マニィがかなみの方から離れて四足歩行で案内する。
ああしていると彼が本物のネズミに見えてならない。
「あんたもしっかり馴染んでるわよね」
「まあネズミってそういうものみたいだから」
「ネズミね……」
ニャアァァァァァァァッ!!
ネコの鳴き声が響き渡る。
「ネコ……?」
マニィは身震いして、かなみの肩に乗っかる。
「この先にネコがいるよ」
「あんた、怖いの?」
「ネズミってそういうものみたいだから」
「そういうところはネズミらしいわね」
感心するところなのか、呆れるところなのか。
「って、もしかしてこの先にネコがいるの?」
「そうみたいだね……あるいは……」
バタン
マニィがそんなこと言うと、ポリバケツが落ちる音がする。
「――!」
かなみは身構える。
その先にいたのは、大の大人ほどの大きさのあるネコだった。
「おお! ネコの怪人!? ネコカイジン!?」
パッシャはシャッターを切る。
「路地裏に住み着いた怪人というのはネコの怪人みたいだね」
「あんたの天敵ね」
「ボクが戦うわけじゃないからね」
いい気なもんね、とかなみはぼやく。
「いいわよ! やってやるわよ!!」
「これは撮り甲斐がありますね!!」
パッシャはカメラを構える。
「マジカルワーク!」
「あ、ここから撮影エヌジーで」
マニィがパッシャのカメラに張り付く。
「なんと!? そりゃないでしょ!」
パッシャは文句を言っているうちに、かなみは変身を完了させる。
「愛と勇気と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
お決まりの口上とポーズを決める。
「はい、撮影オーケー」
「できれば変身シーンを独占入手したかったのですが!」
「変身シーンは我が社の重要機密だからね、ネガサイドには渡せないよ」
「人の変身シーンを何だと思ってるのよ、あんた達!?」
カナミは振り返って、マニィとパッシャに文句を言う。
ニャアァァァァァァァッ!!
そうこうしているうちに痺れを切らして、ネコカイジンはカナミへとびかかる。
「はや!?」
カナミはとっさにかわす。
それでも、衣装のすそに切れ目が入る。
「よくもやったわね!」
カナミは魔法弾を撃つ。
鉄砲並みに威力を落とす。路地裏のここで威力を上げたら、建物まで壊してしまう。
バン! バン! バン!
しかし、ネコカイジンはそのことごとくをすばしっこくかわしていく。
「すばしっこいわね! 猫なだけに!」
「おお、あの身体でなんという身のこなし! 素晴らしいですね!」
パシャ! パシャ! パシャ!
パッシャは嬉々としてシャッターを切り、カナミはその音に苛立ちを募らせる。
「ああ、もう! 気が散る!」
バン! バン! バン!
しかし、魔法弾は一向に当たらない。
「あの程度の威力だったら、千発撃っても魔力は切れないだろうね」
「素晴らしいスタミナですね。何か秘訣があるんでしょうか?」
後ろでマニィとパッシャの変なやり取りが聞こえてくる。
「借金、かな」
「借金、ですか?」
「余計なこと言ってんじゃないわよ!」
マニィを魔法弾で撃ってやろうか! の勢いで振り返る。
「カナミ! 後ろ!」
すかさずマニィが注意する。
「え、きゃあ!?」
カナミはとっさに気配を感じて、身をかがめる。
巻き上がったカナミの髪の毛が切られる。
「ああ、よくも髪を!」
「ほら、油断大敵だよ」
「どの口が言うか!」
「なるほどなるほど、カナミさんは油断することがあると」
「……あんた達!」
カナミは腕をワナワナと震わせる。
「いやだから油断してる場合じゃないよ」
マニィが注意する。
「そんなこと!」
カナミはネコカイジンの爪攻撃を右へ、
「わかってるわよ!」
左へリズミカルに避ける。
「さすがですね、もう見切ってるじゃないですか」
パッシャは感心する。
ニャアァァァァァァァッ!!
中々当たらないネコカイジンは怒りを露にする。
「ニャアニャア言いたいのはこっちの方よ!」
カナミの方も魔法弾が一発も当たらない。
「ニャア!」
ネコカイジンは気合をもって飛び込んでくる。
「そんな攻撃があたるわけないでしょ!」
パン!!
