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閑話*Ⅱ
執務室にて&ファビアンの独り言
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※閑話なのでお昼休みにフライング投稿させて頂きます。
本編第三章は夜7時ちょい過ぎにアップいたします。
**********
リディアの体が元に戻り半年近く時が過ぎていた。
リディアは王宮にある王太子執務室にいる。
レオナルドが執務の際は必ずこの部屋で一緒に時を過ごしており、彼の隣に椅子を置き書類の整理をしている。
幼かった姿の時のように、執務中も愛しい番を自分の膝の上に乗せたまま仕事をするレオナルドにリディアは耐えきれず、何でもいいから仕事をさせて欲しいとお願いし、今に至る。
仕事と言っても、レオナルドが確認しサインをした書類を、それぞれ仕分けし、各部署のネームを貼った箱に振り分けるという単純な作業だった。
以前は補佐で側近のファビアンが、サインされた書類が無造作に積まれているのを後から仕訳けていたので、大分楽になったと喜んでいる。
レオナルドと言えば、隣に座るリディアに書類を渡す度に頭を撫でたり手に口づけたり、時には唇まで奪いながらの執務で、リディア本人を呆れさせていた。
「リディア妃のお陰で以前にも増して仕事が早くなり、カーニヴァル宰相殿も喜んでいますよ」
「えっホント?嬉しいわ」
こんな単純な作業でも役に立てていると言われれば嬉しくなってしまう。
竜王国でも王妃や王太子妃は人族の王族の妃たちと同じように、公務だったり、お茶会を開いたりといった仕事はある。しかし、番に関しては夫が表に出したがらないという事もあって免除されていた。
そうは言ってもリディアは人族。母である王妃のように王妃にしかできない公務や孤児院を慰問することは当然の事だという思いがあった。
今の自分の体にもすっかり慣れたので、王太子妃としての仕事もやらせて欲しいとレオナルドには伝えてあるのだが。
「本当ならリディは妖精宮から出したくないのだ。私が離れるのが嫌だからこうして王宮に連れてきている。それなのに君は私から離れて仕事したいというのか?」
「だって……私だって王太子妃ですもの。竜王国のために何かしらお役に立ちたいの」
「リディ……君が番として私の傍にこうしていてくれる事が、この国のためでもあるのだよ」
レオナルドが隣の席からリディアを抱き上げ自分の膝の上に乗せる。
「ん、もう。妖精の国に行くまでは王女教育でいろいろ学んだのよ。お母様やお姉さまたちと一緒に、公務に出たり孤児院へ行ったりしてたんですもの」
「しかしなあ……」
こんな遣り取りの繰り返しだった。
「レオ、何とかスケジュールの都合を付けるから、まずはお一つ妖精妃殿の願いを叶えて差し上げてはどうだ?そうだな、妃にはやっぱり孤児院への慰問が良いと思う」
「ファビアン、そうよね?お願いレニー。私ね、獣人の子供たちと触れ合いたいわ」
レオナルドはリディアの生き生きとをした顔を見つめながら考えていた。
「分かった。母上に慰問の事は相談してみよう。但し、慰問には私も同行するというのが条件だ」
「ええ、いいわ。レニーと一緒も嬉しいもの」
アクアマリン色の瞳を輝かせて喜ぶリディアを見ていると、この笑顔が見れるのなら仕方がないと妥協するレオナルドであった。
「良かったですね、リディア妃」
「ありがとう、ファビアン。貴方のお陰だわ」
「いえ、いえ」
照れるファビアンを横目で睨むレオナルドの視線を感じ、彼は急いで自分の作業に戻った。
◇◆◇ファビアン
妖精妃リディア様は本当に美しい。
彼女は王太子レオナルドが他国で見つけて来た「番」だ。
最初にリディア様を見た時、何て小さく可愛い生き物だろうかと思った。
妖精二体と共に竜王国へ嫁いできた王女は、彼女自身も人族ではなく妖精なのではと思ってしまう程可愛いく思えた。
俺も大柄な方だが、それよりも少し大きなレオに抱かれている姿はまるで親子の様に見えた。
チキショー、こんな可愛い番を見つけてきやがって!
と思いながらも、番以外は妃にしないと言っていたレオにやっと春が訪れ俺は本当に嬉しく思っているのだ。
それにしても嫁いで来た時は六才で、婚姻後蜜月が終わって現れた時は十歳の少女になっていて……
妖精の魔法が掛けられていただと?そんな話は聞いていなかった。
ふん、お偉いさんたちは知っていたんだろうな。
幼なじみである俺に秘密にしていたことが腹立たしい。
その上、三か月後には十六才の年相応になったというのか!
信じられない。
精霊の国と言われるオーレア王国の王女は本当に人族なのか?
