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番外編/陰の聖女はまったりを所望中ですが。
◇諦めませんか?
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「アンナ、調子はどうかな?」
ナターシャがいない時間を見計らって続き扉からバージルが顔を覗かせました。
「あら、バージル。ナターシャの事なら」
バージルが応接セットのソファーに腰おろし両手を広げると執務机から立ち上がりソファーの方へ行くと広げられた腕のなかにすっぽりと納まります。
「最初は執務の手伝いと思って本の整理などお願いしたんだけどすぐに飽きてしまうし・・・ビオラがお茶の仕度を覚えさせようとしたら「お茶は入れて貰うものではありませんの?」とそっぽを向いているわで。侍女見習いとしてきたという自覚は無いわね」
想像していた通りと苦笑した。
「あはは、でもサミュエル殿にはこちらに来れるなら侍女でも良いと言っていたのだろう」
「そうみたい。だからサミュエル皇帝も陛下もこき使ってやれと言っておられたけど」
「我儘娘はその内ビオラにぎゃふんと言わせられるな」
そう言って愉快そうにバージルは笑います。
「そう言えばよく俺の執務室の前でウロウロしていると護衛が言っていたな」
「ふふ、偶然を装ってでもバージルに会いたいんじゃないの?」
「ぷっ、無駄な事を」
「だって側室を狙ってるんでしょう?ナターシャ嬢は」
アンナは上目使いでバージルの顔を覗き込むと呆れ顔で返事が返ってきました。
「あれ程側室は持たないと言っているのに諦めが悪い」
「一度抱きしめて魔力酔いさせてみたら?」
「冗談でもあんな小娘抱きしめる気にはならないぞ」
「あら、小娘って(笑)私と一つしか違わないのに。万が一魔力酔いしなかったら側室に迎える?」
「俺を揶揄っているのだなアンナ。邸に帰ったら覚悟しとけよ」
そう言ってアンナの指先に口づけを落とすと
「もうそろそろビオラとナターシャ嬢が戻って来るわ。ご自分のお部屋へどうぞ」
アンナは微笑みながら続き扉に視線を向けます。
「はぁ。ナターシャ嬢が来てからアンナとゆっくりできない。仮眠室の昼寝も当分お預けか・・・」
「ふふ、邸に帰れば二人きりなのだから我慢してね」
と彼の額にちゅっとリップ音を立ててキスをする。仕方ないなとばーじるはアンナと一緒に立ち上がりもう一度愛する妻を抱き締めて仮眠室に続く扉から戻っていくのでした。
「ちゃんとそちらから鍵を掛けてね~」
パタンとしまった扉の向こうに声を掛けると
「了解」との返事の後ガチャリと鍵の掛かる音が聞こえアンナはふぅっと溜息を吐くのでした。
「只今戻りました」ノックの音がしてビオラとナターシャ嬢が戻って来ました。
「ご苦労様」
「ジュリアンナ様女官長から殿下へ書簡を預かりお届けに行ったのですがお留守でしたわ。ダニエル様にお預けしましたけど殿下はこちらにいらしてたのではないのですか?」
部屋の中をキョロキョロと見回しながらナターシャが聞いてきます。
「いいえ、来てないわよ」
アンナが素っ気なく答えるのを聞いて
「そうですか、お顔を見れるかもと思ったのに・・・」
残念そうにするナターシャを見てビオラが分からないようにクスッと笑い、さり気なくソファーの背に掛かっていたレースのズレを手早く直しました。
『流石ビオラだわ。バージルが座っていた跡のレースの僅かのズレも見逃さないわね』
『当り前よ、彼女がいない間にいイチャイチャしに来たんでしょう』
『侍女が優秀で嬉しいわ』
そんな念話をアンナとビオラがしているとも知らないナターシャは
「殿下の所へご用事がある時はわたくしに命じて下さいませね」
と能天気なことを言っているのでした。
そして数日後、文句を言いながらも厳しくビオラに指導されお茶をそれなりに入れらるようになったナターシャを褒めご褒美をあげる事にしたアンナ。
バージルとダニエルを呼びアンナ手作りのクッキーを出しナターシャにお茶を入れるように命じます。
バージルに会えただけもテンションが上がるナターシャ。
ビオラに習った通りポットを温め真剣に作業を進めています。
その姿にバージルとダニエルは目を合わせ少し笑いを堪えている。
「お待たせいたしました」
差し出されたお茶を一口飲みバージルがナターシャに声を掛けます。
「アンナのクッキーも美味だけどナターシャ嬢の入れたお茶も美味しですよ」
そう言われた途端ナターシャの顔が真っ赤になりバージルの事を見つめ目を潤ませます。
『あら、ご褒美あげ過ぎちゃったかな?』
『知らないわよ』
『だって、飴と鞭っていうじゃない』
『まぁね』
その時ナターシャが突拍子もないことを言い出しました。
「わたくし何だか侍女の仕事に目覚めましたわ。殿下のお住まいの方でもお仕えさせて頂けませんか?毎日おいしいお茶を入れて差し上げたいですぅ」
「「「えっ!」」」
固まるアンナとバージルそしてダニエルを見てビオラが苦笑します。
「何でしたら侍女とは言わず、メイドでも構いませんわ!」
「ナターシャさん、ありがとう。でも大丈夫よ。私がいつも殿下にお茶を入れてるから。それにナターシャさんが来たら我が邸の者たちの仕事を取る事になってしまいますからね」
アンナが作り笑いをしながらいうと
「少しでも殿下のお傍でお仕えしたいと思っていますのに・・・」
甘えるようにバージルを見るナターシャに彼は目を合わせる事も無く
「私の世話はアンナだけで良い」
と静かに冷たく突き放しました。
