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第二章リディア
12/ リディアのお願いと戸惑い
しおりを挟む「逃げても無駄だ、リディア」
じわりじわりとレオナルドがリディアをソファの上で追い詰める。
「駄目だって言ってるのに!」
「その選択肢はない」
「だって昨日までは違うんだもん」
リデアが後ずさりするようにソファの上で身体をずらす。
レオナルドは片手で彼女を押さえつけ、座面に張り付けられてもがくリディアを、上から妖しい目つきで見下ろしている。
空いた手で、彼女のワンピースの前ボタンを器用に外して―――
「レニー、ダメだってば!」
「ダメではない。いつもと同じなのだから恥ずかしがるな」
「ああ、脱がせちゃだめ……」
二人はソファの上である攻防を繰り広げていた。
彼女の服のボタンは外され、片方の肩が露わになる。
その肌に手を滑らせて、服を脱がそうとするレオナルド。
十六才の姿になったリディアの体が暴かれていく……
言って置くが、決して嫌がるリディアを、手籠めにしようとしている訳ではない。
実は、リディアはこの体になって初めてのお風呂タイムを拒否したのだ。
そんな彼女をレオナルドが何とかして浴室に連れて行こうとしている最中なのである。
リディアは一人で入ると言って、頑として譲らない。
根負けして諦めようかとレオナルドは考えたが、ここで一緒に入ること止めたらそのまま断り続けるのではないかと思え、強硬手段に出ているところなのだ。
「面倒だからここで脱がせて連れていくぞ」
「ダメだってば!」
必死に抵抗するもその努力は空しく、あっと言う間にワンピースは脱がされてしまった。
体が成長し、多少は抵抗できるかと思っていたリディアだったが、大きな体のレオナルドに敵う訳もなく、服を脱がされ膝を抱えて体を丸めている。
「もう、レニーの意地悪」
涙声だった。
「リディ、恥ずかしがるな。君の体は池から上がって、寝室に運んだ時に全部見ているんだ。今更だろう?」
「だって、だって」
「ほら、おいで」
レオナルドが両手を広げて見せるが、彼女は微動だにしない。
「リディ?」
「……なら、お願いを聞いてくれる?」
ほんの少し顔を上げた涙目のリディアは、レオナルドの事を見上げる。
「何だい、番の世話以外で、愛しいリディのお願いなら何でも聞くぞ」
リディアは少し考える。
「だったら、明日レニーが竜になったところが見たい」
「……」
「竜になってくれるって約束してくれたら一緒にお風呂に入る」
「お願いとはそれか?分かった。でも竜になるだけだ。飛ぶのは無理だぞ、大騒ぎになるからな」
前は何かの式典でないと駄目だと言ったのに、あっさりと聞き入れてくれ驚くリディア。
「ほ、ホント?ホントに良いの?」
リディアの顔が明るさを取り戻し、涙目になっていた瞳が輝く。
「ああ、約束する。だからおいで」
ウンと頷いて、両手を差し出すリディアを、レオナルドが優しく抱き上げ浴室へと向かった。
なぜ竜になって欲しいと言い出したかというと……
昼食を終えて二人で微睡んでいる時の事だった。
突然リディアが竜の姿を見たいと言い出したのだった。
レオナルドは魔力の調整が効かなくなると勝手に変化してしまっていたが、今は番を傍に置く事により落ち着いている。本来は国を挙げての式典でしかその姿を公に見せる事は無いのだ。
「そんなー、レニーが竜になったら乗せて貰って、空を飛んでみたかったのに」
「それはやめた方が良い。落ちたら死ぬぞ」
「でも竜の姿のレニーが見たいの」
「式典があるまで諦めろ」
「……つまんないの」
そんな会話がされていたのだった。
――ぽちゃん――
何だかんだとひと悶着あったが、リディアはいつもの位置、湯船の中でレオナルドの胡坐の上に座っていた。
女らしくなった体が恥ずかしくて、落ち着かない。
この体になったら、そういう事がしたいと言っていた。
――レニーの赤ちゃん――
「私たちの子供か?私は竜の血が濃いゆえに、簡単には子供出来ないぞ」
「そうなの?」
「ああ、血が濃い上に魔力も強いからな。番が私の魔力を受け取り、それが少しずつ体の中に蓄積していって、満ちた時に子が出来ると言われているのだ。婆様の場合は器が既にあったから、すぐに子が出来たけどな」
「えっ、器?レニーの魔力ってどうやって受け取るの?」
振り向きながらリディアが聞いて来ると、レオナルドはニヤリと笑って彼女に口づける。
「ん、もう、大事な話をしてるのに何でキスをするの?」
「魔力を授ける方法を聞いたのはリディであろう?」
「えっ?」
「こうして口づけを交わし私の魔力が入った唾液をリディが自然と飲み込む。僅かだが魔力は流れる」
「ええ?」