ネコカイジンは両手をパンと叩く。
「ね、ねこだまし!?」
さらにそこからパンチを繰り出し、カナミの顔にクリーンヒットさせる。
「ねこぱんち!?」
完全に不意を突かれたカナミに、ネコカイジンは畳み掛けるようにねこぱんちを繰り出す。
「あた!? あいたたたた!?」
ダメージはそれほどじゃないけど、息もつかさない連続攻撃に言いようにやられる。
「もしかして、これはネコカイジンさんの大金星ですかね!?」
パシャ! パシャ! パシャ!
パッシャは嬉々としてシャッターを切る。
「いや、残念ながらそうはならないだろうね」
マニィはあっさりとそう言う。
「こんのぉぉぉぉぉッ!」
耐えかねたカナミは反撃に仕込みステッキを振り抜く。
「ニャアッ!?」
ネコカイジンは仕込みステッキで爪を切られて面を食らう。
「よくもやってくれたわね! 散弾撃ち!!」
魔法弾をショットガンのように一斉に発射する。
逃げ場のないほどの乱射に、ネコカイジンは魔法弾をまともに浴びる。
「ニャ!? ニャニャニャニャニャァァァァァァッ!?」
「ああ、猫好きとしてはなんだか罪悪感が……」
カナミはやりづらさを覚える。
「こうなったら、一気に片付けるわ!」
「おお、一気に片付けるとは容赦がないですね! さすがです!」
パッシャはまたシャッターを切り始める。
カナミはさらにやりづらさを覚える。
「神殺砲!」
カナミはステッキを大砲へ変化させる。
「おお!! あれが噂に名高い数多の怪人を葬ってきた魔法少女カナミの必殺技!!」
「ん、でも、こんな狭い場所で撃ったらまずいんじゃないかい?」
マニィは疑問を口にする。
「もちろん、威力は落とすわよ! えぇっと、十分の一くらい?」
「それじゃ、弱すぎるんじゃ……いや、ちょうどいいかも?」
「ボーナスキャノン!!」
カナミはいきなり神殺砲を発射する。
威力を抑えるということは魔力が少なくて済むので、それだけ充填に時間がかからないのだ。
バァァァァァァン!!
大砲から発射された魔法弾はネコカイジンを捉え、路地裏の外へ吹き飛ばす。
「見事なものだよ」
マニィのこの一言が仕事完了の合図であった。
「ま、こんなもんよ」
カナミは変身を解く。
「おお、凄かったですよ! カナミさん! いい写真も取れましたし!」
パッシャは大はしゃぎする。
「これで変な記事にならなければいいんだけど……」
「まあ、大丈夫だと思うよ」
「だといいんだけど……ところで、マニィ!」
「ん、何かな?」
「何かなじゃないでしょ! さっきの残念ながらって何よ!?」
「ちゃんと聞いてたんだ……」
「あんたの一言の多さには地獄耳よ」
「それは厄介かつ便利な地獄耳だね。今後は口に気を付けるよ」
「信用できないわね」
かなみとマニィは言い争いをしながら路地裏を出る。
「これは予想以上にいいものがとれましたね。彼も喜ぶことでしょう」
パッシャは一枚の写真――神殺砲を撃つカナミの絵を眺めて喜ぶ。
それから三日経った。
取材、取材とあれほどしつこかったパッシャはネコカイジンを倒した後、忽然と姿を消した。
「結局なんだったのかしら?」
「さあね。ところで取材料は貰って無かったの?」
「あ……」
そこでかなみは思い出す。
パッシャが持っていた厚みのある封筒。取材を受けたら貰えるという話だったことを。
「あーー!!」
かなみは大声を上げる。
周囲の人から、奇異の視線を向けられる。
「そんなに大声を上げるなんてみっともないよ」
「だって、だって! あんなに厚みがあった取材料を受け取りそこなったのよ!!」
「過ぎたものはしょうがない。諦めた方が賢明だよ」
「うぅ……あれは五十万はあったわよ……」
かなみは逃がした魚は大きいと言わんばかりに小石を蹴っ飛ばしながらクヨクヨ歩く。
「おはようございます」
かなみはオフィスへ出社する。
「あ、魔法少女カナミさん!」
パッシャがやってくる。
「あんた、どこ行ってたのよ? あのネコカイジンを倒した後、消えたきりで!」
「十分取材させてもらいましたから、記事を書いてたんです!」
パッシャはペラペラと紙を出す。
『ネガサイド日本支部社内報 第十五万八千五百九十一号』
「数多いッ!?」
かなみはその号数に面を食らう。
「歴史が古いですからね。それより中身を見てください」
パッシャは自慢げに言う。
『特報! 魔法少女カナミの秘密!』
見るだけで寒気が走るような字面であった。
まず一面は三次試験での戦いぶりが、でかでかと張られている。
「ふうん、よくとれてるじゃない」
