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第3章 リッター・デア・ヴェーヌス
第47話 初戦!デラン対リミエッタ
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ワルキューレ・グラールの第一試合が行われる。
ミィセル・ラムザとフェサリス・アザレアの名前が呼ばれた。
「ミィセルは宮殿務めの精鋭、聖(セント)騎士。ファサリスは西の学園グリムヒルトの代表生徒と聞いています」
ミリアが解説してくれる。
「これは開幕から注目の組み合わせですね」
「そうなのか?」
「どちらも優勝候補ですからね。ミィセルは剛剣、ファサリスは金槌の使い手でどちらもパワータイプです。力と力のぶつかり合いですよ!」
ミリアは拳をグッと握り、興奮気味に教えてくれる。
「ああ、目が離せないってことか」
ダイチは二人に注目する。
ミィセルは銀色の甲冑に身を包み、両手で大剣を構えている。ファサリスは学生服に篭手や胸に金属を付け、比較的軽装だが、それよりも自分の身長よりも大金槌の方に目が行ってしまう。
(あんなもの、振り回せるのか……?)
ダイチは一瞬疑問に思ったが、ファサリスはその大金槌を軽々と持ち上げて構えている。まるで発砲スチロールを持っているかのように見える。
さすがに、この大会に選ばれているだけのことはあるということかもしれない。
――カウントスタート! 3(ドライ)! 2(ツヴァイ)! 1(アインス)! ファイッ!
アナウンスが試合開始のコールがかかる。
ズガァン!!
爆音かと思う金属音が響き渡る。
ミィセルの剛剣とファサリスの金槌がぶつかりあったのだ。
ファサリスが自分の背よりも大きな大金槌を思いっきり振り下ろし、ミィセルは大剣で受け止めたのだ。
開始直後にとんでもないものを見せつけられたが、それはまだ文字通りの序の口に過ぎなかった。
そこからファサリスは目にも留まらぬ早業で金槌の連撃を繰り出す。大金槌がいくつにも見えるほどの速度にミィセルもまた受ける。
ズガァン! ズガァン! ズガァン!
一回打ち合う度に爆音が響き、その鳴動は観客席にまで伝わってくる。
「お、おおぉぉぉッ!」
ダイチは思わず声を上げる。
これがワルキューレ・グラール。金星で最強の騎士を目指す者達の戦い。
ヒトとヒトとの戦いであるにも関わらず、地を揺るがし、大気を震わせる。イクミは地球人の事を神話に語り継がれる神々にも等しい存在だと言ったが、冗談じゃない。今ここで戦っている金星人の騎士達の方がよっぽど神という表現がしっくりくる。少なくともダイチはそう思うほどにこの戦いは桁違いに凄まじかった。
ズガァン!
「「「オオォォォォォォォッ!」」」
爆音と歓声が同時に響く。
「どっちが勝つんだ!?」
「わかりません。五分五分です!」
ダイチとミリアは武舞台から目を離さずにやり取りをする。
「ふむ、なんという見応えのある試合じゃ! 右に左に剣を金槌を自在に振り回して!!」
フルートも大興奮であった
「――しかも徐々にパワーが上がっています!」
「はあッ!?」
ミリアの一言にダイチはさらなる驚愕に陥る。
ズガァァァァァァァァン!!
さらなる爆音が轟き、身体が浮き上がりそうになる。
「今の一撃、街で放てばビルの倒壊は免れませんでしたね」
「……マジかよ」
「このコロッセウムと武舞台の構造のおかげじゃな。衝撃や振動を逃しやすい造りのようじゃ」
「フルート、わかるのか?」
「うむ。妾の眼を甘く見るでないぞ、一目見て造りと構造は理解できるようになっておる」
フルートは得意気に言う。
これも冥皇としての能力なのか。便利なものであった。
「ハ、ハハ、そうか……」
ダイチは感心するしか無かった。
ズガァァァァァァァァン!!