「しかし、リディには体の中に魔力に対する耐性もない。その耐性を作りつつ魔力を貯める器も作らなくてはならない。だが、口づけだけでは器が出来るまでになん十年と掛かってしまう」
「なん十年?そんなに……」
「ああ、だが、もっと効率的に君の中に器を作り魔力を流し授ける方法がある」
「耐性ってどうやって作るの?」
「それは、いまはまだ少し早いが、もう暫くしたら教える」
「えー、知りたいわ。どうやって耐性と器を作るのか、教えて!」
気になって食い下がるリディアにレオナルドは、ふっと息を吐き、リディアのみぞ内辺りに置いていた手をすうっと下げていった。そして彼女の下腹部、下生えの上あたりに手を置く。
「ひゃっ!」
「神竜に伝わる秘薬を飲み、ここに私の精、子種を注ぐのだ。精液には唾液の数倍、否、数十倍それ以上の魔力があるからな」
「……」
「リディは閨教育は受けていたのか?」
「い、一応」
「そうか、今のリディはオーレア王国でも成人しておるのだな?」
「うん」
「しかし、今はまだ気持ちと体が同じになっておらぬ。リディの気持ちと体が一つになったら、秘薬を飲み始めてもらう。それから君のここに私の魔力の入った精を注ぐ」
レオナルドは彼女の下腹部を、お湯の中でトントンと叩いた。
「えっ、ああ、うん。その秘薬を飲まなかったら?」
「魔力負けをしてしまうし、器も出来ない。器が出来てくれば、リディにも魔力が備わる。それから魔力の器をいっぱいにしていくのだ」
「そうすれば、赤ちゃんが出来るのね」
「そういう事だ。今から待ち遠しいよ」
レオナルドは下腹部にあった手をリディの胸まで上げ、膨らんだ乳房を包み優しく揉む。
「あっ、何?」
「十歳の体の時にもここにこうして触れただろう?」
「う……ん」
「その時とは感じ方が違うと思わないか?」
十歳の体になった時、彼は幼児体型から僅かに膨らんだ胸に手を当て、まだ小さな乳首を指の腹で撫でられた。
その時はくすぐったいくらいにしか思わなかったリディアである。
緩く揉んでいた手を離すとお湯の中で、たぷんと乳房が揺れる。今度は揺れた乳房を下から掬い上げ、以前より大きくなったピンクの頂を指で軽く摘ままれた。
「あっ」
「どうした、痛かったか?」
「ううん、変な感じがしただけ……」
「そうか、体が私を受け入れる準備が出来始めたようだな。これが快感となって来るのだよ。今はまだその準備中と言ったところか」
「……」
「楽しみだな、リディ」
レオナルドの話を聞いて、リディアは閨と言う言葉が頭を過る。嫁いで来たからには当然子作りと言う使命が待っている。
離宮にいた姫君たちもレニーから子種を注がれることを望んでいたのだ。
彼女たちも、一度はレニーとそういう事をしていたにもかかわらず子供を授かる事は無かった。それはレオナルドが普通の竜人とは、違うからだったに違いない。
いろいろな事が頭を駆け巡っていく。
体が成人を迎えているという事は、私もその時が来たらレニーと閨を共にして、魔力を貰い子供を宿すということだ。
五年前初めて月のものが来た時、これは子を授かるための準備が始まったのだと言われた。
そして、十三才になって直ぐに、簡単な閨教育が始まった。
子を成す為には男性の生殖器を女性の性器で受け入れ、子種である精液を注ぐ。
そこまで教わっているが、具体的にどういう事をするのかはまでは習っていない。
リディアは自分の下腹に手を当てて、溜息を吐いた。
「どうした、のぼせたのか?」
「だ、大丈夫。いくら何でも毎回のぼせたりしないわ」
「あはは、そうか。でも、そろそろ上がろう」
いつも通りリディの体を拭き寝着を着せると、彼女の身体を抱き上げてベッドまで運ぶレオナルド。リディアは彼の首に手を回し掴まる。
昨日までは縦抱きだったのに、今は横抱きになっていた。
それでも楽々とリディアを抱えていくレオナルド。
腕を首に回すと、レオナルドの喉仏がふと目に入る。何故かそれに見とれてしまい、彼が何を話したのかは全く耳に入ってこなかった。
ベッドの中でも後ろから抱きかかえられている。
あんな話をしたせいか、ゾワゾワと気持ちが落ち着かず、なかなか眠れなかった。
――三年前の十三才の私。
あの頃、素敵な王子様に会えるのを夢見ていた。
今、それは叶い、皆が羨むような素敵な王子様が私の背中にいる。
胸のドキドキが止まらない。
どうしちゃったの?私――
肩越しにレオナルドの寝息を聞きながら、言い表せない気持ちを抱えるリディアであった。
**********
※お詫び
先日感想を下さった方に返信をさせて頂いた際、お名前を間違えて記載してしまいました。
失礼をしてしまった事をお詫びいたします。
申し訳ありませんでした。
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