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第3章 リッター・デア・ヴェーヌス
第22話 金星のヴィーナス
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そこに希望は無かった。
両親の顔は憶えていない。どこで生まれて、どうやって生きてきたのかすら憶えていない。
ただ暗闇の中をひたすら歩いている感覚はあった。
生きていくために、生きている。
何のために生きているか、ふと一瞬だけ考える。
そして、また次の日がやってくる。
起きる、歩く、食べる、寝る、ただそれだけの日々。
そこに光は無かった。
こうして誰に知られることもなく、人知れず消えていく。
そう思っていた。
――あの日までは。
目に入った金に思わず目を奪われた。
眩い輝きを放ち、尊ささえ感じるその金に、憧れを抱いた。
――私もこんな風になれたら。
そうして、夢が出来た。
「なれますよ、あなたにも」
そう金は答えてくれた。
いや、金はヒトの形をしていた。
そこで彼女は黄金の女神だということにようやく気づく。
女神は手を差し伸べてくれた。
――そうして、光に照らし出された。
アグライア・エストールは目を開ける。
「懐かしい夢だった……」
思い出せる限り最も遠い過去の夢だった。あの日から自分の全ては始まったとはっきり言える。
と、感慨にふけるのはそのぐらいにして、時間を確認し、職務に戻る。
船の仮眠室から出て、さる御方の私室へインターフォンを鳴らす。
「どうぞ」
鈴の音のような心地よい返事がすぐくる。
「失礼します」
アグライアは一礼する。
「予定よりも早いわね」
フフッ、と、金星の皇・ヴィーナスは黄金色のような笑顔を向ける。
「この身には過分の休息でしたがゆえ」
「あれでも短い方だと思っていたのに」
困ったものね、と、また笑う。
そこに遠慮は無い。まるで気さくな姉と生真面目な妹のやりとりのようだ。
「惑星連合会議からずっと寝ていなかったでしょ、不眠不休が三日三晩どころじゃないのに」
「いえ、いつ御身に危険が迫るかわかりませんので。それに、陛下の負担の方が私などより余程……」
「それは言いっこなしね。あなたはもう少し休むべきよ」
「それこそお言葉を返すようでは、お互い様なのでは?」
思わぬ反撃に、ヴァーナスは笑う。
「それはまた迂闊でしたね。木星の外交官が相手でしたら手痛い反撃を食らうところでした」
「実際ヒヤヒヤものでした」
「手厳しいわね。まあ、結果は芳しいものではなかったけど」
そこで初めてヴィーナスの顔に僅かに疲労の色が浮かぶ。
「……領土返還、当分は叶いそうもありませんね」
「ええ、このことを大臣や民衆に告げなくてはならないのが憂鬱だけど」
「それが陛下の役目です」
「フフ、そんな私を守るのがあなたの役目のようにね」
「はいのそれが騎士の努めですから」
二人の間で何度も交わされたやり取り。それだけに信頼を確認する最も確かな行為であった。
「期待していますよ。家族として、騎士として、――金星最強の剣として」
金星の大地は炎のように燃えているが、その色は熱い黄金色をしており、太古の地球はこの星のことを明星ともいったそうだ。実際地球人がこの星に降りたばかりの頃は文字通り焼けるように暑く、とても地球人が住める環境ではなかったと記録には残されている。
今ではこの星も地球人が住めるようにテラ・フォーミングが進み、今では地球人から進化した金星人が母なる星と定め、日々を過ごしている。
そんな金星のとある宇宙港を見渡せる丘に外套を羽織り、顔を隠したヒトが佇んでいた。
「……時間通りね」
ヒトの背後に男は立っていた。
一目で殺気立っていることがわかった。目の前に立っているヒトが標的でないにしても、まともな人間なら恐れ、身構えるほどであった。
しかし、ヒトは一切結果しなかった。それはヒトもまたまともではなかったからだ。男の放つ殺気など、外套を揺らす涼風のように受け流していた。
「失敗は許されないからな、時間は厳守するさ」
「時間は厳守しても、失敗する。たとえば、今ここで首を跳ね飛ばされたりしたら」
「面白い冗談だな。まあいい、それぐらいは笑って済ませるさ。それより、例の手はずは?」
「抜かりは無い」
