末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

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最終章

7/ 新たな命

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「んっ、あっ、あっ。。。」
「リディ」
 
 妖精宮 二人の寝室にリディアの甘い声が響く。

「レニー、ダメ………」
「駄目なことなどある訳ないであろう」

 二十歳を過ぎた番は、細身ではあるが出るところが出た女性らしい身体つきになり、毎日のように抱いても飽きる事はない。

「あっ、レニーもう………あっ、あん」

 レオナルドは組敷いていたリディアの体を反転し、後ろから責める。
 何も知らなかった少女が自分に支配される喜びに嬌声をあげる。
 彼は満足気に微笑むが、その余裕もすぐに消えてしまう。
 リディアの中が深く打ち付ける彼のモノに絡みつき締め付け、理性を失わせるのだ。

「っ………」

 ぐちゅぐちゅと蜜の音と二人の体が具浸かり合う音が淫靡に響き渡る。

「レニー、もうダメ、一緒にっ」
「ああ、リディ一緒にこう」

 レオナルドが何度か激しく杭を打ち突けリディアの腰を力強く引き寄せた。

「あぁぁぁー」

 ドクッドクッと脈打ちながらレオナルドの魔力を含む精がリデアの中に溢れんばかりに注ががれていく。

 ぺたりとシーツにへたり込んむリディアの背中を覆うようにレオナルドも倒れ込み彼女の背中に肌を密着させた。
 二人の汗が合わさった体の間で一つになった。


――もう幾度この小さな体の中に精を放って来たことか
 愛しい番は私のことを魅了してやまない
 これから百年、否、二百年ともに過ごしていのだ
 そのためには器を私の魔力満たし子を産んで貰わなくてはならない
 リディもオディーヌの子を見てから自分たちも早く出来れば良いと言っていた
 そのために私はいくらでもリディの中に精を注ぎ己の魔力を流していく
 ああ、愛しいリディ……こんなにも可愛らしい私の番
 子が出来れば、暫くは君は赤子に独占されてしまうだろう
 私にとっては辛い事であるに違いない
 それでも私たちの人生は長い
 これからもずっと一緒だ、愛している。


*ー*ー*


「おめでとうございます。ご懐妊でございます」

 ここ数日体調を崩しトラフィス医師の診察を受けに行っていたリディアは、医師の言葉に一瞬呼吸をするのも忘れる程驚き、大きく見開いていた瞳を閉じ深呼吸をする。
 数日前に二十一の誕生日を祝ってもらい、少し羽目を外し過ぎてしまった。ムカつきを覚えるのは暴飲暴食をしてしまったからだと勝手に判断をしていたので、トラフィスの言葉は青天霹靂であった。
 器が出来、魔力が溜まり始めていると言われてから一年、リディアが心から望んでいた言葉を聞くことが出来たのだ。

 息を大きく吐く同時に涙が頬を伝った。

 人族であるリディアが竜人族の子を成す為には、まず子宮に魔力を貯めるための器を作らなくてならない。魔力を持たないリディアはレオナルドの強い魔力に耐性を付ける為に神竜の秘薬と言われるレオナルドの血を飲んだ。
 だがしかし、獣人たちには万能薬と言われる竜の血は人には害になるもので、リディアは生死を彷徨う事となってしまった。
 リディの母国オーレアは精霊の国である。
 生死を彷徨うリディアを救ったのは母国の精霊である水の精霊であった。
 愛し子であるリディアを助け、竜の血と同じ効能があるという精霊の秘薬を授けてくれた。
 そのお陰で予想よりも早く器が作られ、魔力も溜まり始めていた。
 そして数年は掛ると思われていた器が一年で満たされ、レオナルドとの子を授かることが出来たのだ。

「おめでとうございます、リディア様」

 リディアに付き添い後ろに控えていた侍女のリールーも涙を溜めながら主の懐妊を心から喜ぶ。

「えっ、ああ、リールー。わたし、赤ちゃんが出来たのね」
「そうでございますよ」
「……。先生、ありがとうございます。リールーも……ありがとう」
「良かったですな。精霊殿が仰った通り、この秘薬はお子が生まれるまでお休みし、出産後また飲むと致しましょう」
「はい」