そうこうしているうちに試合は進む。
「これ、俺達大丈夫なのか!?」
振動が起きる度に観客席ごと吹き飛ぶような危機感が沸き起こる。
「大丈夫じゃろ」
意外にもフルートは平静に答える。
「ガイドには衝撃を緩和させるために専門の騎士が配備されていると書いてあります」
ミリアが補足する。
「どこの情報だよ、それ……?」
胡散臭さを感じるものの、今はそれを信じるしか無かった。
何よりもこのコロッセウムから感じる歴史の重みがここは安全だと自ら雄弁に主張しているように感じられた。
(一回の戦いで吹き飛んだら歴史もくそもないだろうしな)
しかし、この一回打ち合う度に響き渡る轟音はどうしようもなかった。
「なんて戦いなんだ。こんなんじゃヴィーナスだって……」
ダイチは天覧席の方へ視線を移す。
しかし、ヴィーナスは女神のごとき慈愛に満ちた眼差しでこの戦いを見つめていた。自分と同じように戦いの振動に怯え震えて
いるのかと思ったがまったくそうじゃなかった。
(あれが皇なのか……?)
自分と同じヒトには到底思えなかった。
周囲を見渡すと観客達もこの戦いを魅入り、歓声を上げていた。
皇だけではなく、金星人のヒト達も、地球人とは感覚が決定的に違うのか。
ズガァァァァァァァァァン!!
この試合最も大きなぶつかり合いのあと、金槌を持っていたファサリスが倒れた。
――勝者、ミィセル!
「「「オオォォォォォォォッ!!」」」
アナウンスとともに歓声が上がる。
「やはり、宮殿の騎士様に軍配が上がりましたか」
「す、凄い試合だった……」
ダイチは終始圧倒され、試合が終わったことに安堵すら覚えた。
「うむ、金星の騎士達はなんと強きことか」
「こんなのがずっと続くのか」
「ええ、第一試合からこの調子ですと、もっと激しくなるでしょうね」
「………………」
ダイチは絶句する。
しかし、そう考えるのが自然なことだろう。何しろ、今の試合で勝ち上がったミィセルは、次の試合でまた勝ち上がった騎士と戦う。その騎士はきっと今の試合より強い相手だろう。
そうした激しい戦いの数々を勝ち上がってきた上で、ヴィーナスを取り巻くワルキューレ・リッターはあの場にいるのだろう。
(アグライアさん……やっぱり、凄いヒトだったんだろうな)
そんなヒトと会話したのが、なんだか夢だったかのように思えてくる。
試合は第二、第三と続き、第一試合と同じように激しい戦いが繰り広げられた。
金星最強の騎士団の一員を選定するだけの大会はある、といったことかもしれない。観客のヒトビトも興奮に酔いしれている。いや、この戦いは中継配信で金星中のヒトビトが見ているはずだから金星中が熱狂と興奮に包まれていると言ってもいいのだろう。
そんな中で第四試合にデラン・フーリスの名前が呼ばれた。
「デラン……!」
果たしてデランは勝てるのだろうか。
こんな強者達が集う中で、勝ち上がり、史上初の男のワルキューレ・リッターになれるのか。
ダイチにはわからない。
三試合とも全て女と女の戦い。金星人の男にはこの大会に参加することすら厳しい現実がある。
それでも、デランはその現実に抗い、夢に向かって戦おうとしている。
「頑張れ、負けるな!」
応援せずにはいられない。
武舞台にデランは立つ。その姿は堂々としていて、まさにダイチが思い描く戦う騎士の姿であった。
「ミリア、デランの相手はどんな奴なんだ?」
「リミエッタ・サラサール……第一試合のミィセルと同じ宮殿の聖(セント)騎士です」
長い金色の髪をした甲冑の女騎士。見たところ、得物はデランと同じ剣。
「ミィセルと同じ……」
それがどうしても気になる。
何故ならミィセルは第一試合で激闘を繰り広げ、勝利した強者。そのミィセルと同じ肩書を持つ騎士なら弱いはずがない。むしろ強敵といってもいい。
勝てるだろうか。デランの様子を見るとまだ固まっているように見える。
「聖騎士とは何じゃ?」
フルートが訊く。
「騎士の階級ですね。
准、正、公、優、聖、皇とあります。つまり、聖とは皇騎士の次に偉いということです」
「それでは、一番偉い皇騎士より弱いということじゃな。それなら大したことなさそうでないか!」
「いいえ。皇騎士とはワルキューレ・リッターと一部の例外しか持たない階級ですので、実質この大会で最も偉い階級の騎士ということになります」
「ふむふむ、なるほどのう。して、その一部の例外とやらは今回でておらぬのか?」
「ですね。私の知る限りは不参加のようです」
「お前、随分と詳しくなったな」
「金星の文化、歴史について色々と図書館で勉強しましたから」
「へえ、案外勉強家だったんだな」