そこだけは感心する。が、二面目を開く時には前言を撤回する羽目になる。
『普段は普通の十四歳! 日本女子中学生! 苦手科目は数学!』
「なッ! ななッ!?」
いつの間にとられたのか、学校生活が余すことなくとられている。
「こんなのプライバシーの侵害よ!」
「悪の秘密結社にそんな倫理は通用しません」
「でも、よく見るとかなみや柏原先生しか映ってないね」
マニィが一枚一枚丁寧に見てコメントする。
「それはまあ今回は魔法少女カナミさんの特集ですからね。他の生徒を映して趣旨がずれてしまいかねませんから」
「変なところで仕事熱心ね」
かなみは呆れる。
ちなみに三面目はかなみのオフィスでの仕事ぶりと涼美のインタビュー記事が載っていた。
『魔法少女カナミは私の自慢の娘よ』
そんな書き出しで始まっていて長々と書かれていて、読む気にもなれなかった。
「母さん……なんでノリノリなのよ……」
「あの人、こういうことにはノリやすそうだからね」
「そんなわけで、カナミさんのおかげで社内報は大好評なんですよ!」
「ええ、こんな記事で!?」
「みなさん、魔法少女カナミに興味津々なんですよ!」
「怪人に興味あるって言われても……」
「みなさん色々と知りたがっているんですよ
カナミさんの弱点とか住所とか倒し方とか貯金とか苦手なものとか」
「絶対教えないわよ!!」
かなみは断固たる態度で言い放つ。
「というわけで、第二弾も出す予定になったので引き続き取材させてもらいますね!」
「冗談じゃないわ!」
かなみはパッシャから距離をとる。
「そんな……こうして取材料もお持ちしましたのに……」
パッシャはあの厚みのある封筒を取り出す。
パシッ!!
かなみは即座にその封筒を取り上げる。
「ま、まあ……今回はこれで大目にみるわよ!」
「ああ、渡しそびれてましたね。第二弾の分もちゃんと用意してますよ」
「それ、本当!?」
かなみは目を輝かせる。
「え、ええ」
さすがのパッシャもこれにはたじろぐ。
「それでは、同じ金額で第二弾の取材も快く受けてくれるということですね?」
「お、同じ金額……いいわよ、受けてあげるわ!」
「ありがとうございます。それで次の仕事はなんですか?」
「今日は何もないわよ。普通の仕事」
かなみがそう答えると、パッシャは明らかに落胆する。
「そうですか……わかりました、今日はちょっと失礼します」
「……え?」
かなみは驚く。
てっきり普通の仕事だろうが、密着取材する勢いでくるかと思っていたのに。
「それでは」
パッシャは一礼して本当にオフィスから出て行く。
「なんだったの……?」
「さあ……ところでかなみ?」
「なに?」
「封筒の中身、確認した?」
「……え?」
そう言われて、かなみは慌てて封筒の中身を確認する。
「あーーー!!」
はいっていたのは千円札の札束だった。
「ってことはこれだけお札があっても、四、五万しかないわけ!?」
「まあ、わら紙とか偽札じゃない分、悪の秘密結社にしては良心的だね」
マニィはいたって冷静であった。
「あ、ちなみに同じ金額で引き受けっちゃたけどいいの?」
「いいわけないでしょ!! すぐに断らなくちゃ!!」
「でも、レコーダーでとられてると思うよ」
マニィの一言でかなみは落胆する。
そこまでやられているとなると、取り消すのは難しいと思ったからだ。
「……してやられた……うちの部長みたいな手を使う怪人がいたなんて……」
「部長、聞いてるよ」
鯖戸は無表情でこちらを見ている。
「……聞かせてるのよ」
かなみは投げやり気味に答えた。
本日終業のチャイムが鳴る。
六時間目の授業が終わり、一応臨時の担任である柏原がやってくる。
(あいつの顔を見るのは気にくわないけど、授業は終わったんだしこれで終わりね……)
あとは最低限の連絡事項を聞いて、最後の一礼をする。それで学校は終わって、かなみは一目散に下校する。
そういう段取りがかなみの頭の中に出来上がっていた。
「カーシーの一日担任もこれで終わりか」
「このままカーシーが担任でもよくね」
「っていうか、カーシーはいつまで教育実習生なわけ?」
などと、何も知らない生徒達は好き好きに言っている。
このまま、担任にでもなってしまったら、それこそかなみにとっては悪夢だ。……いつまでも教育実習生なのは、それはまた別の事情だが。
「それでは、今日はこれで終了です」
「起立!」
日直が号令をかける。
「礼! さようなら!」
「「「さようなら!」」」
パシャ
このなんでもない一幕のときにもシャッター音がチラつく。
(絶対にとっちめてやる!)