ヒトは宙にディスプレイを出現させて、それをフリスビーのように投げ渡す。所謂、情報交換というものだ。
この情報を無償で提供してくれるヒトが見返りに何を望むか、男にすら想像が及ぶところではないが。
「結構だ。しかし、これだけの情報を持っているお前が何者なのか、知りたいところだな」
「それは作戦が成功した報酬、ということにする」
男は笑う。
「ハハハハハハ! それはいい! 成功させる楽しみが一つ増えたというべきか! ぜひ知りたくなったぞ!」
ヒトはそれに対して答えない。
それこそが今ここでもう語らうことはないと言っているかのようだった。
男の背後に五、六人のヒトが現れる。
「――時間か」
「はい、そろそろ標的の乗るシャトルがやってきます」
そうか、男は金星の輝くような地表とは対象的な黒雲渦巻く空を見上げて言う。
「それでは、はじめようか。――ヴィーナス暗殺計画を」
「おおぉぉ」
成層圏を抜け、シャトルの窓から金星の黄金色の地表を見て感嘆の声を上げる。
「まさに黄金大陸ってやつだな」
「地球にもそういう国があると聞きましたが、ないのですか?」
ミリアはここぞとばかりにダイチから地球のことを聞き出そうとする。
「たしか、黄金の国ジパングやったっけ?」
「ああ、それデタラメだぞ……なんで桃太郎知らないくせにそういうことは知ってるんだよ?」
「ほう、そうやったんか」
「俺に言わせれば、この金星の方がよっぽど黄金の国ジパングだぜ」
そう言って、ダイチは感慨深げにまた金星の地表へ視線を移す。
その様子を見て、ミリア達は一つ良いことを聞けたと得した気分になった。
「地上もいいけど、あの町並みも見事なものね」
マイナがそう言ったことで改めて金星の宇宙港のある町並みを見てみる。
確かに、地表が黄金に輝く砂金の大地なら、町並みはその砂金に芸術的に配置された色とりどりの宝石のようであった。
赤、青、緑、黒、白……目に鮮やかな建物は見ていて飽きない。
「この辺りは昔戦争で焼け野原になったと聞いてるんやけど、復興したようやな」
「戦争、か……火星も割と酷かったけど、金星もそうだったのか?」
「火星と金星は木星や天王星の侵攻を許してしまったからな。美しい街が次々と打ち壊されていったそうや」
「まあ、私達は施設にいてそんなことは知らなかったけどね」
エリスの話もそれはそれで酷い話だとダイチには思えた。
そして、再び金星の街を見るとそんな惨状が嘘のように感じてしまう。それだけ美しかった。これが一度打ち壊された後だということがちょっと信じられなかった。
「あれ、なんだ?」
ダイチの目に映ったのは果てしなく広がる高い壁であった。さすがに上空を飛ぶシャトル程ではないが、それでも痴女を歩いている人間からしたら、断崖絶壁の山のように見えるだろう。
「万里の長城みたいだ」
ダイチは実際にそれを目にしたことはないが、そんな印象を受けた。
「バンリってなに?」
そんなダイチの呟きに、エリスは興味を示す。
「その話はまた今度だ」
ダイチは地球のことを話したがらない。
それは嫌な思い出があるからとエリスは勝手に思っているし、それは自分も同じようにあるからお互い様だとも思っている。
――そういうことは話したいときに話せばいいのよ、また今度って言ってるし。
そう納得することにしている。
「んで、あの壁ってなんだ?」
「そんなの私が知るわけないじゃない。解説ならイクミよ」
「ガイドでもええんやで。ま、金星は初めてやけどな」
「そんなんで大丈夫なのか?」
「歴史ならいくらでもわかるものや。金星人なら誰でも知ってることやしな。
ええか? あの壁はな、木星との国境なんや」
「国境? 金星なのに木星の国があるのか?」
「言うたやろ、金星は木星の侵攻を許してしまい、敗戦国として領土を一部明け渡してしまったんや。あの壁はその領土を示すための国境なんや」
そう解説されて、ダイチはあの壁の威容がここに生きているヒトを高圧的に押さえつけているように見えてきた。
「金星には金属や鉱石の資源が豊富やからな。他の惑星かてその領土は喉から手が出るほど欲しいものなんや」
「なるほどな。だけど、金星のヒト達からしたらたまったものじゃないだろ」
「領土返還をデモで訴えかけてるし、ヴィーナスも働きかけてるみたいやけど。木星はよっぽど手離したくないそうで、ナシのつぶてや」
困ったものやなと言わんばかりに、イクミは両手を振る。