ミリアの意外な勤勉にダイチは感心する。
「デラン、あやつは勝てるかのう?」
「勝つに決まってるだろ」
フルートの問いかけにダイチはそう答える。が、自分に言い聞かせているようだった。
一方の武舞台では、リミエッタはデランに語りかけていた。
「君がアグライアが目をかけていた男か。コネで出場権を勝ち取ったものなら私の敵ではないな」
「アグライアは関係無い。俺は自分の力でここに立っているんだ!」
「男が勝てるはずがなかろう」
リミエッタは厳しい言葉を放つ。これこそ金星人の常識であり、女尊男卑の騎士の世界のやりとりであった。
「パプリア教官はそうは言わなかった」
「生徒に希望をもたせるのが教官の仕事だからな。現実を突きつけるのは私のような現実を知る騎士の役目だ」
「ああ、だったら教えてくれよ。あんた達聖騎士の実力ってやつをな。
まあ、アグライアより弱いってのは確実だろうな」
「き、貴様……!」
リミエッタは挑発にあっさり乗り、怒りに打ち震える
「あんな平民出の小娘が、ワルキューレ・リッターに名を連ねているのが間違っているのだ!」
「そんなこと言って、あんたはアグライアに負けたんだろ」
「き、貴様……!」
そんな会話をヴィーナスは自らが持っている感知能力によって聞き取っていた。
「フフ、アグライアが目をかけたあの子、中々面白いですね」
「デラン、ですか……見どころはありますし、パプリア教官も評価しています」
「そう。それに、あなたにそっくりです」
「ヴィーナス様……ご冗談もほどほどに願います」
「私は本気ですよ。そう思いませんか、トリア?」
デメトリアに振られて、苦笑する。
「そうですね、あの少年の顔は、私に騎士になりたいと志願した時の顔つきにそっくりです」
「デメトリア卿、貴公まで!」
「ですが、その実力までもそっくりであるかは見ものですね。
リミエッタは宮殿の中でも指折りの実力を持つ聖騎士です。少々血気盛んなのが玉に瑕ですが」
「そう言えば、彼女は以前のワルキューレ・グラールでアグライアに敗れたのでしたね」
「………………」
アグライアは顔をしかめる。
「リミエッタは、平民出に負けたといつもぼやいているのを耳にしていました」
レダが一言余計に言う。そのせいで、アグライアはますます顔をしかめる。
「ある意味雪辱戦になるかもしれませんね」
ヴィーナスはアグライアをからかいつつも、武舞台の動向を見守る。
――カウントスタート! 3(ドライ)! 2(ツヴァイ)! 1(アインス)! ファイッ!
そんな最中、試合開始のゴングが鳴る。
開始と同時にリミエッタは斬りかかってくる。
振り下ろされた剣から旋風が巻き起こる。デランはこれをかわす。かさず抜刀し、反撃に転じる。
キィィィィィン!!
大気を震わす甲高い金属音が響き渡る。
「打ち負けていませんね」
「いいぞ、デラン!」
デランとリミエッタは、それぞれ斬撃を受けては返し、返しては受ける。
一見して互角に戦っているように見えるが、どちらもまだまだ本気を出していなかった。
キィン! キィィン! キィィィン!
一度打ち合う度に音が大きくなる。
「うむ、いい攻撃だ。男でありながら騎士に成り上がろうとするのもわかる……――だが!」
リミエッタは剣を振るう。デランはこれをかわそうとする。が、かわしきれずに右腹を斬られる。
「か、かわしたはずなのに……!」
デランが意表を突かれ、呆気にとられているうちに、リミエッタは次々と斬撃を繰り返す。
かわしたり、受け止めたり、ダメージを受けないように立ち回っているはずなのに、斬り刻まれる。
「な、なんで……!?」
「この勝負もらった!」
リミエッタが高らかに剣を振り上げる。
「――!」
デランは一気に後退する。
「逃げるか!」
しかし、広いと言ってもコロッセウムの武舞台は見渡せる程度。あくまで剣の届かない距離であった。
「ここなら、届かないが、俺も剣が届かない」
勝つためにはこちらから仕掛ける必要がある。
「かわしたはずなのに、斬撃がやってくる。なんでかわからないけど、突っ込まなきゃ勝ち目ねえからな!」
とりあえず、突っ込むことにした。
「バカがッ!」
リミエッタは斬りかかってくる。
剣の届く間合いでは無かった。しかし、剣圧はその限りではなく、斬撃は飛んでくる。
デランは左腕をかざしてこれを受ける。
ただの左腕ならここで斬り落とされ、そのまま身体が真っ二つになっているところであった。
「デランの能力だ」
「ハルトアルム、腕の金属硬化ですね。あれなら左腕が盾の役割を果たします。」
「ゆけぃ! そのまま一気に飛び込めぇッ!」
バシィッ! バシィッ!
