オービタルエリス

jukaito

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第3章 リッター・デア・ヴェーヌス

第37話 祭り当日

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 金星の二つある大陸のうちの一つ、イシュタル大陸のほぼ中央にあるコロッセウムの街は賑わっていた。
 街の中央にある闘技場では古から続く習わしで金星の騎士の戦いが行われる度に、多くのヒトが詰めかけ、幾度となく祭りを催す。
 今日はその中でも最も大きな祭りが開かれていた。
 祭りの名前はワルキューレ・グラール。金星で最も栄誉あるヴィーナス側近の騎士団。皇であるヴィーナスの側近であるからにはそれに相応しい実力を備えている必要があるため、金星最強の騎士団ともいわれている。
 騎士団に在籍できる座は七つ。その中で空席になっているのは盾。
 その盾の座につく騎士を選ぶ為の大会。それがワルキューレ・グラール。選定の闘技大会であった。
 出場権を得ているエインヘリアルの生徒デランとエドラ、他の上級生はそれぞれの移動手段でコロッセウムにやってきた。

「街はお祭りですね」

 ミリアはすっかり両手に屋台の食べ物を持って楽しんでいた。

「ミリアは本当によく食べるのう」
「フルートも何か食うか?」
「いいのか、ダイチ?」

 フルートは目を輝かせる。

「じゃったら、あっちのフランクフルトとやらを食べてみたい」
「ああ、あれか」

 鉄板の上で香ばしく焼かれたフランクフルトに目を移す。
 ダイチもミリアの食欲に当てられたのか腹の虫が鳴り出したので、自分の分も買う。

「私もそれが欲しいです」

 ミリアも自分の分を欲しがる。

「お前、そんなんじゃ持ちきれねえだろ」
「大丈夫です。早くもう一本お願いします!」
「しょうがねえな……」

 ダイチはぼやきながら、もう一本買ってやる。

「んで、どうやって食べるんだ?」

 両手はもう塞がっているから、渡そうにも渡せない。しかし、ミリアはニコリと笑って言う。

「――食べさせてください」

 ダイチとフルートは凍りつく。

「な、何言ってんだよ……?」
「私がエリスにやったみたいにお願いします」
「お前、ああいうのするのはいいけどされるのは嫌なものじゃないのか?」
「フフ、するのもされるのも大好きですよ」
「お前な……」

 時々ミリアについていけないことがある。

「だ、ダイチ、そういうことはのう。愛し合う二人がするものじゃないのか!」
「それだったら、エリスとミリアも愛し合っていることにならないか?」
「………………」

 何故かミリアは黙る。

「いや、そこで黙ると困るんだが」
「ダイチさんは私のことを愛していないと言いますか?」
「な、なんでそうなるんだよ!?」

 ダイチは動じる。ミリアはそんな反応を見て楽しむ。

「相変わらず騒がしいわね」

 そこへエリス達がやってくる。

「エリス、久しぶりですね」
「久しぶり。あんたは相変わらずの食欲ね」
「フフ、これからダイチさんに食べさせていただく予定です」
「……あんた、何言ってるの?」

 エリスはダイチとミリアを交互に見る。ミリアの両手が塞がっていること、ダイチの手にフランクフルトがあることを。

「こいつを食べさせろって、ミリアが」

 ダイチがそう言い訳する。

「ふーん」
 それでエリスは納得したようで、ダイチのフランクフルトを取る。

「ミリア、あんたこれ食べたいのよね?」
「ええ、そうです。早くお願いします」

 ミリアの厚かましさにダイチは呆れる。
 見たところ、エリスはちゃんとした義手を作ってもらったようできっちり当初の目的を果たしている。そんな状態で、ミリアが手の無かったエリスに対して何をしたのか覚えていないのか。いや、憶えているだろうが、構わずミリアはそういった態度をとっているのだろう。
 その神経はひたすらに図太い。