「そりゃね、せっかく手に入れた土地を簡単に返す訳にはいかないでしょ。」
「手に入れたというより奪ったものだけどな」
エリスの発言に、ダイチはかみつく。
「まあ、そんなわけで金星人が簡単に入ってこれないようにあの国境を敷かれてるわけや」
「いやな話だな。でも、あの壁どれぐらい広がってるんだ?」
ダイチは壁がどこまで続いているのか見てやろうとしたが、壁は地平線の果てまでも広がっていた。
「ざっと金星の三大大陸の一つ、アフロディーテ大陸の三分の一ほどやな」
ダイチはイクミの回答を聞いてゾッとした。
――大陸の三分の一って、本当に万里の長城並じゃねえか……
ダイチ達が乗るシャトルが宇宙港の敷地に降りた時、もう一機のシャトルが着陸体勢に入る。
そんなことも知らないまま、ダイチ達はシャトルを降りて、金星の入国審査に入る。とはいっても、火星出身の身分を証明するパスポートを提示するだけなので拍子抜けする。
ちなみにダイチのパスポートは、イクミが偽造して作り上げており一応火星人ということになっている。
初めてのときはバレやしないか文字通り冷や汗モノだったが手続きも木星や火星から数えて三度目だが、段々と慣れてきたものだ。。
「リビュアとはえらい違いね」
「まるで宮殿ですね」
ミリアはうっとりと天井を見上げる。
木星でも宇宙港に着くなり、天井を見上げたものだが、あれは天井があまりにも高くて空と見分けがつかなかったせいだ。ただ、金星の宇宙港はシャンデリアが煌々と並べられた豪勢な天井であった。
「確かに宮殿みたいだな」
「まぶしくて目がチカチカしそうじゃ」
フルートはそう言って目をこする。
「そうね。まぶしすぎるくらいだわ」
マイナも同意する。
「気が合うようじゃな」
「うぅ、こんなことで意気投合したくなかったのだが……」
シャンデリアに目が眩むのは、いかにも田舎者らしい反応でマイナは好ましくなかった。
「さっさと行きましょ」
「エリスは気後れとは無縁ですね」
「単純に新しい義手が待ち遠しいだけだろ」
「せやな、なんならミリアの足も見繕って」
「それは結構です。エリスほど不自由していませんので」
そう断って、ミリアはエリスの後を追う。
「らしくないな、遠慮するなんて」
「遠慮、ミリアが……?」
それはちょっとダイチにとって考えられないことであった。
「賞金はまだ十分にあるんやけど、少しでもエリスに良い義手をってことやろ」
「なんだかんだでいい仲だよな」
「わしらもゆくぞダイチ! 夫婦ならばヴァージンロードとやらで旦那が妻の手を引くときくぞ!」
「それ意味おかしいだろ。第一ここは式場でも俺たちは夫婦でもねえぞ!」
「未来の夫婦じゃ!」
「ああ、おい! 引っ張るなよ!」
フルートの手に引かれて、ダイチも行く。
「あの二人ならいい夫婦になるやろ」
「ほ、本気で言ってるの?」
「さてな。それより、何か向こうの騒がしいみたいやけど」
「ん、人だかりか。何かのパレードか?」
「マイナはん、いくら金星でも宇宙港でパレードは……って、もしかしたらそうかもしれへんな」
「そうか、ちょっと見に行ってくる」
そう言ってマイナは駆け出す。
さすがに水星人は年を取るのも早いが、足も同じくらい速いようだ。
「もう行ってもうたか、ヤジウマ気質なんか、田舎者の気性なんか……まあ、うちもいくけどな」
イクミは笑いながらゆっくりとマイナを追い掛ける。
目にも鮮やかな金色の髪。宝石を散りばめられたドレス。それらが全て彼女の全身から放たれる神々しい輝きを引き立てているに過ぎなかった。
彼女はヴィーナス。今となっては太古の地球人が崇めたといわれる美の女神の名を冠する金星の皇。
その威容を一目見たいと自然にヒトが集まってくる。かくいうダイチ達もそのヒトなのであったが。
「あれがマーズと同じ星の皇」
「ダイチよ、妾も同じ皇なんじゃが……」
ヴィーナスの美しさに見惚れていたダイチに向かってフルートは面白くなさ気に言う。
「ああ、すまん忘れてた」
フルートは顔を膨らませる。
「今にみておれよ、妾とてあの皇に負けぬ魅力を纏った冥皇となってみせるから!」
「それ、何年先の話だ?」
少なくとも、十年二十年先じゃないだろと付け加えた。
「やはりお美しいですわ」
「金星人はあんたの憧れだものね」
「はい。アリアン店長が私の憧れですし、その金星の皇ともなると、女神ですね」