繰り出されるリミエッタの斬撃をデランは左腕で全て受ける。
「ならば、その左腕ごと斬り落とす!」
リミエッタは一気に踏み込み、デランの間合いに入る。
剣を振りかぶり、本当に左腕ごと斬り落とす勢いで振り下ろしてくる。
(くるかッ!)
デランは剣先を見据える。
左腕をかざして受けるた体勢をとる。
しかし、リミエッタの剣がかざした左腕にやってくることはなかった。
カキィィィィン!
上からくるはずだった斬撃が横からやってきた。
デランはそれに素早く対処して剣で弾いた。
「チィッ!」
「剣を曲げる能力か!」
リミエッタの能力を見破った。
剣先を曲げて、斬撃が縦横無尽に駆け巡らせる。戦いの最中であれば、その剣先を目で追うことは困難である。しかも、能力がわかったところで、その斬撃のバリエーションに変化は無い。
「おりゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
ならば、力で押し切る。
デランは雄叫びとともに斬り込む。
「ガハッ!?」
渾身の打ち込みで、リミエッタが吹き飛ぶ。
「おお、打ち込みましたか! アグライア、あなたの男は中々の実力ですね」
「ええ。ただ、ここからでしょうね。それと誤解を生むような言葉選びはやめてください」
「そうですね、リミエッタは本気を出します。勝負はこれからです」
デメトリアがそう言うと、吹き飛んだリミエッタが体勢を立て直す。
「――男ごときが!」
リミエッタは吐き捨て、剣を振りかざす。
「クルヴェメッサー」
曲がりに曲がった剣から放たれる斬撃が渦を巻く。
それはもう一つの竜巻であった。
斬撃の竜巻がデランを斬り刻まんと襲いかかる。最早、左腕一本で防ぎれるレベルではなかった。
「さすがは聖騎士だな。――だけど、アグライアはもっと凄い!」
デランは踏み込み、渾身の一撃を放つ。
ガキィィィィィィィィィン!!
竜巻に衝撃が加わり、爆風のような風が巻き起こり、ダイチやミリア達観客の髪を薙いだ。
「見事だ! だが、これは一撃では終わらない!」
リミエッタは次々と斬撃と竜巻を繰り出す。デランは片っ端から竜巻に斬撃を重ねてかき消していく。
ギィィィィィン!!
闘技場が嵐に包まれる。
荒れ狂う暴風に吹き飛ぶ観客も散見される。いくら衝撃を吸収してくれる材質と構造でも、風までは吸収してくれなかったようだ。
「フフ、アグライアとリミエッタの戦いもこんな感じでしたね」
「ですが、リミエッタもあれから相当を上げています。私と戦ったときは先程の一撃で突破口が開けました」
「それはアグライアが強引に一気に勝負を決めに行ったからだと思いましたが」
「そうですね、あの時のアグライアはとにかく荒々しかったです」
デメトリアがそう言ってきたことでアグライアは閉口する。
「ど、どっちが勝ってるんだ?」
「わかりません。こう風が強くては目を開けていられません」
「デランが徐々に押しておるぞ」
フルートは刃のような風が飛び交う中でも平然と目を開けて、試合の様子を見つめていた。
「そうか。デランの奴、凄いな。この嵐の中でも戦えるんだから」
「妾とダイチが見込んだ男じゃ、この程度でまいるわけがなかろう」
フルートが言うように、デランが押しており、わずかづつ有利に傾いていた。
「くッ!」
これはまずいと思ったリミエッタは後退する。
「退いたな、逃がすか!」
デランは一気に踏み込む。
「調子に乗るな!」
リミエッタは吠え、カウンターの斬撃を放つ。
カキィィィィィィン!!
それをデランは左腕で受け、そのまま、左の手刀を放つ。
「研ぎ澄ませ、メッサァァァァァァッ!」
手刀が銀色に輝き、敵を斬り裂く斬撃となった。
「カハッ!?」
これをまともに受けたリミエッタは倒れる。
――勝者、デラン・フーリス!