 トラフィスは精霊がリディアの為に作った秘薬を保管庫の中にしまい鍵を掛けた。
 次に飲むのは子が生まれてからだ。
 魔力に耐性が無いリディアの体にレオナルドの強すぎる魔力を馴染ませるために飲み始めた精霊の秘薬は、無事出産を終えた後に飲むと、次の効果として神竜の化身である夫レオナルドと同じ時を生きることが出来るようになるのだ。
 神竜の化身であるレオナルドの寿命は普通の竜族の倍近くある。元々平均寿命が百五十歳近くある竜族。それさえも人族からしたら信じられないのに、その倍となると……。
 そして番が先に儚くなってしまうと残された伴侶の力は落ち、孤独で侘しい人生を長く送ることになる。中には狂ってしまう事もあるという。
 その為に神竜の化身である黒竜の番は同じ時間を生きることが出来るようにするのだった。


 懐妊の知らせを受けたレオナルドは、執務を放り出しリディアの元へ向かった。

「レニー」
「リディ、聞いたよ。ああ、何と言ったらよいか……」

 レオナルドの紫の瞳にも涙が滲んでいる。

「やっとですね」
「よく頑張ってくれた。ありがとうリディ、愛している」

 自室に戻りベッドに座っていたリディアの体を大きな体で包み込んだ。

「大事な子がいる身だ。これから無理はするな」
「はい、まだ安定期ではないので注意するようにとトラフィス様にも言われました」
「今だけではない、産まれるまでずっとだ」
「それは……」

「殿下、妊婦が安定期に入りましたら、丈夫なお子を産むために適度な運動も必要なんですよ」

 リールーがレオナルドの過保護っぷりが今以上になる事を予想しながら苦笑して言う。

「そうよ、リールーの言う通りです。オディーヌ様も大きなお腹で公務をされていましたでしょう?」
「ああ、確かに。しかし、オディーヌは獣族だ。元々カラダは頑丈なのだ。だが、人族は弱いと聞いている。リディのこの小さな体に負担が掛かると思うと……」

「大丈夫でございますよ。リディア様のお母様のアリスティア王妃様は五人のお子さんを産んでおられるのですから」

「あは、そういえばそうね。お母様は私を含め五人の子持ちだわ」
 そう言いながらリディアが笑うが、レオナルドは納得できないでいる。

「兎に角、無理は禁物だ。分かったなリディ」
 リディアは心配で堪らないという表情のレオナルドを見て肩を竦め小さく「はい」と返事をした。

ーー私の中に芽生えた小さな命。
 この子はどんな姿で産まれて来てくれのでしょうか
 鱗はあるのかしら?
 残念ながら私は人族だから、サミー様とオディーヌ様のお子のように可愛い耳も尻尾もないけれど
 今から楽しみで仕方がありません。
 精霊様、どうか無事に出産できるように見守っていて下さい。

 その日、レオナルドは執務室に戻ることなく、リディアの傍から離れる事はなかった。
 安定期に入る迄妖精妃の懐妊は内密にという事であったが、一週間後にはすれ違う人達から「おめでとうございます」と声を掛けられる二人。
 いったいどこから洩れたのか。

 リディアは懐妊後、穏やかな時を過ごしていた。
 安定期に入ってからはレオナルドの執務も少し手伝い、その他の時間は王太子妃の部屋で過ごしている。
 執務の合間に何度も様子を見に来るレオナルドを見ていると、仕事を手伝わなくとも執務室にいた方が良いのではないだろうかと思ってしまう程、頻繁なのである。

 時折、オディーヌがアンジェと、二歳となった息子アレフを伴ってリディアの様子を見に来てくれていた。
 先輩ママにいろいろ教わりながら出産に向けて準備をしているリディアである。
 そのオディーヌも次の子が欲しいと言っているので、三、四年後は王宮内も賑やかになるに違いない。
 リディアは少しだけ大きくなってきたお腹をさすりなら子供たちが中庭で遊び、走り回る姿を想像して頬を緩ませるのだった。


 そして、臨月を迎え…………



**********
※お読み下さりありがとうございます。
 やっとここまで。
 次回は明日夜に更新、本編最終話となります。
 
  
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