かなみはそう決意する。
「魔法少女カナミさん!」
校門をくぐるなり、パッシャが姿を現わして声を掛けてきた。
「あんたね……!」
言いたいことは山ほどあったが、まずはどうしてもやらなければならないことがあるとかなみは手を出す。
「そのカメラをよこしなさい!」
「お断りします!」
パッシャは即答する。
「これはボクの生命ともいうべきものです!」
「他人のプライバシーを侵害する生命だったら捨てちゃいなさいよ!」
「横暴です!」
「どっちが!」
かなみは激しく睨む。
パシャ!
そんな激昂したかなみの顔を、パッシャは激写する。
「……叩き壊すわよ!」
かなみは半目になってカメラへ手を伸ばす。
スルリ
パッシャはすぐに動いて、かなみの手から逃れる。
「よこしなさい」
「お断ります! それよりいいんですか、こんなところでグズグズしていたら出社が遅れますよ!」
「ああ!!」
かなみは思い出して、パッシャの隙を伺いつつ、オフィスビルへと向かう。
「おはようございます」
パシャ!
出社の一幕まで撮影される。
「おはよう、かなみさん」
翠華が出迎えてくれる。
「翠華さん……」
「取材ってまだ続いてたのね……大変そうね」
「そうなんですよ、助けてください!」
かなみは翠華に縋るように言う。
「え、えぇ……!?」
翠華は気が動転する。
(か、かなみさんが私に助けを求めてきた!?)
自分はこの時の為に、魔法少女になったのだと気持ちがこもる。
「かなみさん、私の後ろに!」
「は、はい!」
かなみは素直に従って、翠華の背後に隠れるように回る。
(こ、こんな守り甲斐のあるかなみさんは初めてかも!?)
そして、翠華は大いに張り切る。
パシャ!
「あ、ほらまた!」
「またいい一枚がとれましたよ。頼りになる先輩に守ってもらおうとする魔法少女カナミさん。これは中々レアですよ!」
「――!
記者さん、それは私にも一枚ください!!」
「は、はあ……」
翠華の予想外の食いつきにパッシャもたじろぐ。
「す、翠華さん……」
かなみも戸惑う。
ドン!
扉を壊しかねない勢いであるみがオフィスへ押し入ってくる。
「社長!」
かなみは縋るようにあるみへ言い寄る。
「社長、なんとかしてください! あの怪人、学校にまで付きまとってくるんですよ!」
「学校にまで?」
「そうなんですよ! ですから、なんとかしてください!」
「それはかなみちゃん、あなた自身でなんとかしなさい」
「えぇ……」
「それより、仕事を持ってきたわ」
「え、仕事ですか?」
「仔馬があなたにぴったりの仕事だって言ってたわ」
あるみはそう言って、かなみへ封筒を渡す。
「部長が、ですか……」
その一言に乗り気だった気分がそがれてしまった。
かなみは封筒の中身を確認した。
「魔法少女カナミさんはこんなところにまでお仕事で出向くんですか」
「ええ、そうよ」
かなみはぶっきらぼうに答える。
今回の仕事は路地裏に住み着いた怪人の退治。
例によって例のごとく、パッシャもついてきている。
(自分で何とかしなさい、ね……)
あるみの言葉を思い出す。
上手いこと、この仕事でなんとかできないものだろうか。とはいえ、直接危害加えてこない敵を倒すのは気が引ける。
パシャ
パッシャは一枚写真をとる。
「ううむ、なんだか不思議としっくりくる一枚がとれましたね」
「……ほうっておいてよ」
マニィにもさんざん言われているのだから、少々の自覚を覚えてきた。
(なんで、私ってこういうロケーションばっかなの?)
