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進展

第21話 清算①

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貴史は会社にいる。

「部長クリスマスの企画順調です」

と部長補佐が報告書を持ってきた。
補佐である彼が優秀な為、最近は自分の出番も少なくなって来た。

「皆、ご苦労様。10月に入るとクリスマスとニューイヤー商戦で新製品の方も同時に始まる。今日はこれで終わりにして週末はゆっくり休んで英気を養って欲しい」

「よっしゃー!飲み行きますか!」

若い連中は残業続きで疲れ切った顔をしていたのに一気に盛り上がりを見せた。

「おいおい、あんまり羽目を外すなよ。それから家族持ちは早く帰って奥さんと子供にサービスするように」

貴史の言葉に

「子供の顔見るの何日ぶりだ?帰っても寝顔しか見れないからな。久しぶりに一緒に風呂入れるか電話しとこう」

「うちもだー」

今までの緊張が解けて笑顔が広がってゆく。

「部長はあの綺麗な彼女さんとデートですか?」

何時か昼休みに出くわした部下が冷やかしてきた。

「まぁ、そんなところだな」

貴史の返答にやっぱり本当だったんだとか羨ましいとか周りが騒ぐ中、スマホを取り出しアドレスから『前島』をタップした。
【今夜時間あるかな?】とメッセージを送る。

メッセージを送って間もなく
【いつものホテルに7時】と返信が来た。

『前島』と云うのはセフレの彼女の名前だった。

帰り支度を済ませ貴史は会社を後にした。
待ち合わせのホテルに向かいながら貴史は考えていた。

香織が自分の事を好きだとも言ってくれたが、返事をまっているのは香織の方かもしれない。
真中との話を聞いて、事故によって子供が出来なくなってしまった自分でも良いのかと思い悩んで返事をしかねているのか。

俺はどうすればいい?

気持ちは決まったはずだ。
香織の全てを受け止めるためにまずやるべき事があるよな。

今夜セフレの解消をする。
それを告げてもセフレである薫理には彼氏がいるのだから気にはしないだろう。
元々そういう約束で2年間続いてきたのだから』


待ち合わせのホテルに10分前に到着した。
ロビーのソファに彼女の姿を見つけホテル内のレストランへ二人で向かう。

「久しぶりね、元気だった?」

「ああ、それなりにね」

「デートで忙しかったのかしら、こっちには全然お呼びが無かったもの。」

「そう云う訳ではないんだけどね」

「ふーん。」

「今日は話があって来た」

「もうあたしに飽きた?」

「大切したいと想う人が出来たんだ」

「そうなのね、悪い人。じゃぁ今夜が最後って事ね、部屋は取ってあるわ」

と部屋のキーをテーブルに置く。

「いや、話をして食事が済んだら帰るつもりだよ」

「それは無いわ、恥をかかせないでよ。貴方は紳士でしょう」

貴史は上目使いをして見つめてくる彼女の顔を見て

「分かった」と応えた。

食事を終えて二人は恋人同士のようにエレベーターに乗り部屋へ入って行く。

ベッドの中で彼女はいつもより積極的だった。

セフレ関係の解消を告げたせいなのか、それとも彼氏と上手く行ってないのか・・・
貴史の上にまたがり腰を振っている。
貴史は彼女の腰をつかみ下から彼女の姿を眺めていた。

どうしても香織の顔がちらついて集中できない。

なのに暫く関係を持っていなかった下半身は気持ちとは別のようだ。
彼女の中を掻きまわすように動いている。

彼女の喘ぎ声で甘くハスキーな声香織の声を想像してしまう。
それを打ち消すかの如く下から欲の塊を突き上げた。

今俺の上で乱れている女の顔を見ながらはイケそうにない。

そう思った貴史は起き上がり彼女の身体を反転し後ろから攻めた。
バックなら彼女の顔を見ないで済む。

『最低だな俺は』

彼女の「もっと。」
という声にさらに激しく打ち付け果てた。

シャワーを浴び着替えているとまだベッドに残っていた彼女が

「これでお終いなのね、貴方とのセックスは好きだったけど、最近は上の空って感じだったもの」

「悪かった・・・」

「本命を見つけちゃうとダメね、その人に飽きたらまた連絡を頂戴」

「ありがとう。でも、もう連絡する事は無いと思うよ。その女性ひとを愛しているから」

「ふふ、お幸せに。」

貴史は彼女背を向けたまま手を振って静かにドアを閉めた。
廊下を歩きながら内ポットからスマホ取り出すとアドレスから『前島』の名前を削除した。
 

香織の顔が見たい。

香織の声が聴きたい。


貴史の足は自然と香織のいるSARAへと向かっていた。

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