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その後のSARA
■縁結びの神様がいます
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*今更ですが、完結表示にしていなかったのでさせていただきましたm(__)m
**************************************
もうすぐ年が明ける。
SARAの年内営業は二十九日で終わり、貴史に手伝ってもらいながら店の大掃除も終わった。
今年の大みそかは伯父の松ちゃんこと松山義明の家である和菓子店【福屋】で過ごすことになりました。
次男の達也も香織たちの結婚式以来一年半ぶりに家族揃って帰省してくるので賑やかな年末年始となりそうです。
結婚式に来てくれた時、達兄の奥さんの亜紀さんは妊娠七ヶ月の身重でした。
愛菜ちゃんももう一歳のお誕生日を過ぎて歩きを始めたらしい。伯父さん達も楽しみだろうな。でも生まれてから二回しか孫の愛菜ちゃんに会えてないから人見知りで泣かれちゃうかもよ伯父さん。
香織は要らぬ心配をしながらも初孫を抱きながらでれっとした伯父の顔を想像して思わず笑みを浮かべてしまうのでした。
福屋の跡取りである長男の幹也は貴史より一つ上で年が明ければ四十四になるのですが、いまだ独身で両親を悩ませていた。
このまま一人でいるのではないかと思っていた矢先、SARAの常連であるご婦人がら紹介された女性と意気投合してそれ以降二人でよくランチを食べに来てくれているのでこのままゴールまで行けるのではないかと香織も期待しているのでした。
幹兄も早く結婚して義明伯父さんと春子ママに孫の顔を見せてあげられると良いな。
『赤ちゃんか・・・』
香織は貴史と出会うまで自分が子供を産めない身体であることをどこかで負い目として感じていた。
でも今は違う。
『私は伯父さん達に子供を抱かせてあげる事は出来ないけれど、貴史さんと幸せに暮らしていく姿を見せることが恩返しになるんだよね』
両親が幼い頃に離婚し、母も中学の時に癌で他界してしまった。
一人残った自分を伯父は福屋に引き取り実の娘の様に可愛がってくれた。
春子ママ、幹兄、達兄も同じ。
そして、今は隣に貴史もいてくれる。こんなに幸せなことは無いではないか。
結婚を考えていた人に裏切られ人を信じる事さえできなくなった自分を支えてくれた人達。
私には本当の家族が出来たんだという思いが溢れ胸を熱くする。
知らない内に一筋の涙が頬を伝わって落ちていった。
「香織?」
貴史が声を掛ける。
「ん、何でもない」
そう答えながら彼の広い胸に飛び込んだ。
「どうした?」
貴史は珍しく自分から抱き付いてきた香織を見下ろしながら驚いている風で。
「何となく幸せだなって思って」
そう告げると背伸びをして彼の口元にちゅっと軽く口づけ
「さっ、伯父さんの所に行きましょ。みんな待ってるよ」
と、貴史の胸からするりと抜けて玄関の方へと小走りで向かった。
「ちょっ、何?あっ。待て、何だかわからないけど俺にもお返しさせろ」
「ダメ―」
貴史は慌てて彼女の後を追いますが、香織は笑いながら先に玄関を出てしまう。
「全く。。。」
呆れながらそう呟いた彼の顔にも穏やかな笑みが自然と浮かべられていたのでした。
後から追って来た貴史と手を繋ぎ福屋へと歩きながら香織は前に彼が言った
『SARAには縁結びの神様がいるのかもしれないね』
という言葉を思い出していました。
『高村君が由美子ちゃんにプロポーズをした。その後にかず君と真理ちゃんが一応婚約したのよね。そして、次は幹兄かな。
もしかしたら本当に縁結びの神様がいるのかも。
SARAで出会って幸せになっていく人たちが増えて、そして赤ちゃんが生まれたらみんな私にとっては子供でもあり、孫でもあるんだわ。そうなったら嬉しいな』
来年はどんな出会いがあるのだろう。そう考えるだけでワクワクしながら大好きな家族の元へとむかったのでした。
完
**************************
お読み下さりありがとうございました。
その後のSARAはかなり間を置きながらの投稿になりました。
主人公の生い立ちなどは全く関係ありませんが自分も店をやっておりましてお客さん達とこんな触れ合いがあったら良いなと思い描き始めた作品でした。
世の中がこんな状況で今年2月に店は廃業致しましたが良い思い出が沢山ありました。
書き始めたのはやめると決めた昨年12月。
やっぱりハッピーエンドでその後迄書いてしまいましたがここまでお付き合い下さりありがとうございました。
R15でファンタジーの方でも書いても居りますのでお時間がありましたらお立ち寄りくださいませ。
『大聖女と言われて転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/823880103/152513406