暗くてジメジメしていて不気味で、誰も寄り付かなくて人気が無い。
(でも、この人心地の悪さが逆に……なんて、全然思ってない!)
かなみは頭の中にわきかけた考えを即座に捨てる。
「さ、こっちだよ」
マニィがかなみの方から離れて四足歩行で案内する。
ああしていると彼が本物のネズミに見えてならない。
「あんたもしっかり馴染んでるわよね」
「まあネズミってそういうものみたいだから」
「ネズミね……」
ニャアァァァァァァァッ!!
ネコの鳴き声が響き渡る。
「ネコ……?」
マニィは身震いして、かなみの肩に乗っかる。
「この先にネコがいるよ」
「あんた、怖いの?」
「ネズミってそういうものみたいだから」
「そういうところはネズミらしいわね」
感心するところなのか、呆れるところなのか。
「って、もしかしてこの先にネコがいるの?」
「そうみたいだね……あるいは……」
バタン
マニィがそんなこと言うと、ポリバケツが落ちる音がする。
「――!」
かなみは身構える。
その先にいたのは、大の大人ほどの大きさのあるネコだった。
「おお! ネコの怪人!? ネコカイジン!?」
パッシャはシャッターを切る。
「路地裏に住み着いた怪人というのはネコの怪人みたいだね」
「あんたの天敵ね」
「ボクが戦うわけじゃないからね」
いい気なもんね、とかなみはぼやく。
「いいわよ! やってやるわよ!!」
「これは撮り甲斐がありますね!!」
パッシャはカメラを構える。
「マジカルワーク!」
「あ、ここから撮影エヌジーで」
マニィがパッシャのカメラに張り付く。
「なんと!? そりゃないでしょ!」
パッシャは文句を言っているうちに、かなみは変身を完了させる。
「愛と勇気と借金の天使、魔法少女カナミ参上!」
お決まりの口上とポーズを決める。
「はい、撮影オーケー」
「できれば変身シーンを独占入手したかったのですが!」
「変身シーンは我が社の重要機密だからね、ネガサイドには渡せないよ」
「人の変身シーンを何だと思ってるのよ、あんた達!?」
カナミは振り返って、マニィとパッシャに文句を言う。
ニャアァァァァァァァッ!!
そうこうしているうちに痺れを切らして、ネコカイジンはカナミへとびかかる。
「はや!?」
カナミはとっさにかわす。
それでも、衣装のすそに切れ目が入る。
「よくもやったわね!」
カナミは魔法弾を撃つ。
鉄砲並みに威力を落とす。路地裏のここで威力を上げたら、建物まで壊してしまう。
バン! バン! バン!
しかし、ネコカイジンはそのことごとくをすばしっこくかわしていく。
「すばしっこいわね! 猫なだけに!」
「おお、あの身体でなんという身のこなし! 素晴らしいですね!」
パシャ! パシャ! パシャ!
パッシャは嬉々としてシャッターを切り、カナミはその音に苛立ちを募らせる。
「ああ、もう! 気が散る!」
バン! バン! バン!
しかし、魔法弾は一向に当たらない。
「あの程度の威力だったら、千発撃っても魔力は切れないだろうね」
「素晴らしいスタミナですね。何か秘訣があるんでしょうか?」
後ろでマニィとパッシャの変なやり取りが聞こえてくる。
「借金、かな」
「借金、ですか?」
「余計なこと言ってんじゃないわよ!」
マニィを魔法弾で撃ってやろうか! の勢いで振り返る。
「カナミ! 後ろ!」
すかさずマニィが注意する。
「え、きゃあ!?」
カナミはとっさに気配を感じて、身をかがめる。
巻き上がったカナミの髪の毛が切られる。
「ああ、よくも髪を!」
「ほら、油断大敵だよ」
「どの口が言うか!」
「なるほどなるほど、カナミさんは油断することがあると」
「……あんた達!」
カナミは腕をワナワナと震わせる。
「いやだから油断してる場合じゃないよ」
マニィが注意する。
「そんなこと!」
カナミはネコカイジンの爪攻撃を右へ、
「わかってるわよ!」
左へリズミカルに避ける。
「さすがですね、もう見切ってるじゃないですか」
パッシャは感心する。
ニャアァァァァァァァッ!!