「ねえ、ミリア……私ね、ずっとあんたにやりたかったことがあるのよ」
「それはなんでしょうか?」
「こうよ!」

 エリスはミリアにフランクフルトを突き出すように口へ放り込む。

「はむッ!?」

 口に放り込まれたミリアは、最初こそ面食らうがすぐにフランクフルトを噛み切っては飲み込み、噛み切っては飲み込みを繰り返してあっという間に食べ干してしまう。

「ありがとうございます、ごちそうさまです」
「………………」

 何事もなかったかのように笑顔で返したミリアにエリスは絶句する。

「あんた、長生きするわ」
「はい、たくさん食べて長生きします!」

 ダイチとエリスは顔を見合息をつく。

「あんた、こいつの面倒よくみてられたわね」
「いや、学園じゃ上手くやってたよ。友達も出来てたみたいだしな」
「友達? それはよかったわね」

 エリスは皮肉でもなんでもなく素直に言う。

「なんや、そっちも楽しそうにやってたみたいやな」

 イクミが言う。

「こっちはじいさんと暴力女の実験台にされていい迷惑よ」

 マイナはぼやく。

「実験台、な……」

 ダイチは言っていることを詮索しようとまでは思わなかったがマイナに同情した。

「んで、お前らはこれからフェストか?」
「ええ、今じいさんが機体を搬送しているわ」
「エリスが乗る機体、か……どんな機体なんだ?」

 ダイチは興味があった。
 ダイチは以前、ヴァーランスに乗った時、機体を操る感触と楽しさを知った。他の機体にも乗ってみたい願望が密かにあったし、マイスターと呼ばれるほどのヒトが手塩にかけて作った機体ならば尚更だ。

「もうメチャクチャな機体よ。乗りこなすのに苦労したわ」
「はは、エリスがメチャクチャか……」

 それだけでとんでもない機体だということは十分に伝わった。

「フェストに行けないのが残念だ、見たかったんだけどな」

 ダイチ達はデランとエドラの戦いを見守りに来た。

「私だってグラールの戦い、見たかったわ。出来れば出場もしたかったし」
「それは無理だろ」

 ダイチはエリスらしい物言いに苦笑する。

ドーン!

 空へ大輪の花が咲き、太鼓のような轟音が鳴り響く。

「時間か」

 これはヴィーナスの来訪を知らせる花火だった。
 同時にワルキューレ・グラールの開会式がまもなく執り行われるという合図でもあった。

「せっかくやし、パレードでも見に行くか」

 ヴィーナスは街に入ってからコロッセウムへ入場するまでパレードに盛大に盛り上がるらしい。
 イクミの言うとおり、「せっかく」だからという理由で全員はパレードが行われる大通りへ向かう。
 街一番の大通りへ向かう中、ヒトがだんだん多くなっていき、歩くのも困難になっていった。

「こっちよ!」

 エリスとミリアは巧みにヒトの波をかき分けて先へ進んでいく。

「フルート、はぐれないようにな」

「おお、ダイチを見失うなんてありえんぞ!」

 冥皇として不思議なチカラをもっているから説得力があった。
 街を埋め尽くすほどのヒトの中でダイチは必死にかき分ける。実習やらデランとの演習やらで散々鍛えたのだからこのぐらいのヒトの波なんてわけない。
 かきわけた先で、エリスの赤髪が見える。

「おい、エリス!」

 ダイチが呼びかけるとエリスが振り向く。

「遅れずについてきたわね」
「当たり前だ、これぐらい楽勝だ」
「これでもうはぐれたりしないわね」
「あ、ああ……」

 エリスとダイチの脳裏をよぎったのは、木星でのテロ騒ぎでの出来事だった。
 あの時、ダイチはヒト波に押し切られて、エリスとはぐれてしまった。それでエリスが必死に探して、一騒動とは言い切れない戦いを繰り広げた。
 エリスはそのせいで義手を失ったのだから、ダイチとしては責任を感じずにはいられないものだった。

「さ、いくわよ」

 しかし、エリスはそれを一切責めること無く呼びかける。
 気にせず頑張りなさい。そう言っているようにダイチには聞こえた。

ドーン! ドーン! ドーン!