それではまた。
遥
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もうすぐ年が明ける。
SARAの年内営業は二十九日で終わり、貴史に手伝ってもらいながら店の大掃除も終わった。
今年の大みそかは伯父の松ちゃんこと松山義明の家である和菓子店【福屋】で過ごすことになりました。
次男の達也も香織たちの結婚式以来一年半ぶりに家族揃って帰省してくるので賑やかな年末年始となりそうです。
結婚式に来てくれた時、達兄の奥さんの亜紀さんは妊娠七ヶ月の身重でした。
愛菜ちゃんももう一歳のお誕生日を過ぎて歩きを始めたらしい。伯父さん達も楽しみだろうな。でも生まれてから二回しか孫の愛菜ちゃんに会えてないから人見知りで泣かれちゃうかもよ伯父さん。
香織は要らぬ心配をしながらも初孫を抱きながらでれっとした伯父の顔を想像して思わず笑みを浮かべてしまうのでした。
福屋の跡取りである長男の幹也は貴史より一つ上で年が明ければ四十四になるのですが、いまだ独身で両親を悩ませていた。
このまま一人でいるのではないかと思っていた矢先、SARAの常連であるご婦人がら紹介された女性と意気投合してそれ以降二人でよくランチを食べに来てくれているのでこのままゴールまで行けるのではないかと香織も期待しているのでした。
幹兄も早く結婚して義明伯父さんと春子ママに孫の顔を見せてあげられると良いな。
『赤ちゃんか・・・』
香織は貴史と出会うまで自分が子供を産めない身体であることをどこかで負い目として感じていた。
でも今は違う。
『私は伯父さん達に子供を抱かせてあげる事は出来ないけれど、貴史さんと幸せに暮らしていく姿を見せることが恩返しになるんだよね』
両親が幼い頃に離婚し、母も中学の時に癌で他界してしまった。
一人残った自分を伯父は福屋に引き取り実の娘の様に可愛がってくれた。
春子ママ、幹兄、達兄も同じ。
そして、今は隣に貴史もいてくれる。こんなに幸せなことは無いではないか。
結婚を考えていた人に裏切られ人を信じる事さえできなくなった自分を支えてくれた人達。
私には本当の家族が出来たんだという思いが溢れ胸を熱くする。
知らない内に一筋の涙が頬を伝わって落ちていった。
「香織?」
貴史が声を掛ける。
「ん、何でもない」
そう答えながら彼の広い胸に飛び込んだ。
「どうした?」
貴史は珍しく自分から抱き付いてきた香織を見下ろしながら驚いている風で。
「何となく幸せだなって思って」
そう告げると背伸びをして彼の口元にちゅっと軽く口づけ
「さっ、伯父さんの所に行きましょ。みんな待ってるよ」
と、貴史の胸からするりと抜けて玄関の方へと小走りで向かった。
「ちょっ、何?あっ。待て、何だかわからないけど俺にもお返しさせろ」
「ダメ―」
貴史は慌てて彼女の後を追いますが、香織は笑いながら先に玄関を出てしまう。
「全く。。。」
呆れながらそう呟いた彼の顔にも穏やかな笑みが自然と浮かべられていたのでした。
後から追って来た貴史と手を繋ぎ福屋へと歩きながら香織は前に彼が言った
『SARAには縁結びの神様がいるのかもしれないね』
という言葉を思い出していました。
『高村君が由美子ちゃんにプロポーズをした。その後にかず君と真理ちゃんが一応婚約したのよね。そして、次は幹兄かな。
もしかしたら本当に縁結びの神様がいるのかも。
SARAで出会って幸せになっていく人たちが増えて、そして赤ちゃんが生まれたらみんな私にとっては子供でもあり、孫でもあるんだわ。そうなったら嬉しいな』
来年はどんな出会いがあるのだろう。そう考えるだけでワクワクしながら大好きな家族の元へとむかったのでした。
完
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お読み下さりありがとうございました。
その後のSARAはかなり間を置きながらの投稿になりました。
主人公の生い立ちなどは全く関係ありませんが自分も店をやっておりましてお客さん達とこんな触れ合いがあったら良いなと思い描き始めた作品でした。
世の中がこんな状況で今年2月に店は廃業致しましたが良い思い出が沢山ありました。
書き始めたのはやめると決めた昨年12月。
やっぱりハッピーエンドでその後迄書いてしまいましたがここまでお付き合い下さりありがとうございました。
R15でファンタジーの方でも書いても居りますのでお時間がありましたらお立ち寄りくださいませ。
『大聖女と言われて転生しましたが、大きな仕事もせずに第二王子に愛されています。』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/823880103/152513406
それではまた。
遥
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