中々当たらないネコカイジンは怒りを露にする。
「ニャアニャア言いたいのはこっちの方よ!」
カナミの方も魔法弾が一発も当たらない。
「ニャア!」
ネコカイジンは気合をもって飛び込んでくる。
「そんな攻撃があたるわけないでしょ!」
パン!!
ネコカイジンは両手をパンと叩く。
「ね、ねこだまし!?」
さらにそこからパンチを繰り出し、カナミの顔にクリーンヒットさせる。
「ねこぱんち!?」
完全に不意を突かれたカナミに、ネコカイジンは畳み掛けるようにねこぱんちを繰り出す。
「あた!? あいたたたた!?」
ダメージはそれほどじゃないけど、息もつかさない連続攻撃に言いようにやられる。
「もしかして、これはネコカイジンさんの大金星ですかね!?」
パシャ! パシャ! パシャ!
パッシャは嬉々としてシャッターを切る。
「いや、残念ながらそうはならないだろうね」
マニィはあっさりとそう言う。
「こんのぉぉぉぉぉッ!」
耐えかねたカナミは反撃に仕込みステッキを振り抜く。
「ニャアッ!?」
ネコカイジンは仕込みステッキで爪を切られて面を食らう。
「よくもやってくれたわね! 散弾撃ち!!」
魔法弾をショットガンのように一斉に発射する。
逃げ場のないほどの乱射に、ネコカイジンは魔法弾をまともに浴びる。
「ニャ!? ニャニャニャニャニャァァァァァァッ!?」
「ああ、猫好きとしてはなんだか罪悪感が……」
カナミはやりづらさを覚える。
「こうなったら、一気に片付けるわ!」
「おお、一気に片付けるとは容赦がないですね! さすがです!」
パッシャはまたシャッターを切り始める。
カナミはさらにやりづらさを覚える。
「神殺砲!」
カナミはステッキを大砲へ変化させる。
「おお!! あれが噂に名高い数多の怪人を葬ってきた魔法少女カナミの必殺技!!」
「ん、でも、こんな狭い場所で撃ったらまずいんじゃないかい?」
マニィは疑問を口にする。
「もちろん、威力は落とすわよ! えぇっと、十分の一くらい?」
「それじゃ、弱すぎるんじゃ……いや、ちょうどいいかも?」
「ボーナスキャノン!!」
カナミはいきなり神殺砲を発射する。
威力を抑えるということは魔力が少なくて済むので、それだけ充填に時間がかからないのだ。
バァァァァァァン!!
大砲から発射された魔法弾はネコカイジンを捉え、路地裏の外へ吹き飛ばす。
「見事なものだよ」
マニィのこの一言が仕事完了の合図であった。
「ま、こんなもんよ」
カナミは変身を解く。
「おお、凄かったですよ! カナミさん! いい写真も取れましたし!」
パッシャは大はしゃぎする。
「これで変な記事にならなければいいんだけど……」
「まあ、大丈夫だと思うよ」
「だといいんだけど……ところで、マニィ!」
「ん、何かな?」
「何かなじゃないでしょ! さっきの残念ながらって何よ!?」
「ちゃんと聞いてたんだ……」
「あんたの一言の多さには地獄耳よ」
「それは厄介かつ便利な地獄耳だね。今後は口に気を付けるよ」
「信用できないわね」
かなみとマニィは言い争いをしながら路地裏を出る。
「これは予想以上にいいものがとれましたね。彼も喜ぶことでしょう」
パッシャは一枚の写真――神殺砲を撃つカナミの絵を眺めて喜ぶ。
それから三日経った。
取材、取材とあれほどしつこかったパッシャはネコカイジンを倒した後、忽然と姿を消した。
「結局なんだったのかしら?」
「さあね。ところで取材料は貰って無かったの?」
「あ……」
そこでかなみは思い出す。
パッシャが持っていた厚みのある封筒。取材を受けたら貰えるという話だったことを。
「あーー!!」
かなみは大声を上げる。
周囲の人から、奇異の視線を向けられる。
「そんなに大声を上げるなんてみっともないよ」
「だって、だって! あんなに厚みがあった取材料を受け取りそこなったのよ!!」
「過ぎたものはしょうがない。諦めた方が賢明だよ」
「うぅ……あれは五十万はあったわよ……」
かなみは逃がした魚は大きいと言わんばかりに小石を蹴っ飛ばしながらクヨクヨ歩く。
「おはようございます」
かなみはオフィスへ出社する。
「あ、魔法少女カナミさん!」
パッシャがやってくる。
「あんた、どこ行ってたのよ? あのネコカイジンを倒した後、消えたきりで!」