「女神ね、たしかにそんな感じがするわね」
「フフ、エリスにはたとえ皇でもヒトなんですね」
「それよりも、やばい奴のオーラの方が気になるわね」
エリスの瞳が闘志でギラつく。
その瞳に映っているのはヴィーナスの傍らを歩く白銀の甲冑を身に着けた女性であった。
「ああ、ワルキューレ・リッターやな」
「ワルキューレ・リッター?」
「ヴィーナス直属の……金星最強といわれている近衛騎士団や」
マイナが訊くと、イクミは嬉々とした表情で説明を始める。
「あれはその中でも更にその中でも最強と言われている『剣』の称号を持つアグライア・エストールやな。常にヴィーナスの傍らに寄り添う騎士ってところやな」
「つまり、あいつが金星最強ってわけね?」
「そう、もっぱらの噂やけどな。戦ってみたいんか?」
「当然!」
この場のエリスに拳があったら、ギリッと握りしめていただろう。というか、飛びかかっていたかもしれない。
「……まるで別世界だな」
神々しい輝きを放つヴィーナスや中世の騎士のような雰囲気を持ったアグライアの二人が並んで歩いている。
ダイチにとってはこの世離れした光景であった。
「皇と騎士なら、まるでファンタジーだな。ああ、ここはファンタジーだったか」
改めて実感する。
「なに、一人言ぼやいてるわけ?」
エリスがジト目で訊いてくる。
「え、いや……なんでもない」
「あんたってさ、ああいうのが好きなわけ?」
「好き? ああ、好きだよ?」
「ふうん」
「なんだよ? お前にとっちゃ見慣れたもんでも、俺にとっては初めてなんだよ」
「わ、私だって金星は初めてなのよ」
「あ、そうか……」
なんとなく、ダイチは悪い気がした。
「ところでさ……あいつと私、どっちが強いと思う?」
「はあ!?」
あいつというのは言うまでもなくアグライアのことであった。
(強そうなやつをみたらすぐ比べたがるのがこいつの悪い癖だな。さすがに腕が無いから戦おうとはしないみたいだが……)
逆に言うと腕があったらこの場でいきなり戦いを挑みそうで危なっかしい。
「どっちが強いかって……そんなのわかるわけないだろ」
あのアグライアは金星最強というからにはとてつもなく強いだろう。
ただ、エリスも両腕さえあれば滅茶苦茶強いからいい勝負になるのではないかという想像しかできない。
だから、わからないというのが本当に正直なところなのだ。
そもそも、相手の力をはかるなんてことがおこがましいことだと思えてならない。
「どっちよ?」
「わからないって言ったじゃないか」
「どっちよ?」
エリスは強い口調で言い放ってくる。
ダイチは困り果てた。
これはどっちなのか、ちゃんと答えるまで訊き続けるやつだ。
ダイチにはここまで強気に迫られたエリスにごまかすなんてことはできなかった。
「……あっちかな」
もう直感で答えることしかできなかった。
「………………」
エリスは無言で目が座っている。正直、滅茶苦茶怖い。
「あ~、よくわかったわ」
「……何が?」
ダイチは恐る恐る訊く。
「――腕が治ったら、あいつと勝負する」
「最初からそのつもりだっただろ!」
思わずツッコミを入れる。
「ちょうど試運転になるしね」
「金星最強の騎士を相手に試運転かよ……」
あまりの図太さに、ダイチは呆れる。まあ、それがエリスの凄いところでもあるし、ひょっとしたら勝ってしまうこともあるかもしれない。
(まあ、その前に戦いにならないか。俺達とは住む世界が違うみたいだし、……俺達、か……)
そこまで考えて、心の中でも俺達って言葉が自然に出たことに密かに驚く。
そもそも、地球人、水星人、火星人、果ては冥王星人までいるのだから、種族という意味で同類というわけではない。自分からしてこの中じゃ唯一の地球人で、きっとこの金星にさえ同じ地球人はない。なのに、エリスやフルート達のことを仲間だと自然に思える。
それは、奇妙であると同時に心地よい感覚であった。
しかし、そんな奇妙な生活の中でも更に違う世界に生きるようなヒト達はいるのだと、まざまざと見せつけられた気分だ。
(芸能人と一般人……いや、そんな次元でもないか……ハハァ、やっぱり住む世界が根本から違うんだな……)
そんな考えをしている時点で、世界は違うのだろうなと自嘲する。
「のう、ダイチ?」
フルートが服の裾を掴んで引っ張っていることに気づく。
「ん、どうした?」
「さっきから嫌なものを感じるんじゃ……」
