上 下
51 / 67
最終章/二人でいる事

第51話 バイト?

しおりを挟む
 ゴールデンウイーク前半のSARA
 GWは夜の営業はお休みとし、前半だけランチ営業する事になりました。
 みんな何処かへ出掛けるだろうからと暇を覚悟で開けたのですが、予想に反して大盛況となっているのには理由がありました。


 それは・・・

 デッキのテーブル席はご近所の奥様たちで賑わっており、ランチセットを運んでいるのは貴史でした。

 何事も恰好から入るタイプらしく、ギャルソンスタイルで行ったり来たりしながら奥様達のお相手をしています。
 大手企業の休みは長く、暇を持て余しているなら手伝ってと香織に頼まれると、すぐさまネットで男性用のロングカフェエプロンを購入していたのでした。しかも洗い替えにと3枚も。
 白いシャツに黒のパンツ、腰に巻いたカフェエプロン、スタイルが良いので何を着てもよく似合う。
 すっかり馴染んで注文を受けるのもプレートを運ぶのもサマになり過ぎなのだ。

 ワンコの散歩で通りかかった奥様がデッキの上で給仕する貴史を見て「イケメン男性が働いている」とご近所さんに話すと住宅街に瞬く間に広がったのでした。

 店内ではカウンターの向こうで香織がオーダーを捌くために汗だくになり苦笑していた。

「凄いな。貴ちゃんの人気は・・・」

 暇を持て余してランチを食べに来ていた松ちゃんと、遠野も呆れています。

「年齢に関係なくイケメンは最強ですな」
 二人のオヤジはため息を付く。

 奥様達は香織の旦那様だと知っても関係ないのです。
 目の保養になればそれで(笑)

 午後2時、やっとランチタイムが終了した。

「ふぅ。。。」

 3時間でこんなに忙しく動いたことは無かった。
 後片付けを何とか終えるとデッキでぐったりしている香織に貴史が「お疲れ」と言いながら缶ビールを差し出す。
 一口飲むと、二人同時にため息を付いた。

「貴史さんのせいです」

 香織が手の平で火照った顔を仰いでいる。

「手伝えって言ったのは君だからね」

 流石の貴史もバテていた。

「お互いにあと3日持つと思う?」
「どうだろう?香織は厨房で作りっ放しだからきついんじゃない?」
「カウンターに一人ドリンク作る人がほしいくらいだわ」
「明日もこんなに忙しいとは思えないけど、遊び感覚で手伝いに来てくれそうな・・・あの子たちに声を掛けてみようかしら?でも、受験生だしね。。。。」

そこへスクーターに二人乗りした和宏と真理がやって来た。

「ありゃ、二人ともお疲れだなぁ」

 和宏が労うように声を掛けて来た。

「かお姉はもうご臨終です、、、」

 自らそう言うと背もたれに首を乗せてぐったりとする。
 真理が慌てて駆け寄り心配そうに上から顔を覗いてきたので、「あはは」と力なく笑ってみせた。

「ところで二人はどうしたの?」

 貴史の問いかけに真理が答えた。

「塾の帰りに駅前で松爺に会ったんです。そしたらかおちゃんと須藤さんがバテてるから激励してやったらどうかって言われて、かず君にお願いして様子を見に来たの」
 傍らで和宏がうん、うん。と頷いています。

「わざわざありがとうね。かおちゃんは嬉しいよー」

 香織は真理に抱き付き泣き真似をした。

「相変わらず大げさな」

「和宏君、見てないからそんなことが言えるんだよ。香織は3時間ずっと料理し続けていたんですから」

 和宏の言葉に反論してくれる貴史は優しいとまた泣き真似をする香織。
 やれやれと言った顔をする和宏の横で真理は暫く考え、

「かおちゃん、あたし手伝う!」

 と声を上げた。ビックリして真理の顔を見ると目を輝かせ、やる気満々とガッツポーズを取っている。

「いやいや、真理ちゃん受験で塾もあるからダメだよ」
 香織が焦りながら断る。

「明日から塾はお休みなんです。それに数日だったら勉強の気分転換になるし。アルバイトってしてみたかったんです。だからやらせてください!」

「おいおい、真理ちゃん俺との約束は?」
 今度は和宏が慌て出す。

「そうだよ、真理ちゃん。かず君と約束もあるでしょう?」
「塾の合間の貴重な休みでしょう?」
 香織と貴史もアタフタし始めた。

そんな3人を気にも留めず、
「いえ、いいんです。かず君とはまだまだ会えるし、夏休みだったらもう勉強漬けで自由が利かくなるんですから。今の内に経験しときたいんです」