「十分取材させてもらいましたから、記事を書いてたんです!」
パッシャはペラペラと紙を出す。
『ネガサイド日本支部社内報 第十五万八千五百九十一号』
「数多いッ!?」
かなみはその号数に面を食らう。
「歴史が古いですからね。それより中身を見てください」
パッシャは自慢げに言う。
『特報! 魔法少女カナミの秘密!』
見るだけで寒気が走るような字面であった。
まず一面は三次試験での戦いぶりが、でかでかと張られている。
「ふうん、よくとれてるじゃない」
そこだけは感心する。が、二面目を開く時には前言を撤回する羽目になる。
『普段は普通の十四歳! 日本女子中学生! 苦手科目は数学!』
「なッ! ななッ!?」
いつの間にとられたのか、学校生活が余すことなくとられている。
「こんなのプライバシーの侵害よ!」
「悪の秘密結社にそんな倫理は通用しません」
「でも、よく見るとかなみや柏原先生しか映ってないね」
マニィが一枚一枚丁寧に見てコメントする。
「それはまあ今回は魔法少女カナミさんの特集ですからね。他の生徒を映して趣旨がずれてしまいかねませんから」
「変なところで仕事熱心ね」
かなみは呆れる。
ちなみに三面目はかなみのオフィスでの仕事ぶりと涼美のインタビュー記事が載っていた。
『魔法少女カナミは私の自慢の娘よ』
そんな書き出しで始まっていて長々と書かれていて、読む気にもなれなかった。
「母さん……なんでノリノリなのよ……」
「あの人、こういうことにはノリやすそうだからね」
「そんなわけで、カナミさんのおかげで社内報は大好評なんですよ!」
「ええ、こんな記事で!?」
「みなさん、魔法少女カナミに興味津々なんですよ!」
「怪人に興味あるって言われても……」
「みなさん色々と知りたがっているんですよ
カナミさんの弱点とか住所とか倒し方とか貯金とか苦手なものとか」
「絶対教えないわよ!!」
かなみは断固たる態度で言い放つ。
「というわけで、第二弾も出す予定になったので引き続き取材させてもらいますね!」
「冗談じゃないわ!」
かなみはパッシャから距離をとる。
「そんな……こうして取材料もお持ちしましたのに……」
パッシャはあの厚みのある封筒を取り出す。
パシッ!!
かなみは即座にその封筒を取り上げる。
「ま、まあ……今回はこれで大目にみるわよ!」
「ああ、渡しそびれてましたね。第二弾の分もちゃんと用意してますよ」
「それ、本当!?」
かなみは目を輝かせる。
「え、ええ」
さすがのパッシャもこれにはたじろぐ。
「それでは、同じ金額で第二弾の取材も快く受けてくれるということですね?」
「お、同じ金額……いいわよ、受けてあげるわ!」
「ありがとうございます。それで次の仕事はなんですか?」
「今日は何もないわよ。普通の仕事」
かなみがそう答えると、パッシャは明らかに落胆する。
「そうですか……わかりました、今日はちょっと失礼します」
「……え?」
かなみは驚く。
てっきり普通の仕事だろうが、密着取材する勢いでくるかと思っていたのに。
「それでは」
パッシャは一礼して本当にオフィスから出て行く。
「なんだったの……?」
「さあ……ところでかなみ?」
「なに?」
「封筒の中身、確認した?」
「……え?」
そう言われて、かなみは慌てて封筒の中身を確認する。
「あーーー!!」
はいっていたのは千円札の札束だった。
「ってことはこれだけお札があっても、四、五万しかないわけ!?」
「まあ、わら紙とか偽札じゃない分、悪の秘密結社にしては良心的だね」
マニィはいたって冷静であった。
「あ、ちなみに同じ金額で引き受けっちゃたけどいいの?」
「いいわけないでしょ!! すぐに断らなくちゃ!!」
「でも、レコーダーでとられてると思うよ」
マニィの一言でかなみは落胆する。
そこまでやられているとなると、取り消すのは難しいと思ったからだ。
「……してやられた……うちの部長みたいな手を使う怪人がいたなんて……」
「部長、聞いてるよ」
鯖戸は無表情でこちらを見ている。
「……聞かせてるのよ」
かなみは投げやり気味に答えた。
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