アナウンスが勝者を高らかに告げる。
ミィセル・ラムザとフェサリス・アザレアの名前が呼ばれた。
「ミィセルは宮殿務めの精鋭、聖(セント)騎士。ファサリスは西の学園グリムヒルトの代表生徒と聞いています」
ミリアが解説してくれる。
「これは開幕から注目の組み合わせですね」
「そうなのか?」
「どちらも優勝候補ですからね。ミィセルは剛剣、ファサリスは金槌の使い手でどちらもパワータイプです。力と力のぶつかり合いですよ!」
ミリアは拳をグッと握り、興奮気味に教えてくれる。
「ああ、目が離せないってことか」
ダイチは二人に注目する。
ミィセルは銀色の甲冑に身を包み、両手で大剣を構えている。ファサリスは学生服に篭手や胸に金属を付け、比較的軽装だが、それよりも自分の身長よりも大金槌の方に目が行ってしまう。
(あんなもの、振り回せるのか……?)
ダイチは一瞬疑問に思ったが、ファサリスはその大金槌を軽々と持ち上げて構えている。まるで発砲スチロールを持っているかのように見える。
さすがに、この大会に選ばれているだけのことはあるということかもしれない。
――カウントスタート! 3(ドライ)! 2(ツヴァイ)! 1(アインス)! ファイッ!
アナウンスが試合開始のコールがかかる。
ズガァン!!
爆音かと思う金属音が響き渡る。
ミィセルの剛剣とファサリスの金槌がぶつかりあったのだ。
ファサリスが自分の背よりも大きな大金槌を思いっきり振り下ろし、ミィセルは大剣で受け止めたのだ。
開始直後にとんでもないものを見せつけられたが、それはまだ文字通りの序の口に過ぎなかった。
そこからファサリスは目にも留まらぬ早業で金槌の連撃を繰り出す。大金槌がいくつにも見えるほどの速度にミィセルもまた受ける。
ズガァン! ズガァン! ズガァン!
一回打ち合う度に爆音が響き、その鳴動は観客席にまで伝わってくる。
「お、おおぉぉぉッ!」
ダイチは思わず声を上げる。
これがワルキューレ・グラール。金星で最強の騎士を目指す者達の戦い。
ヒトとヒトとの戦いであるにも関わらず、地を揺るがし、大気を震わせる。イクミは地球人の事を神話に語り継がれる神々にも等しい存在だと言ったが、冗談じゃない。今ここで戦っている金星人の騎士達の方がよっぽど神という表現がしっくりくる。少なくともダイチはそう思うほどにこの戦いは桁違いに凄まじかった。
ズガァン!
「「「オオォォォォォォォッ!」」」
爆音と歓声が同時に響く。
「どっちが勝つんだ!?」
「わかりません。五分五分です!」
ダイチとミリアは武舞台から目を離さずにやり取りをする。
「ふむ、なんという見応えのある試合じゃ! 右に左に剣を金槌を自在に振り回して!!」
フルートも大興奮であった
「――しかも徐々にパワーが上がっています!」
「はあッ!?」
ミリアの一言にダイチはさらなる驚愕に陥る。
ズガァァァァァァァァン!!
さらなる爆音が轟き、身体が浮き上がりそうになる。
「今の一撃、街で放てばビルの倒壊は免れませんでしたね」
「……マジかよ」
「このコロッセウムと武舞台の構造のおかげじゃな。衝撃や振動を逃しやすい造りのようじゃ」
「フルート、わかるのか?」
「うむ。妾の眼を甘く見るでないぞ、一目見て造りと構造は理解できるようになっておる」
フルートは得意気に言う。
これも冥皇としての能力なのか。便利なものであった。
「ハ、ハハ、そうか……」
ダイチは感心するしか無かった。
ズガァァァァァァァァン!!
そうこうしているうちに試合は進む。
「これ、俺達大丈夫なのか!?」
振動が起きる度に観客席ごと吹き飛ぶような危機感が沸き起こる。
「大丈夫じゃろ」
意外にもフルートは平静に答える。
「ガイドには衝撃を緩和させるために専門の騎士が配備されていると書いてあります」
ミリアが補足する。
「どこの情報だよ、それ……?」
胡散臭さを感じるものの、今はそれを信じるしか無かった。
何よりもこのコロッセウムから感じる歴史の重みがここは安全だと自ら雄弁に主張しているように感じられた。
(一回の戦いで吹き飛んだら歴史もくそもないだろうしな)
しかし、この一回打ち合う度に響き渡る轟音はどうしようもなかった。
「なんて戦いなんだ。こんなんじゃヴィーナスだって……」
ダイチは天覧席の方へ視線を移す。
しかし、ヴィーナスは女神のごとき慈愛に満ちた眼差しでこの戦いを見つめていた。自分と同じように戦いの振動に怯え震えて
いるのかと思ったがまったくそうじゃなかった。
(あれが皇なのか……?)