彼女は毎日レオと一緒に執務室にやってくる。
手伝いがしたいと言い出し、今は簡単な仕事をお願いしているところだ。
単純作業も嫌がらず、ニコニコと楽しそうに手を動かしている。
彼女の秘密を教えてくれなかった腹いせもあり、レオを揶揄い楽しんでいる俺。
完璧なアイツの顔がだらしなく崩れるのは番を見る時だけだ。
しかし、最近それを見るのも飽きて来た。
何せ、執務室にいる間は常にそうなのだから。
はぁー、バカらしい。
そう思いながらも、リディア妃に笑顔を向けられると俺もデレた顔になってしまう。
愛らしく、眩しすぎるリディア妃に今日も癒されているのだった。
ああ、早く俺の番も現れてくれ……。
俺も二十八になり、両親ともに縁談を進めてくる。
でもレオを見ていると番を見つけたくなってしまうのだった。
本編第三章は夜7時ちょい過ぎにアップいたします。
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リディアの体が元に戻り半年近く時が過ぎていた。
リディアは王宮にある王太子執務室にいる。
レオナルドが執務の際は必ずこの部屋で一緒に時を過ごしており、彼の隣に椅子を置き書類の整理をしている。
幼かった姿の時のように、執務中も愛しい番を自分の膝の上に乗せたまま仕事をするレオナルドにリディアは耐えきれず、何でもいいから仕事をさせて欲しいとお願いし、今に至る。
仕事と言っても、レオナルドが確認しサインをした書類を、それぞれ仕分けし、各部署のネームを貼った箱に振り分けるという単純な作業だった。
以前は補佐で側近のファビアンが、サインされた書類が無造作に積まれているのを後から仕訳けていたので、大分楽になったと喜んでいる。
レオナルドと言えば、隣に座るリディアに書類を渡す度に頭を撫でたり手に口づけたり、時には唇まで奪いながらの執務で、リディア本人を呆れさせていた。
「リディア妃のお陰で以前にも増して仕事が早くなり、カーニヴァル宰相殿も喜んでいますよ」
「えっホント?嬉しいわ」
こんな単純な作業でも役に立てていると言われれば嬉しくなってしまう。
竜王国でも王妃や王太子妃は人族の王族の妃たちと同じように、公務だったり、お茶会を開いたりといった仕事はある。しかし、番に関しては夫が表に出したがらないという事もあって免除されていた。
そうは言ってもリディアは人族。母である王妃のように王妃にしかできない公務や孤児院を慰問することは当然の事だという思いがあった。
今の自分の体にもすっかり慣れたので、王太子妃としての仕事もやらせて欲しいとレオナルドには伝えてあるのだが。
「本当ならリディは妖精宮から出したくないのだ。私が離れるのが嫌だからこうして王宮に連れてきている。それなのに君は私から離れて仕事したいというのか?」
「だって……私だって王太子妃ですもの。竜王国のために何かしらお役に立ちたいの」
「リディ……君が番として私の傍にこうしていてくれる事が、この国のためでもあるのだよ」
レオナルドが隣の席からリディアを抱き上げ自分の膝の上に乗せる。
「ん、もう。妖精の国に行くまでは王女教育でいろいろ学んだのよ。お母様やお姉さまたちと一緒に、公務に出たり孤児院へ行ったりしてたんですもの」
「しかしなあ……」
こんな遣り取りの繰り返しだった。
「レオ、何とかスケジュールの都合を付けるから、まずはお一つ妖精妃殿の願いを叶えて差し上げてはどうだ?そうだな、妃にはやっぱり孤児院への慰問が良いと思う」
「ファビアン、そうよね?お願いレニー。私ね、獣人の子供たちと触れ合いたいわ」
レオナルドはリディアの生き生きとをした顔を見つめながら考えていた。
「分かった。母上に慰問の事は相談してみよう。但し、慰問には私も同行するというのが条件だ」
「ええ、いいわ。レニーと一緒も嬉しいもの」
アクアマリン色の瞳を輝かせて喜ぶリディアを見ていると、この笑顔が見れるのなら仕方がないと妥協するレオナルドであった。
「良かったですね、リディア妃」
「ありがとう、ファビアン。貴方のお陰だわ」
「いえ、いえ」
照れるファビアンを横目で睨むレオナルドの視線を感じ、彼は急いで自分の作業に戻った。
◇◆◇ファビアン
妖精妃リディア様は本当に美しい。
彼女は王太子レオナルドが他国で見つけて来た「番」だ。
最初にリディア様を見た時、何て小さく可愛い生き物だろうかと思った。
妖精二体と共に竜王国へ嫁いできた王女は、彼女自身も人族ではなく妖精なのではと思ってしまう程可愛いく思えた。
俺も大柄な方だが、それよりも少し大きなレオに抱かれている姿はまるで親子の様に見えた。
チキショー、こんな可愛い番を見つけてきやがって!
と思いながらも、番以外は妃にしないと言っていたレオにやっと春が訪れ俺は本当に嬉しく思っているのだ。
それにしても嫁いで来た時は六才で、婚姻後蜜月が終わって現れた時は十歳の少女になっていて……
妖精の魔法が掛けられていただと?そんな話は聞いていなかった。
ふん、お偉いさんたちは知っていたんだろうな。
幼なじみである俺に秘密にしていたことが腹立たしい。
その上、三か月後には十六才の年相応になったというのか!
信じられない。
精霊の国と言われるオーレア王国の王女は本当に人族なのか?
彼女は毎日レオと一緒に執務室にやってくる。
手伝いがしたいと言い出し、今は簡単な仕事をお願いしているところだ。
単純作業も嫌がらず、ニコニコと楽しそうに手を動かしている。
彼女の秘密を教えてくれなかった腹いせもあり、レオを揶揄い楽しんでいる俺。
完璧なアイツの顔がだらしなく崩れるのは番を見る時だけだ。
しかし、最近それを見るのも飽きて来た。
何せ、執務室にいる間は常にそうなのだから。
はぁー、バカらしい。
そう思いながらも、リディア妃に笑顔を向けられると俺もデレた顔になってしまう。
愛らしく、眩しすぎるリディア妃に今日も癒されているのだった。
ああ、早く俺の番も現れてくれ……。
俺も二十八になり、両親ともに縁談を進めてくる。
でもレオを見ていると番を見つけたくなってしまうのだった。
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