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第二章リディア
11/ 誕生日の後に
しおりを挟む王太子妃に与えられた王宮の部屋で、二人は公務の間の休憩を取っている。
リディアが竜王国へ嫁いできて半年が過ぎ、数日後には十六歳の誕生日を迎えようとしていた。
「はぁ、もうすぐ十六才になっちゃう」
「十才の体になった時より背も伸びている気がするが」
バルコニーから外を眺めめ息を吐くリディアの頭の上に手を置き、レオナルドが自分の体と比べながら言った。
「うん、五才のカラダで池から戻って来た時は、一年経ってもほとんど変わらなかったけど」
「今回はたったの三ヶ月でも成長をしているという事だな」
「だとしてもまだ。。。実際とは五才も違うもの」
拗ねた様に言うリディアを抱き上げ、軽く口づけるレオナルド。
「成長をしているなら良いではないか。あと四年もすれば十五の体になる訳だろう?」
「そうだけど」
「リディ、焦らなくて良い。長生きをする私にとっては四年などどうってことは無い年月だ。四年後、精神年齢が十九でも見た目は十五なんて良いではないか」
レオナルドは笑いながら軽く流しているが、当事者であるリディアは浮かない顔をしている。
「それもどうかと思うけど……」
「あはは、私の番は可愛いな」
そして、体十一才、精神年齢十六歳の誕生日を王家の家族に祝ってもらった翌日。
いつもの様に池に入り、水中で口づけを交わした。
すると、あの時と同じように、リディアの体が発光して意識を失う。
レオナルドは待ちわびた瞬間に心を躍らせる。
彼女の身体を抱き上げ、池から上がると、迷うことなく寝室へと向かった。
ベッドに横たわるリディアの体まだ発光を続け、光に包まれたままだ。
前回よりも光に包まれている時間が長い。
「これはもしかしたら……」
暫く待つと、スーと光が消えて。
リディアは……?
目の前に横たわるリディアはレオナルドが期待していた以上に美しさを増し、女性らしい体つきになりつつあった。
もう、年相応と言って良いのではないだろうか。
急ぎ侍医のトラフィスとリールーを呼ぶ。
「レオ坊ちゃんの仰る通り、年相応と言って宜しいと思われます」
「そっ、そうか!」
トラフィスの言葉に嬉しさを隠しきれず、寝ているリディアのベッドの横に跪き、手を取ると何度も口づけるレオナルド。
「リディア様が妖精に連れ去られたお年を越されたのですね」
「リディが最後に見られていた年齢をか……」
優しく頬を撫でる。
「はい、私も実際に拝見した訳ではございませんが、十三のお誕生日に描かれたという肖像画よりも、だいぶ大人びてございます」
顔は少しだけ少しほっそりとしたが、体は丸みを帯びている。もちろん胸も乳房がはっきりと分かるほど、女性を感じる双丘となっていた。裸のままである下半身には薄っすらとした金色の下生えもある。
「リールー、また新しい服が必要だな」
「はいすぐにご用意いたします。とりあえず、オーレアから持ち込んだ物に、成長されたことを想定た下着とワンピースがあったと思います。すぐにお持ち致します」
「頼む」
リールーは急ぎ、下着と服を取りに走った。
「レオナルド殿下」
「何だ、トラフィス?」
トラフィスが、裸のリディアに上掛けをかけながら、レオナルドの名を呼ぶ。
「妖精妃殿は微妙なお体ですからな」
「どいう意味だ?」
「ご自分でお判りでしょうが」
レオナルドは成長したリディアの顔をもう一度見る。
「……あ、ああ、そうだな。分かっておる」
裸のリディアに「女」を感じているあろうレオナルドの心を見抜いて、トラフィスが釘を刺したのだった。
「番がこのようなお姿になってお傍にいるのは、レオ坊ちゃんもお辛いでしょうが、妃の気持ちが安定するまで我慢ですぞ」
「うむ」
焦る事は無い。
十三才から先は彼女のとっても未体験の年齢と体なのだ。ゆっくりと見守ろうとレオナルドは思った。
目の前に横たわるリディアは、幼児の時の見た目からも想像できた通り、愛らしさの中に美しさも備えた美少女だった。