自分と同じヒトには到底思えなかった。
周囲を見渡すと観客達もこの戦いを魅入り、歓声を上げていた。
皇だけではなく、金星人のヒト達も、地球人とは感覚が決定的に違うのか。
ズガァァァァァァァァァン!!
この試合最も大きなぶつかり合いのあと、金槌を持っていたファサリスが倒れた。
――勝者、ミィセル!
「「「オオォォォォォォォッ!!」」」
アナウンスとともに歓声が上がる。
「やはり、宮殿の騎士様に軍配が上がりましたか」
「す、凄い試合だった……」
ダイチは終始圧倒され、試合が終わったことに安堵すら覚えた。
「うむ、金星の騎士達はなんと強きことか」
「こんなのがずっと続くのか」
「ええ、第一試合からこの調子ですと、もっと激しくなるでしょうね」
「………………」
ダイチは絶句する。
しかし、そう考えるのが自然なことだろう。何しろ、今の試合で勝ち上がったミィセルは、次の試合でまた勝ち上がった騎士と戦う。その騎士はきっと今の試合より強い相手だろう。
そうした激しい戦いの数々を勝ち上がってきた上で、ヴィーナスを取り巻くワルキューレ・リッターはあの場にいるのだろう。
(アグライアさん……やっぱり、凄いヒトだったんだろうな)
そんなヒトと会話したのが、なんだか夢だったかのように思えてくる。
試合は第二、第三と続き、第一試合と同じように激しい戦いが繰り広げられた。
金星最強の騎士団の一員を選定するだけの大会はある、といったことかもしれない。観客のヒトビトも興奮に酔いしれている。いや、この戦いは中継配信で金星中のヒトビトが見ているはずだから金星中が熱狂と興奮に包まれていると言ってもいいのだろう。
そんな中で第四試合にデラン・フーリスの名前が呼ばれた。
「デラン……!」
果たしてデランは勝てるのだろうか。
こんな強者達が集う中で、勝ち上がり、史上初の男のワルキューレ・リッターになれるのか。
ダイチにはわからない。
三試合とも全て女と女の戦い。金星人の男にはこの大会に参加することすら厳しい現実がある。
それでも、デランはその現実に抗い、夢に向かって戦おうとしている。
「頑張れ、負けるな!」
応援せずにはいられない。
武舞台にデランは立つ。その姿は堂々としていて、まさにダイチが思い描く戦う騎士の姿であった。
「ミリア、デランの相手はどんな奴なんだ?」
「リミエッタ・サラサール……第一試合のミィセルと同じ宮殿の聖(セント)騎士です」
長い金色の髪をした甲冑の女騎士。見たところ、得物はデランと同じ剣。
「ミィセルと同じ……」
それがどうしても気になる。
何故ならミィセルは第一試合で激闘を繰り広げ、勝利した強者。そのミィセルと同じ肩書を持つ騎士なら弱いはずがない。むしろ強敵といってもいい。
勝てるだろうか。デランの様子を見るとまだ固まっているように見える。
「聖騎士とは何じゃ?」
フルートが訊く。
「騎士の階級ですね。
准、正、公、優、聖、皇とあります。つまり、聖とは皇騎士の次に偉いということです」
「それでは、一番偉い皇騎士より弱いということじゃな。それなら大したことなさそうでないか!」
「いいえ。皇騎士とはワルキューレ・リッターと一部の例外しか持たない階級ですので、実質この大会で最も偉い階級の騎士ということになります」
「ふむふむ、なるほどのう。して、その一部の例外とやらは今回でておらぬのか?」
「ですね。私の知る限りは不参加のようです」
「お前、随分と詳しくなったな」
「金星の文化、歴史について色々と図書館で勉強しましたから」
「へえ、案外勉強家だったんだな」
ミリアの意外な勤勉にダイチは感心する。
「デラン、あやつは勝てるかのう?」
「勝つに決まってるだろ」
フルートの問いかけにダイチはそう答える。が、自分に言い聞かせているようだった。
一方の武舞台では、リミエッタはデランに語りかけていた。
「君がアグライアが目をかけていた男か。コネで出場権を勝ち取ったものなら私の敵ではないな」
「アグライアは関係無い。俺は自分の力でここに立っているんだ!」
「男が勝てるはずがなかろう」