 花火が次々と鳴り響く。

「オオォォォォォォォッ!!」

 次に、ヒトビトの歓声と共に、ヴィーナスがやってくる。

「………………」

 そして、ヒトビトは静まり返る。
 息を呑むようなヴィーナスの美しさにヒトビトは言葉を失っていたのだ。
 またヴィーナスだけではなく、脇を固めるワルキューレ・リッターの面々がまた華を添えている。
 アグライアとレダは空港で会ったことがあったが、他の騎士には見覚えはあるものの、名前は知らなかった。
 しかし、二人に負けず劣らずの威容を持って歩くその様は、神話の神とそれを守る眷属達の行進を思わせた。
 ただ、ダイチが一つだけ気になったのは、具体的にどういえばいいのかわからないがどこか欠けている印象を受けた。それはワルキューレ・リッターの中で『聖盾』の担い手が不在となっているときいたせいなのかもしれない。



 ヴィーナスがコロッセウムに入り、パレードが終わったところでダイチ達とエリス達は別れた。
 エリス達はワルキューレ・グラールと同じ日に開催されるもう一つの大会テクニティス・フェストに出場するためにコロッセウムから離れた競技場にまでやってきた。
 競技場の名前はギガントスタディオンといって、金星一の巨大規模を誇り、マシンノイドで競技が出来る程のものであった。

「巨人のために作ったみたいなものね」

 エリスは競技場の巨大さをそう評した。

「ああ、夢のようやで」

 イクミはうっとりしながら、エントリーしたマイスターに与えられた調整用の格納庫を見回す。
 自分でもマシンノイドを作り上げるほど、のめりこむだけあって、金星中のマイスターが作成した自慢のマシンノイド達が一同に介するこの戦いはまさに祭りと言ってもよかった。

「こんなところで、うちがマイスターの機体を整備する日が来るなんて」
「あんたが一番楽しんでいるんじゃないの」
「いえ、一番楽しんでいるのは師匠ですよ」

 ラミは笑顔で言うと、エリス達はハイスアウゲンの調整作業をしているラウゼンに視線を移す。

「うむ、これで調整は完璧だ。いやまだ万全とはいえない、まだ秘密兵器を仕込んでおき、操縦者の安全の考慮を解除したオーバーブースト……ううむ、まだやれることはあるな」
「ちょっと、今聞き捨てならないことが聞こえたんだけど!」

 エリスはラウゼンへ殴り掛かる。

「ああ、なんだ聞こえていたのか。それでお前さんの許可があればオーバーブーストをかけて機体の機動性を五十パーセント向上して優勝できるぞ!」
「その前に操縦者の安全性はどうこうの話はどうなったのよ!?」
「うむ、それは今後の課題だな」
「フェストは今日! これからよ!」
「そうだったな。では今からその調整をするぞ!」
「するな! 百パーセントで十分よ!」

 エリスとラウゼンの言い合いを始める。

「なんや、エリスも結構楽しでるやないか」

 イクミはそれを見て、ニヤリとする。

「賑やかだね。操縦者と一緒に新しい弟子までとったのかい?」
「……アライスタ!」

 ラウゼンが声のした方へ目をやると、マイスター・アライスタが立っていた。

「お前、何の用で来た?」
「ちょっとお前さんの調子はどうかと見に来ただけだよ。あの急ごしらえの操縦者と機体でやれるものかとね」
「お前こそそんなことを心配する前に自分の機体の心配をしたらどうだ?」
「私の方はもう万全だよ。そうでなかったら、お前さんを笑いになんてきやしないさ」
「な、なにー!」

 ラウゼンは殴り掛かる勢いでアライスタに迫る。

「ああ、あんたのアホ面はどうでもいいよ。それより、あれがあんたの機体かい?」

 アライスタはエリスとハイスアウゲンを見る。

「ははん、あんたらしい機体に仕上がってるねえ。それに付き合ってくれる物好きがいてよかったじゃないか」
「物好きってね……私だって、あんなバカな仕様になるなんて直前まで知らなかったのよ!」
「そりゃそうだ、ラウゼンは思いついたことをそのまま実行するマイスターだ。誰かに伝達したりなんかできる奴じゃない、直前でも教えてもらっただけ儲けものさ」
「ふうん、私よりもよく知ってるじゃない」

 エリスは嫌味で返す。

「お前ら、随分好き勝手言ってくれるな!」
「悔しかったら言い返してみな」
「ふん、自分の機体をヒトに任せるなんざマイスターの風上にもおけねえな! そんなんで俺のハイスアウゲンに勝てると思うなよ!」
「ハイスアウゲン、それがあいつの名前か」