「嫌なものってなんだ?」
フルートは身体を震わせて、うずくまるような姿勢で言う。
「……殺気じゃ」
両親の顔は憶えていない。どこで生まれて、どうやって生きてきたのかすら憶えていない。
ただ暗闇の中をひたすら歩いている感覚はあった。
生きていくために、生きている。
何のために生きているか、ふと一瞬だけ考える。
そして、また次の日がやってくる。
起きる、歩く、食べる、寝る、ただそれだけの日々。
そこに光は無かった。
こうして誰に知られることもなく、人知れず消えていく。
そう思っていた。
――あの日までは。
目に入った金に思わず目を奪われた。
眩い輝きを放ち、尊ささえ感じるその金に、憧れを抱いた。
――私もこんな風になれたら。
そうして、夢が出来た。
「なれますよ、あなたにも」
そう金は答えてくれた。
いや、金はヒトの形をしていた。
そこで彼女は黄金の女神だということにようやく気づく。
女神は手を差し伸べてくれた。
――そうして、光に照らし出された。
アグライア・エストールは目を開ける。
「懐かしい夢だった……」
思い出せる限り最も遠い過去の夢だった。あの日から自分の全ては始まったとはっきり言える。
と、感慨にふけるのはそのぐらいにして、時間を確認し、職務に戻る。
船の仮眠室から出て、さる御方の私室へインターフォンを鳴らす。
「どうぞ」
鈴の音のような心地よい返事がすぐくる。
「失礼します」
アグライアは一礼する。
「予定よりも早いわね」
フフッ、と、金星の皇・ヴィーナスは黄金色のような笑顔を向ける。
「この身には過分の休息でしたがゆえ」
「あれでも短い方だと思っていたのに」
困ったものね、と、また笑う。
そこに遠慮は無い。まるで気さくな姉と生真面目な妹のやりとりのようだ。
「惑星連合会議からずっと寝ていなかったでしょ、不眠不休が三日三晩どころじゃないのに」
「いえ、いつ御身に危険が迫るかわかりませんので。それに、陛下の負担の方が私などより余程……」
「それは言いっこなしね。あなたはもう少し休むべきよ」
「それこそお言葉を返すようでは、お互い様なのでは?」
思わぬ反撃に、ヴァーナスは笑う。
「それはまた迂闊でしたね。木星の外交官が相手でしたら手痛い反撃を食らうところでした」
「実際ヒヤヒヤものでした」
「手厳しいわね。まあ、結果は芳しいものではなかったけど」
そこで初めてヴィーナスの顔に僅かに疲労の色が浮かぶ。
「……領土返還、当分は叶いそうもありませんね」
「ええ、このことを大臣や民衆に告げなくてはならないのが憂鬱だけど」
「それが陛下の役目です」
「フフ、そんな私を守るのがあなたの役目のようにね」
「はいのそれが騎士の努めですから」
二人の間で何度も交わされたやり取り。それだけに信頼を確認する最も確かな行為であった。
「期待していますよ。家族として、騎士として、――金星最強の剣として」
金星の大地は炎のように燃えているが、その色は熱い黄金色をしており、太古の地球はこの星のことを明星ともいったそうだ。実際地球人がこの星に降りたばかりの頃は文字通り焼けるように暑く、とても地球人が住める環境ではなかったと記録には残されている。
今ではこの星も地球人が住めるようにテラ・フォーミングが進み、今では地球人から進化した金星人が母なる星と定め、日々を過ごしている。
そんな金星のとある宇宙港を見渡せる丘に外套を羽織り、顔を隠したヒトが佇んでいた。
「……時間通りね」
ヒトの背後に男は立っていた。
一目で殺気立っていることがわかった。目の前に立っているヒトが標的でないにしても、まともな人間なら恐れ、身構えるほどであった。
しかし、ヒトは一切結果しなかった。それはヒトもまたまともではなかったからだ。男の放つ殺気など、外套を揺らす涼風のように受け流していた。
「失敗は許されないからな、時間は厳守するさ」
「時間は厳守しても、失敗する。たとえば、今ここで首を跳ね飛ばされたりしたら」
「面白い冗談だな。まあいい、それぐらいは笑って済ませるさ。それより、例の手はずは?」
「抜かりは無い」
ヒトは宙にディスプレイを出現させて、それをフリスビーのように投げ渡す。所謂、情報交換というものだ。
この情報を無償で提供してくれるヒトが見返りに何を望むか、男にすら想像が及ぶところではないが。
「結構だ。しかし、これだけの情報を持っているお前が何者なのか、知りたいところだな」