 真理ちゃん。。。と気落ちしながら和宏がつぶやく。

「良いですよね、かず君?」と上目使いで問われ、暫く真理の顔を見つめてから諦めた様に仕方ねえなぁ。と彼女の頭をポンポンと叩いたのでした。

 そう云う訳で明日からの3日間、真理が手伝ってくれる事となり、内心ありがたやと手を合わせる香織と貴史でありました。

 しかし・・・GW真っ只中で少しはお客が減るかと思いきや、真理が手伝っていると聞いたJK達も友人を連れてきたりで返って忙しさは増してしまった。
 それでも真理に漏れなく付いてきた和弘までもが貴史から借りたギャルソン姿で登場し、昔のバイト経験を活かし  ドリンクを担当してくれたお陰で香織は料理に集中できた。ホールの方はマダムキラーの貴史と可愛い真理で上手く回って行ったのでした。

 怒涛の3日間が終わりました。
 真理がいい経験が出来たと喜び、バイト代を嬉しそうにしまうと和宏のスクーターで帰って行った。

 自宅に帰った香織と貴史は来年はしっかり休もうと改めて思った次第で。。。

 風呂上がりに売り上げ計算をして香織は驚いています。
 貴史も覗き込むと「凄いね、頑張った」と香織の頭を撫で褒めてくれた。

「貴史さんのお陰です、休みなのに働かせちゃってごめんなさい」

「いいんだよ、結構楽しませてもらったから」

「ホントにありがとう♪
 でね、これからイケメンのバイト君探してランチ営業始めたら良いかもなんて思ったりして」

 嬉しそうに言う香織を見て貴史は

「却下!!!」

と即座に返答しながら香織の頭にヘッドロックを掛ける(笑)

「いっ、痛いって~~~」

「僕のいないところでバイト君と2人なんて許されると思ってる訳?」

 香織は冗談で言ってみたものの、大事なことを忘れていた。
 そうです、独占欲が強くてやきもち妬きの貴史だと云う事を。

「あ~ん、ごめんなさーい。痛いから許して・・・」

 貴史は笑いながら腕を外すと、悪そうな顔で覗き込む。

「で、僕のバイト代は?」

「へっ?」

「カラダで返して貰うけど、流石に今夜は・・・疲れたから早く寝よう」

 ですよね、もうお互いボロボロで筋肉痛ですから。

 そしてベッドに横になると直ぐに寝落ちし、翌朝まで爆睡する二人でした。



しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~

泉南佳那
恋愛
 イケメンカリスマ美容師と内気で地味な書店員との、甘々溺愛ストーリーです!  どうぞお楽しみいただけますように。 〈あらすじ〉  加藤優紀は、現在、25歳の書店員。  東京の中心部ながら、昭和味たっぷりの裏町に位置する「高木書店」という名の本屋を、祖母とふたりで切り盛りしている。  彼女が高木書店で働きはじめたのは、3年ほど前から。  短大卒業後、不動産会社で営業事務をしていたが、同期の、親会社の重役令嬢からいじめに近い嫌がらせを受け、逃げるように会社を辞めた過去があった。  そのことは優紀の心に小さいながらも深い傷をつけた。  人付き合いを恐れるようになった優紀は、それ以来、つぶれかけの本屋で人の目につかない質素な生活に安んじていた。  一方、高木書店の目と鼻の先に、優紀の兄の幼なじみで、大企業の社長令息にしてカリスマ美容師の香坂玲伊が〈リインカネーション〉という総合ビューティーサロンを経営していた。  玲伊は優紀より4歳年上の29歳。  優紀も、兄とともに玲伊と一緒に遊んだ幼なじみであった。  店が近いこともあり、玲伊はしょっちゅう、優紀の本屋に顔を出していた。    子供のころから、かっこよくて優しかった玲伊は、優紀の初恋の人。  その気持ちは今もまったく変わっていなかったが、しがない書店員の自分が、カリスマ美容師にして御曹司の彼に釣り合うはずがないと、その恋心に蓋をしていた。  そんなある日、優紀は玲伊に「自分の店に来て」言われる。  優紀が〈リインカネーション〉を訪れると、人気のファッション誌『KALEN』の編集者が待っていた。  そして「シンデレラ・プロジェクト」のモデルをしてほしいと依頼される。 「シンデレラ・プロジェクト」とは、玲伊の店の1周年記念の企画で、〈リインカネーション〉のすべての施設を使い、2~3カ月でモデルの女性を美しく変身させ、それを雑誌の連載記事として掲載するというもの。  優紀は固辞したが、玲伊の熱心な誘いに負け、最終的に引き受けることとなる。  はじめての経験に戸惑いながらも、超一流の施術に心が満たされていく優紀。  そして、玲伊への恋心はいっそう募ってゆく。  玲伊はとても優しいが、それは親友の妹だから。  そんな切ない気持ちを抱えていた。  プロジェクトがはじまり、ひと月が過ぎた。  書店の仕事と〈リインカネーション〉の施術という二重生活に慣れてきた矢先、大問題が発生する。  突然、編集部に上層部から横やりが入り、優紀は「シンデレラ・プロジェクト」のモデルを下ろされることになった。  残念に思いながらも、やはり夢でしかなかったのだとあきらめる優紀だったが、そんなとき、玲伊から呼び出しを受けて……

処理中です...