末っ子第三王女は竜王殿下に溺愛される【本編完結】

文字の大きさ
上 下
14 / 60
第一章末っ子王女の婚姻

14/えっ、いきなり裸のお付き合いですか?

しおりを挟む
 レニーに抱かれたまま部屋に戻ってきた。

「大勢の中で疲れただろう?」
「ううん、ただ座っていただけだから大丈夫」
「そうか?」
「ねえ、綺麗な人たちが沢山並んで座っていたけど、あの方たちが離宮の姫様たち?」
「ああ、来ておったか」
「来ておったかって・・・みんなすごくきれいだったわ」

 多分、中身の自分と同じような年ごろの姫もいたと思う。
 みんな、うっとりとしてレニーの事を見ていたんだから。

「私には皆同じ顔に見えるがな。綺麗だったとしても、誰もリディには敵わない」
 そんな恥ずかしい事を言われながら、レニーは膝にいる私の頭に口づけを落としてきた。
「私みたいなおチビちゃんはいなかったもの」
 自分の髪を手に取り、クルクルと指に絡めていると、
「気にするな」
 そう言って、絡めている指を手に取り、今度はその指に口づけるレニー。
「リディが一番だよ。私の愛しい人」

 リールーが入れてくれたお茶を飲んでいると、レニーが急に私のことをソファに降ろしてその場を離れていった。 
 彼は、リールーを少し離れたところに呼びつけ何やら話し始めてる。
 何かなと?と思いながらお茶を飲んでいたら、だんだ眠くなってきちゃったの。
 時折、チラチラと私の方を見るレニー。
 二人の話が終わると、ウトウトしながらもまだお茶の途中だと言うのに、湯あみのために浴室へとリールーに連れて行かれてしまった。
 
 ここはレオナルドの私室と繋がっている、彼専用の浴室だ。

「もう少しゆっくりしてからでも良かったのに」
 服を脱がせられられながら零すとリールーは、
「今日はリディア様もお疲れになりましたでしょう?湯あみがお済になってからゆっくりとなさって下さい。お茶をお飲みになりながらウトウトされ始めておりましたからね」
 と言われてしまったの。

 元気いっぱいの六才児だけど、流石に長旅の疲れも出ていたのだと思う。その様子に気付いたレニーが、リールーに指示したみたい。
 脱衣所から浴室に入り、私は目の前の浴槽の大きさを見て驚く。
 オーレアでも私室にある浴槽は、一人用の細長いバスタブで、こんな大きな浴槽は見た事が無かった。
 レニーは身体も大きいから浴槽もこんなに大きいのね。
 だって、お披露目の前に客間のお風呂を借りたけど、その浴槽よりも全然大きいんだもの。
 大人三人が余裕で入れそうな浴槽の中で私は池にいる時のようにフワフワと浮いていた。

「気持ちよさそうで何よりです」
「うん、何だか池の中を思い出すわ。早く池が出来ると良いなー」
 湯船の中で微睡んでいると
「リディア様、そろそろお身体を洗いましょうか」
 リールーに声を掛けられ瞼を閉じたまま「うん」と返事をした。
 両脇に手を差し込まれて湯船から身体が浮き上がる。
 いつもと違う感覚に驚くと同時に浴槽から出され、椅子ではない感触のするものの上に座らせられた。

「えっ!」
 リールーは目の前に立っている?
「殿下、この布で石鹸を十分に泡立ててください」

「えええー!」

 気が付けば下履きだけのレニーの膝の上に座っていたのだった。
「な、なんで裸のレニーがいるの?」
 思わずまだ下生えもない陰部と胸を小さな手で隠した。(これは十三才だった時の記憶の反射行動だと思う)
「驚く事は無い。番の事は全部世話するのが竜の夫だ。これからは私がリディの湯あみをするため、リールーに洗い方を教わっているのだ」
「やだやだ、恥ずかしい!こう見えても私は十五の乙女なんだからー」
 すっかり眠気が覚めて、彼の膝の上で抗議した。

「リディア様、そのお姿で十五の乙女と仰っても・・・」
「十五の乙女でも番であるなら、湯あみの世話をするのは夫の務めだ。今から慣れておけばどうということもない」
 レニーは泡立てた布でリールーに言われた通り、私の首まわりや腕を洗っていく。
 なんで?どうしてこうなったの・・・

「そうです、リディア様のお身体はまだ皮膚も弱いですから、優しくですよ。あら、殿下お上手ですね」
「そうか?」
 リールーに褒められ嬉しそうなレニーの声が、背中の方から聞こえてくる。

「信じられない!リールーも、レニーは裸なのよ。恥ずかしくないの?」
「はい、エルフの森では裸のエルフが多数いますし、メイドとして奉公に上がっていた時は、お坊っちゃまのお世話も致しておりましたから、男性の裸などなんとも思いません」
「それって。。」

「ほら暴れないで大人しく洗わせろ」
 レオナルドに叱られて観念した。赤面したまま、リールーの指導のもと、恥ずかしい部分まで隅々と彼に洗われる事となってしまう。

「よし、流して湯に浸かろうか」
 洗った髪にタオルを巻かれ、レオナルドに抱き上げられて湯船に沈む。
「もう大丈夫でございますね。私はこれで失礼いたします。ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうリールー。後は大丈夫だ。下がって良い」
「はい、くれぐれも湯あたりなさいませんように。それと髪はしっかりと乾かしてさしあげて下さい」
「ああ、魔力で乾かすから大丈夫だ。おやすみ」
「レオナルド様、リディア様。おやすみなさいませ」
 頭を下げ、リールーが浴室から出て行くのを、私は恨めしそうに睨んでいた。
 そんなリディアは湯船の中で後ろ向きにレオナルドの胡坐の上に座っている。
 いじけた私は、口まで湯の中に浸かりブクブクと息を吐いていると、レニーが話し掛けて来た。

「リールーにおやすみの挨拶をしなかったな」
――ブクブクブク――(リールーに裏切られたんだもの)
「怒っているのか?」
――ブクブク――(怒ってますよ!めちゃくちゃ恥ずかしいんだから)
「なにをやっても可愛いとしか思えぬのだが」
――ブク――(・・・)

 私はこの後一言も喋らなかったけれど、レニーはご機嫌で、しっかりと温まらせ湯から上がった。
 一国の王太子が、こんな幼児のリディアの前でしゃがみ込み、小さな身体を大きなタオルで拭いている姿は、母国オーレアでは絶対にありえない光景だと思う。ううん、何処の国でもそうだよね。
 時折、レニーの黒髪から雫が垂れて来るのを見ながら、私はされるがままになっていた。
 寝間着を着せてもらい、魔力の風で髪を乾かし、湯上がり用に準備された果実水を飲まされて、ベッドに寝かせられる。

 初めての裸のお付き合いを終えた私は、「信じられないと」何度か呟いたような気がするけど、疲れからすぐに眠りへと落ちていったのだった。



しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

【完結】これでよろしいかしら?

ここ
恋愛
ルイーザはただの平民だった。 大人になったら、幼馴染のライトと結婚し、畑を耕し、子どもを育てる。 そんな未来が当たり前だった。 しかし、ルイーザは普通ではなかった。 あまりの魅力に貴族の養女となり、 領主の花嫁になることに。 しかし、そこで止まらないのが、 ルイーザの運命なのだった。

ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています

柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。 領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。 しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。 幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。 「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」 「お、畏れ多いので結構です!」 「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」 「もっと重い提案がきた?!」 果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。 さくっとお読みいただけますと嬉しいです。

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。

キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。 離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、 窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

処理中です...