「それは作戦が成功した報酬、ということにする」
男は笑う。
「ハハハハハハ! それはいい! 成功させる楽しみが一つ増えたというべきか! ぜひ知りたくなったぞ!」
ヒトはそれに対して答えない。
それこそが今ここでもう語らうことはないと言っているかのようだった。
男の背後に五、六人のヒトが現れる。
「――時間か」
「はい、そろそろ標的の乗るシャトルがやってきます」
そうか、男は金星の輝くような地表とは対象的な黒雲渦巻く空を見上げて言う。
「それでは、はじめようか。――ヴィーナス暗殺計画を」
「おおぉぉ」
成層圏を抜け、シャトルの窓から金星の黄金色の地表を見て感嘆の声を上げる。
「まさに黄金大陸ってやつだな」
「地球にもそういう国があると聞きましたが、ないのですか?」
ミリアはここぞとばかりにダイチから地球のことを聞き出そうとする。
「たしか、黄金の国ジパングやったっけ?」
「ああ、それデタラメだぞ……なんで桃太郎知らないくせにそういうことは知ってるんだよ?」
「ほう、そうやったんか」
「俺に言わせれば、この金星の方がよっぽど黄金の国ジパングだぜ」
そう言って、ダイチは感慨深げにまた金星の地表へ視線を移す。
その様子を見て、ミリア達は一つ良いことを聞けたと得した気分になった。
「地上もいいけど、あの町並みも見事なものね」
マイナがそう言ったことで改めて金星の宇宙港のある町並みを見てみる。
確かに、地表が黄金に輝く砂金の大地なら、町並みはその砂金に芸術的に配置された色とりどりの宝石のようであった。
赤、青、緑、黒、白……目に鮮やかな建物は見ていて飽きない。
「この辺りは昔戦争で焼け野原になったと聞いてるんやけど、復興したようやな」
「戦争、か……火星も割と酷かったけど、金星もそうだったのか?」
「火星と金星は木星や天王星の侵攻を許してしまったからな。美しい街が次々と打ち壊されていったそうや」
「まあ、私達は施設にいてそんなことは知らなかったけどね」
エリスの話もそれはそれで酷い話だとダイチには思えた。
そして、再び金星の街を見るとそんな惨状が嘘のように感じてしまう。それだけ美しかった。これが一度打ち壊された後だということがちょっと信じられなかった。
「あれ、なんだ?」
ダイチの目に映ったのは果てしなく広がる高い壁であった。さすがに上空を飛ぶシャトル程ではないが、それでも痴女を歩いている人間からしたら、断崖絶壁の山のように見えるだろう。
「万里の長城みたいだ」
ダイチは実際にそれを目にしたことはないが、そんな印象を受けた。
「バンリってなに?」
そんなダイチの呟きに、エリスは興味を示す。
「その話はまた今度だ」
ダイチは地球のことを話したがらない。
それは嫌な思い出があるからとエリスは勝手に思っているし、それは自分も同じようにあるからお互い様だとも思っている。
――そういうことは話したいときに話せばいいのよ、また今度って言ってるし。
そう納得することにしている。
「んで、あの壁ってなんだ?」
「そんなの私が知るわけないじゃない。解説ならイクミよ」
「ガイドでもええんやで。ま、金星は初めてやけどな」
「そんなんで大丈夫なのか?」
「歴史ならいくらでもわかるものや。金星人なら誰でも知ってることやしな。
ええか? あの壁はな、木星との国境なんや」
「国境? 金星なのに木星の国があるのか?」
「言うたやろ、金星は木星の侵攻を許してしまい、敗戦国として領土を一部明け渡してしまったんや。あの壁はその領土を示すための国境なんや」
そう解説されて、ダイチはあの壁の威容がここに生きているヒトを高圧的に押さえつけているように見えてきた。
「金星には金属や鉱石の資源が豊富やからな。他の惑星かてその領土は喉から手が出るほど欲しいものなんや」
「なるほどな。だけど、金星のヒト達からしたらたまったものじゃないだろ」
「領土返還をデモで訴えかけてるし、ヴィーナスも働きかけてるみたいやけど。木星はよっぽど手離したくないそうで、ナシのつぶてや」
困ったものやなと言わんばかりに、イクミは両手を振る。
「そりゃね、せっかく手に入れた土地を簡単に返す訳にはいかないでしょ。」
「手に入れたというより奪ったものだけどな」
エリスの発言に、ダイチはかみつく。
「まあ、そんなわけで金星人が簡単に入ってこれないようにあの国境を敷かれてるわけや」