 アライスタの後ろから女性が出てくる。
 油臭い格納庫に不釣り合いなほど品性の高さを感じさせる金髪の女性だ。彼は、ラウゼンやエリスに目もくれずただ真紅のハイスアウゲンだけを見ている。

「うちの操者だよ。名前はラルリス・ハルファール。
ラルリス、彼がラウゼンだ」

 紹介されたラルリスはラウゼンの方を向く。

「これは失礼。どうにも機体にばかり目がいってしまって」
「その気持ちはよく分かる。あんた、騎士かい?」
「はい。元聖(セント)騎士です」
「ああ、そいつは凄い。なんてやめたんだ?」
「宮仕えは性に合わなかったの」
「はは、そういう面構えをしている」

 ラルリスはそう言われて、ムッとする。

「で、ブラブラしているところを、そこのマイスターに拾われたってわけか?」
「あたりだよ。こいつは遊ばせておくには惜しい人材だったんだね」
「最高の機体に乗せてくれるんならって条件で受けたんだよ」

 エリスはいかにもそれっぽい話だと思って聞いた。

「それで、俺のハイスアウゲンを見て後悔してるところだったか?」
「さあ……みたところ、機体の機動力と馬力はトップクラスでしょうし、馬力を引き出せる操者も用意したようには感じた」
「ああ、操者がヘマをしなけりゃ、俺の優勝は間違いないなしだぜ!」

 ラウゼンは得意満面の笑顔を浮かべる。ラルリスはそれに対して嫌悪感を隠さず露わにして言う。

「だけど、乗っている操者の安全がまったく考慮されていない。私だったら断るわね、こいつの操者」
「それに関しては同意するわ」

 エリスはため息混じりに会話に参加する。

「あなたがあの機体の操者?」
「ええ、エリスよ。よろしくね」

 エリスは手を差し出す。

「ええ、優勝するのは私だろうけど、せいぜい頑張りなさい」

 その厚かましい物言いに、エリスは髪が逆立つほどに苛立つ。

「ええ、せいぜいあんたを蹴落として優勝するぐらいには頑張るわ」
「へえ、やる気じゃないの」
「ええ、やる気よ」

 エリスとラルリスは睨み合う。

「フン、面白くなってきたわ。無茶苦茶な機体に無謀な挑発をする操者……お似合いじゃないの」
「ええ、優勝するぐらいにはお似合いだと思うわ!」
「言うじゃない。でも、優勝するのは私よ」
「私よ!」
「そこまでだよ」

 そのまま、殴り合いの喧嘩に発展しそうだったのでアライスタが止める。

「あんたが戦うのはフェストだよ。ここで殴り合いしちゃ意味が無いよ」
「それもそうね」

 ラルリスはエリスを見る。

「フェストであなたと戦うのを楽しみにしてるわ」
「ええ、私もよ」

 ラルリスは踵を返して、去っていく。

「お前さんといい勝負の跳ねっ返りだな」

 ラウゼンは笑って言うと、エリスは嫌そうな顔をする。

「あんたに言われたくないわ」
「ふう……マイスターと操者としては中々息の合ったコンビだね」
「冗談きついわ、こんなじいさんと息が合うわけないでしょ!」
「ああ、こんな鼻息荒い嬢ちゃんと息合わせられるわけ無いだろ」
「あん!?」
「おう、苦しいぜ嬢ちゃん!」

 エリスはラウゼンの襟を締め始める。
 それを見て、アライスタは笑う。

「ハハハ、ラルリスの台詞じゃないがフェストの戦い、楽しみにしてるよ」

 アライスタはラルリスを追って去る。

「あいつ、結局何しに来たんだ?」

 ラウゼンは首を傾げる。

「挨拶じゃないの? おかげで喝が入ったわ、勝ってやるわよ」
「ふん、やっとやる気になったか」

 ラウゼンはぼやいているうちに、アラームが格納庫中に鳴り出す。

「時間だ。さあ、行ってこい!」
「ええ!」

 エリスはハイスアウゲンに乗り込む。
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