その言葉にしゅんとするナターシャですが諦めきれない様子はそこにいる全員に伝わってきていました。
ナターシャがいない時間を見計らって続き扉からバージルが顔を覗かせました。
「あら、バージル。ナターシャの事なら」
バージルが応接セットのソファーに腰おろし両手を広げると執務机から立ち上がりソファーの方へ行くと広げられた腕のなかにすっぽりと納まります。
「最初は執務の手伝いと思って本の整理などお願いしたんだけどすぐに飽きてしまうし・・・ビオラがお茶の仕度を覚えさせようとしたら「お茶は入れて貰うものではありませんの?」とそっぽを向いているわで。侍女見習いとしてきたという自覚は無いわね」
想像していた通りと苦笑した。
「あはは、でもサミュエル殿にはこちらに来れるなら侍女でも良いと言っていたのだろう」
「そうみたい。だからサミュエル皇帝も陛下もこき使ってやれと言っておられたけど」
「我儘娘はその内ビオラにぎゃふんと言わせられるな」
そう言って愉快そうにバージルは笑います。
「そう言えばよく俺の執務室の前でウロウロしていると護衛が言っていたな」
「ふふ、偶然を装ってでもバージルに会いたいんじゃないの?」
「ぷっ、無駄な事を」
「だって側室を狙ってるんでしょう?ナターシャ嬢は」
アンナは上目使いでバージルの顔を覗き込むと呆れ顔で返事が返ってきました。
「あれ程側室は持たないと言っているのに諦めが悪い」
「一度抱きしめて魔力酔いさせてみたら?」
「冗談でもあんな小娘抱きしめる気にはならないぞ」
「あら、小娘って(笑)私と一つしか違わないのに。万が一魔力酔いしなかったら側室に迎える?」
「俺を揶揄っているのだなアンナ。邸に帰ったら覚悟しとけよ」
そう言ってアンナの指先に口づけを落とすと
「もうそろそろビオラとナターシャ嬢が戻って来るわ。ご自分のお部屋へどうぞ」
アンナは微笑みながら続き扉に視線を向けます。
「はぁ。ナターシャ嬢が来てからアンナとゆっくりできない。仮眠室の昼寝も当分お預けか・・・」
「ふふ、邸に帰れば二人きりなのだから我慢してね」
と彼の額にちゅっとリップ音を立ててキスをする。仕方ないなとばーじるはアンナと一緒に立ち上がりもう一度愛する妻を抱き締めて仮眠室に続く扉から戻っていくのでした。
「ちゃんとそちらから鍵を掛けてね~」
パタンとしまった扉の向こうに声を掛けると
「了解」との返事の後ガチャリと鍵の掛かる音が聞こえアンナはふぅっと溜息を吐くのでした。
「只今戻りました」ノックの音がしてビオラとナターシャ嬢が戻って来ました。
「ご苦労様」
「ジュリアンナ様女官長から殿下へ書簡を預かりお届けに行ったのですがお留守でしたわ。ダニエル様にお預けしましたけど殿下はこちらにいらしてたのではないのですか?」
部屋の中をキョロキョロと見回しながらナターシャが聞いてきます。
「いいえ、来てないわよ」
アンナが素っ気なく答えるのを聞いて
「そうですか、お顔を見れるかもと思ったのに・・・」
残念そうにするナターシャを見てビオラが分からないようにクスッと笑い、さり気なくソファーの背に掛かっていたレースのズレを手早く直しました。
『流石ビオラだわ。バージルが座っていた跡のレースの僅かのズレも見逃さないわね』
『当り前よ、彼女がいない間にいイチャイチャしに来たんでしょう』
『侍女が優秀で嬉しいわ』
そんな念話をアンナとビオラがしているとも知らないナターシャは
「殿下の所へご用事がある時はわたくしに命じて下さいませね」
と能天気なことを言っているのでした。
そして数日後、文句を言いながらも厳しくビオラに指導されお茶をそれなりに入れらるようになったナターシャを褒めご褒美をあげる事にしたアンナ。
バージルとダニエルを呼びアンナ手作りのクッキーを出しナターシャにお茶を入れるように命じます。
バージルに会えただけもテンションが上がるナターシャ。
ビオラに習った通りポットを温め真剣に作業を進めています。
その姿にバージルとダニエルは目を合わせ少し笑いを堪えている。
「お待たせいたしました」
差し出されたお茶を一口飲みバージルがナターシャに声を掛けます。
「アンナのクッキーも美味だけどナターシャ嬢の入れたお茶も美味しですよ」
そう言われた途端ナターシャの顔が真っ赤になりバージルの事を見つめ目を潤ませます。
『あら、ご褒美あげ過ぎちゃったかな?』
『知らないわよ』
『だって、飴と鞭っていうじゃない』
『まぁね』
その時ナターシャが突拍子もないことを言い出しました。
「わたくし何だか侍女の仕事に目覚めましたわ。殿下のお住まいの方でもお仕えさせて頂けませんか?毎日おいしいお茶を入れて差し上げたいですぅ」
「「「えっ!」」」
固まるアンナとバージルそしてダニエルを見てビオラが苦笑します。
「何でしたら侍女とは言わず、メイドでも構いませんわ!」
「ナターシャさん、ありがとう。でも大丈夫よ。私がいつも殿下にお茶を入れてるから。それにナターシャさんが来たら我が邸の者たちの仕事を取る事になってしまいますからね」
アンナが作り笑いをしながらいうと
「少しでも殿下のお傍でお仕えしたいと思っていますのに・・・」
甘えるようにバージルを見るナターシャに彼は目を合わせる事も無く
「私の世話はアンナだけで良い」
と静かに冷たく突き放しました。
その言葉にしゅんとするナターシャですが諦めきれない様子はそこにいる全員に伝わってきていました。
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