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1章【我が家に天使がやって来た】

※どう見られているのか②

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 翌日、王城に上がると俺を見る周りの目が以前と違っている事に気付く。
 騎士団の執務室に向かう途中が誰かがいきなり後ろから飛びついて来た。

「アクセルく~ん」
「エリオス団長痛いです。放してください」
 エリオスは俺の上司で騎士団長でもあるが仏頂面の俺をいつも笑わせようとしてくるお調子者でもある。

「聞いたよー。昨日中庭で可愛いレディと逢瀬を楽しんでいたとか」
「逢瀬とはなんですか!話をしていただけですよ」
「そんなこと言って~大事そうに抱きかかえて歩いていたとの報告も上がってるんだからね。今まで女っ気がないのは男がいるからだったとういう説から幼児趣味ではないかなんて言われちゃってるよ~」
「はぁ。。。」やはりそう来るか。
 呆れて物も言えないが思い出してみると、天使といた俺はきっと表情筋が緩んでいて彼らから見たら別物に思えたのかも知れない。そう思うと我ながら可笑しくなって口元が緩んでしまう。

「何~もしかして思い出し笑い?」
「何でもないです!あの子は義妹であり私の婚約者です」
「えっ、えっ、そうなの?君婚約したの?っていうかその何歳よ?」
「ええ。三日前に。ヴィヴィは8歳で私の一回り下ですよ。近い内に婚約発表します。モントレー公爵家の養女となりましたから私が専属護衛になると思いますので宜しくお願いします」
「えー、マジ!じゃ、騎士団は?」
「籍はそのままだそうですが、副団長代理を誰か立ててくれませんか?」
「やだー、そんなの面倒臭いじゃん」
「仕方ないですよ王命ですから」
 エリオスはガックリと肩を落とし執務室に入っていく。
 こんな調子だが仕事となると人が変わり鬼の団長となる。剣と馬の腕前は当然の事ながら、人望も厚く俺は尊敬している。

 一方エリオスは必死で頭の中を整理していた。

ーーーあの、堅物美丈夫のアクセルが婚約?しかも昨日見たと聞いたのはまだ幼さが残る少女。
 まさかの8歳で義妹でもあり婚約者だと!一体どういう事だ?ーーー


 そしてその四日後、俺の婚約が公表されまた貴族たちの好奇心をそそる事になる。
 王弟であるウェルズ大公と妻であるモントレー女公爵が養女にした令嬢と嫡子との婚約。
 しかも令嬢はまだ8歳でアクセルとの年の差は12。
 貴族の間ではその年の差はそう珍しくないが、行き遅れの令嬢が後妻に入るなどと云う場合が多い。後は国同士の政略結婚で幼い王女と婚約を結ぶとかだ。
 そんな訳で暇な貴族たちの社交での格好の餌食となったのは言うまでもない。

 婚約を公表し仕事でまた王都を離れる父を置いて、モントレー公爵家の屋敷へとヴィヴィと母上を連れて帰った。
 馬車を降りるとトーマスを筆頭に使用人たちが玄関前に総出で並び小さな婚約者を迎えた。

「奥様、アクセル様お帰りなさいませ」
「トーマス、いつも屋敷を留守にしてばかりでごめんなさいね」
「とんでもございません奥様」
「今日から可愛い子が一人増えるのでよろしくね」
「はい。ヴィヴィアンお嬢様ようこそお出で下さいました。私は執事のトーマスと申します。ご婚約おめでとうございます。どうぞ末永くよろしくお願い致します」
「トーマスそんなに畏まるとヴィヴィが気後れしてしまうわよ」
「そ、そうでございますか」
 執事頭のトーマスは汗をハンカチで拭い乍ら目尻を下げた。

「ヴィヴィアンお嬢様、私めの事は爺とお呼びくださいませ」
 とヴィヴィに微笑みかける。

「じい……?」
 ヴィヴィが首を傾げる。

ーーーおいおい、トーマス何時からお前は爺になったんだ?ーーー

 ヴィヴィは俺の顔を見ている。
「好きに呼んだらいいよ」
 と頭を撫でてあげると暫く考えトーマスの手をとって答えた。

「はい、じゃ。。。トマ爺ね、ヴィヴィアンです。どうぞよろしくおねがいします」

 恥ずかしそうに微笑みぺこりと頭を下げた天使の笑顔にあのトーマスも心臓を射抜かれたようだ。

「トマ爺でございますか。ええ、ええ。それで結構です。宜しくお願い致します」
「おほほ、トマ爺。良いわ、ヴィヴィアンちゃんその呼び名(笑)」
 母がトーマスの背中をバンバン叩いて笑い出したのでその場にいた全員が吹き出したのは言うまでもない。

「お話には聞いておりましたが本当に可愛らしいお嬢様ですね。お坊っ、、、いえアクセル様の仰る通り天使の様で御座います。わたくしはヴィヴィアンお嬢様のお世話をさせて頂きますマギーと申します。ささ、ご挨拶はまた後程、皆様居間の方にお茶とお菓子の用意をして御座いますのでどうぞ」

 朝、屋敷を出るまで俺の事を坊ちゃま呼ばわりしてきたが、どうやらトーマスとマギーは二人で話し合いアクセル様と呼ぶと決めたらしい。

 うん、正解だぞマギー。

「なぁ、マギーはばあやと呼ばせないのか?」

 揶揄うように言うと



 と鬼のような形相で言われてしまった。はは、当然だな。








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