リミエッタは厳しい言葉を放つ。これこそ金星人の常識であり、女尊男卑の騎士の世界のやりとりであった。
「パプリア教官はそうは言わなかった」
「生徒に希望をもたせるのが教官の仕事だからな。現実を突きつけるのは私のような現実を知る騎士の役目だ」
「ああ、だったら教えてくれよ。あんた達聖騎士の実力ってやつをな。
まあ、アグライアより弱いってのは確実だろうな」
「き、貴様……!」
リミエッタは挑発にあっさり乗り、怒りに打ち震える
「あんな平民出の小娘が、ワルキューレ・リッターに名を連ねているのが間違っているのだ!」
「そんなこと言って、あんたはアグライアに負けたんだろ」
「き、貴様……!」
そんな会話をヴィーナスは自らが持っている感知能力によって聞き取っていた。
「フフ、アグライアが目をかけたあの子、中々面白いですね」
「デラン、ですか……見どころはありますし、パプリア教官も評価しています」
「そう。それに、あなたにそっくりです」
「ヴィーナス様……ご冗談もほどほどに願います」
「私は本気ですよ。そう思いませんか、トリア?」
デメトリアに振られて、苦笑する。
「そうですね、あの少年の顔は、私に騎士になりたいと志願した時の顔つきにそっくりです」
「デメトリア卿、貴公まで!」
「ですが、その実力までもそっくりであるかは見ものですね。
リミエッタは宮殿の中でも指折りの実力を持つ聖騎士です。少々血気盛んなのが玉に瑕ですが」
「そう言えば、彼女は以前のワルキューレ・グラールでアグライアに敗れたのでしたね」
「………………」
アグライアは顔をしかめる。
「リミエッタは、平民出に負けたといつもぼやいているのを耳にしていました」
レダが一言余計に言う。そのせいで、アグライアはますます顔をしかめる。
「ある意味雪辱戦になるかもしれませんね」
ヴィーナスはアグライアをからかいつつも、武舞台の動向を見守る。
――カウントスタート! 3(ドライ)! 2(ツヴァイ)! 1(アインス)! ファイッ!
そんな最中、試合開始のゴングが鳴る。
開始と同時にリミエッタは斬りかかってくる。
振り下ろされた剣から旋風が巻き起こる。デランはこれをかわす。かさず抜刀し、反撃に転じる。
キィィィィィン!!
大気を震わす甲高い金属音が響き渡る。
「打ち負けていませんね」
「いいぞ、デラン!」
デランとリミエッタは、それぞれ斬撃を受けては返し、返しては受ける。
一見して互角に戦っているように見えるが、どちらもまだまだ本気を出していなかった。
キィン! キィィン! キィィィン!
一度打ち合う度に音が大きくなる。
「うむ、いい攻撃だ。男でありながら騎士に成り上がろうとするのもわかる……――だが!」
リミエッタは剣を振るう。デランはこれをかわそうとする。が、かわしきれずに右腹を斬られる。
「か、かわしたはずなのに……!」
デランが意表を突かれ、呆気にとられているうちに、リミエッタは次々と斬撃を繰り返す。
かわしたり、受け止めたり、ダメージを受けないように立ち回っているはずなのに、斬り刻まれる。
「な、なんで……!?」
「この勝負もらった!」
リミエッタが高らかに剣を振り上げる。
「――!」
デランは一気に後退する。
「逃げるか!」
しかし、広いと言ってもコロッセウムの武舞台は見渡せる程度。あくまで剣の届かない距離であった。
「ここなら、届かないが、俺も剣が届かない」
勝つためにはこちらから仕掛ける必要がある。
「かわしたはずなのに、斬撃がやってくる。なんでかわからないけど、突っ込まなきゃ勝ち目ねえからな!」
とりあえず、突っ込むことにした。
「バカがッ!」
リミエッタは斬りかかってくる。
剣の届く間合いでは無かった。しかし、剣圧はその限りではなく、斬撃は飛んでくる。
デランは左腕をかざしてこれを受ける。
ただの左腕ならここで斬り落とされ、そのまま身体が真っ二つになっているところであった。
「デランの能力だ」
「ハルトアルム、腕の金属硬化ですね。あれなら左腕が盾の役割を果たします。」
「ゆけぃ! そのまま一気に飛び込めぇッ!」
バシィッ! バシィッ!