自分の番が愛しくて堪らない。
眠りからまだ目覚めぬリディアの顔中に口づけをして、その夜レオナルドは美しく変化した少女を抱き寄せ眠りについた。
◇◆◇
翌朝……目を覚ましたリディアは、記憶の中にある一番新しい自分よりも、実年齢と思われる姿になっていたのを見て、感極まり泣き出してしまった。
「お父様とお母様にも見て頂きたいです」
「そうだな。さぞ喜ばれる事だろう。体の方はどうだ。痛いとか、気分が悪いとは無いか?」
「はい、何とも。でも少し節々に違和感がある様な気がするわ」
「そうか。その体に慣れるまで無理はするな」
レオナルドに抱き寄せられ、また背が伸びている自分に気付く。
それでも一九〇センチ以上ある彼の首よりも少し下、胸の位置だったことにクスリと笑ってしまう。
――皆、驚くであろうな――
レオナルド苦笑いをしていた。
――父上への報告が済んだら、リディアに合わせたドレスをまた新調しなくては。それに見合った宝石も必要だな。
着飾らせたら嘸かし美しい妃になるだろう。
ああ、誰にも見せたくはないな。自分一人だけで愛でていたい。
早く抱きたいものだ――
そう思った瞬間、彼のズボンの下でむくりと眠っていた息子が起き出してしまう。
――くっ、参ったな。宛がわれた姫たちには反応する事も無かったのに。やはり番というものは――
精神年齢が成人の十六才になっているとはいえ、まだ閨は早すぎる。トラフィスにも釘を刺されているのだ。彼女があのまま幼児の姿でも良いと思っていた自分を思い出せレオナルド――
自分に言い聞かせる。
徐々に力を漲らせつつあった息子が元の状態へと戻っていく。
「ふー」
レオナルドはため息を一つ吐いて、鏡の前で自分の姿を嬉しそうに見ているリディアの元へと戻って行った。
◇◆◇リディア
な、何と!私の体が年相応になりました!!!
十三の時にロロとララに攫われて、魔法を掛けられ五才児に姿になってしまった私。
自分は死んでしまったと思っていたの。でも妖精たちは違うって言った。いつか帰してあげるって。
でも一年も妖精の世界に暮らしていて、彼らにお母様たちの元へ帰してくれる様子はなかった……。
ある日、水の精霊様が来て、あるの者の願いを聞き、私を元の世界に帰してくるっていったの。そのある者というのがハーフエルフのリールーというお姉さんだった。
死んだと諦めていた私がリールーに連れられて戻り、家族は皆喜んでくれた。
でも、体は五才児のままだった。
いつ戻れるのか分からないまま、リールーはずっと私の傍にいてくれたの。
そして、一年経ったあの日。
私が池で魚たちと遊んでいたら、突然王子様が池に飛び込んできたのよ。
その王子様は竜王国の王太子レオナルド殿下。
とっても素敵な王子様で私の小さな胸はときめいたの。きっと私の初恋だと思う。
レオナルド殿下は私を自分の番だといい、求婚してきたの。こんな六才児の体の私によ。お父様が私の事情をお話しても、殿下の気持ちは変わらず、益々私に好意を示してきて……
番の事を色々聞いたけど、私には良く分からなかった。だけど、こんな私を一途に思ってくれるのが嬉しくて、殿下と一緒に竜王国へ行くことを決めたの。
竜王国の人達はみんな小さな花嫁である私の事を歓迎してくれ、レニーはひと時も私の傍から離れず優しくしてくれた。
私について来てしまったロロとララのために池も作ってくれたの。
そして、その池で私に変化が起きたの。
精霊の魔法の水で、精霊たちが掛けた魔法が徐々に解け始め、十才の体に戻り、そしてまた三か月後の今日、私は年相応の体に変化した。
自分では十三才までの体しか知らないから、ウエストが細くなりふくよかになった胸も丸みを帯びたお尻も何だか変な感じがするの。
でも、レニーはそんな私の体を見て、嬉しそうに微笑んでいた。
小さいままでも良いと言っていたけど、本当はそうじゃなかったのね。
私は急に不安になってきた。
だって、成人した体になったのよ。そしたらレニーは……。
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