「いやな話だな。でも、あの壁どれぐらい広がってるんだ?」
ダイチは壁がどこまで続いているのか見てやろうとしたが、壁は地平線の果てまでも広がっていた。
「ざっと金星の三大大陸の一つ、アフロディーテ大陸の三分の一ほどやな」
ダイチはイクミの回答を聞いてゾッとした。
――大陸の三分の一って、本当に万里の長城並じゃねえか……
ダイチ達が乗るシャトルが宇宙港の敷地に降りた時、もう一機のシャトルが着陸体勢に入る。
そんなことも知らないまま、ダイチ達はシャトルを降りて、金星の入国審査に入る。とはいっても、火星出身の身分を証明するパスポートを提示するだけなので拍子抜けする。
ちなみにダイチのパスポートは、イクミが偽造して作り上げており一応火星人ということになっている。
初めてのときはバレやしないか文字通り冷や汗モノだったが手続きも木星や火星から数えて三度目だが、段々と慣れてきたものだ。。
「リビュアとはえらい違いね」
「まるで宮殿ですね」
ミリアはうっとりと天井を見上げる。
木星でも宇宙港に着くなり、天井を見上げたものだが、あれは天井があまりにも高くて空と見分けがつかなかったせいだ。ただ、金星の宇宙港はシャンデリアが煌々と並べられた豪勢な天井であった。
「確かに宮殿みたいだな」
「まぶしくて目がチカチカしそうじゃ」
フルートはそう言って目をこする。
「そうね。まぶしすぎるくらいだわ」
マイナも同意する。
「気が合うようじゃな」
「うぅ、こんなことで意気投合したくなかったのだが……」
シャンデリアに目が眩むのは、いかにも田舎者らしい反応でマイナは好ましくなかった。
「さっさと行きましょ」
「エリスは気後れとは無縁ですね」
「単純に新しい義手が待ち遠しいだけだろ」
「せやな、なんならミリアの足も見繕って」
「それは結構です。エリスほど不自由していませんので」
そう断って、ミリアはエリスの後を追う。
「らしくないな、遠慮するなんて」
「遠慮、ミリアが……?」
それはちょっとダイチにとって考えられないことであった。
「賞金はまだ十分にあるんやけど、少しでもエリスに良い義手をってことやろ」
「なんだかんだでいい仲だよな」
「わしらもゆくぞダイチ! 夫婦ならばヴァージンロードとやらで旦那が妻の手を引くときくぞ!」
「それ意味おかしいだろ。第一ここは式場でも俺たちは夫婦でもねえぞ!」
「未来の夫婦じゃ!」
「ああ、おい! 引っ張るなよ!」
フルートの手に引かれて、ダイチも行く。
「あの二人ならいい夫婦になるやろ」
「ほ、本気で言ってるの?」
「さてな。それより、何か向こうの騒がしいみたいやけど」
「ん、人だかりか。何かのパレードか?」
「マイナはん、いくら金星でも宇宙港でパレードは……って、もしかしたらそうかもしれへんな」
「そうか、ちょっと見に行ってくる」
そう言ってマイナは駆け出す。
さすがに水星人は年を取るのも早いが、足も同じくらい速いようだ。
「もう行ってもうたか、ヤジウマ気質なんか、田舎者の気性なんか……まあ、うちもいくけどな」
イクミは笑いながらゆっくりとマイナを追い掛ける。
目にも鮮やかな金色の髪。宝石を散りばめられたドレス。それらが全て彼女の全身から放たれる神々しい輝きを引き立てているに過ぎなかった。
彼女はヴィーナス。今となっては太古の地球人が崇めたといわれる美の女神の名を冠する金星の皇。
その威容を一目見たいと自然にヒトが集まってくる。かくいうダイチ達もそのヒトなのであったが。
「あれがマーズと同じ星の皇」
「ダイチよ、妾も同じ皇なんじゃが……」
ヴィーナスの美しさに見惚れていたダイチに向かってフルートは面白くなさ気に言う。
「ああ、すまん忘れてた」
フルートは顔を膨らませる。
「今にみておれよ、妾とてあの皇に負けぬ魅力を纏った冥皇となってみせるから!」
「それ、何年先の話だ?」
少なくとも、十年二十年先じゃないだろと付け加えた。
「やはりお美しいですわ」
「金星人はあんたの憧れだものね」
「はい。アリアン店長が私の憧れですし、その金星の皇ともなると、女神ですね」
「女神ね、たしかにそんな感じがするわね」
「フフ、エリスにはたとえ皇でもヒトなんですね」
「それよりも、やばい奴のオーラの方が気になるわね」
エリスの瞳が闘志でギラつく。
その瞳に映っているのはヴィーナスの傍らを歩く白銀の甲冑を身に着けた女性であった。