繰り出されるリミエッタの斬撃をデランは左腕で全て受ける。
「ならば、その左腕ごと斬り落とす!」
リミエッタは一気に踏み込み、デランの間合いに入る。
剣を振りかぶり、本当に左腕ごと斬り落とす勢いで振り下ろしてくる。
(くるかッ!)
デランは剣先を見据える。
左腕をかざして受けるた体勢をとる。
しかし、リミエッタの剣がかざした左腕にやってくることはなかった。
カキィィィィン!
上からくるはずだった斬撃が横からやってきた。
デランはそれに素早く対処して剣で弾いた。
「チィッ!」
「剣を曲げる能力か!」
リミエッタの能力を見破った。
剣先を曲げて、斬撃が縦横無尽に駆け巡らせる。戦いの最中であれば、その剣先を目で追うことは困難である。しかも、能力がわかったところで、その斬撃のバリエーションに変化は無い。
「おりゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
ならば、力で押し切る。
デランは雄叫びとともに斬り込む。
「ガハッ!?」
渾身の打ち込みで、リミエッタが吹き飛ぶ。
「おお、打ち込みましたか! アグライア、あなたの男は中々の実力ですね」
「ええ。ただ、ここからでしょうね。それと誤解を生むような言葉選びはやめてください」
「そうですね、リミエッタは本気を出します。勝負はこれからです」
デメトリアがそう言うと、吹き飛んだリミエッタが体勢を立て直す。
「――男ごときが!」
リミエッタは吐き捨て、剣を振りかざす。
「クルヴェメッサー」
曲がりに曲がった剣から放たれる斬撃が渦を巻く。
それはもう一つの竜巻であった。
斬撃の竜巻がデランを斬り刻まんと襲いかかる。最早、左腕一本で防ぎれるレベルではなかった。
「さすがは聖騎士だな。――だけど、アグライアはもっと凄い!」
デランは踏み込み、渾身の一撃を放つ。
ガキィィィィィィィィィン!!
竜巻に衝撃が加わり、爆風のような風が巻き起こり、ダイチやミリア達観客の髪を薙いだ。
「見事だ! だが、これは一撃では終わらない!」
リミエッタは次々と斬撃と竜巻を繰り出す。デランは片っ端から竜巻に斬撃を重ねてかき消していく。
ギィィィィィン!!
闘技場が嵐に包まれる。
荒れ狂う暴風に吹き飛ぶ観客も散見される。いくら衝撃を吸収してくれる材質と構造でも、風までは吸収してくれなかったようだ。
「フフ、アグライアとリミエッタの戦いもこんな感じでしたね」
「ですが、リミエッタもあれから相当を上げています。私と戦ったときは先程の一撃で突破口が開けました」
「それはアグライアが強引に一気に勝負を決めに行ったからだと思いましたが」
「そうですね、あの時のアグライアはとにかく荒々しかったです」
デメトリアがそう言ってきたことでアグライアは閉口する。
「ど、どっちが勝ってるんだ?」
「わかりません。こう風が強くては目を開けていられません」
「デランが徐々に押しておるぞ」
フルートは刃のような風が飛び交う中でも平然と目を開けて、試合の様子を見つめていた。
「そうか。デランの奴、凄いな。この嵐の中でも戦えるんだから」
「妾とダイチが見込んだ男じゃ、この程度でまいるわけがなかろう」
フルートが言うように、デランが押しており、わずかづつ有利に傾いていた。
「くッ!」
これはまずいと思ったリミエッタは後退する。
「退いたな、逃がすか!」
デランは一気に踏み込む。
「調子に乗るな!」
リミエッタは吠え、カウンターの斬撃を放つ。
カキィィィィィィン!!
それをデランは左腕で受け、そのまま、左の手刀を放つ。
「研ぎ澄ませ、メッサァァァァァァッ!」
手刀が銀色に輝き、敵を斬り裂く斬撃となった。
「カハッ!?」
これをまともに受けたリミエッタは倒れる。
――勝者、デラン・フーリス!
アナウンスが勝者を高らかに告げる。
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