「ああ、ワルキューレ・リッターやな」
「ワルキューレ・リッター?」
「ヴィーナス直属の……金星最強といわれている近衛騎士団や」
マイナが訊くと、イクミは嬉々とした表情で説明を始める。
「あれはその中でも更にその中でも最強と言われている『剣』の称号を持つアグライア・エストールやな。常にヴィーナスの傍らに寄り添う騎士ってところやな」
「つまり、あいつが金星最強ってわけね?」
「そう、もっぱらの噂やけどな。戦ってみたいんか?」
「当然!」
この場のエリスに拳があったら、ギリッと握りしめていただろう。というか、飛びかかっていたかもしれない。
「……まるで別世界だな」
神々しい輝きを放つヴィーナスや中世の騎士のような雰囲気を持ったアグライアの二人が並んで歩いている。
ダイチにとってはこの世離れした光景であった。
「皇と騎士なら、まるでファンタジーだな。ああ、ここはファンタジーだったか」
改めて実感する。
「なに、一人言ぼやいてるわけ?」
エリスがジト目で訊いてくる。
「え、いや……なんでもない」
「あんたってさ、ああいうのが好きなわけ?」
「好き? ああ、好きだよ?」
「ふうん」
「なんだよ? お前にとっちゃ見慣れたもんでも、俺にとっては初めてなんだよ」
「わ、私だって金星は初めてなのよ」
「あ、そうか……」
なんとなく、ダイチは悪い気がした。
「ところでさ……あいつと私、どっちが強いと思う?」
「はあ!?」
あいつというのは言うまでもなくアグライアのことであった。
(強そうなやつをみたらすぐ比べたがるのがこいつの悪い癖だな。さすがに腕が無いから戦おうとはしないみたいだが……)
逆に言うと腕があったらこの場でいきなり戦いを挑みそうで危なっかしい。
「どっちが強いかって……そんなのわかるわけないだろ」
あのアグライアは金星最強というからにはとてつもなく強いだろう。
ただ、エリスも両腕さえあれば滅茶苦茶強いからいい勝負になるのではないかという想像しかできない。
だから、わからないというのが本当に正直なところなのだ。
そもそも、相手の力をはかるなんてことがおこがましいことだと思えてならない。
「どっちよ?」
「わからないって言ったじゃないか」
「どっちよ?」
エリスは強い口調で言い放ってくる。
ダイチは困り果てた。
これはどっちなのか、ちゃんと答えるまで訊き続けるやつだ。
ダイチにはここまで強気に迫られたエリスにごまかすなんてことはできなかった。
「……あっちかな」
もう直感で答えることしかできなかった。
「………………」
エリスは無言で目が座っている。正直、滅茶苦茶怖い。
「あ~、よくわかったわ」
「……何が?」
ダイチは恐る恐る訊く。
「――腕が治ったら、あいつと勝負する」
「最初からそのつもりだっただろ!」
思わずツッコミを入れる。
「ちょうど試運転になるしね」
「金星最強の騎士を相手に試運転かよ……」
あまりの図太さに、ダイチは呆れる。まあ、それがエリスの凄いところでもあるし、ひょっとしたら勝ってしまうこともあるかもしれない。
(まあ、その前に戦いにならないか。俺達とは住む世界が違うみたいだし、……俺達、か……)
そこまで考えて、心の中でも俺達って言葉が自然に出たことに密かに驚く。
そもそも、地球人、水星人、火星人、果ては冥王星人までいるのだから、種族という意味で同類というわけではない。自分からしてこの中じゃ唯一の地球人で、きっとこの金星にさえ同じ地球人はない。なのに、エリスやフルート達のことを仲間だと自然に思える。
それは、奇妙であると同時に心地よい感覚であった。
しかし、そんな奇妙な生活の中でも更に違う世界に生きるようなヒト達はいるのだと、まざまざと見せつけられた気分だ。
(芸能人と一般人……いや、そんな次元でもないか……ハハァ、やっぱり住む世界が根本から違うんだな……)
そんな考えをしている時点で、世界は違うのだろうなと自嘲する。
「のう、ダイチ?」
フルートが服の裾を掴んで引っ張っていることに気づく。
「ん、どうした?」
「さっきから嫌なものを感じるんじゃ……」
「嫌なものってなんだ?」
フルートは身体を震わせて、うずくまるような姿勢で言う。
「……殺気じゃ」
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